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DVで通報されたらどうなる?逮捕の可能性や逮捕後の流れを徹底解説

監修者
黒澤 隼
弁護士
DVで通報されたらどうなる?逮捕の可能性や逮捕後の流れを徹底解説

DV(ドメスティックバイオレンス)は、もはや家庭内の問題として見過ごされる時代ではありません。

令和5年の統計(出典:「令和6年版 犯罪白書 第4編/第6章/第2節 配偶者からの暴力に係る犯罪」)によれば、配偶者暴力防止法の保護命令違反による検挙件数は49件と、10年前(2013年:110件)から半数以下に減少した一方、配偶者からの暴力事案等に関連する事件の検挙件数は8,636件と、10年前(4,300件)の約2倍に増加しています。

このように、DVは今や刑事事件として厳しく対処される傾向にあり、通報をきっかけに逮捕されるリスクも低くありません。

本記事では、DVで通報された場合に起こり得る「逮捕の有無」「適用される罪」「逮捕後の流れ」などをわかりやすく解説します。

さらに、保護命令のリスクや、逮捕・起訴が与える社会的影響、早期に弁護士へ相談することの重要性についても詳しく紹介していきます。

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DVで通報されると、逮捕され身柄を拘束される可能性がある

DVは、夫婦間や交際関係にある者同士の問題であることから、「民事上の争い」と捉えられがちです。

しかし、暴力や脅迫といった行為が伴えば、それは刑法上の犯罪として扱われます。

かつては「民事不介入」の原則が強調され、家庭内の暴力には警察が積極的に介入しないケースもありました。

しかし近年では、DVによる被害の深刻さが社会問題として広く認識され、警察も積極的に捜査や逮捕をおこなうようになっています。

DVの被害を受けた側が110番通報し、警察がその場に急行した場合、状況によっては加害者がその場で逮捕されることも十分にあり得るのです。

また、通報を受けたあとに被害届が提出されると、捜査を経て後日逮捕されることもあります。

通報があっただけではすぐに逮捕されるとは限りませんが、警察が暴行や脅迫などの事実を確認すれば、被害者の安全確保を最優先に判断し、身柄を拘束する対応をとるのが一般的です。

さらに、DVは再犯性が高く、被害者にとって生命・身体への危険が続く可能性があると判断された場合には、捜査機関も迅速かつ厳格な措置を講じます。

そのため、DVで通報された際には逮捕・勾留される可能性があると考えておくべきです。

DVで通報され、逮捕される際のパターン2つ

DVで通報されて逮捕されるケースには、主に以下2つがあります。

  • 通常逮捕
  • 現行犯逮捕

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

通常逮捕|被害届の提出により、逮捕状に基づいて逮捕される

「通常逮捕」とは、裁判所が発付した逮捕状に基づいておこなわれる逮捕のことです。

通常逮捕の場合、被害者からの被害届や警察への相談をきっかけに、警察が加害者の暴力行為について証拠を集めたうえで、検察官又は一定階級以上の警察官が裁判所に逮捕状を請求します。

