カードローンやクレジットカードの返済に追われて任意整理を検討しているものの、「手続き後の支払いをきちんと管理できるか不安」と感じている人も多いのではないでしょうか。
任意整理をしたあとは、債権者へ毎月遅れなく返済する必要があるため、支払い管理が負担になるケースもあります。
そこで利用を検討する人が増えているのが「返済代行」というサービスです。
返済代行を利用すれば、債務者本人の代わりに法律事務所の担当者が各債権者への支払いを一括で代行してくれるため、支払い忘れや遅延のリスクを減らせます。
本記事では、返済代行の仕組みや利用した場合の流れ、さらにメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
任意整理や返済代行の利用を検討している人はぜひ参考にしてください。
返済代行とは、任意整理後の債権者への支払いを債務者本人の代わりにおこなうサービスのことです。
弁護士や司法書士が提供しているサービスのひとつで、任意整理を依頼した弁護士・司法書士にそのまま依頼するのが一般的です。
任意整理で借金を減額できた際は、和解内容に従って債権者ごとに金額を毎月きちんと支払わなければなりません。
しかし、入金先や返済期限は債権者によって異なるため、管理が煩雑になりやすく、支払い遅れのリスクも高まります。
その点、返済代行を利用すれば、毎月決められた期日までに弁護士が指定する一つの口座にお金を振り込むだけでよいので、支払いを管理するストレスや支払い遅れのリスクを防ぐことができます。
返済代行を利用するメリットとしては、主に以下の四つが挙げられます。
これらのメリットが自分にとって重要と感じる場合は、返済代行の利用を前向きに検討しても良いでしょう。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
任意整理後は、複数の債権者に対して毎月指定された日に支払いを続ける必要があります。
しかし、債権者によって入金先や期限は異なるため、うっかり忘れて延滞してしまうケースも少なくありません。
そして、延滞が何度も続いてしまうと、最悪の場合、一括請求などをされるおそれもあります。
その点、返済代行を利用すれば、弁護士や司法書士にまとめて送金するだけで済むため、支払い漏れを防ぎやすくなります。
任意整理後の返済を自分でおこなう場合は毎月複数回の振込み作業が必要ですが、返済代行を使えば1回の入金で完結するのもメリットです。
銀行やATMに何度も行く必要がなくなり、時間的・精神的な負担も軽くなります。
特に、複数社からの借入れについて任意整理をおこなった場合は、返済代行のメリットを感じやすいでしょう。
任意整理後も、返済に関して債権者から確認や連絡が入る場合があります。
その際、返済代行を利用していれば、基本的なやり取りは弁護士や司法書士が対応してくれるため、直接やり取りする必要がありません。
そのため、精神的なストレスやプレッシャーを大幅に軽減できるでしょう。
特にこれまで督促の電話やSMSに強い不安を感じていた人にとっては嬉しいポイントです。
返済代行を使うと債権者からの連絡や郵便も弁護士や司法書士宛てに届くことになります。
そのため、家族や同僚に借金や任意整理の事実が知られてしまうリスクを最小限に抑えることが可能です。
返済代行を使うデメリットは、主に以下の三つです。
返済代行の利用を検討する際は、これらのデメリットについてしっかり理解しておきましょう。
返済代行サービスを利用すると、任意整理の依頼費用とは別に返済代行手数料を支払う必要があります。
債権者1社あたり毎月1000円程度が相場で、複数の債権者と和解した場合は手数料負担も大きくなります。
ひと月で考えると大した金額ではないように思えますが、任意整理で和解した業者には基本的に3〜5年間にわたって返済を続けるため、返済代行の手数料だけでトータル10万円程度にのぼるケースもあるでしょう。
そのため、返済代行を利用する際は、毎月の返済額がどの程度増えるのか、トータルで代行手数料としていくら支払うことになるのかといったシミュレーションをしておくのがおすすめです。
返済代行を利用する際は、弁護士や司法書士が指定する口座に毎月まとまったお金を入金しなければなりません。
入金が遅れると、事務所から債権者への送金も遅れ、延滞とみなされてしまうリスクがあります。
毎月決まった給料日がある場合は、送金日を給料日の後にしてもらうなど、入金遅れが生じないための工夫が必要です。
返済代行は任意整理後のサポートとして提供されるサービスですが、全ての事務所が取り扱っているわけではありません。
弁護士や司法書士の方針や事務所の体制によっては利用できない場合があります。
そのため、返済代行を利用したい場合は、任意整理について相談する段階で「返済代行サービスの有無」を確認しておくことが大切です。
返済代行のメリット・デメリットを知ったうえで、自分で返済をおこなうのと返済代行を利用するので迷っている方もいるでしょう。
そこでここでは、返済代行がおすすめな人の特徴と、自分での返済がおすすめな人の特徴をそれぞれ紹介します。
返済代行をおすすめできるのは以下のような人です。
上記に当てはまる人は、返済代行によるメリットを感じやすい可能性が高いので、一度担当の弁護士や司法書士に相談してみるとよいでしょう。
具体的な費用や利用の流れがわかれば、依頼のハードルもぐっと下がるはずです。
返済代行は便利なサービスですが、必ずしも全てのケースで利用がおすすめなわけではありません。
たとえば、以下に当てはまる人は返済代行を利用せずに、自分で返済をしたほうがよいでしょう。
特に、返済先が1社しかない場合は、返済代行のメリットを感じにくい可能性が高いので、まずは自分で返済をおこなってみるとよいでしょう。
どうしても自分での返済が難しい場合は、あとあと弁護士や司法書士に相談するのもおすすめです。
任意整理で債権者と和解できたら、減額された借金を3〜5年間かけて返済していくのが一般的です。
しかし、生活状況の変化や急な出費などでどうしても支払い期日にお金を用意できない状況に陥ることもあるでしょう。
任意整理後の滞納は非常にリスクが大きいので、滞納しそうになった状態ですぐに担当の弁護士・司法書士に相談してください。
ここでは、任意整理の和解後に支払いが遅れた際にどのようなリスクが生じるか、具体的に解説します。
任意整理の和解後にどうしてもお金が用意できず滞納してしまった場合、一度だけならそこまで大きな問題にならないこともあります。
しかし、2回以上滞納してしまうと、和解案が破棄され、残金の一括払いを求められる可能性が高いでしょう。
なぜなら、債権者との和解案のなかには、毎月の返済額や支払い期日だけでなく、滞納した際の対応についても明記されているからです。
たとえば、「2回滞納を繰り返したら債務者は期限の利益を喪失する」と取り決められているケースがあります。
期限の利益とは、「約束の支払い期限を守っていれば分割払いが認められる」という債務者にとっての権利のことです。
延滞によって期限の利益を失うと、分割払いでの返済が拒否され、残債を一括請求されてしまいます。
なお、滞納による一括請求の扱いについては、債権者によって「合計2回の滞納」「2回連続の滞納」など条件が異なることもあります。
返済が3年〜5年と長期に及ぶ任意整理では、途中で資金繰りが厳しくなるケースもあるため、1回目の遅延が発生した段階で早急に弁護士や司法書士へ相談し、今後の対応を検討することが重要です。
和解案通りの返済が難しくなった場合、再和解や追加介入を検討しなければなりません。
それぞれの手続きの内容は、以下のとおりです。
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 再和解 | 一度任意整理で和解した債権者ともう一度交渉し、返済条件の見直しを認めてもらう |
| 追加介入 | 当初任意整理の対象から外していた債権者についても、追加で任意整理をして返済負担を軽減する |
再和解や追加介入によって毎月の返済額を軽減できることは多く、今までどおりの返済が難しい人にとっては現実的な解決策となる可能性があります。
ただし、再和解は一度取り決めた約束を破った相手との交渉となるため、「返済期間を短縮する」「1回の滞納で期限の利益を喪失する」など、以前の和解内容よりも厳しい条件になることがほとんどです。
ほかの業者への追加介入も、「保証人がついている」「元本自体が少なく利息の軽減効果が少ない」など、当初任意整理の対象から外した事情があるはずなので、全ての人におすすめできるわけではありません。
さらに、新たに弁護士費用がかかるため、本当に手続きが必要かどうかは慎重な判断が必要です。
今後の返済が困難で、再和解や追加介入による調整でも解決できない場合は、より抜本的な手続きである個人再生や自己破産を検討する必要があります。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 個人再生 | ・借金額に応じて最大で10分の1まで減額してもらう ・住宅ローン特則を利用すればローン返済中の自宅を残しながら減額が可能 |
| 自己破産 | ・ほぼ全ての借金の返済義務がなくなる ・一定以上の価値がある財産は没収される |
いずれも裁判所を通じた法的手続きですが、時間や労力がかかるうえ、任意整理よりも生活への影響も大きい分、慎重に選択する必要があります。
とはいえ、早めに手続きすることで生活の再建がスムーズに進められることも多く、すでに返済が行き詰まっている人にとっては根本的な解決が望めるのも事実です。
個人再生や自己破産などについて詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】債務整理とは?基本をわかりやすく解説|ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)
ここでは、返済代行についてよくある質問をまとめました。任意整理や返済代行を検討している人はぜひ参考にしてください。
個人再生においても、弁護士や司法書士に依頼すれば返済代行を利用できるケースがあります。
ただし、返済代行の手数料は任意整理と同様に1件あたり月額1000円程度かかる場合が多いため、総額の負担も考慮することが大切です。
任意整理の返済代行をおこなうのは、基本的に弁護士や司法書士といった法律の専門家です。
また、返済代行は任意整理をきちんと完了させるためのアフターフォローとしての意味合いがあるため、原則として任意整理を実施した担当の専門家が受け持つことになります。
一部の貸金業者などが「振込代行サービス」と称したサービスを提供していますが、これは返済代行とはまったくの別物です。
これは、主に事業者を対象として、取引先との間で発生する請求書の決済や振込みの処理を一本化して、手間や費用を軽減するサービスです。
したがって、任意整理の債務者を想定して提供されているサービスではないと考えておいてください。
本記事では、返済代行の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
弁護士や司法書士による返済代行サービスは、任意整理や個人再生での返済をスムーズに進めるうえで非常に便利です。
複数の債権者への返済手続きを一本化できるため、返済漏れが防ぎやすく、支払いの管理による精神的な負担を大きく軽減できます。
一方で、利用には手数料がかかり、事務所によっては対応不可の場合もあるため、利用前にしっかり確認することが重要です。
ベンナビでは、返済代行に対応している弁護士も多数掲載しているので、これから任意整理を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
ギャンブルや事業などの借金で自己破産をしたいときは、誰も「お金をなるべくかけたくない」と考えるでしょう。
そこで弁護士などへの依頼費用を節約するため、自己破産手続きを自分でできないか考えるのは自然です。
しかしながら、自分で自己破産手続きをする場合はさまざまなデメリットがありおすすめできません。
本記事では、そもそも自己破産手続きを自分でもできるかの可否、自分でおこなう7つのデメリット、自分で自己破産手続きをしても費用を節約できるとは限らないこと、自分でする場合の費用や手続きの流れを解説します。
自分で自己破産手続きをするか否か判断する場合は、デメリットも理解しておくべきです。
本記事を読めば、自己破産手続きを専門家に任せるべきか自分でおこなってもよいか判断できるようになります。
自己破産手続きは、専門家に依頼しておこなわないといけないといったルールはありません。
自分で必要書類を用意して裁判所に申し立て、手続きを進めることも可能です。
しかし自己破産手続きを自分ですすめるのは、後述するとおりデメリットが多くおすすめできません。
複雑な手続きや交渉を適切にすすめるには専門的な知識・経験が必要で、慣れないと大きな負担にもなります。
手続きに不備があると、結果的に自己破産が認められなくなる可能性も否定できません。
自己破産手続きを自分ですすめることは可能だが、ハードルが高くおすすめできないというのが実際のところです。
自己破産手続きは債務者自身でおこなうのでなく、弁護士に任せるのが一般的です。
弁護士に任せると依頼者の代理人として、複雑で手間のかかる手続きや交渉を全ておこなってくれます。
弁護士に任せた場合は弁護士費用がかかりますが、自分で手続きを進めれば必ずしも費用を安くできるとも限りません。
また弁護士に任せることで、債権者からの督促を止められるなどのメリットもあります。
それでは、具体的に自己破産の手続きを自分でおこなうことで、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、特に注意すべき以下の7つのポイントを詳しく解説します。
自分で手続きをすすめると、裁判所に免責許可を出してもらえず借金が免除されなくなるリスクが高まります。
破産法に定める「免責不許可事由」にあてはまると、免責が不許可となり借金が免除されません。
免責不許可事由にあてはまる可能性がある場合、裁判所の「裁量免責」が受けられるよう手続きを進める必要があります。
しかし依頼人の行為が免責不許可事由に該当するかの判断や、裁量免責を受けるにはどうすればいいか検討するには専門知識が不可欠です。
弁護士に依頼せず自分で進めようとすると、知らずに免責不許可事由とみなされる行動をしてしまう可能性も否定できません。
また裁判所をうまく説得することができず、裁量免責が認められない可能性も高くなるのです。
借金を解決する方法は、自己破産だけではありません。
任意整理や個人再生といった、財産を残しながら借金を減額できる手続きもあります。
任意整理とは債権者と直接交渉し、借金の将来利息をカットしてもらい3年~5年程度で返済する手続きです。
個人再生とは、裁判所に申立てをおこない、借金を5分の1から最大10分の1まで減額することができる制度です。
個人再生であれば、原則として自己破産のように財産が没収されることはありません。
どの手続きが最も適しているかは、あなたの借金総額、収入、財産の状況などを総合的に見て判断する必要があります。
法律の知識がないまま自分で手続きを進めてしまうと、「本当は自己破産でなく、より簡便で費用もかからない任意整理で解決できたかもしれない」といった、最適な選択肢を見逃してしまう可能性があります。
