- 特別受益とは|一部の相続人だけが被相続人から受けた利益のこと
- 特別受益の対象となる主な5つの贈与
- 特別受益の対象とならない主な4つの贈与
- 特別受益には持ち戻しという特別な制度がある
- 【例も解説】特別受益の持ち戻しを計算するためのステップ
- 特別受益を示すための具体的な証拠の一例
- 特別受益を示すための証拠を集めるためのステップ
- 特別受益があったことを主張するときのステップ
- 特別受益のトラブルを避けたいときは弁護士に依頼するのがおすすめな理由
- 特別受益に詳しい弁護士を探すならベンナビ相続がおすすめ
- 特別受益を弁護士に相談して成功につながった3つの事例
- 特別受益に関してよくある質問
- さいごに|トラブルの種になりやすい特別受益は弁護士に相談しよう
特別受益とは、一部の相続人だけが被相続人から生前に受け取った、特別な利益のことです。
遺産相続の場面では、例えば「兄だけが家の購入資金を出してもらっていた」、「姉は多額の生活費援助を受けていたのに、遺産は平等に分けようとしている」など共同相続人の間の取扱いで不公平感を抱えている方は少なくありません。
特別受益が認められれば、その利益を遺産に持ち戻して計算し直し、具体的な相続分を調整できます。
本記事では、特別受益の対象になる贈与・ならない贈与、持ち戻しの計算方法、相続開始から10年という主張期限、証拠の集め方までをわかりやすく解説します。
特別受益とは|一部の相続人だけが被相続人から受けた利益のこと
特別受益とは、特定の相続人が被相続人から生前に受け取った特別な利益を遺産の前渡しとみなして計算し直す制度です。
代表的なケースとして、次のような特別な利益が挙げられます。
- 住宅資金:自宅の建築費用や購入資金の援助
- 結婚・養子縁組:挙式費用や持参金などの多額の援助
- 事業・生活資金:開業資金の贈与や、ほかの兄弟姉妹と比べて明らかに高額な学費の支出など
特別受益の制度は、一部の相続人だけが被相続人から多くの財産を得て、他の相続人が不利益を被ることを防ぐためのものです。
続いて、特別受益の対象となる具体的なケースを解説します。
特別受益の対象となる主な5つの贈与
全ての生前贈与が特別受益になるわけではありません。
主なポイントは、遺産の前渡しといえるかどうかです。
ここからは、特別受益に該当しやすい代表的な5つの贈与を順に見ていきましょう。
遺贈|遺言書によって特定の人や団体に譲る財産
遺贈とは、遺言によって自分の財産を特定の人や団体に無償で譲ることです。
遺贈が使われる理由は、法定相続人以外の人やお世話になった団体にも自分の意思で自由に財産を分け与えられるからです。
遺言書がない場合は法律で決められた親族が財産を引き継ぎますが、遺贈を使えばそのルールに縛られず、財産の行き先を決められます。
具体的には、次のようなケースで活用されます。
- 内縁の妻(夫)や息子の嫁、親しかった友人など、法定相続人ではない人に財産を遺す
- 生前に被相続人が応援していた大学やNPO法人、故郷の自治体などに財産を寄付する
遺贈の方法には、財産を指定する特定遺贈と割合を指定する包括遺贈の2種類があります。
ただし、包括遺贈の場合は、借金などのマイナスの財産も引き継ぐ点に注意が必要です。
結婚・養子縁組のための贈与|結婚・養子縁組に際して支出した贈与
結婚や養子縁組に際して渡された持参金や支度金は、原則として特別受益にあたります。
新しい生活を始めるための多額の資金援助であり、相続財産の前渡しという性質が強いためです。
たとえば、嫁入りの持参金や、新生活を整えるための支度金などが対象になります。
養子縁組の際に渡されたまとまった資金も、同じように扱われます。
一方で、挙式費用や結納金は儀礼的・慣行的な意味合いが強く、原則として特別受益には含まれません。
ただし、対象となるのは婚姻届の提出後など、推定相続人になってからの贈与です。
婚約期間中に受け取ったものは含まれないため、贈与の時期もあわせて確認が必要です。
