- 「離婚に応じない妻の心理が知りたい」
- 「妻が離婚に応じない場合にどうしたら説得できるか」
妻が離婚に応じない場合は、経済的な不安や子どもと離れたくないなどさまざまな理由が考えられます。
また離婚をしたくても方法を誤ると離婚が成立しづらくなるうえに、離婚条件の交渉で不利になってしまう可能性も否定できません。
本記事では離婚に応じない妻の心理・共通点や離婚に応じない妻を説得するにはどうすればいいか、妻が応じなくても離婚が認められる法定離婚事由について解説します。
妻との離婚を無事に成立させ、離婚条件の交渉で不利にならないためには、慎重に離婚の手続きや交渉をすすめなくてはなりません。
本記事の内容を理解すれば、離婚の成立をスムーズに実現しやすくなるうえに、離婚条件の交渉も有利にすすめやすくなります。
離婚に応じない妻の心理・共通点とは?
妻が離婚に応じない場合、以下のような不安や思いを抱えていることがあります。
- 離婚をしたら経済的に不安
- 財産分与や慰謝料の支払いに応じたくない
- 子どもに苦労させたくない
- 世間体や親族の目が気になる
- 夫が別の女性と再婚するのが許せない
- やり直せる可能性があると思っている
- 親権をとられ子どもに会えなくなるのは避けたい
- 夫が離婚したい理由が理解できない
離婚に応じてもらうなら妻の心理を理解し、不安を解消する必要があるでしょう。
それぞれ解説します。
離婚をしたら経済的に不安
妻が専業主婦で収入がない場合や収入が少ないときは、離婚後の経済面への不安が大きくなりがちです。
特に、結婚後すぐに家庭に入った人ほど社会復帰のハードルが高く、さらに子どもがいるなら進学費用や生活費の確保も課題になります。
現在しっかり収入がある場合でも、子どもが幼ければ仕事を続けることが難しくなる可能性があり、状況によっては転職を検討しなければならないこともあります。
経済的な不安を解消するためには、扶養的財産分与やまとまった金銭の支払い、年金分割などの制度の利用を検討する必要があるでしょう。
財産分与や慰謝料の支払いに応じたくない
財産分与や慰謝料の支払いに応じたくないために、妻が離婚に消極的になることもあります。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた現金や預貯金、不動産などの「共有財産」を公平に分け合う制度です。
夫婦どちらの名義であっても対象になり、原則として夫婦で半分ずつ分けます。
たとえば妻に収入がなければ夫の財産を分け合いますが、妻のほうが多くの財産を所有しているときは、妻から夫への分与が必要です。
なお、独身時代や別居後に築いた財産、相続や贈与によって取得した財産については対象になりません。
独身時代や別居後の財産まで対象になると妻が勘違いしている場合は、共有財産のみが対象であることを説明すると、納得して話し合いが進むことがあります。
また、離婚理由が妻の不貞行為やDVといった不法行為であるときは、妻に夫への慰謝料支払い義務が発生します。
もし妻が慰謝料を支払いたくないために離婚を拒否しているなら、減額や分割払いなどの解決策も含めて弁護士に相談し、法的措置をおこなうことも視野に入れたほうがよいでしょう。
子どもに苦労させたくない
子どものことを考えて、離婚に応じないケースもあるでしょう。
離婚して片親になることで、子どもが不自由を感じたり寂しい思いをしたりする可能性があります。
また、途中で苗字が変わる問題や、場合によっては転校が必要になるケースもあるため、離婚によって子どもの生活が一転することも珍しくありません。
そのため、「せめて子どもが幼いうちは、離婚を選択したくない」と考える人は少なくないでしょう。
確かに、親の離婚は子どもに大きな影響やストレスを与えます。
しかし夫婦仲がすでに冷めきっている場合、このまま婚姻生活を続けるほうが子どもに悪影響を与える可能性があります。
再度夫婦で話し合い、子どもにとってどのような選択がベストかを考え直す必要があるでしょう。
話し合いが進まないなら、弁護士への相談や夫婦カウンセリングなども検討してみてください。
世間体や親族の目が気になる
世間体や親族の目を気にして、離婚に応じないケースは少なくありません。
特に職場や子ども関係のコミュニティでは、離婚や家庭問題が話題になりやすく、その結果孤立したり居心地の悪さを感じたりする人もいます。
