人身事故を起こすと、過失運転致傷罪などの犯罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑となっています。
そのため、検察に起訴されて有罪判決になれば、拘禁刑を免れたとしても罰金刑の刑罰が科されることになるでしょう。
本記事では、人身事故を起こしてしまった加害者の方を対象に、以下の内容について説明します。
- 人身事故における罰金とは何か
- 罰金刑と反則金、賠償金の違い
- 人身事故を起こした際の罰金刑の量刑相場
- 人身事故を起こしても罰金刑を科されないケース
- 人身事故を起こした際に弁護士に相談するメリット など
本記事で、どの程度の罰金になるのか、罰金刑の回避を目指したい場合にはどのような活動が望ましいのかなどを理解しましょう。
人身事故における罰金とは?反則金や賠償金との違いもチェックしよう
交通事故や交通違反に関係する金銭には、以下のようなものがあります。
- 罰金:刑事処分として科される
- 反則金:行政処分として科される
- 賠償金:民法の不法行為責任として支払う
まずは、交通事故や交通違反に関連する罰金・反則金・賠償金の違いについて理解しましょう。
罰金とは?交通犯罪として処罰された場合に支払う金銭のこと
罰金とは、刑事罰の一種です。
刑法や道路交通法などに定められた犯罪行為をおこない、裁判で罰金刑を言い渡された場合に科されます。
人身事故に関連する犯罪はいくつかありますが、例えば過失運転致死傷罪が成立した場合に罰金刑が言い渡されることがあります。
なお、過失運転致死傷罪については、以下のページで詳しく解説しているためあわせて確認しておきましょう。
【関連記事】過失運転致死傷罪とは?罰則と危険運転により刑が加重される場合|ベンナビ刑事事件
反則金とは?軽い交通違反をして青切符が切られた場合に支払う金銭のこと
反則金とは、比較的軽微な交通違反をした際に支払うペナルティのことです。
例えば、一時停止違反や信号無視などは道路交通法違反ですが、多くの場合にはいきなり罰金刑が科されるものではありません。
交通反則通告制度(いわゆる青切符制度)があるため、青切符が切られて反則金を納めるよう指示されます。
なお、人身事故の場合は青切符制度の対象とならないのが通常であり、反則金を納めて終了という扱いにはなりません。
【関連記事】道交法違反となる行為まとめ 点数や罰金・反則金についても解説|ベンナビ交通事故
賠償金とは?被害者の身体や財産などに損害を与えた場合に支払う金銭のこと
賠償金とは、加害者が被害者やその遺族に対して支払うお金のことです。
交通事故が原因でけがをさせたり、車を損壊させたりした場合は、治療費や修理代などを支払う必要があります。
このように治療費や修理費をはじめ、慰謝料、休業損害、逸失利益など全て含めた金銭のことを賠償金といいます。
なお、交通事故の慰謝料相場については、以下のページで詳しく解説していますのであわせて確認してください。
【関連記事】交通事故の慰謝料とは?早見表・計算方法や相場を徹底解説!【計算ツールあり】|ベンナビ交通事故
人身事故を起こした場合の罰金刑の量刑相場|被害の程度が大きく影響する
人身事故を起こした場合の罰金刑の相場は、被害の程度、過失の程度、前科前歴、態様(飲酒・速度超過等)などによって決まります。
そのため一概にはいえませんが、例えば、被害の程度に注目した場合には以下のような目安が示されていることもあります。
| 事故の内容 | 量刑の目安(罰金刑の場合) |
| 死亡事故 | 50万円~100万円 |
| 後遺症が残る事故 | 30万円~50万円 |
| 治療期間が3ヵ月以上の事故 | 30万円~50万円 |
| 治療期間が30日以上3ヵ月未満の事故 | 20万円~50万円 |
| 治療期間が15日以上30日未満の事故 | 15万円~30万円 |
| 治療期間が15日未満の事故 | 10万円~20万円 |
なお、上記については単純な過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条)で罰金系が科された場合の一例であり、事案によっては不起訴や拘禁刑となることもあります。
例えば、ひき逃げ(道路交通法第117条1項、2項)などがある場合は、より重い刑罰を科される可能性が高いといえます。
【関連記事】ひき逃げ事故とは?被害者・加害者がとるべき対応と損害賠償について解説|ベンナビ交通事故
人身事故の加害者になったとしても罰金刑が科されずに済む2つのケース
人身事故を起こしたとしても、以下のケースに該当すれば罰金刑を科されずに済みます。
- 検察官が不起訴処分とした場合(起訴されない場合)
- 起訴されたものの、刑事裁判で無罪判決が言い渡された場合
ここでは、人身事故の加害者になったとしても罰金刑が科されずに済む2つのケースについて説明します。
1.不起訴処分になった場合