不動産や購入資金の贈与|土地・建物の贈与や購入資金として渡した金銭
土地・建物の現物贈与や、住宅購入資金の援助は、生計の資本としての特別受益にあたります。
住まいの確保は生活の基盤となる重大な利益であり、援助を受けた相続人とそうでない人との間で不公平が生じるからです。
たとえば、自宅を建てる際に親から受けた1,000万円の頭金援助などが典型例です。
ただし、2019年7月に施行された改正民法(民法903条4項)には特例があります。
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与・遺贈した場合は、原則として持ち戻し計算をしなくてよいとされています。
長年連れ添った配偶者の老後を守る規定であり、配偶者は自宅以外の遺産も受け取りやすくなります。
事業資金や自社株の贈与|独立・開業のための資金援助・会社株式の生前贈与
後継者に贈与された農地や店舗、非上場株式などの事業用資産は、原則として特別受益にあたります。
受贈者が生計を立てるための手段そのものであり、生計の資本としての性質が明確だからです。
たとえば、代表権とともに引き継いだ自社株式の贈与などが該当します。
事業承継の場面では、自社株の贈与が原因で遺留分をめぐるトラブルが起きやすいのが実情です。
後継者へ財産が集中するほど、ほかの相続人の不満も生じやすくなります。
あらかじめ遺言で持ち戻し免除の意思表示をしておく方法もありますが、遺留分の計算には影響が及ばない点には注意が必要です。
節税目的の生前贈与|相続財産を減らすためにおこなった暦年贈与など
相続税対策としておこなう毎年の暦年贈与は、内容によって特別受益にあたる場合があります。
税務上の年110万円の非課税枠と、民法上の公平な遺産分割は、別の基準で判断されるからです。
ただし、お祝い金のような少額で扶養の範囲にとどまる贈与は原則として特別受益にはあたらないので注意が必要です。
一方で、10年にわたり毎年100万円ずつ受け取って合計1,000万円が生計の資本といえる規模に達した場合は、計算の対象になり得ます。
少額か生計の資本かの線引きは、家庭の経済規模もふまえて個別に判断されます。
税金がかからない範囲での資産の贈与でも、その期間や合計金額によっては、遺産分割において公平性が改めて問われます。
特別受益の対象とならない主な4つの贈与
全ての援助が、前渡しとみなされるわけではありません。
儀礼的なものや、扶養の範囲内とされるものは対象外です。
ここでは、原則として特別受益にあたらない代表的な4つのケースを見ていきます。
挙式費用・結納金|結婚の儀礼的費用
結納金や挙式費用といった、結婚に際しての儀礼的な金品は、原則として特別受益にあたりません。
挙式費用・結納金は冠婚葬祭の慣行に沿った支出であり、遺産の前渡しではなく、親としての儀礼的な負担と評価されます。
たとえば、結納金や披露宴の費用を親が負担したケースが典型例です。
披露宴の規模が大きくても、慣行の範囲内なら原則は対象外と考えられます。
ただし、新生活のための持参金や支度金が高額にのぼる場合は、特別受益と判断される余地があります。
金額が世間の相場を大きく上回るかどうかが、線引きのひとつの目安です。
生命保険金|被相続人が保険料を負担しても受取人固有の財産として扱われる保険金
死亡保険金は、原則として特別受益の対象外です。
受取人に指定された相続人が、自分自身の権利として受け取る固有の財産とされ、遺産そのものには含まれないためです。
たとえば、子の1人を受取人にした保険金は原則としてそのまま受け取れます。
受取人固有の財産である以上、ほかの相続人は原則として分配を求められないので注意が必要です。
ただし、遺産総額に比べて保険金が著しく高額で、相続人の間に明らかな不公平が生じる場合は、例外的に持ち戻しの対象になり得ます。
著しく不公平なときは持ち戻しになるケースもあるため、最終的な分かれ目は金額のバランスといえます。
