会社のお金を横領してしまい、「この先どうなってしまうのか」「逮捕されるのか」「家族に迷惑がかかるのではないか」と、強い不安を抱えていませんか?
すでに発覚している場合はもちろん、まだバレていない状況であっても、時間が経つにつれて不安や後悔が大きくなっているかもしれません。
本記事では、横領してしまった場合に想定される影響や法的リスクを整理し、起訴される確率や刑罰の実情、家族への影響、リスクを軽減するために取るべき行動を解説します。
今後どう対応すべきか判断するための参考にしてください。
横領してしまった!その後の人生、バレたときのリスクとは?
横領が発覚した場合、仕事や生活、社会的信用など人生全体に深刻な影響が及びます。
ここでは、横領してしまった人が実際に直面する可能性のあるリスクについて解説します。
逮捕され長期的に身柄を拘束される
業務上横領が発覚した場合、逮捕や勾留によって長期間にわたり身体を拘束される可能性があります。
横領額が高額であったり、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合、捜査機関は身柄拘束の必要性が高いと判断するためです。
警察に逮捕されると、48時間以内に検察官へ送致され、検察官は受け取りから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留請求をするかどうかを判断します。
勾留が認められた場合、10~20日間、警察の留置場に拘束され、その間に横領の手口や金銭の流れが詳しく調べられます。
業務上横領は長期間にわたり着服を繰り返しているケースも多く、捜査の進展により新たな横領が発覚すると、再逮捕や再勾留がおこなわれることも少なくありません。
刑事告訴され実刑判決を受ける
横領事件で起訴されると、有罪となる可能性が極めて高く、状況次第では実刑判決を受けるおそれがあります。
刑事裁判では、横領額の大きさ、示談や被害弁償が成立しているかどうか、犯行が一時的なものか反復的なものかなどを踏まえて量刑が判断されます。
被害弁償がおこなわれていない場合や横領額が高額に及ぶ場合には、悪質と判断され、執行猶予が付かず実刑となるケースも少なくありません。
横領によって問われる可能性がある罪の種類
横領罪は、自分が占有している他人の金品を横取りする犯罪であり、行為の態様によって以下の3つに分類されます。
| 罪名 | 内容 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 単純横領罪(刑法252条) | 自分が占有している他人の物を横領した場合 | 5年以下の拘禁刑 |
| 業務上横領罪(刑法253条) | 業務として預かっている他人の物を横領した場合 | 10年以下の拘禁刑 |
| 遺失物等横領罪(刑法254条) | 遺失物や占有を離れた他人の物を横領した場合 | 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金・科料 |
単純横領罪には、他人から借りている物を返さない、無断で第三者に売却するなどの行為が該当します。
業務上横領罪は、会計担当者が売上金を操作して着服するなど、業務として預かっている財産を横領する場合に成立し、単純横領罪よりも重い罪とされています。
また、遺失物等横領罪は、落とし物や忘れ物など、占有者がいない物を横領した場合に成立し、横領罪の中で唯一罰金刑が設けられている犯罪です。
【関連記事】横領罪とは|構成要件・罰則・時効・弁償や示談交渉について解説
会社から損害賠償を請求される
横領をしてしまうと、刑事責任とは別に、被害を受けた会社から損害の回復を求める請求がされる可能性があります。
会社は、最初は話し合いを通じて返済を求めることが多いものの、応じない場合には民事訴訟を提起するケースも珍しくありません。
損害賠償請求では、横領した金額に加え、事案によっては調査費用や弁護士費用相当額、遅延損害金などが問題になることもあります。
賠償命令に従わない場合、預貯金や給与、不動産などが差し押さえられるおそれもあるでしょう。
また、横領は悪意による不法行為に該当するため、自己破産をしても損害賠償債務の免責は認められない可能性が高く、返済義務から逃れることはできません。
【関連記事】損害賠償とは?知っておきたい基礎知識!請求する場合、された場合の対処法も解説
会社から懲戒解雇をされてしまう
横領は重大な背信行為であり、金額の大小を問わず、懲戒解雇や普通解雇の対象となる可能性があります。
通常、解雇には30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要です。
しかし、業務上横領のように「労働者の責めに帰すべき事由」がある場合、労働基準監督署長の認定を受けることで、即日解雇が認められることがあります。
【関連記事】懲戒解雇とは|6つの懲戒ケースと懲戒解雇されたときの対処法
実名で報道され社会的信用を失ってしまう
大企業や上場企業の従業員、公務員などの社会的地位の高い職業に就いている人の横領事件は、話題性が高く、実名報道されやすい傾向があります。
インターネットメディアで実名が報道されると、記事やニュースが半永久的に残り、誰でも過去の横領事件を知れる状態になります。
その結果、失職する可能性が高まるだけでなく、再就職時に名前を検索され、採用を見送られるおそれもあるでしょう。
また、実名報道によって周囲の人に事件が広く知られ、日常生活が送りづらくなる、社会的な差別を受けるといった影響が生じることもあります。
【関連記事】実名報道される4つのデメリット|報道される基準と回避方法について
重い返済義務を負い続けることになる
横領によって会社に損害を与えた場合、その返済義務から逃れることは容易ではありません。
自己破産をすれば債務の支払いを免除される場合がありますが、破産法では横領のような「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は非免責債権とされています。
そのため、自己破産をしても、横領による損害賠償義務は残り続けてしまうのです。
横領した人は再就職が難しくなることも考えられる
横領によって懲戒解雇となった場合や、刑事事件として扱われ前科が付いた場合、履歴書や面接での説明が必要になる場面があります。
とくに、経理や財務など金銭を扱う職種では、過去の横領行為が採用判断に大きく影響することがあります。
その結果、職種や待遇を大きく変更せざるを得ない、あるいは長期間にわたり就職先が見つからないといった状況に陥るおそれもあるでしょう。
横領してしまったら家族にどんな影響がある?