弁護士に相談すれば、あなたにとってどの方法がベストなのかを客観的に判断し、最も有利な条件で生活を再建できるようサポートしてくれます。
自己破産の手続きには、大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止は債務者の財産が一定額以下の場合などに適用される手続きで、費用も安く手続き期間も短いのが特徴です。
一方で管財事件は一定以上の財産がある場合や、借金の原因に問題がある場合などに適用される手続きです。
管財事件では、裁判所が選んだ破産管財人が財産の調査や管理をおこないます。
管財事件になると、破産管財人の報酬などとして20万円~50万円程度のお金を裁判所に納める必要があり、手続きも複雑で時間もかかります。
同時廃止が適用されるためには、財産や借金の理由に関する十分な調査をおこない、適切に申立書類を作成しなくてはなりません。
自分で自己破産手続きを進めると調査や書類作成の不備などから本来なら同時廃止で済むケースでも、裁判所に調査が必要と判断され、管財事件になってしまう可能性が高まります。
弁護士に依頼すれば、専門家の視点で的確な申立書を作成してくれるため、不要な費用や手間をかけずに、同時廃止で手続きを終えられる可能性が高まるのです。
また管財事件のなかでも、費用や手続きの負担をおさえられる「少額管財」は、そもそも弁護士に依頼しなければ選べません(破産の申立てをする地域による。)。
| 項目 | 通常管財 | 少額管財 | 同時廃止 |
|---|---|---|---|
| 対象となるケース | 債務者の財産が一定額以上、もしくは借金をした理由に問題がある場合 | 管財事件のうち、以下条件を満たす場合に選択して費用を節約できるうえ、手続きの負担も少ない種類 ・債務者が個人もしくは個人事業主 ・弁護士に依頼すること |
目ぼしい財産がなく、借金の経緯にも特に問題がない場合 |
| 裁判所への予納金 | 50万円程度 | 20万円程度 | 1万円程度 |
| 破産管財人の選任 | 選任される | 選任される | 選任されない |
| 手続きの複雑さ | 複雑で、手続き期間も長くなる傾向がある | 通常管財よりは簡易 | 最も簡易で、手続き期間も短い |
自己破産の手続きでは、住民票や戸籍謄本、給与明細、預金通帳のコピー、保険の解約返戻金の証明書など、非常に多くの書類を集める必要があります。
また、裁判所に提出する自己破産申立書や陳述書といった書類は、専門的な内容が多く、決められた書式に沿って正確に作成しなければなりません。
これらの書類に不備があると、裁判所から何度も修正を求められたり、最悪の場合、申立てを受理してもらえなかったりすることもあります。
さらに、平日の日中に何度も裁判所に足を運んだり、裁判官との面談に対応したりする必要もあり、仕事をしている方にとっては大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、こうした面倒な書類の収集・作成から裁判所とのやり取りまで、そのほとんどを代行してもらえます。
裁判所によっては、弁護士が代理人になっている場合に限り自己破産手続きを簡略化できる制度を用意しています。
たとえば東京地裁では弁護士に依頼していれば、申立てをしたその日のうちに裁判官との面談をおこない、迅速に手続きを進めてくれる即日面接といった制度を利用できます。
弁護士なしで本人が直接申立てをおこなう場合は、こうした制度を利用することはできません。
借金で苦しんでいる方にとって、貸金業者からの電話や手紙による督促は、非常に大きな精神的ストレスです。
自分で自己破産の申立てをおこなう場合、この督促が止まるのは、裁判所が破産手続開始決定を出してからになります。
申立ての準備には時間がかかるため、それまでの間、あなたは厳しい取り立てに耐え続けなければなりません。
一方で弁護士に依頼すれば、弁護士が各貸金業者に受任通知という書面を送付し、それが受け取られた時点で、全ての督促がストップします。
自己破産の手続きでは、お金を借りている貸金業者など全ての債権者を債権者一覧表に記載して、裁判所に提出する必要があります。
もし、この一覧表に記載漏れがあると、その債権者に対する借金は免責の対象とならず、返済義務が残ってしまう可能性があります。
あとからその債権者に裁判を起こされるといった、深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。
長期間にわたって複数の業者から借り入れをしていると、自分でも全ての借金を正確に把握できていないことがあります。
弁護士に依頼すれば、信用情報機関への照会などを通じて、全ての借金を正確に調査し、債権者漏れのないように万全の対策を講じてくれます。
「それでも弁護士費用をかけたくない」と、自分で手続きをしようと考えるかもしれません。
しかし、先ほど説明したように、自分で手続きをした結果、費用のかかる「管財事件」になってしまえば、手続きにかかる費用が高額になる可能性もあります。
その結果、費用を払ってでも弁護士に依頼した方が安く手続きができた、といったこともありえるのです。
弁護士に依頼すると、その時点で借金の返済がストップします。
これまで毎月返済に充てていたお金が手元に残るようになるため、その中から弁護士費用を分割で支払っていくのが一般的な方法です。
つまり、今すぐまとまったお金がなくても、弁護士に依頼することは可能なのです。
また自分で破産手続きをすすめれば、前述のとおり自己破産の開始決定まで債権者からの督促は止められません。
その間も借金返済を続ければ、結果的に弁護士費用を払うよりもお金がかかってしまう可能性もあり得るのです。
多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いに対応しています。
生活状況などを考慮し、無理のない範囲での支払い計画を立ててくれる場合がほとんどです。
「一括で払えないから」と諦める前に、まずは法律事務所の無料相談などを利用して、費用の支払い方法について相談してみることをおすすめします。
法テラスは、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所です。
法テラスでは経済的に困窮している方に向けて、弁護士費用の立替払制度(民事法律扶助)を提供しています。
本制度を利用すれば、弁護士費用を法テラスに立て替えてもらうことが可能です。
さらに立て替えてもらった費用は、月々5,000円~10,000円程度の無理のない金額で分割返済していくことになります。
生活保護を受けている方など、状況によっては返済が免除される場合もあります。
経済的に苦しくて弁護士費用の捻出がどうしても難しい場合は、法テラスの利用も検討するとよいでしょう。
なお法テラスの立替払制度を利用するには、収入・資産などに関する条件を満たし審査に通過しなくてはなりません。
法テラスの立替払制度を利用するために必要な収入・資産に関する条件は以下のとおりです。
| 家族の人数 | 収入要件 | 資産要件 |
|---|---|---|
| 1人 | 20万200円(18万2,000円) | 180万円以下 |
| 2人 | 27万6,100円(25万1,000円) | 250万円以下 |
| 3人 | 29万9,200円(27万2,000円) | 270万円以下 |
| 4人 | 32万8,900円(29万9,000円) | 300万円以下 |
| 5人目以降 | 1名増えるごとに3万3,000円(3万円)加算 | 300万円以下 |
※()内は東京都特別区や大阪市などの地域以外の場合の基準
住宅ローン・医療費の支払いなどの理由があれば、収入・資産が上記要件を超えても民事法律扶助制度を利用できる場合もあります。
詳細については法テラスの以下公式サイトで確認するか、法テラスへ問い合わせください。
【参考】弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ | 無料法律相談・弁護士等費用の立替 | 法テラス
自己破産の手続きは、弁護士に依頼することをおすすめしますが、自分でしたいという方もいると思います。
自分で自己破産の手続きをおこなう場合に、一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。
ただし、裁判所によって運用が異なるため、必ず管轄の裁判所に確認が必要です。
自分で手続きをする場合は、これらの書類を全て不備なく準備しなければなりません。
自分で手続きをおこなう場合、弁護士費用はかかりませんが、裁判所に納める実費は必要になります。
| 項目 | 金額の相場 |
|---|---|
| 申立手数料 (収入印紙代) |
1,500円 |
| 郵便切手代 | 数千円程度 |
| 予納金 | 同時廃止:11,859円 少額管財:20万円~ 通常管財:50万円~ |
合計すると、最も簡単な同時廃止でも2万円程度、管財事件になると最低でも20万円を超える費用がかかります。
自分で手続きをする場合の、大まかな流れは以下のとおりです。
まずは、自分の住所地を管轄する地方裁判所を確認し、申立てに必要な書類の書式を入手します。
そのあと、上記でリストアップしたような数多くの添付書類を集め、申立書や陳述書などを作成します。
全ての書類が準備できたら、管轄の地方裁判所に提出し、自己破産の申立てをおこないます。
申立て後、裁判官と面接(破産審尋)がおこなわれます。借金をした理由や現在の財産状況などについて、直接質問されます。
申立て内容に問題がなければ、裁判所は「破産手続開始決定」を出します。
めぼしい財産がないと判断されれば、破産手続開始決定と同時に、手続きを終了させる同時廃止決定が出ます。
管財事件になった場合は、破産管財人があなたの財産を調査し、現金に換えて債権者に公平に分配する手続きをおこないます。
管財事件では、破産管財人から財産調査の結果などを報告するために、裁判所で債権者集会が開かれ、あなたも出席する必要があります。
なお、この場合の債権者集会は債権者が参加することはあまりなく、数分程度で終了することが多いです。
免責を許可してよいかを判断するため、再度、裁判官との面談がおこなわれます。
なお裁判所にもよりますが同時廃止の場合は免責審尋が省略されることも多いです。
最終的に、裁判所が免責を許可するかどうかの決定を下します。
無事に免責許可決定が確定すれば、借金の返済義務がなくなります。
自己破産は専門家に任せなければならないというルールはなく、債務者自身でおこなうことも可能です。
しかし自分でおこなえば失敗やかえってコストが高くなるリスクが高まります。
また債権者からの督促をとめるまで時間がかかったり、手続きの負担が大きかったりするなどのデメリットも無視できません。
このように債務者自身でおこなうのはデメリットが多いため、自己破産手続きは弁護士に依頼して進めることが強く推奨されるのです。
弁護士探しのポータルサイト「ベンナビ債務整理」では、債務整理の対応が得意で無料相談が可能な全国の弁護士を多数紹介しています。
まずはベンナビ債務整理から弁護士に無料相談を申し込み、自己破産の進め方についてアドバイスをもらってはいかがでしょうか。
現在、本罪で警察の捜査を受けている方の中には、「余罪があることを知られたらどうなるのか」「捜査はどこまで及ぶのか」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
特に初めての逮捕や取り調べに直面すると、自分の身に何が起きるのか想像もつかず、不安が一層強まるものです。
この記事では、「余罪捜査がどこまでおこなわれるのか」というテーマについて、余罪の定義、発覚のきっかけ、罪の重さへの影響など、気になるポイントを網羅的に解説します。
また、「余罪を自白するべきか?」といった悩みへの対応方針や、弁護士に相談することで得られるメリットも紹介します。
今後の対応を冷静に考えるためにも、正しい知識を身につけましょう。
警察に逮捕・勾留されている最中、「ほかにも何かやっていないのか?」と尋ねられた経験がある方もいるかもしれません。
ここでは、余罪捜査の基本的なルールと、実際にどのようなケースで余罪まで調べられるのかを解説します。
「余罪」とは、現在捜査の対象になっている犯罪(本罪)とは別に、被疑者が関与したとされる未解決の犯罪のことです。
刑事手続では、「本罪」が起訴状や逮捕状に記載された特定の犯罪事実であるのに対し、「余罪」はその記載には含まれていない行為を指します。
たとえば、万引きで逮捕された人が「実はほかの店でも同じことをしていた」とすれば、それは別の犯罪行為として、余罪に該当する可能性があります。
刑事手続には「事件単位の原則」が適用されます。
これは、逮捕・勾留・起訴・裁判といった刑事手続の効力は、あくまで逮捕状、勾留状、起訴状に記載された被疑事実や公訴事実に限られるという考え方です。
そのため、現在拘束されている容疑(本罪)とは無関係な余罪について、警察が取り調べをおこなうことは原則として認められていません。
余罪を追及するには、別途その犯罪についての逮捕状や捜索差押許可状を取得する必要があります。
余罪捜査には「事件単位の原則」が適用されますが、本罪の捜査の過程で余罪が発覚することがあります。
とくに「常習性」が認められる犯罪では、警察は余罪まで徹底的に捜査する傾向があります。
たとえば、次のような犯罪では、余罪が発覚しやすいでしょう。
これらは、一度の犯行ではなく、過去にも複数回にわたって繰り返されている傾向が高いためです。
警察は、本罪の逮捕後に押収したスマートフォンやパソコン、防犯カメラ映像、物的証拠などをもとに、過去の犯行とのつながりを探ります。
盗撮事件ではスマートフォン内の画像データから、薬物事件では過去の通信履歴から取引状況が判明するケースもあります。
例外的に余罪の取調べがおこなわれるケースも存在します。
たとえば、同種の犯罪が複数確認されており、犯行が繰り返されていると判断され、同種の余罪の取り調べが本罪の全容解明にも役立つ場合、その限りで本罪での身柄拘束中に余罪について話を聞くことが任意捜査として許容されます。
さらに、本罪と余罪が密接に関係している場合も例外です。
たとえば、複数の窃盗行為が同一手口や短期間のうちにおこなわれていたといった事情があれば、全体像を把握する必要性から、余罪についても併せて取調べがおこなわれることがあります。
なお、被疑者自身が「余罪についても話したい」と申し出た場合には、任意の供述を元にした任意捜査として進められます。
このように、事件単位の原則を前提としつつも、事案の性質や本罪捜査との関連性に応じて、例外的に余罪の任意取り調べがされることがある点は押さえておきましょう。
余罪取り調べに不安を抱える方にとって、「何をきっかけに余罪が明るみに出るのか」は非常に気になる点だと思います。
実際、余罪は無制限に調べられるわけではなく、発覚には一定の契機があります。
ここでは、余罪が発覚する典型的なケースをわかりやすく解説します。
余罪が発覚するきっかけとしてもっとも多いのは、本罪の捜査中に押収された物品やデータ、証言などから、別の犯罪の存在が疑われる場合です。