死亡退職金|会社の規定に基づいて支給される退職金
死亡退職金の扱いは、ケースによって判断が分かれます。
生命保険金に近い遺族の生活保障とみる側面と、亡くなった人の賃金の後払いとみる側面の両方があるためです。
たとえば、受給者の範囲や順位が法律や規定で定められている場合は、遺族固有の権利として特別受益にあたらないと考えられます。
一方で、受給規定がなく、賃金の後払いという性質が強い場合は、対象として議論される余地があります。
実務では支給規定の内容や金額の大きさをふまえて事案ごとに判断されるため、一律に対象外とは言い切れません。
受け取った額が遺産に比べて大きいほど、争点になりやすい論点です。
大学進学費用|扶養義務の範囲内とみなされる教育費・学費
一般的な範囲の大学進学費用は、原則として特別受益にあたりません。
親の社会的地位や家計、当時の進学率に照らし、扶養義務の範囲内とみなされるのが通常だからです。
現代では大学進学が一般的になり、扶養の範囲とされるケースが多くなっています。
たとえば、兄弟姉妹全員が大学へ進学している場合は、不公平とはいいにくいでしょう。
高校までの学費や塾代も、通常は扶養の範囲として対象になりません。
ただし、高額な私立医学部の学費や、ほかの兄弟姉妹と比べて突出した援助は、対象となる可能性があります。
大学進学費用が対象となるかの判断の軸は、家庭の状況と兄弟姉妹間のバランスです。
特別受益には持ち戻しという特別な制度がある
特別受益を考えるうえで欠かせないのが、持ち戻しという仕組みです。
生前の贈与を遺産に一度戻して、相続分を計算し直します。
ここでは、持ち戻しの意味と、時効・主張期限のルールを整理して解説します。
特別受益の持ち戻しとは
特別受益の持ち戻しとは、一部の相続人が受けた生前贈与や遺贈を遺産の前渡しとみなし、相続財産にいったん戻して計算する制度です。
なぜ必要かというと、生前に受け取った利益を考慮せずに分割すると、相続人どうしで不公平が生まれてしまうからです。
たとえば、子の1人だけが住宅資金や事業資金の援助を受けていた場合、その金額を遺産に足し戻したうえで全員の相続分を算定します。持ち戻しによって、援助を受けた人と受けていない人の最終的な取得額が、公平に近づきます。
主な対象となるのは、婚姻や生計の資本としての生前贈与、遺贈などです。
生前の援助の差をならし、相続人間の納得感を支える仕組みといえます。
特別受益の持ち戻しに時効はない
贈与がおこなわれた時期がどれほど昔であっても、相続人どうしの話し合いで分ける限り、持ち戻し自体に時効はありません。
特別受益の持ち戻しは、公平な遺産分割を実現するための制度なので、30年前や50年前の贈与でも証拠がある限りは対象内です。
たとえば、数十年前の住宅購入資金の援助も、当時の通帳や贈与契約書で証明できれば、相続人全員が合意する遺産分割協議に反映できます。
ただし、贈与の存在を主張する側(ほかの相続人)が立証責任を負うため、何の利益だったかを具体的に示す必要があります。
古い贈与ほど証拠の確保が難しくなるので、思い当たる資料は早めに探しておくと安心です。
特別受益の主張期限は相続開始から10年
持ち戻し自体に時効はありませんが、遺産分割で特別受益を主張できるのは、原則として相続開始から10年以内です。
2023年4月に施行された改正民法によって、期間が制限されました。
なお、この期限は家庭裁判所での審判・調停の場面での規定です。
相続人全員の合意による遺産分割協議では、10年を過ぎても特別受益を考慮した分割をすることは可能です。
たとえば、親が亡くなって11年目に遺産分割を始める場合、特別な事情がなければ過去の特別受益を考慮した計算が認められないので注意が必要です。
ただし、10年以内に家庭裁判所へ遺産分割調停などを申し立てていれば、この期限は適用されません。
やむを得ない事由が認められる例外もありますが、トラブルが予想されるなら早めの着手が欠かせません。