不起訴処分とは、検察が起訴を見送ることをいいます。
人身事故で不起訴処分が得られる可能性が高いケースには、以下のようなものがあります。
- 治療期間が短くて比較的軽微な事故の場合
- 被害者との間で示談が成立して、宥恕を得られている場合
人身事故では、嫌疑はあるけれど様々な事情を考慮して起訴されない「起訴猶予」になるケースが多いです。
ただし、死亡事故のように被害が大きい場合、飲酒運転・著しい速度超過など悪質性が高い場合、加害者が事故直後に適切な救護活動をおこなっていない場合などでは、起訴される可能性は高まります。
2.刑事裁判で無罪判決が出た場合
検察に起訴されて、刑事裁判になったとしても、無罪判決が得られれば罰金刑が科されることはありません。
もっとも日本の刑事事件では、起訴された場合の有罪率は99.9%と非常に高い数値になっています。
そのため、刑事裁判で争って無罪判決を勝ち取るということは、一般的に難しいといえます。
人身事故による罰金刑を回避したいなら弁護士に相談するのがおすすめ
人身事故の加害者が弁護士に相談する主なメリットは、以下のとおりです。
- 今後の見通しを判断してくれる
- 取り調べに関するアドバイスがもらえる
- 被害者との示談交渉などに対応してくれる
ここでは、人身事故の加害者が弁護士に相談・依頼するメリットを説明します。
1.今後の見通しを判断してくれる
弁護士に相談することで、人身事故に関する今後の見通しを教えてもらえます。
事故発生後に適切な対応を取ることが、逮捕や起訴などの判断に影響します。
例えば、警察に報告していない、ひき逃げをしているなどの事情があると逮捕や起訴されてしまうリスクが高まります。
弁護士は、こうした事故の内容をもとに今後どうなるのか、何をすべきかなどをアドバイスしてくれます。
2.取り調べに関するアドバイスがもらえる
人身事故が発生した場合は、警察による実況見分や取り調べなどがおこなわれます。
- 実況見分:事故現場に立ち会って事故の経緯や状況を確認する手続き
- 取り調べ(事情聴取):運転の経緯や事故の状況などを確認する手続き
これらの手続きには真摯に対応することが望ましいですが、間違いまで認める必要はありません。
弁護士からどのように対応すればよいかアドバイスを受け、適切に対処することをおすすめします。
3.被害者との示談交渉などに対応してくれる
弁護士に依頼をすることで、被害者との示談交渉に対応してもらえます。
自分が加入している保険会社も示談に対応してくれますが、刑事事件に関するサポートはしてくれません。
そのため、刑事事件で不当な結果をできるだけ回避するためには、弁護士に依頼することが望ましいといえます。
なお、交通犯罪などの刑事事件の弁護に力を入れている弁護士を探したい方は、ベンナビ刑事事件をご活用ください。
人身事故の罰金刑に関するよくある質問
さいごに、人身事故の罰金刑に関するよくある質問に回答します。
Q.人身事故での罰金刑はどのように決まるのか?
罰金刑になる見込みが高い比較的軽微な人身事故では、一般的には「略式裁判」という形式が取られます。
略式裁判とは通常裁判と異なり、検察が提出した書面だけで審理をおこなう簡易・迅速な裁判手続きです。
また、略式裁判で罰金刑となった場合でも通常裁判と同様に前科が付くことにはなりますが、裁判手続が迅速に簡潔する分、勾留中の事件では比較的早期に身柄を解放してもらえるメリットがあります。
【関連記事】略式命令とは?罰金や前科などのデメリット・早期釈放のメリットを解説
Q.人身事故での罰金はどのように支払うのか?
簡易裁判所から略式命令を受けると、後日、検察から罰金の納付通知書が届きます。
この納付通知書を持参し、指定された金融機関や検察庁の窓口で支払うことになります。
納付期限は納付通知書に記載されているので、いつまでに支払えばよいかをしっかりと確認しましょう。
Q.罰金を支払えない場合はどうすればよいか?
罰金を支払えない場合は、以下のような対応が取られます。
- 受刑者の財産に対して強制執行がおこなわれる
- 労役場に留置されて労役をさせられる
なお、原則は一括払いですが、事情があれば分割払いが認められる可能性はあります。
罰金の納付が間に合わない場合は、早めに検察庁の窓口に相談することをおすすめします。
さいごに|不起訴処分を獲得できれば人身事故による罰金刑を回避できる
人身事故を起こしたからといって、必ずしも罰金刑が科されるわけではありません。
罰金刑が科されるのは、主に過失運転致傷罪や救護義務違反などの罪名で起訴されて、有罪判決になった場合に限られるからです。
有罪判決を回避する方法はいくつかありますが、その代表例が不起訴処分を得ることです。
そのためには、正確な知識をもって適切に対応できるよう、早めに弁護士に相談・依頼するほうが望ましいです。
例えば、「ベンナビ交通事故」や「ベンナビ刑事事件」などを活用して弁護士を探して、まずは事故について相談するのがよいでしょう。