そして、逮捕状が発付されたあと、警察は加害者の自宅や職場などを訪れ、正式な手続きを経て逮捕をおこないます。

つまり、DVを受けている片方の配偶者が警察に相談すると、ある日突然警察が家にやってきて、逮捕されるという可能性があるのです。

なお、このようにDVの犯行から時間が経ってから逮捕されることを一般的に「後日逮捕」ということがあります。

現行犯逮捕|警察に通報され、今まさにDVが続いていた場合

「現行犯逮捕」とは、犯罪の最中、または直後にその場で逮捕する方法です。

たとえば、DVがおこなわれている最中に110番通報があり、警察が駆けつけたときに加害者が暴行や脅迫行為を続けていた場合には、その場で逮捕されることになります。

現行犯逮捕の場合、裁判所の逮捕状は不要です。

犯罪がおこなわれている事実が明らかであるため、警察官の判断で直ちに加害者を拘束することが認められています。

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DVで適用される可能性がある主な罪の種類

DVは、行為の内容に応じて複数の刑法に該当する犯罪と認定される可能性があります。

実際には、暴行や傷害にとどまらず、脅迫や強要、強制わいせつといった罪に問われることもあります。

以下に、DVにおいて適用されるおそれのある代表的な罪名とその概要、法定刑をまとめました。

罪名 概要 法定刑
傷害罪 暴行により、打撲・出血・骨折など、生理的機能に障害を侵害した場合等に成立します。 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
暴行罪 人の身体に対する有形力の行使があった場合に成立します。身体的接触があるもののけがに至らなかった場合や、身体的接触がない場合でも傷害の危険がある行為に成立します。 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または拘留・科料
不同意わいせつ罪 暴力や脅迫等によって、同意のないわいせつ行為をした場合に成立します。 6か月以上10年以下の拘禁刑
不同意性交等罪 同意のない性交等をした場合に成立します。婚姻関係の有無は問いません。 5年以上の有期拘禁刑
殺人罪 被害者を死亡させ、かつ殺意があった場合に成立します。 死刑、無期拘禁刑、または5年以上の拘禁刑
傷害致死罪 暴行の結果として相手が死亡した場合で、殺意がなかったときに成立します。 3年以上の有期拘禁刑
脅迫罪 「殺すぞ」など、生命・身体などに害を加えると告知し脅した場合に成立します。 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
強要罪 暴行や脅迫によって相手に義務のない行為を強制した場合に成立します。 3年以下の拘禁刑
器物損壊罪 故意に物(家具・スマートフォン・ペットなど)を壊した場合に成立します。親告罪です。 3年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金または科料
DV防止法違反 裁判所の保護命令に違反した場合に成立します。接近禁止や退去命令の違反行為が対象です。 2年以下の拘禁刑または200万以下の罰金

上記のとおり、DVは、暴行や傷害にとどまらず、脅迫罪や不同意性交等罪、殺人罪など重大な刑事事件に発展するおそれがあります。

行為の内容によっては複数の罪が同時に成立し、逮捕や起訴後に重い刑罰が科される可能性もあるため、決して軽視できるものではありません。

とくに、婚姻関係の有無にかかわらず、「同意のない性行為」や「保護命令違反」などは近年厳罰化が進んでおり、社会的影響も大きくなっています。

DVで通報・逮捕されたあとの流れ

DVで通報され、加害者が逮捕された場合、法律に基づいて迅速かつ厳格に手続きが進められます。

以下では、逮捕後から裁判に至るまでの主な流れを、時系列に沿って解説します。

【逮捕後48時間以内】取り調べを受け、検察へ送致される

DVの現場で現行犯逮捕された場合、または通常逮捕された場合、加害者(被疑者)は警察署に留置され、刑事事件としての取り調べを受けることになります。

警察は逮捕後、最大48時間以内に検察へ送致するか、釈放するかを決定しなければなりません。

DV事案では、被害者保護の観点から送致されるケースが多く、48時間以内に検察へ事件が送致されるのが一般的です。

【逮捕後72時間以内】検察官による取り調べを受け、勾留(身柄拘束)が請求される

警察から事件を受け取った検察官は、24時間以内に「勾留請求」するか、「釈放」するかを判断します。

勾留請求とは、被疑者をさらに10日間(延長で最大20日間)拘束し、捜査を継続するための裁判所への申立てのことです。

DV事件では、再犯や証拠隠滅のおそれがあると判断されることが多く、実際に勾留が認められる事例が多数を占めます。

【逮捕後23日以内】検察官によって起訴・不起訴が決定される

逮捕から最大23日以内に、検察官は被疑者を「起訴」するか「不起訴」にするかを判断します。

起訴された場合は刑事裁判にかけられ、有罪となれば刑罰が科されます。

一方、示談が成立していたり、初犯で反省が見られたりする場合には、不起訴処分となる可能性もゼロではありません。

不起訴となれば前科は付かず、身柄もすぐに解放されます。

【起訴】検察官によって起訴される

罰金刑が相当と判断された場合は被疑者の同意を得て略式起訴されることもあります。

その場合、正式な裁判は省略され、書類審査で罰金刑が科されます。

他方、検察官が拘禁刑が相当と判断した場合や被疑者が犯罪事実を争う場合は、起訴され正式な裁判が行われることとなります。

起訴後はおおよそ1ヵ月ほどで第1回公判期日(裁判)が開かれ、裁判所が書証や証言などの証拠をもとに有罪・無罪、量刑の判断を下します。

公判の回数や期間は事案の内容によって異なりますが、公訴事実の存否を争う場合や、不同意性交等罪など重大犯罪の場合などは、複数回の審理を要することが一般的です。

DV被害者の申立てにより「保護命令」が発令される可能性もある

DVで加害者が逮捕された場合、刑事手続とは別に、被害者の申立てにより裁判所から「保護命令」が出されることがあります。

保護命令とは、被害者の生命や身体を守るために、加害者に対して接近禁止や住居からの退去などを命じる制度です。

命令の種類としては、以下のようなものがあります。

  • 被害者への接近禁止命令(1年間)
  • 被害者への電話等禁止命令
  • 被害者と同居する未成年の子どもへの接近禁止命令
  • 被害者の親族などへの接近禁止命令
  • 加害者の住居からの退去命令(2ヵ月間または6ヵ月間)

なお、保護命令が出たあとにその命令に違反した場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という刑罰が科される可能性もあります。