【関連記事】特別受益と遺留分の関係をわかりやすく解説!遺留分請求の流れや計算方法も紹介
【例も解説】特別受益の持ち戻しを計算するためのステップ
持ち戻しの計算は、3つのステップで進めます。
実際の数字をあてはめながら見ると、仕組みがつかみやすくなります。
ここでは、相続財産5,000万円・相続人が子3人のモデルケースで解説します。
STEP①:みなし相続財産の総額を算出する
まずは実際の遺産額に生前贈与などの特別受益額を全て足し戻して、みなし相続財産を求めます。
生前に受け取った利益を前渡しとみなせば、全ての相続人が同じスタートラインに立てます。
具体的な計算例は、次のとおりです。
- 相続財産:5,000万円(遺贈を除いた遺産額 )
- 特別受益:子A(500万円の贈与)、子B(200万円の遺贈)
- みなし相続財産:5,000万円 + 500万円 + 200万円 = 5,700万円
この合計額が、相続人間で分け合う仮想の遺産総額となり、全ての計算の出発点です。
STEP②:みなし相続財産を法定相続分に基づいて分割する
次に、STEP①で求めた総額を、各相続人の取得割合(法定相続分など)で割り振ります。
特別受益がなかったと仮定した場合の、各人の本来の取り分を算出するためです。
たとえば、相続人が子3人の場合の法定相続分は各3分の1です。
- 各人の仮の取り分:5,700万円 × 1/3 = 1,900万円
ここではまだ特別受益を差し引かず、いったん全員に均等(あるいは指定された割合)で配分します。
調整は次のステップでおこないます。
STEP③:特別受益額を差し引いて最終的な相続分を確定する
最後に、各人の仮の取り分から本人がすでに受け取っている特別受益額をマイナスします。
すでに前渡しで受け取っている分を調整し、最終的な受取額の公平性を保つためです。
具体的には、次のとおりです。
- 子A:1,900万円 - 500万円 = 1,400万円
- 子B:1,900万円 - 200万円 = 1,700万円
- 子C:1,900万円 - 0円 = 1,900万円
この計算により、生前贈与を受けた人と受けていない人の最終的な取得額(既受領分+今回の受取分)が、等しく調整されます。
特別受益を示すための具体的な証拠の一例
特別受益を主張するには、贈与の事実を裏づける客観的な証拠が欠かせません。
以下では、援助別に有効な証拠を一覧で整理しました。
| 特別受益の種類 | 有効な証拠の例 |
| 現金・預金の贈与 | 預金通帳の入出金記録、振込明細、贈与契約書 |
| 居住用・事業用不動産の贈与 | 不動産登記簿(登記事項証明書)、贈与契約書 |
| 被相続人名義の不動産の無償使用 | 賃貸借契約の不存在を示す資料、固定資産税の負担状況がわかる書類 |
| 車両の援助 | 自動車の購入契約書、名義変更の記録、振込明細 |
| 扶養義務の範囲を超えた生活費の援助 | 定期的な振込記録、家計簿、被相続人のメモ |
| 学資・留学費用の援助 | 学費の振込明細、留学費用の送金記録 |
| 借金の肩代わり・求償権の免除 | 返済の振込記録、借用書、債務免除の書面 |
| 事業用資金の援助 | 振込明細、贈与契約書、会社への出資記録 |
証拠の質が、主張の通りやすさを大きく左右します。
集められる資料を早めに確認しておきましょう。
【関連記事】【特別受益の証拠一覧】集め方や証拠がないときの対処法まで解説
特別受益を示すための証拠を集めるためのステップ
証拠集めは、身近なところから順に進めるのが効率的です。
まずは、被相続人の部屋を整理し、通帳・契約書・日記・確定申告書などを探します。
手元の書類だけで贈与の存在がわかることも少なくありません。
次に、被相続人が生前に利用していた全ての銀行で、過去10年分を目安に取引履歴を取り寄せてください。
古い記録は消えてしまうおそれがあるため、早めの請求が肝心です。
さらに法務局で土地の登記簿を取り寄せ、生前に名義変更がなかったかを確認します。