横領は、原則として行為をおこなった本人が責任を負う犯罪です。
しかし、横領の内容や家族との関係性によっては、家族の生活や立場にも大きな影響が及ぶことがあります。
ここでは、横領が家族に与える主な影響について整理します。
家族が返済義務を負う可能性もある
横領による返済義務は原則として本人が負い、家族であるという理由だけで返済を求められることはありません。
ただし、家族が横領行為に関与していた場合や、事情を知りながら利益を受けていた場合、本人の身元保証人になっている場合などには、例外的に法的責任が問題となることがあります。
とくに身元保証契約を結んでいる場合、本人に代わって損害賠償責任を負うおそれがありますが、身元保証契約がある場合でも、保証人の責任は法律上無制限に認められるわけではなく、契約内容や保証期間、会社側の事情説明の有無などによって左右されます。
実際に家族が返済義務を負うかどうかは契約内容や関与の程度によって異なるため、不安がある場合には契約書を確認したうえで弁護士に相談することが重要です。
共犯なら家族も刑罰を受ける可能性がある
刑法は個人責任を原則としており、刑事責任が問われるのは犯罪行為をおこなった者自身の行為に対してです。
しかし、家族が横領行為を手助けしたり、横領によって得た金銭であると知りながら受け取って費消していた場合には、その家族自身の行為について刑事責任を負う可能性があります。
生活が困窮してしまう
横領をした本人の収入によって家計が支えられていた場合、解雇や再就職の困難、被害金の返還などにより、家族の生活が苦しくなる可能性があります。
収入が大きく減少する一方で、損害賠償の返済が続くことになれば、生活水準を下げざるを得ない状況に陥ることもあるでしょう。
場合によっては、持ち家の売却や、子どもの進学計画の見直しなど、将来設計に大きな影響が及ぶことも考えられます。
肩身の狭い思いをする/実名報道で周囲に広く知られることもある
横領での逮捕時に実名が報道されると、テレビや新聞、インターネットニュースを通じて事件の概要や個人情報が広く知られることになります。
その結果、近隣住民や職場、学校などに事件の事実が知られ、家族が肩身の狭い思いをすることも少なくありません。
場合によっては、引っ越しや転校、退職を余儀なくされるケースや、婚約が破談になるといった影響が生じることもあります。
地方では地域のつながりが強いことも多く、家族自身が生活しづらくなる可能性も否定できません。
横領は会社にバレる?バレる理由は?
横領は一時的に発覚を免れているように見えても、あとから明らかになるケースが少なくありません。
令和6年版犯罪白書によると、横領罪の検挙率は68.4%と高く、刑法犯全体の検挙率38.3%と比べても約2倍にのぼります。
以下は、横領がバレる主な理由とタイミングです。
| 発覚のきっかけ | 概要 |
|---|---|
| 異動・退職 | 担当者変更により帳簿の不整合が発見される |
| 内部調査・通報 | 監査や社内通報をきっかけに調査が入る |
| 外部からの通報 | 第三者が会社に情報提供する |
| 公的機関の調査 | 税務調査などで不正が判明する |
横領は、異動や退職、社内外の調査などをきっかけに発覚することが多く、長期間発覚しないまま終わるケースは多くありません。
会計業務のIT化や業務分担の進展により、不正が検知されやすい環境になっているうえ、社内外の人や公的機関が関与する場面が複数存在するためです。
例えば、担当者の異動や退職によって帳簿の矛盾や資金管理の不備が確認され、過去の横領が芋づる式に発覚することがあります。
定期・不定期の内部監査や、不相応な高額消費、SNSでの発信をきっかけに、同僚や関係者が不審に思って社内窓口へ通報することも少なくありません。
また、交際相手や友人など第三者に横領の事実を話した結果、トラブルを契機に会社へ通報される場合もあります。
さらに、税務調査など公的機関による調査では帳簿や関連資料が詳細に確認されるため、不正を隠し通すことは困難です。
横領で起訴される確率は?どのくらいの刑罰を受ける?