DVで通報・起訴されると社会的な影響も生じる可能性がある

DVで通報された場合、その影響は刑事処分にとどまりません。

加害者本人の仕事や家庭、人間関係、社会的信用にも深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。

まず、逮捕・勾留されると、外部との連絡が制限され、職場への欠勤連絡は弁護士や親族を介してになります。

そして、逮捕・勾留によって長期間の無断欠勤が続けば、会社に事件が発覚し、懲戒処分や解雇につながるリスクが高まります。

とくに、勾留されたまま起訴された場合には、裁判が終了するまで数か月にわたって身柄拘束が続く可能性があり、事実上退職せざるを得ない状況になる可能性があります。

また、家庭においても、DVは離婚原因として認められるため、配偶者から離婚を申し立てられるケースが非常に多く見られます。

加害者が有罪判決を受けた場合は、親権を得ることも難しく、家族関係が断絶するケースも少なくありません。

さらに、DVによる逮捕や有罪判決が周囲に知られると、社会的信用を著しく損ないます

近隣住民や友人、職場関係者からの信頼を失い、社会的孤立に陥るおそれもあるでしょう。

なお、有罪となれば前科が付き、再就職や海外渡航、国家資格の取得などにも制限が生じるおそれがあります。

DVで通報・逮捕されたとき、弁護士に相談・依頼すべき理由

DVで通報された場合、逮捕・起訴といった重大な事態に発展するおそれがあります。

こうした状況で不利益を最小限に抑えるためには、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。

以下では、その主な理由を4つの観点から解説します。

刑事事件化してしまうのを回避できる可能性が高まる

弁護士が早期に介入することで、被害者との間で謝罪や示談の機会が持てるようになり、被害届や刑事告訴を取り下げてもらえる可能性が高まります。

たとえば、逮捕前の段階で誠意ある対応ができれば、警察による捜査開始や逮捕自体を回避できる可能性もあるでしょう。

刑事事件化が防げれば、前科もつかず、仕事や家庭への影響を最小限にとどめることが可能です。

早期釈放を実現するための活動をしてもらえる

弁護士は逮捕直後に本人と接見し、状況を把握したうえで、勾留を避けるよう検察や裁判所に働きかけます

たとえば、示談の進行状況や被害者の処罰感情の有無などを根拠に「逃亡や証拠隠滅のおそれはない」と主張することで、身柄拘束を防ぐことが可能な場合もあります。

また、すでに刑事告訴がされている場合でも、示談が成立すれば釈放や勾留延長の回避が見込まれます。

被害届の取り下げや告訴取消書の提出も、弁護士が適切に交渉することで実現しやすくなるでしょう。

不起訴処分の可能性が高まる

弁護士が被害者と交渉して示談を成立させることで、検察官に「社会的制裁は十分」「処罰感情がない」と判断され、不起訴が選択される可能性が高まります。

不起訴になれば刑事裁判はおこなわれず、前科も付きません。

とくに犯行態様が軽微である場合や、初犯で反省の態度が見られる場合、被害者が起訴までは望んでいないと判断される場合などには、弁護士の弁護活動が決定的に作用します。

仮に起訴されても罪を減軽できる可能性が高まる

万が一起訴されてしまった場合でも、弁護士による弁護活動によって量刑が軽くなることがあります。

たとえば、執行猶予付きの判決や罰金刑にとどまる可能性があり、実刑(刑務所収監)を回避できるケースも少なくありません。

また、再発防止に向けた加害者更生プログラムへの参加、医療機関での治療受診など、再犯リスクの低さを示す行動は、裁判所にとって情状酌量の材料となります。

こうした取り組みを的確に裁判官に伝えるのも、弁護士の役割です。

さいごに|DVで通報されたら速やかに弁護士へ相談を!

DVは、たとえ家庭内の出来事であっても、警察に通報されれば重大な刑事事件として取り扱われます。

DVによって逮捕や起訴に至ると、身柄の拘束、前科のリスク、社会的信用の喪失、家庭や職場での立場の喪失など、人生に大きな影響を及ぼしかねません。

一方で、適切な法的対応を講じることで、事態の深刻化を防ぐことは可能です。

早い段階で弁護士に相談し、示談や再発防止策に真摯に取り組めば、不起訴処分を得られる可能性もあり、身柄拘束の回避や刑の減軽にもつながります

DVの加害者となってしまった方にとって、最大の味方となるのは弁護士です。

ご家族や職場の支援を得ることが難しい中で、冷静に事実関係を整理し、今後どう立て直していくかを一緒に考えてくれる存在です。

DVをしてしまった事実に向き合い、更生を目指すためにも、まずは信頼できる弁護士に速やかに相談することをおすすめします。

事件を一日でも早く収束させ、自分自身の人生を立て直すための第一歩を、専門家の力を借りて踏み出しましょう

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株式会社アシロ編集部
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