通帳の入出金や登記の変更履歴は、贈与の事実を示す強力な手がかりです。
自力での調査が難しい場合は、弁護士に依頼して弁護士照会などの制度を活用する方法もあります。
【関連記事】弁護士会照会とは|弁護士会照会を活用する際に知っておくべきこと|ベンナビ離婚
特別受益があったことを主張するときのステップ
特別受益の主張は、いきなり裁判ではなく、まず話し合いから始まります。
ここでは、協議・調停・審判という3つの段階を順を追って確認しましょう。
STEP①:遺産分割協議での主張
最初のステップは、相続人全員でおこなう遺産分割協議の場での提案です。
親族間で合意できれば、もっとも迅速かつ円満に相続問題を解決できます。
具体的には、収集した通帳のコピーや振込履歴など客観的な証拠を示しながら、ある相続人が生前に受けた援助の金額を明確に伝えましょう。
続けて「その分は今回の取り分から差し引くべき(持ち戻し)」と、根拠とともに筋道を立てて説明してください。
あらかじめ証拠を整理し、誰がいつ・いくらの援助を受けたかをまとめておくと話が進めやすくなります。
感情論ではなく証拠にもとづいた落ち着いた話し合いこそ、合意への近道といえます。
STEP②:遺産分割調停を申し立てる
協議で合意が得られない場合は、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。
当事者同士では感情が対立して進まない議論も、中立な調停委員が間に入れば、客観的な視点から合意点を探れます。
たとえば、特別受益を認めない相続人に対し、調停委員が提出された証拠の強さをかみ砕いて説明してくれます。
あわせて双方に妥協案を示し、現実的な着地点へ向けて説得を試みます。
調停はあくまで話し合いの延長ですが、裁判所が関与すれば、法的な落としどころが見つかりやすいです。
ただし、月に1回ほどのペースで期日が開かれるため、長期戦になりやすい手続きなのは頭に入れておきましょう。
STEP③:遺産分割審判へ移行する
調停でも合意に至らない場合は、自動的に遺産分割審判へ移行し、裁判所が結論を下します。
最終的には裁判官が提出された全証拠を精査し、法的強制力のある審判によって紛争を終わらせる必要があるからです。
たとえば、相手がどれだけ否定しても客観的な銀行振込の記録や不動産登記が残っていれば、裁判官は特別受益ありと認定します。
そして、その認定にもとづいて各相続人の分割割合を決定します。
下された審判に不服があれば、2週間以内に即時抗告を申し立てることも可能です。
最終局面でものをいうのは、証拠の質です。
早期に確実な証拠を集めておくことが、審判を有利に進める最大の備えになります。
【関連記事】遺産分割審判に不服な場合は即時抗告|具体的な申し立ての流れを解説
特別受益のトラブルを避けたいときは弁護士に依頼するのがおすすめな理由
特別受益は、感情と法律が複雑に絡み合いやすいテーマです。
弁護士に依頼すれば、得られるメリットは大きく3つあります。
1. 冷静かつ建設的な話し合いが可能になる
第三者である弁護士が介在すれば、感情的な対立を抑え、冷静に話し合える協議の場を確保できます。
親族だけの話し合いでは、過去のわだかまりなどが先立ち、収拾がつかなくなりがちです。
ときには、人間関係に修復不能な亀裂が入ってしまう可能性もゼロではありません。弁護士が代理人となれば、意見が食い違う相続人の間に入り、それぞれの主張を整理・代弁する形をとってくれます。
当事者同士が直接ぶつかる場面を減らせるため、感情の爆発による決裂を防ぐことが可能です。話し合いが感情論に流れそうな場面でも、弁護士が争点を法的な論点へ引き戻してくれます。
身内だけで解決しなければという心理的な負担も軽くなり、円満な合意に向けた土台が整います。
2. 法的根拠にもとづいた「妥当な分割案」が示される
弁護士の力を借りれば、専門的な法律知識にもとづき全ての相続人が納得しやすい公平な分割プランを立てられます。