たとえば、盗撮やわいせつ事件ではスマートフォンの画像フォルダに本件とは別の被害者の画像が保存されていたり、薬物事件ではSNSやメッセージアプリのやり取りから過去の売買の痕跡が見つかったりするケースがあります。
また、防犯カメラ映像や現場の指紋、押収された所持品など、物理的証拠の分析により、過去の行為が芋づる式に明らかになることも少なくありません。
被疑者自身の供述や、共犯者からの供述によって余罪が判明するケースもあります。
とくに複数人でおこなわれた犯行では、ほかの関係者の任意の供述から別件の関与が発覚することは少なくありません。
共犯者の中には、本罪に対する反省の態度の一環として捜査への協力姿勢を示し、余罪について自発的に供述する人もいます。
そのため、「自分が話さなければ大丈夫」と考えていても、別ルートから余罪が浮上する可能性は十分にあるといえるでしょう。
もうひとつの重要なきっかけが、被害者からの新たな被害届です。
報道や警察発表を見た別の被害者が、「自分もこの人物に被害を受けたかもしれない」と考えて通報することで、余罪が浮かび上がることがあります。
特に特殊詐欺や性犯罪のように被害者が複数にわたる場合、逮捕後の報道によって余罪が次々と判明することも珍しくありません。
また、被害届が新たに提出されると、警察はその内容をもとに証拠関係を精査し、必要に応じて再逮捕や追起訴に踏み切ることになります。
余罪が発覚したとき、多くの方が気にされるのが「刑が重くなるのか?」という点です。
本罪のみであれば軽い処分で済む可能性がある場合、余罪が加わることで処分が重くなるのではないかと、不安に感じると思います。
ここでは、余罪が処分にどのような影響を与えるのかを、法的観点から解説します。
まず大前提として、裁判所は公訴事実(起訴された犯罪事実)(本罪)についてのみ審理し、判断を下します。
そのため、余罪が追起訴されていない限り、本罪の裁判のなかで余罪について実質的に処罰されることはありません。
たとえば、被告人が万引きで起訴されていたとしても、「ほかにも同じようなことをしていた」との疑いがあるだけで、その余罪が起訴されていなければ、万引き1件についてのみ裁かれることになります。
この点は、無罪推定の原則や、被告人の防御権の保障という観点からも重要です。
起訴されていない余罪であっても、「量刑の判断に影響を与える」ことはあり得ます。
たとえば、起訴されている本罪に加えて、過去にも同様の行為を繰り返していた場合、余罪を処罰する目的ではなく、本罪の量刑を決める際の常習性、動機・背景事情、規範意識等として考慮されます。
つまり、余罪そのものによって処罰されることはなくても、「情状」として量刑に不利に働くことがあるということです。
余罪についても追起訴された場合は、「併合罪(へいごうざい)」として、本罪と余罪を合わせて裁かれることになります。
量刑には刑法第47条の併合罪加重規定が適用され、最も重い罪の法定刑の長期にその2分の1を加えた期間まで科すことができます。
たとえば、本罪が懲役5年、余罪が懲役3年だった場合、単独であればそれぞれの刑が科されるところ、併合罪として扱われれば最大で懲役7年6月までの判決が可能になります。
本罪について「初犯だから軽く済むだろう」と考える方もいるかもしれませんが、余罪が複数存在する場合、その考えが通用しないことがあります。
たとえ正式な前科がなくても、複数の余罪があることで、「反復的な犯行」と見なされるからです。
その結果、余罪の内容によっては初犯でも実刑の可能性が高まります。
具体的には、余罪のなかに被害金額が高額なものや、被害者が多数いるものが含まれていれば、検察官が余罪も起訴し、処分を重くする方向で動くことがあります。
余罪の存在が明らかになり、警察や検察が正式に捜査を始めた場合、その後の手続きはどう進んでいくのでしょうか。
ここでは、余罪が立件されたあとに想定される主な流れを整理して紹介します。
本罪の起訴・不起訴が決まる前に余罪が発覚し捜査が行われ検察が両事件について立証できると判断した場合、本罪とあわせて余罪も起訴されることがあります。
この場合、余罪も起訴された以上は改めて余罪の捜査ために逮捕や勾留がおこなわれることはありません。
なお、起訴後は、裁判所が裁判に出廷させるために必要があると判断した場合に身柄拘束が続きます。
余罪についての証拠が十分に整っていない場合、まずは本罪のみを起訴し、余罪についてはあとから「追起訴」されることがあります。
この追起訴は、本罪の起訴後も被告人が勾留されたままの状態でおこなわれることが多く、本罪の裁判中に余罪の勾留状や逮捕状が発付されることがあります。
余罪の追起訴がされた場合、当初の本罪の裁判に余罪が併合されて審理されることが多いです。
ただし、例外的ですが、本罪の裁判が終盤であるが追起訴された余罪の証拠調べに時間を要する場合等、被告人の防御権を保護するため必要がある場合には本罪の裁判手続きとは分離し、本罪と余罪を別々の裁判で審理することがあります(刑事訴訟法第313条第2項)。
余罪について捜査が行われた結果、余罪が不起訴処分となることがあります。
不起訴の理由としては、以下のような事情が考えられます。
余罪が不起訴となった場合は、あくまで本罪のみに基づいて裁判がおこなわれることになり、余罪についての法的な判断は下されません。
ただし、前述のとおり余罪の存在が量刑判断に影響する可能性はあるため、「不起訴=本罪の量刑に影響なし」とは限りません。
取り調べの中で「ほかにもやっていないのか」と聞かれたとき、黙っているか、正直に話すかで悩まれる方もいると思います。
ここでは、余罪の自白に関する基本的な考え方を解説します。
まず大前提として、余罪について自白する法的な義務はありません。
憲法第38条では、自己に不利益な供述を強要されない「黙秘権」が保障されており、これは余罪についても同様です。
そのため、取調べにおいて「正直に話さないと不利になる」「認めないと反省していないと見なされる」といったプレッシャーを受けたとしても、余罪に関して黙っている権利はあるということを知っておくべきでしょう。
また、逮捕・勾留中に捜査されているのはあくまで「本罪」であり、逮捕状や勾留状に記載されていない余罪について取調べを受ける義務はありません。
余罪について自白する義務はありませんが、「余罪を隠し通せば絶対に有利になる」とも限らない点には注意が必要です。
もっとも、あとになって確かな証拠とともに余罪が発覚した場合、「取調べの段階で嘘をついていた」「反省していない」と判断され心証が悪化するおそれがあります。
余罪があることを自覚している場合は、刑事事件に詳しい弁護士に早い段階で相談し、自身の状況を正確に伝えたうえで、最善の方針を立てることが大切です。
弁護士は、余罪について証拠が今後出てくる可能性が高いかどうかを見極め、最終的に立件される可能性があるかを冷静に分析してくれます。
また、被害者と示談交渉を進められる見込みがあるか、あるいは自白することで不起訴や刑の減軽といった有利な結果が得られる余地があるかどうかといった観点も含めて、判断材料を提供してくれます。
さらに、取り調べで何をどのように話すべきか、どの部分は黙秘してよいかなど、具体的な受け答えのアドバイスも受けることも可能です。
早い段階で弁護士を選任し、余罪にどう向き合うかを専門的な視点で検討しておくことが、結果として自分を守る最善の方法となるでしょう。
余罪の存在が明らかになり、警察や検察による取調べが始まった場合、「どう対応すればいいのか」「話すべきか否か」など、多くの判断を迫られることになります。
そうした状況において、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談・依頼することは、非常に重要な意味を持ちます。
ここでは、余罪捜査が始まった段階で弁護士を頼るべき具体的な理由を解説します。
余罪がある場合、本罪の取調べでどのように話すか、あるいは黙秘すべきかを一人で判断するのは困難です。
その点、弁護士であれば、取調べの進行状況や証拠の有無、余罪がどの程度追及される可能性があるかなどを踏まえた対応方針を検討してくれます。
余罪の自白が量刑に与える影響や、黙秘を選択した場合に生じるリスクについても、具体的な見通しを含めて助言してくれるため、不安な取調べにも落ち着いて向き合えるようになります。
余罪が複数ある場合、再逮捕や勾留延長などによって、長期間にわたり身体拘束が続くおそれがあります。
さらに、取調べの中で「早く白状しろ」「隠していてもムダだ」といった心理的圧力をかけられることも考えられるでしょう。
このような不当な取調べが疑われる場合でも、弁護士が選任されていれば、勾留の不服申立てや取調べ方法に対する抗議など、適切な手続を講じてくれます。
余罪が複数ある場合でも、被害者との示談が成立すれば、不起訴や略式命令など比較的軽い処分にとどめられる可能性があります。
ただし、複数の被害者がいる場合には、それぞれに対する対応が異なり、示談交渉の進め方にも工夫が求められます。
その点、弁護士であれば、どの余罪について先に示談を優先すべきか、どのような内容で交渉すべきかといった点も踏まえて動いてくれるため、結果として刑事処分の軽減や社会復帰への道筋を早めることにつながるでしょう。
「余罪も調べられるのかな」「また逮捕されるかも」と、不安な気持ちを抱えている方も多いと思います。
余罪捜査は本来ルールがありますが、場合によっては例外的に取調べが進むこともあり、どう対応すべきか迷ってしまうのも無理はありません。
そんなときこそ、早めに弁護士に相談することが大切です。
弁護士は、話すべきか黙っておくべきか、示談はできるかなど、今の状況に合ったアドバイスをくれます。
不安を一人で抱えず、先の見通しを立てるためにも、専門家の力を借りましょう。
「こんなことで相談していいのかな…」と思うかもしれませんが、弁護士はあなたの味方です。
少しでも気になることがあれば、まずは一歩を踏み出してみてください。
令和5年(2023年)のひき逃げの検挙率は72.1%となっています(令和6年犯罪白書)。
一般的な刑法犯の検挙率は38.3%であるため(令和6年犯罪白書)、ひき逃げの検挙率は非常に高いといえます。
本記事では、ひき逃げ事件の検挙率、加害者が負う責任、逮捕後の流れについてわかりやすく解説します。
さらに、早期に自首することの重要性や弁護士に相談するメリットなど、ひき逃げ事件を起こした際にどう対応すべきかの指針についても説明します。
ひき逃げ事件の検挙率は年々変動がありますが、全体として高い水準にあります。
以下は、警察庁交通局の統計をグラフと表にしたものです。
引用元:令和6年犯罪白書
年次(和暦) 年次(西暦) 発生件数 発生件数_
死亡事故発生件数_
重傷事故発生件数_
軽傷事故検挙件数 検挙件数_
死亡事故検挙件数_
重傷事故全検挙率 死亡事故検挙率 重傷事故検挙率 令和元年 2019年 7,491件 127件 688件 6,676件 4,823件 128件 579件 64.4% 100.8% 84.2% 令和2年 2020年 6,830件 93件 730件 6,007件 4,798件 91件 583件 70.2% 97.8% 79.9% 令和3年 2021年 6,922件 91件 669件 6,162件 4,963件 90件 581件 71.7% 98.9% 86.8% 令和4年 2022年 6,980件 99件 681件 6,200件 4,837件 100件 541件 69.3% 101.0% 79.4% 令和5年 2023年 7,183件 84件 755件 6,344件 5,177件 86件 664件 72.1% 102.4% 87.9% 引用元:令和6年犯罪白書
統計によれば、令和5年(2023年)中に発生したひき逃げの全検挙率は72.1%でした。
特に被害者が死亡した事故の場合、検挙率はほぼ100%と非常に高く、重傷事故の場合でも例年80%前後が検挙されています。
一部、検挙率が100%を超えている年がありますが、これは前年の事件の犯人が捕まったケースも含めているためです。
このようなデータを踏まえると、死亡事故や重傷事故においては、ひき逃げで犯人が逃れられることはまずないといえるでしょう。
一方、「軽いけがなら逃げ切れるのか」といわれるとそうではありません。
近年では、防犯カメラの技術進歩によってより鮮明な映像が残っているほか、ドライブレコーダーが普及したことによって、逃走車両のナンバーや車種が割り出され、犯人の確保につながるケースが増えています。
たとえ一時現場から逃げても、警察は科学的な捜査手法で追跡し、いずれ犯人に辿り着く可能性が高いでしょう。
ひき逃げ事故を起こした場合、加害者は刑事・行政・民事の3つの責任を負うことになります。
それぞれ具体的にどのような処罰やペナルティが科せられるのか、順に見ていきましょう。
まず刑事面では、ひき逃げ加害者には複数の犯罪が成立すると考えられます。
日本の法律には「ひき逃げ罪」という単独の罪名はありませんが、ひき逃げ行為は以下3つの犯罪が同時におこなわれたものと整理できます。
それぞれの犯罪の概要や刑罰について、詳しく見ていきましょう。
過失運転致死傷罪は、自動車の運転における注意義務違反によって、他人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
たとえば、信号無視や前方不注意、スピードの出しすぎなど、故意ではなくても結果的に事故を引き起こし、人を傷つけた場合などが挙げられます
刑罰は「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」(自動車運転死傷処罰法第5条)とされていますが、判決で認められる量刑は被害者の死傷の程度や被害弁償の有無、加害者の態度等の具体的事情によってさまざまです。
報告義務違反は、交通事故を起こしたにもかかわらず、警察へ報告をしなかった場合に成立する犯罪です。
法定刑は「3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金」(道路交通法第119条第1項第17号)となっています。
なお、報告義務違反をしている場合、捜査機関に「逃亡するおそれがある」と判断されやすくなるため、逮捕などの身柄拘束をされる可能性が高まります。
救護義務違反は、交通事故を起こした際に被害者の救護をおこなわず、その場から立ち去った場合に成立する犯罪です。
被害者の死傷が当該運転者の運転に起因する場合の救護義務違反の法定刑は「10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」(道路交通法第117条第2項)となっており、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪と併せて処罰されることが一般的です。
ひき逃げをした場合は、刑事罰とは別に厳しい行政処分が下されます。
まず、救護義務違反は道路交通法の違反点数制度において35点が付加される重大違反です。
なお、報告義務違反があった場合はこれに吸収されます。
さらに、被害の状況と加害者の責任に応じて、以下のように違反点数が加算されます。
