- 「窃盗をしたことが被害者に見つかってしまった。示談すべきか。示談するとどんなメリットがあるか。」
- 「示談交渉はどのような流れですすめればよいのか。示談金はどのくらいになるか。」
窃盗で捕まってしまった場合、加害者はなるべく早く被害者と示談を成立させるべきです。
ただ、示談交渉をしたことがなければ、なぜ急ぐ必要があるかや示談金がどのくらいになるか疑問や不安を感じるでしょう。
本記事では窃盗事件で示談を成立させるべき理由や示談を成立させるまでの流れ、窃盗事件における示談金の相場、示談金をすぐに支払えない場合はどうすればいいかを解説します。
示談が早期に成立するか否かで、加害者への影響は大きく異なるものです。
本記事を読めば示談の重要性や流れを理解し、示談交渉を進めるうえでの準備に役立てることができます。
窃盗事件で示談を成立させるべき理由
窃盗事件で示談を成立させるべき理由は、主に以下の4点です。
- 起訴を回避し有罪を免れる可能性が高くなる
- 逮捕を回避できる可能性が高まる
- 早期での釈放を実現しやすくなる
- 会社の解雇などの不利益を避けやすくなる
ここから、それぞれの理由を詳しく解説します。
起訴を回避し有罪を免れる可能性が高くなる
示談が成立すれば、不起訴処分になる可能性が高まります。
検察官は、さまざまな事情を考慮して、窃盗事件を起訴するか否かを判断します。
その際に示談が成立していると、被害弁償がなされていること、犯人が反省していること、被害者が許していることなどを考慮し、不起訴の判断につながりやすくなります。
また、起訴されてしまった場合でも、示談が成立していれば、被害弁償がなされていること、被告人が反省していること、被害者が被告人を許していることが裁判でも考慮され、有利にはたらきます。
本来であれば拘禁刑が相当な事案でも、罰金刑になったり、執行猶予がついたりする可能性があります。
示談ができない場合は、起訴され有罪になる可能性が高くなってしまう
被害者と示談が成立しなければ、起訴される可能性が高くなります。
起訴された場合、日本の刑事裁判では95.5%という非常に高い確率で有罪判決が下されます。(※出典:令和6年度司法統計年報/最高裁判所)
前科があれば、執行猶予がつかず、実刑判決が下される可能性が高まります。
逮捕を回避できる可能性が高まる
示談が成立すれば、逮捕や取調べを回避できる可能性が高まります。
窃盗をしても、被害者との示談が成立すれば、被害者が警察に被害届を提出しない可能性が高まります。
そうなれば事件が警察に認知されない可能性が低くなるのです。
警察が窃盗を認知しなければ、逮捕や取調べを受けることもなく、前歴もつきません。
早期での釈放を実現しやすくなる
たとえ逮捕されても、示談が成立すれば早期に釈放される可能性が高まります。
犯人を逮捕し身柄を拘束するのは、犯人に罪証隠滅や逃亡のおそれがあると考えられるためです。
示談が成立していれば、犯人が罪を認めて反省しており、罪証隠滅や逃亡のおそれがないと判断される傾向にあるので、早期釈放につながりやすくなります。
会社の解雇などの不利益を避けやすくなる
窃盗で逮捕され身柄を長期的に拘束されると、その期間は会社や学校などへ行けなくなります。
会社に逮捕された事実を隠していた場合、無断欠勤が続くことになり解雇される可能性が高まります。
また、就業規則のなかには、犯罪行為を行ったことを懲戒解雇の事由とする場合が多くあります。
学校の校則にもとづき、生徒・学生が逮捕されたことで退学処分とすることもあります。
このように窃盗で逮捕されると、さまざまな不利益が生じる可能性があります。
しかし示談が早期に成立し、逮捕や長期の身柄拘束が回避されれば、そういったリスクを避けられる可能性が高くなるのです。
窃盗事件で示談を成立させるまでの流れ
窃盗事件での示談交渉は、以下の流れで進むのが一般的です。
- 被害者に連絡を試みる
- 示談金額をはじめとした条件について被害者と交渉する
- 示談書に合意内容をまとめる
- 示談金を支払う
ここから、それぞれ解説します。
1.被害者に連絡を試みる
まずは、被害者と連絡を取ります。
起訴され刑事裁判になれば有罪となる可能性が高くなるため、示談成立はできるだけ早期に実現すべきです。
そのため、なるべく早く被害者に連絡を試みることが推奨されます。
弁護士でなければ、被害者が連絡先を教えてくれない可能性が高い
被害者の連絡先は、警察や検察といった捜査機関が把握しています。
ただし、加害者が被害者に直接連絡を取ろうとすると、相手が不安や恐怖を感じることが多いです。
加害者本人やその家族などが捜査機関へ被害者の連絡先の開示を求めても、被害者に拒否される可能性が高いでしょう。
そのため、加害者本人ではなく弁護士が捜査機関に連絡先の開示を求めるのが一般的です。
被害者が示談を拒否している場合でも、弁護士が間に入れば、示談に応じてくれるケースも多いです。
また、弁護士に相談すれば、相手の気持ちに配慮した丁寧な対応ができるうえ、条件交渉や示談書の作成まで一貫して任せられるため、示談が早くまとまりやすくなります。
2.示談金額をはじめとした条件について被害者と交渉する
被害者と連絡が取れたら、示談金の金額やその他の条件について交渉を開始します。
交渉では、加害者と被害者間で希望する金額に相違が生じることもあります。
被害者の気持ちを十分に考慮して、どこまで譲歩できるか検討しましょう。
また、交渉時は、被害者の気持ちを傷つけないように慎重に言葉を選ぶことも重要です。
示談成立までにかかる期間はケースにより異なりますが、早ければ1日〜2日程度で成立する場合もあります。
3.示談書に合意内容をまとめる
交渉がまとまれば、合意内容を文書にまとめた「示談書」を作成します。