横領事件では、「必ず起訴されて重い刑罰を受ける」という印象を持たれがちですが、実際の統計を見ると、起訴に至る割合や量刑の傾向には一定の特徴があります。
| 起訴 | 1,389人 |
|---|---|
| 不起訴 | 4,820人 |
| 起訴率 | 22.4% |
【参考】検察統計 2024年(被疑事件の罪名別起訴人員、不起訴人員及び起訴率の累年比較)
まず、横領の罪に関する起訴率は22.4%で、検察に送致された事件のうち約8割が不起訴となっています。
起訴された場合の有罪率は極めて高い一方で、示談の成立や被害弁償などにより、不起訴を獲得できている事件が多いことが読み取れます。
また、起訴された場合の刑罰について見ると、実刑となった事件の刑期は、6ヵ月以上5年未満が大半です。
| 実刑 | 全部執行猶予 | |
|---|---|---|
| 10年超 | 0 | 0 |
| 10年以下 | 1 | 0 |
| 7年以下 | 6 | 0 |
| 5年以下 | 35 | 0 |
| 3年以下 | 11 | 32 |
| 2年以上 | 59 | 73 |
| 1年以上 | 39 | 143 |
| 6ヵ月以上 | 62 | 34 |
| 6ヵ月未満 | 15 | 6 |
| 合計 | 228 (44.2%) |
288 (55.8%) |
【参考】司法統計 刑事 令和6年度
一方で統計上、執行猶予となっている割合は55.8%と半数を超えています。
このことからわかるのは、起訴された場合でも、被害額や犯行態様、被害弁償や示談の有無などによっては、執行猶予付き判決が言い渡されるケースが多いということです。
仮に起訴された場合であっても、会社との示談交渉が成立し被害回復が進んでいれば、執行猶予を獲得できる可能性は十分にあります。
ただし、執行猶予が付いた場合でも、有罪判決である以上、前科が付く点には注意が必要です。
なお、横領罪のうち、遺失物等横領罪については罰金刑が科されるケースもありますが、業務上横領罪や単純横領罪では罰金刑は例外的です。
とくに業務上横領罪では、罰金刑が設けられておらず、起訴された場合には拘禁刑を前提とした判断がおこなわれます。
横領してしまった場合にリスクを軽減するには?やるべきこと2つ
横領が発覚した場合であっても、その後の対応次第で、逮捕や起訴、刑罰といったリスクを軽減できる可能性があります。
ここでは、横領してしまった場合に取るべき代表的な対応を2つ解説します。
できるだけ速やかに被害弁償をすませる
横領事件で逮捕や起訴、刑罰のリスクを軽減するためには、被害弁償を早期におこなうことが重要です。
会社は、不祥事が報道されて企業イメージが低下することを避けたいと考える傾向があります。
そのため、被害弁償が済んでいれば捜査機関への申告を見送るケースがあります。
また、仮に逮捕や勾留がおこなわれた場合でも、被害が一定程度回復していれば、検察官が起訴を見送ることがあります。
さらに、起訴されて裁判に進んだ場合でも、被害弁償が済んでいることが考慮され、執行猶予付き判決につながる可能性があります。
横領事件に強い弁護士に相談・依頼する
横領が発覚した場合には、早い段階で刑事事件に対応できる弁護士に相談することが重要です。
弁護士に相談することで、今後の見通しや、逮捕や起訴を避けるために取るべき対応について具体的な助言を受けることができます。
また、本人に代わって会社に示談を申し入れたり、被害弁償の方法や条件について交渉したりすることも可能です。
もし示談が成立しなかった場合であっても、被害回復への姿勢を示すなど、刑事処分を軽減するための対応を検討できます。
さいごに|横領してしまったらなるべく早く弁護士に相談を!
会社の金銭を横領してしまった場合は、発覚しているかどうかに関わらず、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
横領事件では、会社側が感情的になりやすく、本人からの謝罪や返済の申し出が受け入れられないことも少なくありません。
弁護士が間に入ることで、客観的資料に基づき被害金額を整理し、全額返済や分割返済を前提とした交渉を進めやすくなります。
また、すでに捜査が始まっている場合であっても、弁護士を通じて示談が成立すれば、不起訴となり刑事裁判が見送られることもあります。
不安を抱えたまま一人で判断せず、専門家の助言を得ることが問題解決への第一歩です。