交通事故の種別 交通事故が専ら当該違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合における点数 左の欄に指定する場合以外の場合における点数 人の死亡に係る事故 20点 13点 傷害事故のうち、当該傷害事故に係る負傷者の負傷の治療に要する期間が3月以上又は後遺障害が存するもの 13点 9点 傷害事故のうち、当該傷害事故に係る負傷者の負傷の治療に要する期間が30日以上3月未満であるもの 9点 6点 傷害事故のうち、当該傷害事故に係る負傷者の負傷の治療に要する期間が15日以上30日未満であるもの 6点 4点 傷害事故のうち、当該傷害事故に係る負傷者の負傷の治療に要する期間が15日未満であるもの又は建造物の損壊に係る交通事故 3点 2点 引用元:交通事故の付加点数 警視庁
たとえば、加害者が一方的に交通事故を起こして被害者を死亡させてしまった場合、救護義務違反35点に加えて、死亡事故の違反点数20点が付加されて「55点」になります。
救護義務違反は「特定違反行為」という区分に該当するため、違反点数が55点の場合は欠格期間は7年間となる可能性が高いでしょう。
【参考】行政処分基準点数 警視庁
ひき逃げ事故を起こした加害者は、被害者に対して民事上の損害賠償責任も負います。
具体的には、被害者の治療費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害が残ればその逸失利益・慰謝料などの賠償を請求されるでしょう。
通常、加害者が自動車保険に入っていれば、保険会社から被害者に対して補償がおこなわれます。
しかし、ひき逃げ事件では保険会社に対しても交通事故の発生を通知していないケースが多いです。
通知をしていない場合、通知義務を怠ったことにより拡大した損害については保険金が支払われず、一部の賠償金を自己負担することになる場合があります。
ここでは、ひき逃げ事件を起こしたあとの刑事手続きの流れについて解説します。
ひき逃げ事件では、被害者や目撃者からの通報によって警察が事故を認知し、捜査を開始するのが通常です。
警察は、被害者や目撃者などの証言、防犯カメラ映像、ナンバープレートの目撃情報やドライブレコーダー映像、現場に落ちた破片、付着した塗料などあらゆる手がかりをもとに犯人追跡を進め、逃走車両および運転者の特定を急ぎます。
犯人が判明すると、警察は任意の事情聴取を求めるか、逮捕状を請求して通常逮捕に踏み切ります。
【通常逮捕の主な要件】
ひき逃げの場合は「現場から立ち去った」という事実があるため、逃亡のおそれが高いと判断される傾向があります。
もし逮捕された場合は「身柄事件」として次項以降の流れに従って手続きが進むことになるでしょう。
逮捕後は、警察署の留置場に留め置かれ、まず警察官による取調べを受けます。
ここではひき逃げの経緯や事故の詳細について確認され、供述調書が作成されます。
そして、逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察官へと送致されることになります。
検察官は送致を受けたあと24時間以内に、被疑者を勾留するかどうか判断します。
【勾留の主な要件】
ひき逃げは捜査に時間を要する傾向があり、特に被害が大きい場合には勾留請求がおこなわれやすいです。
裁判所に対して勾留請求をおこなわれて、裁判官が勾留決定をした場合は、引き続き身柄を拘束されます。
勾留が決定すると、まず原則10日間の拘束となり、捜査の必要に応じてさらに最長10日間延長されます。
勾留中は警察・検察による捜査がおこなわれ、被疑者は引き続き留置場での生活を強いられるでしょう。
そして検察官は、勾留期間中に集めた証拠や被疑者の供述内容を精査し、起訴するか不起訴処分とするかを判断します。
起訴猶予とする場合や、勾留期間中に判断をすることができなかった場合は、ここで釈放となります。
ひき逃げ事件では起訴される可能性が高いですが、被害者と示談が成立していれば不起訴となるケースもないわけではありません。
検察官が起訴を決めると、公判請求されて刑事裁判が開かれます。
裁判では、事故状況や逃走経緯、動機、反省の態度、被害者との示談状況などひき逃げに関するあらゆる事情が審理され、裁判官が最終的な判決を言い渡します。
判決内容に不服がなければ判決が確定し、実刑ならば刑務所へ収容、執行猶予付き判決または無罪判決ならば釈放となります。
ひき逃げをした場合は、できるだけ早く警察に自首することが望ましいです。
逃げ続けたとしても、前述のとおり検挙される可能性は高いですし、警察・検察は「逃げるつもりだ」「証拠を隠すつもりだ」と疑いを強めることになります。
反対に、人身事故後に早い段階で自首をすることで、捜査機関に身柄を拘束されない「在宅事件」になる可能性が高まります。
さらに刑法第42条1項には「捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定められているため、たとえ刑事裁判で有罪判決を下されたとしても、自首をしなかった場合と比べて刑罰が軽くなる可能性があります。
もちろん、減軽は裁判所の判断によるため、必ず刑が軽くなるわけではありませんが、自首する場合としない場合で法律上取り扱いが異なることは知っておくべきでしょう。
ひき逃げ事件を起こした場合、刑事事件が得意な弁護士に依頼することをおすすめします。
【ひき逃げ事件を弁護士に依頼するメリット】
弁護士に依頼しサポートを受けることで、身柄拘束を回避したり、不起訴処分を獲得できたりする可能性が高まります。
初回無料相談や土日祝日相談などに応じている弁護士もいるため、ベンナビ刑事事件で近くの弁護士を探して、相談することをおすすめします。
最後に、ひき逃げ事件に関するよくある質問に回答します。
ひき逃げは「人身事故を起こしたと認識していながら逃走した場合」に成立する犯罪です。
そのため、自分では人身事故を起こしたことをまったく気付かずに現場を立ち去っていた場合は、救護義務違反・報告義務違反は成立しないことになります。
ただし「気付かなかった」という主張が認められるケースは限定的であり(例:夜間の小動物との接触と誤認した場合等)、防犯カメラの映像などから「気付かないはずがない」と判断される可能性は十分ありえます。
なお、救護義務違反・報告義務違反が成立しなかったとしても、人身事故を起こしている以上は過失運転致死傷罪に問われることになるでしょう。
事故当時、被害者本人がその場で「平気です」「警察はいらない」と言った場合でも、運転者の義務が免除されるわけではありません。
あとになって被害者が痛みを訴えて病院に行き、診断書を警察に提出すれば、人身事故として扱われ、救護義務違反・報告義務違反が成立する可能性が高くなります。
被害者が子どもや高齢者だと、パニックや遠慮から「大丈夫」と言ってしまうことが多いですが、相手の言葉を鵜呑みにせず必ず警察に通報し、病院への受診を促しましょう。
ケースによりますが、初犯であっても実刑判決となる可能性は十分あります。
特に、被害者の死亡・重傷といった重大事故の場合や、飲酒運転・無免許運転でのひき逃げなど悪質性が高い場合は、初犯であっても厳しい判決が下される可能性があります。
一方、被害者が軽傷であり、被害者に対して十分謝罪し示談を成立させている場合は、起訴猶予や執行猶予付き判決となる可能性があるでしょう。
ひき逃げ事件の検挙率は72.1%であり、死亡事故に限ればほとんど100%に近い割合です。
そのため「高い確率で捜査機関に検挙される」ということを理解しておきましょう。
もしひき逃げ事件を起こした場合は、できる限り早く弁護士に相談することが望ましいです。
弁護士に相談・依頼することで、自首に同行してもらえたり、被害者との示談交渉を任せられたりします。
まずは「ベンナビ刑事事件」で近くの刑事事件が得意な弁護士を探して、ひき逃げ事件について相談し、サポートを受けることをおすすめします。
虚偽の告訴をしたらどのような罪に問われ、今後どうなるか気になっていませんか?
警察などに虚偽の告訴をした場合、冤罪が発生したり警察や裁判所が無駄な対応に浪費されたりしてしまいます。
そのため犯人は、虚偽告訴罪に問われることになるのです。
本記事では虚偽告訴罪とは何かや法定刑、成立要件、虚偽告訴罪のよくあるケースや実際の事例・判例について解説します。
虚偽告訴罪は決して軽い罪ではありません。
本記事を読めば虚偽告訴罪の概要を理解し、実際のケースにあてはめてどのようなときに成立するか判断できるようになります。
虚偽告訴罪とは、虚偽の告訴・告発をした場合に成立する犯罪です。
| 告訴 | 被害者やその親族などが犯罪事実を捜査機関に申告し、犯人を処罰するよう求めること |
|---|---|
| 告発 | 犯罪の被害と関係がない第三者(告訴権を持たない第三者)が、犯罪事実を捜査機関に申告し、犯人を処罰するよう求めること |
告訴・告発がおこなわれると、警察や裁判所はそれぞれの役割を果たさなくてはなりません。
それが虚偽であれば、本来は不要な作業に時間が浪費されることになるのです。
虚偽の告訴・告発が増えれば、警察や裁判所は正常に機能しなくなってしまいます。
また虚偽の告訴・告発がおこなわれた結果、何の罪もない方が逮捕され、長期的に身柄を拘束されてしまう可能性もあるのです。
それによって会社を解雇されるなど、不利益を被る可能性もあるでしょう。
こういった警察・裁判所などに対する被害、告訴された個人に対する被害を防ぐため、虚偽告訴罪が定められているのです。
虚偽告訴罪で起訴された場合、3ヵ月以上10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。
虚偽告訴罪に罰金刑はありません。
それだけ厳しく罰せられる可能性があるということです。
虚偽告訴罪の成立要件は以下のとおりです。
■相手に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的があること
相手に刑事罰・懲戒処分を受けさせることを目的として、虚偽の告訴・告発をすることです。
逆にいうと虚偽の告訴・告発だったとしても、それによって刑事罰・懲戒処分を受ける可能性がないなら虚偽告訴罪は成立しません(ただし、他の犯罪(名誉棄損罪等)が成立する可能性があります)。
■虚偽の告訴・告発であること
その告訴・告発が虚偽である必要があります。
告訴・告発の内容が事実であれば、虚偽告訴罪は成立しません。
■故意性が認められること
虚偽の告訴・告発が故意でおこなわれている必要があります。
たとえば相手に刑事罰をあたえるつもりで、わざと警察に嘘の事実で告訴することです。
反対に相手が本当に罪をおかしたと思い込み、勘違いで告訴をした場合、虚偽告訴罪に問われることはありません。
虚偽告訴罪の公訴時効は「7年」と定められています。
虚偽の告訴・告発がおこなわれてから7年が経過すると、刑事責任を問われなくなります。
虚偽の告訴・告発によって、相手の名誉や権利が侵害された場合、民事訴訟で損害賠償を請求される可能性もあります。
虚偽の告訴・告発によって、相手は逮捕されたり長期的に身柄を拘束されたりするかもしれません。
その結果、会社を解雇されたり社会的信用を失ったりすることも考えられます。
民事訴訟でこうした損害を賠償するよう求められる可能性があるのです。
虚偽告訴罪とよく間違えられるのが、軽犯罪法上の「虚構申告罪」です。
虚構申告は、虚偽の犯罪事実や災害の発生を公務員に申し出た場合に成立する犯罪です。
虚偽告訴罪と虚構申告罪は虚偽の事実を申告するという点は共通していますが、いくつか違いもあります。
以下、主な違いをまとめました。
| 項目 | 虚偽告訴罪 | 虚構申告罪 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 刑法第172条 | 軽犯罪法第16号 |
| 対象行為 | 特定の人物に刑事罰・懲戒処分を受けさせる目的で、虚偽の犯罪事実を申告すること | 公務員に対し、犯人を特定せず虚偽の犯罪事実や災害を申告すること |
| 告訴・告発 | 必要 | 不要 |
| 他人に刑事処分や懲戒処分を受けさせようとする意図 | 必要 | 不要 |
| 法定刑 | 3ヵ月以上10年以下の拘禁 | 拘留または科料 |
虚構偽申告罪は虚偽告訴罪と違い、犯人は特定されず告訴・告発を必要としません。
また虚構申告罪は虚偽の犯罪事実だけでなく、災害の申告も対象です。
たとえば以下のようなケースは、虚偽告訴罪でなく虚構申告罪に問われる可能性があります。
ここでは、虚偽告訴罪のよくあるケースを紹介します。
痴漢や不同意わいせつ、セクシャルハラスメントなどの性被害を訴え、金銭を要求したり相手の気を引いたりするケースです。
たとえば、示談金の支払いを得ようとする意図から、痴漢行為を捏造し告訴することがあります。
この場合、虚偽告訴罪のほか詐欺罪・恐喝罪が成立する可能性もあります。
性犯罪は、満員電車などの人混みや、第三者の目が届かない密室などで発生することが多いので、無実を立証するのが極めて困難です。
また、被害者の証言が刑事手続上で重視される傾向があるため、虚偽の告訴がされやすい傾向があるといえます。
過去のトラブルや人間関係のもつれから、仕返しのために相手に濡れ衣を着せようとするケースもあります。
たとえば、交際相手との別れ話がこじれた結果、「暴力をふるわれた」などと警察に嘘の告訴をすることがあります。
証拠や目撃者の証言がなければ警察が動かない場合もありますが、個人的な感情を動機として虚偽の告訴がおこなわれると、結果として相手の名誉や社会的信用を大きく傷つける可能性があります。
ここから、実際に発生した虚偽申告罪の事例・判例を紹介します。
2008年8月、大阪地裁は虚偽告訴罪等で起訴された被告人(女性)に懲役3年・執行猶予5年の判決を下しました。
被告人は、示談金を得るため、共犯男性とあらかじめ役割分担を決めたうえで、痴漢に遭いやすい服装を装って電車に乗り込みました。
その後、車内で中年男性に接近し、互いの身体が接触するほどの位置に近づいたうえで、中年男性から身体を触られたと被害を訴えました。
共犯男性は駆けつけた警察官に対して「中年男性が、撫で回すように女性のお尻を触っていた」などと虚偽の申告をしました。
裁判所は、「警察官までをも欺き、本来、社会や市民の人権を守るための砦となるべき司法手続を、その金銭欲のためによこしまな方法で悪用しようとしたものであって、その卑劣な手段に酌量の余地はない」などと判示しました。
2024年5月、大阪地裁は虚偽告訴罪で起訴された被告人(20代女性)に懲役1年6ヵ月・保護観察付き執行猶予3年の判決を下しました。
被告人は、共犯者とともにマッチングアプリで高収入の男性を狙い、合意の上で関係を持った後、「睡眠薬を盛られたかもしれない」と 119番に虚偽の通報をしました。
その後被告人は警察にも被害を申告したうえで、男性に賠償金として3,000万円を要求したのです。
男性が支払いを拒むと、被告人は共犯者の指示に従い、脅され押さえつけられ強制的に性行為をさせられたとする虚偽の被害届を提出しました。
その後、共犯者はしつこく男性に接触を試み金銭を要求します。
しかし、男性がその際に録音した会話内容から虚偽告訴であることが発覚したのです。
被告人は、キャバクラ勤務時代の客だった共犯者に金に困っていると相談をしたところ、今回の犯行を提案されたという事情がありました。
また、背後に詐欺や脅迫を繰り返す犯罪グループが存在していたことも判明しました。
ここでは、虚偽告訴罪に関するよくある質問をまとめました。