特別受益の有無や寄与分の評価は、素人には判断が難しいケースバイケースの事案だからです。
弁護士であれば、判例や実務に即した的確な判断を下すことが可能です。
たとえば「これは特別受益にあたるのでは」という疑問に対し、妥当性を精査したうえで答えを示してくれます。
もし「今回は扶養の範囲内です」といった明確な根拠が示されれば、不毛な争いを避けられます。
算定の根拠を一つずつ示せるので、相続人それぞれが理由をもって受け入れやすくなるでしょう。
共通のルール下で協議を進められるため、不公平感が和らぎ、合意形成もスムーズに進みます。
3. トラブルを未然に防ぎ、将来のリスクを最小化できる
弁護士に依頼すれば、後々のトラブルを防ぐ強固な合意を形成できます。
弁護士が介入すれば、単に話し合いをまとめるだけでなく、合意内容を法的効力のある遺産分割協議書として正確に残せます。
書面が整っていれば、将来の言った・言わないという水掛け論を封じることが可能です。
記載に不備があると、せっかくまとまった合意が覆されてしまうおそれもあります。
たとえば、協議の成立後に新たな財産が見つかった場合の取り決めも、あらかじめ条項として盛り込めます。
将来起こりうるリスクを見越した内容にできるため、後から蒸し返される心配も小さくなるでしょう。
法律のプロである弁護士によるチェックが入れば、一度の協議で相続手続きを着実に前へ進められます。
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特別受益を弁護士に相談して成功につながった3つの事例
特別受益の主張は、証拠と交渉力がそろってはじめて結果につながります。
ここでは、弁護士への相談によって公平な遺産分割を実現した3つの事例を紹介します。
特別受益を主張して不均衡な生前贈与を調整できたケース
母が遺言を残さずに他界し、不動産や現金など多額の遺産が残されたケースです。
姉が母から生前に多額の贈与を受けていたにもかかわらず、遺産は法定相続分どおりに平等に分けようと主張。
話し合いは決裂し、依頼者が弁護士に相談しました。
弁護士は姉に対して特別受益の持ち戻しを主張し、贈与の証拠を収集。
調停では生前贈与の一部を遺産に組み戻したうえで協議が進み、依頼者は当初の見通しより多くの遺産を取得できました。
証拠に基づく主張が、公平な結果につながった一例です。
【参考記事】特別受益を主張し不均衡な生前贈与を調整できた事例|ベンナビ相続
生前贈与の特別受益によって平等な分割を実現できたケース
父が生前、長女(姉)の結婚時に住宅購入資金として1,500万円を援助していたケースです。
その後も、姉の子どもの教育費や車の購入費用などを度々援助しており、ほかの相続人との間に大きな不公平が生じていました。
弁護士が一連の援助を特別受益として整理し、持ち戻しを主張。
最終的に、生前贈与を考慮した平等な遺産分割を実現できました。
長年にわたる複数の援助も、丁寧に積み上げれば主張の根拠になることを示すケースです。
【参考記事】生前贈与の特別受益で平等な分割を実現|ベンナビ相続
特別受益の主張が認められて遺産分割が成立したケース
母が亡くなったあと、依頼者が母の預金の取引履歴を取り寄せて確認したところ、生前に多額のお金が引き出されていたケースです。
不自然な資金の流れがあったものの、当事者だけでは事実関係を整理できず、弁護士に相談しました。
弁護士が取引履歴などの客観的資料をもとに特別受益を主張。
最終的に主張が認められ、特別受益を反映した遺産分割が成立しました。
預金の取引履歴が、隠れた贈与を明らかにする決め手になった事例です。
【参考記事】特別受益の主張が認められ遺産分割が成立した。|ベンナビ相続
特別受益に関してよくある質問
特別受益について、相談現場でよく寄せられる疑問をまとめました。
時効や遺留分との関係、証拠がない場合の対処法など、気になるポイントを順に確認しましょう。
Q1.数十年前の古い生前贈与も特別受益に含まれるの?