示談書には、主に以下のような項目を記載します。
- 加害者と被害者の氏名
- 事件が発生した日時や場所、内容、被害金額
- 示談金の金額、支払い方法、支払い期日
- その他、今後のトラブルを防ぐための条項(清算条項、口外禁止条項や宥恕条項など)
4.示談金を支払う
示談書の内容に従って、示談金を被害者に支払います。
支払いがなければ、示談そのものが無効になってしまったり、反省していないと評価されたりするおそれもあります。
支払期日までにきちんと全額を支払いましょう。
窃盗事件における示談金相場
窃盗事件における示談金は、被害額に加えて以下の事情を考慮した金額となることが一般的です。
ただし、事案によって大きく異なるため、一律の相場は存在しません。
示談金が高くなる主な要因
示談金は、以下にあげるような要因で高くなる可能性があります。
【被害の大きさ】
被害額が多いほど、示談金も高くなります。
【被害者の処罰感情】
被害者の処罰感情が大きいほど、相手と合意できる示談金額が高くなる傾向にあります。
【被害者の精神的苦痛の程度】
被害による精神的苦痛が大きければ大きいほど、慰謝料としての示談金も高くなる傾向があります。
【 加害者の社会的立場・経済力】
窃盗の加害者が公務員などの公共性が高い人物であれば、信用失墜の重さを反映して示談金が高額になる傾向があります。
また、加害者の経済力も考慮されます。
加害者の経済力が高い場合、少額の示談金では簡単に支払えてしまうので、相手の反省や謝罪を引き出すため示談金が高くなりやすいのです。
【加害者の前科の有無】
加害者に前科があると、再度罪をおかしたことで、刑罰が重くなってしまう可能性が高まります。
加害者が起訴や重い刑罰を避けるためには示談の成立がより重要となり、示談金額が高くなる傾向にあるのです。
たとえば、万引きのような比較的軽微な事案では、被害額だけを支払えば済むこともあります。
しかし、空き巣のような悪質な事案では、単に被害額を補償するだけでなく、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた金額を求められることがあるので、示談金は被害額よりも高額になる可能性が高いです。
被害者が窃盗事件の相場に比べ高過ぎる示談金を請求してきた場合は?
一般的な相場よりも明らかに高額な示談金を被害者から請求された場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、さまざまな事情を踏まえ、そもそも示談金額が適正かどうか判断してくれます。
また、示談金が不相当な場合には、適正な金額で合意できるよう代理交渉をしてもらえます。
最初から不相当な金額を請求されないようにするためにも、示談交渉を開始する前の段階から弁護士に相談して、示談交渉を代理してもらうのがよいでしょう。
窃盗事件の示談金が払えない場合はどうする?
被害者との示談が成立しても「示談金が払えない…。」という悩みを抱える人も多いでしょう。
ここでは、示談金が払えそうにない場合の主な対処法を3つ解説します。
事情を話して分割払いにしてもらう
示談金を一度に支払うのが難しそうであれば、相手に分割払いを提案してみましょう。
示談金は一括払いが原則ですが、事情を正直に説明し、被害者の理解が得られれば、示談書に「毎月○円ずつ支払う」といった内容を加えることが可能です。
ただし、分割払いを認めてもらうためには、「必ず最後まで責任をもって支払う」という意思を示す必要があります。
毎月安定した収入があることを証明したり、保証人を立てたりするなど、継続して支払える根拠を示しましょう。
家族や友人などから借りる
自分だけで支払うのが難しそうであれば、家族や友人に借りる方法も考えられます。
ただし、お金の貸し借りは信頼関係があってこそ成り立つものです。
無理にお願いすると関係が悪くなるおそれもあるため、事情をきちんと説明し、誠意をもってお願いしましょう。
ローンなどでお金を借りる
どうしても費用が工面できない場合には、カードローンや金融機関からの借入れを検討するのもひとつの選択肢です。
消費者金融などに頼るのに不安を感じる人も多いでしょう。
ただ、示談金を支払わずに前科がついてしまうリスクを考えれば、一旦金融機関などからお金を借り、その後計画的に返済する方が結果的に良い選択になることもあります。
ただし、「闇金」など違法な金融業者に手を出すと、かえって問題が大きくなる危険があります。
借入れを考える場合は、必ず信頼できる業者を選びましょう。
また、利息負担や返済能力の検討も併せておこないましょう。
さいごに |窃盗事件の示談交渉については弁護士に相談・依頼を!
窃盗事件における示談交渉の成立は、検察官の判断において、不起訴処分となる可能性を高める重要な要素となり、また、起訴された場合でも裁判において有利に考慮されます。
ただ、加害者本人が被害者と直接示談交渉するのは現実的に難しいことが多くあります。
そのため、示談交渉は窃盗事件の対応実績が豊富な弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。
弁護士は、被害者とのやり取りや示談金の金額交渉などを進めて、適切な条項を盛り込んだ示談書を作成してくれます。
弁護士検索サイトなどを活用すれば、窃盗事件の解決に注力している弁護士を探すことができます。
窃盗事件を起こしてしまった場合は、ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談しましょう。
※本記事は2025年11月時点の法令に基づいて執筆されています。法改正により内容が変更される可能性があります。