似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで疑問を解消してください。
虚偽告訴による慰謝料の相場は、軽度な名誉毀損では数十万円、逮捕や報道があった場合や身体拘束により仕事を失った場合などは 100万円〜300万円以上になることもあります。
金額は被害の内容や影響の大きさによって左右します。
思い込みで被害届や告訴を出した場合は、基本的に虚偽告訴罪にはなりません。
虚偽告訴罪が成立するためには、事実に反する内容を故意に警察などの捜査機関に伝え、他人を刑事処分や懲戒処分に追い込もうとする目的が必要です。
そういった意図がなく思い込みで告訴したとしても、罪に問われることはありません。
ただし、実際には申告者が本当に故意でなかったか、立証するのは困難です。
そのため虚偽申告罪が問われるケースは少なくなっています。
虚偽の告訴によって、告訴された側は社会的信用を失うなどして深刻な影響を受ける可能性があります。
また警察や裁判所が、虚偽と知らずに告訴に対応することにより無駄な作業に時間を浪費されてしまうことにもなるのです。
虚偽の告訴をおこなった場合は、重い罪に問われる可能性も否定できません。
逮捕を回避したり罪を軽減したりするためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが強く推奨されます。
弁護士に相談・依頼すれば、依頼者の状況を踏まえ、逮捕の回避や刑罰の軽減に向けた法的な活動を行うことが期待できます。
弁護士検索サイトなどを活用すれば、刑事事件の取り扱いに注力している弁護士を探すことができます。
今後の人生に与える影響を最小限に抑えるためにも、早めに弁護士に相談しましょう。
窃盗で捕まってしまった場合、加害者はなるべく早く被害者と示談を成立させるべきです。
ただ、示談交渉をしたことがなければ、なぜ急ぐ必要があるかや示談金がどのくらいになるか疑問や不安を感じるでしょう。
本記事では窃盗事件で示談を成立させるべき理由や示談を成立させるまでの流れ、窃盗事件における示談金の相場、示談金をすぐに支払えない場合はどうすればいいかを解説します。
示談が早期に成立するか否かで、加害者への影響は大きく異なるものです。
本記事を読めば示談の重要性や流れを理解し、示談交渉を進めるうえでの準備に役立てることができます。
窃盗事件で示談を成立させるべき理由は、主に以下の4点です。
ここから、それぞれの理由を詳しく解説します。
示談が成立すれば、不起訴処分になる可能性が高まります。
検察官は、さまざまな事情を考慮して、窃盗事件を起訴するか否かを判断します。
その際に示談が成立していると、被害弁償がなされていること、犯人が反省していること、被害者が許していることなどを考慮し、不起訴の判断につながりやすくなります。
また、起訴されてしまった場合でも、示談が成立していれば、被害弁償がなされていること、被告人が反省していること、被害者が被告人を許していることが裁判でも考慮され、有利にはたらきます。
本来であれば拘禁刑が相当な事案でも、罰金刑になったり、執行猶予がついたりする可能性があります。
被害者と示談が成立しなければ、起訴される可能性が高くなります。
起訴された場合、日本の刑事裁判では95.5%という非常に高い確率で有罪判決が下されます。(※出典:令和6年度司法統計年報/最高裁判所)
前科があれば、執行猶予がつかず、実刑判決が下される可能性が高まります。
示談が成立すれば、逮捕や取調べを回避できる可能性が高まります。
窃盗をしても、被害者との示談が成立すれば、被害者が警察に被害届を提出しない可能性が高まります。
そうなれば事件が警察に認知されない可能性が低くなるのです。
警察が窃盗を認知しなければ、逮捕や取調べを受けることもなく、前歴もつきません。
たとえ逮捕されても、示談が成立すれば早期に釈放される可能性が高まります。
犯人を逮捕し身柄を拘束するのは、犯人に罪証隠滅や逃亡のおそれがあると考えられるためです。
示談が成立していれば、犯人が罪を認めて反省しており、罪証隠滅や逃亡のおそれがないと判断される傾向にあるので、早期釈放につながりやすくなります。
窃盗で逮捕され身柄を長期的に拘束されると、その期間は会社や学校などへ行けなくなります。
会社に逮捕された事実を隠していた場合、無断欠勤が続くことになり解雇される可能性が高まります。
また、就業規則のなかには、犯罪行為を行ったことを懲戒解雇の事由とする場合が多くあります。
学校の校則にもとづき、生徒・学生が逮捕されたことで退学処分とすることもあります。
このように窃盗で逮捕されると、さまざまな不利益が生じる可能性があります。
しかし示談が早期に成立し、逮捕や長期の身柄拘束が回避されれば、そういったリスクを避けられる可能性が高くなるのです。
窃盗事件での示談交渉は、以下の流れで進むのが一般的です。
ここから、それぞれ解説します。
まずは、被害者と連絡を取ります。
起訴され刑事裁判になれば有罪となる可能性が高くなるため、示談成立はできるだけ早期に実現すべきです。
そのため、なるべく早く被害者に連絡を試みることが推奨されます。
被害者の連絡先は、警察や検察といった捜査機関が把握しています。
ただし、加害者が被害者に直接連絡を取ろうとすると、相手が不安や恐怖を感じることが多いです。
加害者本人やその家族などが捜査機関へ被害者の連絡先の開示を求めても、被害者に拒否される可能性が高いでしょう。
そのため、加害者本人ではなく弁護士が捜査機関に連絡先の開示を求めるのが一般的です。
被害者が示談を拒否している場合でも、弁護士が間に入れば、示談に応じてくれるケースも多いです。
また、弁護士に相談すれば、相手の気持ちに配慮した丁寧な対応ができるうえ、条件交渉や示談書の作成まで一貫して任せられるため、示談が早くまとまりやすくなります。
被害者と連絡が取れたら、示談金の金額やその他の条件について交渉を開始します。
交渉では、加害者と被害者間で希望する金額に相違が生じることもあります。
被害者の気持ちを十分に考慮して、どこまで譲歩できるか検討しましょう。
また、交渉時は、被害者の気持ちを傷つけないように慎重に言葉を選ぶことも重要です。
示談成立までにかかる期間はケースにより異なりますが、早ければ1日〜2日程度で成立する場合もあります。
交渉がまとまれば、合意内容を文書にまとめた「示談書」を作成します。
示談書には、主に以下のような項目を記載します。
示談書の内容に従って、示談金を被害者に支払います。
支払いがなければ、示談そのものが無効になってしまったり、反省していないと評価されたりするおそれもあります。
支払期日までにきちんと全額を支払いましょう。
窃盗事件における示談金は、被害額に加えて以下の事情を考慮した金額となることが一般的です。
ただし、事案によって大きく異なるため、一律の相場は存在しません。
示談金は、以下にあげるような要因で高くなる可能性があります。
【被害の大きさ】
被害額が多いほど、示談金も高くなります。
【被害者の処罰感情】
被害者の処罰感情が大きいほど、相手と合意できる示談金額が高くなる傾向にあります。
【被害者の精神的苦痛の程度】
被害による精神的苦痛が大きければ大きいほど、慰謝料としての示談金も高くなる傾向があります。
【 加害者の社会的立場・経済力】
窃盗の加害者が公務員などの公共性が高い人物であれば、信用失墜の重さを反映して示談金が高額になる傾向があります。
また、加害者の経済力も考慮されます。
加害者の経済力が高い場合、少額の示談金では簡単に支払えてしまうので、相手の反省や謝罪を引き出すため示談金が高くなりやすいのです。
【加害者の前科の有無】
加害者に前科があると、再度罪をおかしたことで、刑罰が重くなってしまう可能性が高まります。
加害者が起訴や重い刑罰を避けるためには示談の成立がより重要となり、示談金額が高くなる傾向にあるのです。
たとえば、万引きのような比較的軽微な事案では、被害額だけを支払えば済むこともあります。
しかし、空き巣のような悪質な事案では、単に被害額を補償するだけでなく、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた金額を求められることがあるので、示談金は被害額よりも高額になる可能性が高いです。
一般的な相場よりも明らかに高額な示談金を被害者から請求された場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、さまざまな事情を踏まえ、そもそも示談金額が適正かどうか判断してくれます。
また、示談金が不相当な場合には、適正な金額で合意できるよう代理交渉をしてもらえます。
最初から不相当な金額を請求されないようにするためにも、示談交渉を開始する前の段階から弁護士に相談して、示談交渉を代理してもらうのがよいでしょう。
被害者との示談が成立しても「示談金が払えない…。」という悩みを抱える人も多いでしょう。
ここでは、示談金が払えそうにない場合の主な対処法を3つ解説します。
示談金を一度に支払うのが難しそうであれば、相手に分割払いを提案してみましょう。
示談金は一括払いが原則ですが、事情を正直に説明し、被害者の理解が得られれば、示談書に「毎月○円ずつ支払う」といった内容を加えることが可能です。
ただし、分割払いを認めてもらうためには、「必ず最後まで責任をもって支払う」という意思を示す必要があります。
毎月安定した収入があることを証明したり、保証人を立てたりするなど、継続して支払える根拠を示しましょう。
自分だけで支払うのが難しそうであれば、家族や友人に借りる方法も考えられます。
ただし、お金の貸し借りは信頼関係があってこそ成り立つものです。
無理にお願いすると関係が悪くなるおそれもあるため、事情をきちんと説明し、誠意をもってお願いしましょう。
どうしても費用が工面できない場合には、カードローンや金融機関からの借入れを検討するのもひとつの選択肢です。
消費者金融などに頼るのに不安を感じる人も多いでしょう。
ただ、示談金を支払わずに前科がついてしまうリスクを考えれば、一旦金融機関などからお金を借り、その後計画的に返済する方が結果的に良い選択になることもあります。
ただし、「闇金」など違法な金融業者に手を出すと、かえって問題が大きくなる危険があります。
借入れを考える場合は、必ず信頼できる業者を選びましょう。
また、利息負担や返済能力の検討も併せておこないましょう。
窃盗事件における示談交渉の成立は、検察官の判断において、不起訴処分となる可能性を高める重要な要素となり、また、起訴された場合でも裁判において有利に考慮されます。
ただ、加害者本人が被害者と直接示談交渉するのは現実的に難しいことが多くあります。
そのため、示談交渉は窃盗事件の対応実績が豊富な弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。
弁護士は、被害者とのやり取りや示談金の金額交渉などを進めて、適切な条項を盛り込んだ示談書を作成してくれます。
弁護士検索サイトなどを活用すれば、窃盗事件の解決に注力している弁護士を探すことができます。
窃盗事件を起こしてしまった場合は、ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談しましょう。
※本記事は2025年11月時点の法令に基づいて執筆されています。法改正により内容が変更される可能性があります。
街中で何気なく声をかけた相手から「警察に言うから!」と返され、驚きや不安を感じた経験はありませんか。
ナンパは気軽な出会いを求める行為ですが、その態度や言動によっては、相手に「怖い」「しつこい」と思われ、警察に通報されるケースも少なくありません。
実際に通報された場合、「本当に逮捕されるのか?」「前科がつく可能性はあるのか?」「どんな罪に問われるのか?」と不安に感じる方も多いはずです。
本記事では、ナンパで通報されることで問われる可能性のある罪の種類や、逮捕された場合に生じるリスクを丁寧に解説します。
さらに、通報されたときに取るべき正しい対処法や、弁護士に相談するメリットについても詳しく紹介します。
ナンパをきっかけに人生を大きく狂わせないためにも、法律上のリスクや正しい備えを知っておきましょう。
結論から言えば、「ナンパ=即違法」というわけではありません。
路上や駅前などで見知らぬ異性に声をかける行為自体は、法的に直ちに禁止されているものではなく、通常の会話の範囲であれば処罰の対象にはなりません。
しかし、相手の反応を無視してしつこく誘い続けたり、突然身体に触れたりする行為は、状況によっては警察に通報され、場合によっては現行犯逮捕に至る可能性があります。
たとえば、次のような行動は非常に危険です。
これらの行為は、相手に恐怖感や不快感を与えるものであり、たとえそのような意図がなかったとしても、相手が「怖い」と感じれば通報される理由になり得ます。
さらに最近では、「不審者情報」としてSNSや掲示板、自治体の防犯メールに投稿される事例も見られます。
そうなれば、警察による職務質問を受けるだけでなく、社会的信用の失墜にもつながりかねません。
ナンパ自体は違法ではありませんが、やり方次第では複数の刑罰法規に触れるおそれがあります。
以下では、実際にナンパ行為が警察に通報された際に、成立する可能性がある罪について具体的に解説します。
軽犯罪法第1条28号では、正当な理由なく「他人の進路に立ちふさがる」「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう」といった行為を禁止しています。
そして、ナンパを目的として何度も声をかけたり、無視されても立ちはだかって誘いを続けたりするのは、これらに該当するおそれのある行為です。
このような場合、「拘留(1日以上30日未満)」または「科料(1,000円以上1万円未満)」が科される可能性があります。
各都道府県が定める迷惑防止条例では、正当な理由なく人につきまとったり、執拗に誘ったりする行為を禁止しています。
ナンパの内容や態度が悪質であると判断されれば、この条例違反に該当することがあります。
たとえば、東京都の迷惑防止条例に基づく罰則は、以下のとおりです。
| 状況 | 法定刑(罰則) |
|---|---|
| 初犯 | 6月以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金 |
| 常習犯 | 1年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金 |
ナンパの際に「無視したら痛い目に遭うぞ」などと相手の身体等に害を加えることを告げた場合は、脅迫罪に該当するおそれがあります。
また、「話を聞け」「ついてこい」といった威圧的な命令口調だけでなく、腕を強くつかんだりする行為が伴った場合は、強要罪に問われる可能性があります。
脅迫罪・強要罪における法定刑は、それぞれ以下のとおりです。
| 罪名 | 法定刑 |
|---|---|
| 脅迫罪 | 2年以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金 |
| 強要罪 | 3年以下の拘禁刑(罰金刑の規定なし) |
言葉だけでも、相手が恐怖を感じた場合には脅迫罪が成立する可能性があります。