30年前や50年前の贈与であっても、証拠があれば特別受益の対象になります。
特別受益の持ち戻しには、法律上の時効が定められていないためです。
たとえば、数十年前に家を建てる際に受けた資金援助や独立時の開業資金なども、当時の銀行記録や契約書で証明できれば、現在の遺産分割で考慮されます。
ただし、2023年4月に施行された改正民法により、遺産分割で特別受益を主張できるのは、原則として相続開始から10年以内です。
Q2.特別受益は遺留分にも影響するの?
特別受益は、遺留分にも影響します。
特定の相続人が生前贈与や遺贈で受けた特別受益は、遺留分を計算する際の基礎財産に加算されるからです。
たとえば、相続人の1人が生前に多額の贈与を受けていた場合、その金額を基礎財産に含めて遺留分が計算されます。
ただし、遺留分の計算で持ち戻す相続人への贈与は、以下の両方を満たす場合に限られます。
- 婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としての贈与であること
- 相続開始前10年間におこなわれたものであること
たとえば、住宅購入資金や開業資金の援助はここに含まれますが、日用品の贈答などは含まれません。
遺産分割での10年ルールとは基準が異なる点には注意が必要です。
Q3.大学の学費はすべて特別受益に含まれるの?
原則として、一般的な範囲の学費は特別受益の対象外です。
ただし、兄弟姉妹間で明らかな差がある場合は対象になる可能性があります。
一般的に、教育費は親の扶養義務の範囲内とみなされますが、特定の子だけが高額な私立医学部へ進学した場合は、生計の資本と判断される可能性があります。
たとえば、ほかの兄弟姉妹が高校卒業後すぐに就職した一方で、1人だけが多額の仕送りを受けて私立大学を卒業した場合は、その差額が特別受益とされるケースがあります。
Q4.特別受益を主張するための証拠がない場合はどうすればいいの?
証拠がない場合、法的な主張が認められる可能性は低くなります。
持ち戻しを求める側に立証責任があり、客観的な証拠で贈与の事実を証明しなければならないからです。
相手が贈与を認めていない際は、銀行の取引履歴を取り寄せたり、被相続人の家計簿や日記、当時の事情を知る親族の証言などを積み重ねて立証します。
証拠集めには限界もあるため、自力での調査が難しいときは弁護士に依頼して弁護士照会などの制度を活用することも検討しましょう。
さいごに|トラブルの種になりやすい特別受益は弁護士に相談しよう
特別受益は、生前の援助を遺産の前渡しとみなして相続分を調整し、相続人間の公平を保つための制度です。
特別受益は、対象の贈与・持ち戻しの計算など、判断に専門知識を要する場面が少なくありません。
特に難しいのが、証拠の収集と相手との交渉です。
隠れた贈与を明らかにするには、過去の取引履歴や登記の調査など、地道な準備が欠かせません。
不公平な分割を正したい・本来受け取れるはずの遺産を確保したいと感じたら、早めに相続に詳しい弁護士へ相談するのがおすすめです。
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