ナンパの場面で威圧的な態度をとることは、重大な法的リスクにつながるおそれがあると認識しておく必要があります。
ナンパがきっかけで性的な行為に及んだ場合、同意の有無や状況によっては非常に重い処罰が科されるおそれがあります。
具体的には、相手の明確な同意がない状態でわいせつな行為や性行為をした場合、令和5年の刑法改正によって新設された「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」が成立する可能性があります。
| 罪名 | 法定刑 |
|---|---|
| 不同意わいせつ罪 | 6ヵ月以上10年以下の拘禁刑 |
| 不同意性交等罪 | 5年以上の有期拘禁刑(罰金刑の規定なし) |
とくに「不同意性交等罪」は、法定刑が5年以上の拘禁刑であるため、法定刑を減刑するべき特別な事情がなければ執行猶予のない実刑判決となる重大な犯罪です。
仮に、相手が拒否していないと受け取れる状況であったとしても、飲酒や精神的な圧力下など、不同意の意思を形成又は表明することが困難な状況にさせたり、そのような状況に乗じてわいせつ行為や性交行為等を行った場合、これらの犯罪が成立する可能性があります。
また、相手が16歳未満の場合は、わいせつ行為や性交行為等に対して同意をする能力が十分でないとの観点から、形式的に同意があったとしてもこれらの犯罪が成立する可能性があります。
初対面の相手と関係を持つ際には、こうしたリスクを正しく理解しておきましょう。
ナンパした相手が18歳未満の未成年者だった場合、各都道府県が定める青少年健全育成条例に違反するおそれがあります。
とくに未成年に対する「みだらな行為」や16歳未満の青少年の「深夜の連れ回し」などは、条例によって明確に禁止されており、罰則も重くなるため注意しましょう。
以下は東京都の場合の、主な違反行為と法定刑です。
| 違反行為 | 法定刑 |
|---|---|
| みだらな行為 | 2年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金 |
| 深夜の連れ出し・同伴(23時〜翌4時) | 30万円以下の罰金 |
なお、「みだらな行為」には性的接触、性交などが含まれ、たとえ本人の同意があっても処罰対象となります。
また、青少年が16歳未満の場合、保護者の同意や正当な理由なく、深夜帯に連れ出しただけでも条例違反となるため、軽率な行動は厳禁です。
未成年かどうか見た目で判断することは極めて危険であり、トラブルに発展すれば逮捕・実名報道・社会的信用の喪失という重大な結果を招きかねません。
ナンパが原因で警察に通報され、逮捕にまで至ってしまった場合、その後の人生に大きな影響を及ぼす深刻なリスクが伴います。
ここでは、逮捕後に想定される代表的なリスクを4つに分けて解説します。
警察に逮捕されると、最大72時間は警察署の留置場に拘束されます。
その後、検察官が勾留を請求し、裁判所が認めた場合は10日間の勾留、最大で10日間の延長が可能です。
つまり、起訴されていなくても最大23日間、社会から隔離された状態になるということです。
この間は職場や学校に行くこともできず、直接連絡ができないまま長期間拘束されることになります。
長期間の勾留による無断欠勤や、ナンパをきっかけとした事件報道により、勤務先に事件が発覚するケースは少なくありません。
そして、たとえ刑事責任が確定していなくても、就業規則に抵触したことを理由に懲戒解雇や内定取消などの処分が下される可能性はゼロではありません。
学生の場合も同様で、事件関与を理由に退学処分を受ける例もあります。
とくに、未成年者への性犯罪が疑われるケースでは、校内外からの非難が集中し、復学が事実上困難になることも考えられます。
ナンパがエスカレートして性犯罪や未成年者への条例違反に該当した場合、実名報道される可能性もあります。
もしも報道された場合、自身の名前や写真がインターネット上に半永久的に残ることになり、就職活動や再就職の妨げになるばかりか、家族や知人の生活にも悪影響を及ぼします。
不同意性交等罪や青少年健全育成条例違反などは世間の注目を集めやすく、報道されるリスクが高い犯罪であることを認識すべきでしょう。
起訴されて有罪が確定すると、軽微な罰でも「前科」がつきます。
前科は企業の採用や資格取得・更新において不利に働くことが多く、社会復帰にあたって大きなハンデとなります。
また、前科の有無を理由に渡航先から入国を拒否されるケースもあり、今後の人生への影響ははかり知れません。
もしナンパが原因で通報され、警察に事情を聴かれた場合、その場の対応を誤ると、逮捕・勾留・起訴といった深刻な事態に発展するおそれがあります。
ここでは、トラブルを最小限に抑えるための3つのポイントを紹介します。
現場に警察が来た場合、まずは冷静に対応し、事実関係について正直に説明することが重要です。
「ナンパをしていた事実」があっても、違法行為に該当しない内容であれば、その点を丁寧に説明すれば逮捕されずに済む可能性は十分あります。
一方で、事実と異なる説明をしたり、逃げようとしたりすると、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれが高いと判断され、現行犯逮捕されるリスクが高まります。
警察官の指示には素直に従い、不用意に相手の悪口を言ったり、感情的に反論したりしないよう注意しましょう。
逮捕後に警察署や検察庁で取り調べを受けると、「供述調書」が作成されます。
この調書は、後の刑事裁判で重要な証拠資料となるため、内容に誤りがあればそのまま不利な証拠として扱われるおそれがあります。
調書に署名・捺印する前には、必ず全文を読み、事実と異なる点があれば訂正を求めるようにしましょう。
警察や検察が訂正を認めず、そのまま署名を促してきた場合には、「弁護士に相談してから署名したい」と伝えるべきです。
ナンパした相手が「警察を呼ぶ」と言ったことでトラブルに発展しそうな場合、弁護士への早期相談を検討することをおすすめします。
なぜなら、トラブルの初期段階で適切な法的アドバイスを受けることで、不要な誤解や不当な処分を避けられる可能性があるからです。
とくに、性犯罪や未成年関係の通報が疑われる場合は、自己判断で行動することのリスクが高いので、弁護士の判断を仰ぐのが賢明です。
また、万が一逮捕された場合でも、弁護士に速やかに連絡することで、釈放の交渉や今後の対応を任せることができます。
ナンパに関するトラブルが発生し、警察への通報や逮捕にまで至った場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
ここでは、弁護士に依頼することで得られる代表的なメリットを5つ紹介します。
逮捕された場合、自分の意思で誰かに連絡することはできませんが、弁護士だけは留置場に接見(面会)することが認められています。
逮捕から早期に接見を受けることで、黙秘権や供述の注意点などをその場でアドバイスしてもらえるため、不利な供述や不用意な署名を避けることが可能です。
弁護士は、勾留決定や勾留延長決定に対して裁判所に「準抗告」をするなど異議を申し立て、早期釈放のための法的手続きをおこなうことができます。
もし逮捕後に長期勾留されると、会社や学校に大きな影響を及ぼすことになりかねません。
しかし、弁護士が迅速に動けば、これを未然に防げる可能性があります。
弁護士は、逮捕や事件によって生じる社会的な信用の失墜や経済的ダメージを最小限にとどめるための対応もおこないます。
たとえば、勾留中に無断欠勤が続くことで懲戒解雇や退学処分が検討されているような場合、弁護士が会社や学校と連絡を取り、本人の状況や反省の意思を説明することによって、処分を思いとどまってもらえる可能性があります。
場合によっては、被害者や関係者との橋渡し役となって誠意ある対応をサポートし、被害者感情の軟化や和解への道筋をつけることも可能です。
逮捕・勾留された場合でも、必ずしも起訴されるとは限りません。
弁護士が被害者との示談交渉を成立させたり、検察官に対して不起訴処分を求める意見書を提出したりすることで、起訴を回避できる可能性があります。
とくに初犯や軽微な事案であれば、弁護士の活動次第で「不起訴=前科なし」の結果を導けるケースも少なくありません。
突然の通報や逮捕という非日常的な状況の中で、弁護士という頼れる存在がいること自体が大きな安心につながるのもメリットです。
弁護士は法律の専門家として、冷静かつ現実的なアドバイスを提供し、本人や家族の不安を和らげてくれます。
感情的に混乱してしまいがちな場面でも、法的視点から最善の選択肢を提示してくれるので、早めに依頼するのがよいでしょう。
ナンパで通報されると、状況によっては軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反等さまざまな犯罪に問われる可能性があり、場合によっては逮捕・勾留・前科といった深刻な結果を招くおそれがあります。
また、不用意な言動が誤解を招き、刑事事件に発展するケースもあります。
そうした事態を避けるためにも、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
弁護士であれば、警察対応のアドバイスや、被害者との示談交渉、会社や学校への対応などを幅広く支援してくれます。
とくに初めて警察の取調べを受ける場合、自分だけで状況を判断するのは難しく、対応を誤れば不利な結果を招く可能性もあります。
弁護士は、そうしたリスクを回避するための実務的なサポートを提供してくれる存在です。
通報された際は、一人で抱え込まず、落ち着いて弁護士に相談することをおすすめします。
※本記事は2025年11月時点の法令に基づいて執筆されています。法改正により内容が変更される可能性があります。
不倫によって望まない子どもの妊娠がわかった場合、このように悩んでしまう方は多いでしょう。
産むべきなのか中絶すべきなのか、中絶するならいくらかかるのかなど、金銭面の不安にも頭を悩ませているはずです。
この記事では、不倫相手の妊娠が発覚時にとるべき行動や中絶費用、慰謝料の相場などについて解説します。
妊娠は、女性の精神的・身体的負担も大きいものです。
不誠実な対応は、後の大きなトラブルにもつながるかもしれません。
不倫相手とどう向き合い、どんな選択すればよいか、この記事を読んで参考にしてみてください。
不倫相手に妊娠の事実を告げられたら、焦る気持ちもよくわかります。
しかし、大切なのは冷静な行動です。
まず始めに、不倫中の妊娠が発覚した場合にすぐやるべきことについて解説します。
不倫相手の妊娠がわかったら、まずは病院に行って本当に妊娠しているのか確認しましょう。
市販の妊娠検査薬の精度は、99%といわれています。
しかし、投薬やホルモンバランスの乱れなどによって、妊娠していないのに陽性反応が出る可能性もゼロではありません。
妊娠を確定させるには、医師による診断が必要です。
本当に妊娠しているのか、まずは必ず受診して確かめましょう。
妊娠が確定したら、子どもを出産するか中絶するか不倫相手と話し合いましょう。
中絶ができるのは、母体保護法により妊娠22週未満までと決まっています。
妊娠6ヵ月程度の期間までには判断を下さなければならないので、時間的な余裕はありません。
妊娠の週数は最終月経日から計算する方法や、超音波検査で調べる方法があります。
確実な時期を知るためには、病院での検査が必要です。
また中絶するなら、妊娠中期より初期のほうが母体への負担も小さいといわれています。
決断するなら、早いほうがよいかもしれません。
不倫相手の妊娠がわかった場合、配偶者との今後の関係についても検討する必要があります。
不倫をした側は、婚姻関係を破綻させた有責配偶者になります。
裁判に発展した場合、有責配偶者からの離婚請求は一般的に認められにくいでしょう。
離婚したいなら配偶者と話し合いで解決するか、長期間の別居など婚姻関係が破綻しているという事実が必要です。
そして、婚姻関係を継続するにしても、配偶者と正直に話し合うべきです。
関係修復に向けてあなた自身が反省し、努力しなければなりません。
ここからは、子どもの中絶に関して知っておくべきことを解説します。
妊娠22週を過ぎると、人工妊娠中絶を受けられなくなります。
中絶できる期間は、母体保護法により妊娠22週未満までと決まっているからです。
この期間を過ぎてしまうと、中絶手術は受けられません。
中絶は、母体に非常に大きな負担がかかります。
そして、中絶を女性に強制することもできません。
もし中絶を希望する場合は、誠実に話し合い、お互いが納得したうえで手術に踏み切りましょう。
不倫相手が妊娠した場合、中絶費用は折半、または男性が多く負担するケースが一般的です。
中絶手術は自費診療で、10万円~50万円の費用がかかります。
妊娠初期であれば10万円~20万、中期になると30万円~50万程度が相場です。
また、妊娠中期の中絶は母体への負担も大きく、入院を伴います。
出産の設備が整っている病院でないと対応できないため、手術を受けられる施設も限られるでしょう。
妊娠初期、中期いずれにしても、中絶に伴う女性の負担はかなりのものです。
相手のことを考えて、男性は費用を多めに負担することを検討しましょう。
もし不倫相手が出産するなら、子どもを認知するかどうかも考えなければなりません。
ここからは、子どもの認知に関して知っておくべきことを男女別に解説します。
男性が子どもを認知した場合、養育費や相続など法的な問題が発生します。
まずは、不倫をした男性が知っておくべき3つのポイントを見ていきましょう。
認知した父親は、子どもに対して養育費を支払う義務が発生します。
そもそも認知とは、婚姻関係のない男女のもとに生まれた子ども(非嫡出子)を、男性が自身の子だと法的に認める手続きのことです。
認知すれば、子どもと男性は正式に親子となり、養育費の支払い義務が生じます。
養育費は、相手と自分の収入や子どもの数によって変わりますが、金額で悩んだ場合は弁護士へ相談しましょう。
認知された子どもは、父親の財産を相続する権利を得ることになります。
たとえ子どもと一緒に暮らしていなくても、会ったことがなくても、認知すれば法的には親子です。
そのため、非嫡出子でも妻子と同様、相続人のひとりとなるため、財産を相続する権利があります。
しかし、妻子と非嫡出子の面識がないことも考えられます。
たとえ非嫡出子の存在を知っていても、関係性が良好なケースはまれでしょう。
そのため、相続発生時に揉める可能性が高いです。
認知すると、戸籍上も父子関係が明らかになります。
非嫡出子を認知したからといって、父の戸籍謄本にその子どもが記載されるわけではありません。
しかし、父の現在戸籍の身分事項に「認知」の欄が追加され、「いつ、誰を認知したのか」は記載されます。
戸籍を見れば認知の事実は明らかなので、妻子に隠し通すのは難しいでしょう。
ただし、本籍地を変えたり、改製によって新たに戸籍が作られたりした場合は、新戸籍に認知の事実は載りません。
とはいえ、過去の戸籍の記載は消えないので、遡ればわかってしまいます。
不倫・妊娠した女性は、不倫相手に子どもを認知してもらいたいと考えるでしょう。
ここからは、子どもを認知してもらう際に女性が知っておくべき2つのポイントを解説します。
あなたが女性かつ既婚者で、不倫相手に子どもの認知を求めるなら、自身の配偶者による「嫡出否認の訴え」が必要です。
なぜなら、夫と婚姻中に生まれた子どもや、離婚後300日以内に生まれた子どもは、戸籍の記載が「夫の子」になる可能性があるからです。
嫡出否認の訴えの手続きが終わり、夫と不倫相手の子の親子関係が消滅したあとに、不倫相手に対して認知を求めることになります。
もし不倫相手が認知を拒んでも、強制的に子どもを認知させることが可能です。
ただし、強制認知をするには、裁判所に認知調停の申立てが必要です。
妊娠中及び出産後、いずれのタイミングでも申立てできますが、自分一人でおこなうのは難しいので、弁護士と相談しながら進めましょう。
相手方が親子関係を認めたら、裁判所が合意に相当する審判を出します。
相手方が認めない場合には、認知の訴えを出し、その中で親子関係が認められたら、裁判所が判決を出します。
認知の訴えでは、親子関係を証明するためにDNA鑑定を求められることもあります。
鑑定費用はおよそ10万円で、基本的には折半もしくは原告の負担になるのが通常です。
審判書または判決書と共に、役所へ認知届を提出しましょう。
不倫中の妊娠をきっかけに、配偶者や不倫相手から慰謝料請求されるケースもあります。
具体的にどのような慰謝料が発生するのか詳しく見ていきましょう。
1つは、不貞行為にともなう慰謝料です。
配偶者に自身の不貞行為がバレた場合、配偶者から不貞行為についての慰謝料を請求されるかもしれません。
慰謝料の相場は50万円~300万円程度で、婚姻期間の長さや離婚するかどうか、不貞行為の悪質性などによって金額が変わります。
特に不倫相手が妊娠した場合は、妻が受ける苦痛は大きいとされ、慰謝料は高額になるでしょう。
2つ目は、中絶にともなう慰謝料です。
不倫による妊娠は、男女双方に責任があります。
そのため中絶したからといって、基本的には慰謝料を支払う義務はありません。
しかし、男性が不誠実な態度をとった場合は不法行為とみなされ、不倫相手から慰謝料を請求される可能性があります。
たとえば、不倫相手の妊娠が発覚したのに話し合いに応じなかったり、中絶を強要したりといったケースです。
お互い合意のうえでの妊娠・中絶であれば、どちらか一方が悪いとはいえません。
しかし、男性は女性の心情や体調に配慮し、誠実な対応を心がけるべきです。
最後に、不倫中の妊娠が発覚した場合の注意点を紹介します。
不倫相手を妊娠させた事実は、できることなら配偶者に隠したいと思うのではないでしょうか。
実際のところ、正直に話すべきかどうかは、男女によっても少し異なります。
以下で詳しく見ていきましょう。
不倫をした男性の場合は、妻に正直に伝えて謝罪して今後のことを話し合いましょう。
不倫相手が子どもを生んだ場合、その子どもを認知すれば戸籍に記載されます。
また、中絶したとしても不倫相手から慰謝料請求されたら、妻にバレるかもしれません。
いずれにせよ一生隠し通すのは難しいので、なるべく早めに打ち明けたほうがよいでしょう。
不倫しただけでなく妊娠までさせたとわかれば、妻のショックは計り知れません。
自身が離婚したくなくても、妻から離婚を言い渡される可能性もあります。
婚姻関係の継続は難しいかもしれませんが、自身の落ち度を認めて誠実に謝罪することが大切です。
不倫・妊娠をした女性の場合、不倫や妊娠の事実を夫に必ず伝えなければならないわけではありません。
中絶するなら、手術が終わるまで隠し通すことも可能です。
妊娠の事実を夫に知られぬまま、結婚生活を続けられるでしょう。
しかし、もし出産することになれば、隠し通すのは困難です。
たとえ夫の子だと偽って出産したとしても、子どもの成長に伴って夫の子どもではないことがバレるかもしれません。
あとから事実が発覚すれば、大きな問題になります。
出産するなら、夫に正直に話すべきでしょう。
「不倫相手が妊娠した」という事実を受け入れたくない方もいるかもしれませんが、問題を先送りにするのはNGです。
男性の場合、話し合いに応じず逃げてしまえば不誠実な態度をとったとみなされ、後の交渉や裁判で、不利になるかもしれません。
そして中絶可能な期間は決まっているので、先送りにすると取れる選択肢が無くなります。
女性の身体的な負担を考えても、中絶手術は早いほうがよいでしょう。
出産するにしても中絶するにしても、決断を先送りにするメリットはありません。
お互いに事実を受け入れて、早めに話し合いましょう。
不倫相手の女性に対して、誠意のない言動や要求はNGです。
出産して欲しくないからといって、中絶を強要したり脅したりする行為は、女性を深く傷つけます。
また、本当に自分の子どもか疑う発言も控えるべきです。
このような誠意のない言動に女性は失望し、怒りのあまりに高額な慰謝料を請求する可能性もあります。
自身の言動によって深刻な事態を引き起こさないためにも、女性を尊重し、誠実に向き合いましょう。
不倫相手の妊娠が発覚したらまず取るべき行動は、以下の3つです。
また、中絶費用は10万円~50万円程度で、妊娠初期か中期かによっても費用は変わります。
費用は男女で折半か、女性の負担を考えて男性が多めに支払うのが一般的です。
不倫の末に妊娠した場合、子どもの認知や養育費、配偶者や不倫相手からの慰謝料請求など、さまざまな法的問題が発生する可能性があります。
そのため、ひとりで悩むのではなく、弁護士への相談がおすすめです。
DV(ドメスティックバイオレンス)は、もはや家庭内の問題として見過ごされる時代ではありません。
令和5年の統計(出典:「令和6年版 犯罪白書 第4編/第6章/第2節 配偶者からの暴力に係る犯罪」)によれば、配偶者暴力防止法の保護命令違反による検挙件数は49件と、10年前(2013年:110件)から半数以下に減少した一方、配偶者からの暴力事案等に関連する事件の検挙件数は8,636件と、10年前(4,300件)の約2倍に増加しています。
このように、DVは今や刑事事件として厳しく対処される傾向にあり、通報をきっかけに逮捕されるリスクも低くありません。
本記事では、DVで通報された場合に起こり得る「逮捕の有無」「適用される罪」「逮捕後の流れ」などをわかりやすく解説します。
さらに、保護命令のリスクや、逮捕・起訴が与える社会的影響、早期に弁護士へ相談することの重要性についても詳しく紹介していきます。
DVは、夫婦間や交際関係にある者同士の問題であることから、「民事上の争い」と捉えられがちです。
しかし、暴力や脅迫といった行為が伴えば、それは刑法上の犯罪として扱われます。
かつては「民事不介入」の原則が強調され、家庭内の暴力には警察が積極的に介入しないケースもありました。
しかし近年では、DVによる被害の深刻さが社会問題として広く認識され、警察も積極的に捜査や逮捕をおこなうようになっています。
DVの被害を受けた側が110番通報し、警察がその場に急行した場合、状況によっては加害者がその場で逮捕されることも十分にあり得るのです。
また、通報を受けたあとに被害届が提出されると、捜査を経て後日逮捕されることもあります。
通報があっただけではすぐに逮捕されるとは限りませんが、警察が暴行や脅迫などの事実を確認すれば、被害者の安全確保を最優先に判断し、身柄を拘束する対応をとるのが一般的です。
さらに、DVは再犯性が高く、被害者にとって生命・身体への危険が続く可能性があると判断された場合には、捜査機関も迅速かつ厳格な措置を講じます。
そのため、DVで通報された際には逮捕・勾留される可能性があると考えておくべきです。
DVで通報されて逮捕されるケースには、主に以下2つがあります。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
「通常逮捕」とは、裁判所が発付した逮捕状に基づいておこなわれる逮捕のことです。
通常逮捕の場合、被害者からの被害届や警察への相談をきっかけに、警察が加害者の暴力行為について証拠を集めたうえで、検察官又は一定階級以上の警察官が裁判所に逮捕状を請求します。
そして、逮捕状が発付されたあと、警察は加害者の自宅や職場などを訪れ、正式な手続きを経て逮捕をおこないます。
つまり、DVを受けている片方の配偶者が警察に相談すると、ある日突然警察が家にやってきて、逮捕されるという可能性があるのです。
なお、このようにDVの犯行から時間が経ってから逮捕されることを一般的に「後日逮捕」ということがあります。
「現行犯逮捕」とは、犯罪の最中、または直後にその場で逮捕する方法です。
たとえば、DVがおこなわれている最中に110番通報があり、警察が駆けつけたときに加害者が暴行や脅迫行為を続けていた場合には、その場で逮捕されることになります。
現行犯逮捕の場合、裁判所の逮捕状は不要です。
犯罪がおこなわれている事実が明らかであるため、警察官の判断で直ちに加害者を拘束することが認められています。
DVは、行為の内容に応じて複数の刑法に該当する犯罪と認定される可能性があります。
実際には、暴行や傷害にとどまらず、脅迫や強要、強制わいせつといった罪に問われることもあります。
以下に、DVにおいて適用されるおそれのある代表的な罪名とその概要、法定刑をまとめました。
| 罪名 | 概要 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 傷害罪 | 暴行により、打撲・出血・骨折など、生理的機能に障害を侵害した場合等に成立します。 | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 暴行罪 | 人の身体に対する有形力の行使があった場合に成立します。身体的接触があるもののけがに至らなかった場合や、身体的接触がない場合でも傷害の危険がある行為に成立します。 | 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または拘留・科料 |
| 不同意わいせつ罪 | 暴力や脅迫等によって、同意のないわいせつ行為をした場合に成立します。 | 6か月以上10年以下の拘禁刑 |
| 不同意性交等罪 | 同意のない性交等をした場合に成立します。婚姻関係の有無は問いません。 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 殺人罪 | 被害者を死亡させ、かつ殺意があった場合に成立します。 | 死刑、無期拘禁刑、または5年以上の拘禁刑 |
| 傷害致死罪 | 暴行の結果として相手が死亡した場合で、殺意がなかったときに成立します。 | 3年以上の有期拘禁刑 |
| 脅迫罪 | 「殺すぞ」など、生命・身体などに害を加えると告知し脅した場合に成立します。 | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 強要罪 | 暴行や脅迫によって相手に義務のない行為を強制した場合に成立します。 | 3年以下の拘禁刑 |
| 器物損壊罪 | 故意に物(家具・スマートフォン・ペットなど)を壊した場合に成立します。親告罪です。 | 3年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金または科料 |
| DV防止法違反 | 裁判所の保護命令に違反した場合に成立します。接近禁止や退去命令の違反行為が対象です。 | 2年以下の拘禁刑または200万以下の罰金 |
上記のとおり、DVは、暴行や傷害にとどまらず、脅迫罪や不同意性交等罪、殺人罪など重大な刑事事件に発展するおそれがあります。
行為の内容によっては複数の罪が同時に成立し、逮捕や起訴後に重い刑罰が科される可能性もあるため、決して軽視できるものではありません。
とくに、婚姻関係の有無にかかわらず、「同意のない性行為」や「保護命令違反」などは近年厳罰化が進んでおり、社会的影響も大きくなっています。
DVで通報され、加害者が逮捕された場合、法律に基づいて迅速かつ厳格に手続きが進められます。
以下では、逮捕後から裁判に至るまでの主な流れを、時系列に沿って解説します。
DVの現場で現行犯逮捕された場合、または通常逮捕された場合、加害者(被疑者)は警察署に留置され、刑事事件としての取り調べを受けることになります。
警察は逮捕後、最大48時間以内に検察へ送致するか、釈放するかを決定しなければなりません。
DV事案では、被害者保護の観点から送致されるケースが多く、48時間以内に検察へ事件が送致されるのが一般的です。
警察から事件を受け取った検察官は、24時間以内に「勾留請求」するか、「釈放」するかを判断します。
勾留請求とは、被疑者をさらに10日間(延長で最大20日間)拘束し、捜査を継続するための裁判所への申立てのことです。
DV事件では、再犯や証拠隠滅のおそれがあると判断されることが多く、実際に勾留が認められる事例が多数を占めます。
逮捕から最大23日以内に、検察官は被疑者を「起訴」するか「不起訴」にするかを判断します。
起訴された場合は刑事裁判にかけられ、有罪となれば刑罰が科されます。
一方、示談が成立していたり、初犯で反省が見られたりする場合には、不起訴処分となる可能性もゼロではありません。
不起訴となれば前科は付かず、身柄もすぐに解放されます。
罰金刑が相当と判断された場合は被疑者の同意を得て略式起訴されることもあります。
その場合、正式な裁判は省略され、書類審査で罰金刑が科されます。
他方、検察官が拘禁刑が相当と判断した場合や被疑者が犯罪事実を争う場合は、起訴され正式な裁判が行われることとなります。
起訴後はおおよそ1ヵ月ほどで第1回公判期日(裁判)が開かれ、裁判所が書証や証言などの証拠をもとに有罪・無罪、量刑の判断を下します。
公判の回数や期間は事案の内容によって異なりますが、公訴事実の存否を争う場合や、不同意性交等罪など重大犯罪の場合などは、複数回の審理を要することが一般的です。
DVで加害者が逮捕された場合、刑事手続とは別に、被害者の申立てにより裁判所から「保護命令」が出されることがあります。
保護命令とは、被害者の生命や身体を守るために、加害者に対して接近禁止や住居からの退去などを命じる制度です。
命令の種類としては、以下のようなものがあります。
なお、保護命令が出たあとにその命令に違反した場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という刑罰が科される可能性もあります。
DVで通報された場合、その影響は刑事処分にとどまりません。
加害者本人の仕事や家庭、人間関係、社会的信用にも深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。
まず、逮捕・勾留されると、外部との連絡が制限され、職場への欠勤連絡は弁護士や親族を介してになります。
そして、逮捕・勾留によって長期間の無断欠勤が続けば、会社に事件が発覚し、懲戒処分や解雇につながるリスクが高まります。
とくに、勾留されたまま起訴された場合には、裁判が終了するまで数か月にわたって身柄拘束が続く可能性があり、事実上退職せざるを得ない状況になる可能性があります。
また、家庭においても、DVは離婚原因として認められるため、配偶者から離婚を申し立てられるケースが非常に多く見られます。
加害者が有罪判決を受けた場合は、親権を得ることも難しく、家族関係が断絶するケースも少なくありません。
さらに、DVによる逮捕や有罪判決が周囲に知られると、社会的信用を著しく損ないます。
近隣住民や友人、職場関係者からの信頼を失い、社会的孤立に陥るおそれもあるでしょう。
なお、有罪となれば前科が付き、再就職や海外渡航、国家資格の取得などにも制限が生じるおそれがあります。
DVで通報された場合、逮捕・起訴といった重大な事態に発展するおそれがあります。
こうした状況で不利益を最小限に抑えるためには、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
以下では、その主な理由を4つの観点から解説します。
弁護士が早期に介入することで、被害者との間で謝罪や示談の機会が持てるようになり、被害届や刑事告訴を取り下げてもらえる可能性が高まります。
たとえば、逮捕前の段階で誠意ある対応ができれば、警察による捜査開始や逮捕自体を回避できる可能性もあるでしょう。
刑事事件化が防げれば、前科もつかず、仕事や家庭への影響を最小限にとどめることが可能です。
弁護士は逮捕直後に本人と接見し、状況を把握したうえで、勾留を避けるよう検察や裁判所に働きかけます。
たとえば、示談の進行状況や被害者の処罰感情の有無などを根拠に「逃亡や証拠隠滅のおそれはない」と主張することで、身柄拘束を防ぐことが可能な場合もあります。
また、すでに刑事告訴がされている場合でも、示談が成立すれば釈放や勾留延長の回避が見込まれます。
被害届の取り下げや告訴取消書の提出も、弁護士が適切に交渉することで実現しやすくなるでしょう。
弁護士が被害者と交渉して示談を成立させることで、検察官に「社会的制裁は十分」「処罰感情がない」と判断され、不起訴が選択される可能性が高まります。
不起訴になれば刑事裁判はおこなわれず、前科も付きません。
とくに犯行態様が軽微である場合や、初犯で反省の態度が見られる場合、被害者が起訴までは望んでいないと判断される場合などには、弁護士の弁護活動が決定的に作用します。
万が一起訴されてしまった場合でも、弁護士による弁護活動によって量刑が軽くなることがあります。
たとえば、執行猶予付きの判決や罰金刑にとどまる可能性があり、実刑(刑務所収監)を回避できるケースも少なくありません。
また、再発防止に向けた加害者更生プログラムへの参加、医療機関での治療受診など、再犯リスクの低さを示す行動は、裁判所にとって情状酌量の材料となります。
こうした取り組みを的確に裁判官に伝えるのも、弁護士の役割です。
DVは、たとえ家庭内の出来事であっても、警察に通報されれば重大な刑事事件として取り扱われます。
DVによって逮捕や起訴に至ると、身柄の拘束、前科のリスク、社会的信用の喪失、家庭や職場での立場の喪失など、人生に大きな影響を及ぼしかねません。
一方で、適切な法的対応を講じることで、事態の深刻化を防ぐことは可能です。
早い段階で弁護士に相談し、示談や再発防止策に真摯に取り組めば、不起訴処分を得られる可能性もあり、身柄拘束の回避や刑の減軽にもつながります。
DVの加害者となってしまった方にとって、最大の味方となるのは弁護士です。
ご家族や職場の支援を得ることが難しい中で、冷静に事実関係を整理し、今後どう立て直していくかを一緒に考えてくれる存在です。
DVをしてしまった事実に向き合い、更生を目指すためにも、まずは信頼できる弁護士に速やかに相談することをおすすめします。
事件を一日でも早く収束させ、自分自身の人生を立て直すための第一歩を、専門家の力を借りて踏み出しましょう。
結婚を考え、幸せな未来を描いていた矢先、相手に結婚前の借金があることがわかったら不安と混乱でいっぱいになるのは当然のことです。
原則、パートナーが結婚前に作った借金について、配偶者となる方が返済をしなければいけない義務はありません。
しかし、パートナーの借金の保証人になっている場合には支払い義務がある場合もあります。
そこで本記事では、結婚前の借金の支払い義務や配偶者が支払わなければならないケース、離婚事由になるかなど詳しく解説します。
本記事を最後まで読めば、あなたが法的にどのような立場にあり、今後どのような選択肢があるのか、そしてどう行動すればよいのかが明確になります。
パートナーが結婚前に作った借金は、原則として配偶者に支払い義務はありません。
その理由について、以下で詳しく見ていきましょう。
法律の基本的な考え方として、借金の返済義務はお金を借りる契約をした本人(債務者)にのみあります。
たとえ夫婦であっても、一方が結婚前に個人的に作った借金を、もう一方が返済する法的な義務は一切ありません。
例えば、相手が学生時代に借りた奨学金や、独身時代に趣味のために作ったカードローンなどは、全て相手個人の借金となります。
夫婦の財産には、個人のものである「特有財産」と、夫婦で協力して築いた「共有財産」の2種類があります。
例えば、離婚時の財産分与では「共有財産」を分け合うことになりますが、「特有財産」は分与の対象になりません。
そして、相手が結婚前に作った借金は、離婚する際にあなたが返済を求められることもありません。
結婚前にパートナーが借りたお金について、配偶者が返済する義務はありません。
しかし、以下のようなケースでは、配偶者が相手の借金を支払わなければならなくなる可能性があるので注意が必要です。
保証人とは、「本人が返済できなくなった場合に、代わりに返済します」と約束する人のことです。
そのため、配偶者が保証人になる契約書にサインをしていれば、たとえ結婚相手の借金であっても、法的な返済義務を負うことになります。
これは夫婦だからという理由ではなく、配偶者自身が「保証人」として契約しているためです。
日常家事債務とは、夫婦が共同生活を送るうえで必要となる、日常的な買い物や契約から生じた借金のことです。
例えば、毎日の食費や光熱費、家賃、子どもの学費などのために借金をした場合が該当します。
このような日常家事に関する借金は、夫婦が連帯して責任を負うべきだと法律で定められています。
たとえ契約したのが夫婦のどちらか一方であっても、もう一方も返済義務を負うのです。
結婚前の借金であっても、その使い道が結婚後の生活費や、二人で使う家具・家電の購入費用などに充てられていた場合、「日常家事債務」と判断され、あなたにも返済義務が生じる可能性があるでしょう。
もし、万が一相手が亡くなってしまった場合、借金は「相続」の対象になります。
相続というと、預貯金や不動産といったプラスの財産を受け継ぐイメージが強いかもしれません。
しかし、実際には借金などのマイナスの財産も全て引き継ぐことになります。
つまり、相手が亡くなった場合、あなたが相続人であれば、相手の借金もあなたが返済していかなければならないのです。
ただし、これには対処法があります。
プラスの財産よりも明らかに借金のほうが多い場合は、「相続放棄」という手続きをおこなうことで、相続そのものを回避可能です。
相続放棄をすれば、プラスの財産を一切受け取れなくなる代わりに、借金を返済する義務もなくなります。
ただし、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」に手続きをする必要があるので注意しましょう。
パートナーに借金があることがわかったとき、「このまま結婚生活を続けていけるだろうか…」と離婚が頭をよぎる方もいるでしょう。
では、相手の借金は法的に離婚の理由として認められるのでしょうか。
以下で詳しく見ていきましょう。
借金を理由として離婚は、協議離婚・調停離婚であれば可能です。
協議離婚は、夫婦が話し合い、お互いに「離婚しよう」と合意することで成立するため、合意さえできれば離婚の理由は何でも構いません。
相手の借金が原因で「もう一緒にいられない」とあなたが思い、相手もそれに同意すれば、理由を問わず離婚届を役所に提出するだけで離婚が成立します。
もし話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「調停」を申し立てます。
調停は、調停委員という中立な第三者を交えて話し合い、合意を目指す手続きです。
調停でも、最終的にお互いが合意すれば離婚が可能です。
話し合いでも調停でも合意に至らない場合、最終的には「裁判」で離婚を争うことになります。
しかし、裁判で離婚するためには、法律で定められた5つの「法定離婚事由」のいずれかに当てはまる必要があります。
相手に借金があること自体は、この5つのどれにも直接は当てはまりません。
しかし、借金が原因で夫婦関係が破綻してしまった場合には、5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
例えば、以下のようなケースです。
単に「借金がある」という事実だけでは裁判離婚は難しいものの、それが原因で「夫婦としての生活を続けるのが困難なほど、関係が破綻している」と裁判所に認められれば、離婚が認められる可能性があります。
実際に借金が原因で離婚を決意した場合、お金に関していくつか知っておくべき重要なポイントがあります。
あとで「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、しっかりと確認しておきましょう。
結婚前の借金は相手の「特有財産」です。
離婚の際に夫婦の財産を分け合う財産分与において対象となるのは、結婚生活の中で二人で築いた「共有財産」のみです。
そのため、相手が結婚前に作った借金を財産分与であなたが引き受けたり、あなたの財産から返済したりする必要は一切ありません。
夫婦の間に子どもがいる場合、離婚したとしても、子どもの親であることには変わりありません。
そして、離婚後もあなたが子どもを引き取って育てる場合、相手に対して養育費を請求する権利があります。
「借金で大変だから養育費は払えない」という相手の主張は、法的には通用しません。
養育費は、子どもの健やかな成長のために不可欠なものだからです。
離婚の際には、必ず金額や支払い方法について取り決めをしておきましょう。
慰謝料とは、離婚の原因を作った側が、相手に与えた精神的な苦痛に対して支払うお金のことです。
ただ「相手に結婚前の借金があった」というだけでは、慰謝料を請求するのは難しいでしょう。
しかし、借金の理由や借金が結婚生活に与えた影響によっては、慰謝料が認められるケースもあります。
例えば、下記などの事情があれば、相手の行為は「不法行為」とみなされ、慰謝料を請求できる可能性があるでしょう。
たとえ離婚協議や裁判で、養育費や慰謝料の支払いが決まったとしても、実際に相手からお金を回収できない可能性もあります。
なぜなら、相手はすでに多額の借金を抱えており、首が回らない状態だからです。
この場合、法的に支払い義務があったとしても、単純に「支払うお金がない」という状況が考えられます。
相手が慰謝料や養育費を支払わない場合、差し押さえなどの法的な手段もありますが、差し押さえるべき給料や財産がなければ、どうすることもできません。
以上を踏まえると、養育費や慰謝料をあてにして今後の生活設計を立てるのは、非常に危険だということを理解しておくことが大切です。
結婚前の借金があっても、愛するパートナーとともに借金を乗り越えていくと決めた場合、どのような対処法があるのかを具体的に見ていきましょう。
まず何よりも大切なのは、問題から目をそらさず、現状を正確に把握することです。
具体的には、以下のようなポイントを確認しましょう。
感情的にならず、冷静に事実を確認することが、再出発の第一歩です。
ここで隠し事をされるようでは、今後の信頼関係を築くのは難しいかもしれません。
あなたが結婚前から持っていた預貯金などの「特有財産」を使って、相手の借金の返済に協力するという選択肢もあります。
もちろん、あなたに返済の義務はありませんので、これはあくまで善意でおこなうものです。
ただし、もし協力する場合は注意が必要です。
安易に生活費から返済してしまうと、それが「贈与」とみなされたり、後々トラブルの原因になったりする可能性があります。
もしあなたが返済を手伝うのであれば、「これはあなたの特有財産から立て替えているだけで、いずれ返してもらうお金である」ということを明確にするために、「金銭消費貸借契約書」などの書面を夫婦間で交わしておくと安心です。
今後も幸せな夫婦生活を送るためにも、借金の原因が浪費癖なのか、ギャンブルなのか、あるいはやむを得ない事情だったのかを把握しておきましょう。
原因が浪費やギャンブルである場合は、その根本的な問題を解決しなければ、たとえ今回借金を返済できても、また同じことを繰り返してしまいます。
必要であれば、専門のカウンセリングを受けるなど、原因そのものを断ち切る努力を二人でしていくことが不可欠です。
今後の生活を守るために、家計の管理はあなたが主導権を握ることを検討しましょう。
相手にお金の管理を任せておくと、また借金が増えてしまうリスクがあります。
給料が入ったら、まずあなたがお金を預かり、毎月の返済分や生活費を計画的に割り振っていくことで、家計の透明性を保ち、無駄な支出をなくすことができます。
相手にお小遣いを渡す形にするのも、有効な方法の一つです。
現状を把握したら、次に具体的な返済計画を立てます。
毎月の収入と支出を全て書き出して、家計の状況を「見える化」しましょう。
そして、食費や交際費など、削減できる項目がないかを見直します。
そのうえで、毎月いくらずつなら無理なく返済に充てられるのかを計算し、完済までの道のりを明確にします。
ゴールが見えることで、精神的な負担も少し軽くなるはずです。
もし、夫婦の努力だけでは返済が困難なほど借金が膨らんでいる場合は、「債務整理」という法的な手続きも検討しましょう。
債務整理には、主に以下の3つの種類があります。
| 任意整理 | 弁護士が貸金業者と交渉し、将来の利息をカットしてもらい、元本のみを3〜5年で分割返済していく方法。裁判所を通さないため、手続きが比較的簡単です。 |
|---|---|
| 個人再生 | 裁判所に申し立て、借金を大幅に減額(最大10分の1)してもらい、残りを原則3年で返済していく方法。住宅ローンが残っていても、家を手放さずに手続きできる場合があります。 |
| 自己破産 | 裁判所に申し立て、支払い不能であることを認めてもらい、原則として全ての借金の支払い義務を免除してもらう方法。最終手段ですが、生活を根本から立て直すことができます。 |
どの方法が最適かは、借金の総額や収入の状況によって異なります。
そのため、債務整理を考える場合は、専門家である弁護士に相談することが不可欠です。
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結婚前の借金は、原則として配偶者に相手の借金を返済する義務はありません。
ただし、借金の保証人になっている場合は返済義務が生じるなど、例外的なケースも存在します。
パートナーの借金問題は、法律の知識だけでなく、夫婦間の信頼関係も関わる複雑な問題です。
一人で悩み、インターネットの情報だけを頼りに判断してしまうと、かえって事態を悪化させてしまう危険性もあります。
相手の借金について少しでも不安を感じていたり、今後の対応に迷っていたりするのであれば、ぜひ一度、法律の専門家である弁護士に相談してみてください。
特に、借金問題の解決を得意とする弁護士や、離婚問題に注力している弁護士は、あなたの状況に合わせた最適な解決策を、法的な観点から的確にアドバイスしてくれます。
専門家に相談することで、法的な自分の立場が明確になるだけでなく、「何をすべきか」が見えてくるため、精神的な負担も大きく軽減されるはずです。