離婚後に実家へ戻ることで、親族や近隣から無神経な言葉や批判を受けたり、実家で肩身の狭い思いをしたりする可能性を心配しているケースもあります。
妻が世間体を気にしているようなら弁護士、カウンセラーと言った専門家に相談し、妻の気持ちを尊重したうえで最適な選択肢を探っていくことが重要です。
夫が別の女性と再婚するのが許せない
夫の再婚を阻止したくて離婚に応じないケースも考えられます。
特に夫が不倫相手との再婚を計画している場合、自分と別れて幸せになろうとしている夫を許せないと感じる妻もいるでしょう。
このようなケースでは、妻が意地になって話が進まない可能性があります。
これ以上こじれないためには、離婚・男女問題が得意な弁護士に相談し、慰謝料や財産分与も含めてアドバイスをもらうとよいでしょう。
やり直せる可能性があると思っている
やり直せる、関係を修復できる可能性があると考え離婚を避けたいと考えている場合もあります。
こちらが離婚の意思を訴えても、一時的な感情と誤解し重く受け止めていないかもしれません。
このような場合は改めて話し合いの場を設けて、離婚以外には考えられないことや関係の修復が難しいこと、一緒にいることを苦痛に思う気持ちなどを正直に伝える必要があるでしょう。
相手が感情的になるようなら、当事者だけでなく専門家や親族といった第三者も交えて話し合うことをおすすめします。
親権をとられ子どもに会えなくなるのは避けたい
夫に親権をとられて子どもと会えなくなるのを回避するために、離婚を拒否している場合もあります。
子どもの親権に関しては、子どもにとってどちらに引き取られることが幸せか、子どもはどちらについていくことを望むかといったことを考慮して決める必要があります。
妻が親権者になっても問題なく子どもを育てられるなら、妻に親権を譲ることを提案するのもひとつの選択肢です。
「親権は譲れない」という場合でも、相手の希望を組むようなかたちで面会交流の方法について取り決めることで、離婚に応じてもらえる可能性があります。
一緒に暮らせなくても親としてできることはあり、これからも子どもと関わっていけることを伝えましょう。
そのほか、共同親権を条件に離婚を提案する方法もあります。
共同親権制度は、2026年5月までに施行される予定です。
共同親権の詳細やメリット・デメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】共同親権とは?日本でいつから導入されるかやメリット・デメリット解説
夫が離婚したい理由が理解できない
夫がなぜ離婚したがっているのか理解できないというケースも考えられます。
たとえば妻のきつい言動や態度に耐えきれず、夫が「これ以上結婚生活を続けていくのは難しい」と感じていても、妻に自覚がなければ離婚を受け入れにくいでしょう。
まずは自分がなぜ離婚したいのかを整理し、感情的にならず相手に伝えることが大切です。
一方的に結論だけを押し付けるのではなく、相手に聞いてもらう時間をつくり、一緒にいてつらいと思ったことや関係を修復できないと感じたことを具体的に説明しましょう。
相手がなかなか納得しないときでも、繰り返し意思を伝え続けることで、少しずつ気持ちを受け入れてもらいやすくなります。
当事者だけでは行き詰まるような場合は、弁護士やカウンセラーなどの第三者に相談し、話し合いの場に同席してもらうことも有効です。
離婚に応じない妻を説得する方法7つ
妻が離婚に応じないなら、以下の方法で説得してみましょう。
- 離婚問題を得意とする弁護士に相談してアドバイスを求める
- 別居して夫婦関係が破綻していることを示す
- 離婚したい意思と理由をはっきりと伝える
- 離婚届を渡して本気であることを示す
- 相手にとって有利な離婚条件を検討する
- 離婚しても妻と子どもの関係や生活に支障をきたさないように配慮する
- 「法定離婚事由」があれば証拠を示して離婚を回避できないことを示す
以下、それぞれ解説します。
1.離婚問題を得意とする弁護士に相談してアドバイスを求める
まずは、離婚問題を得意とする弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すべき理由は以下のとおりです。
- 妻がなぜ離婚を拒むのかを分析してもらえる
- 自分に代わって妻と交渉してもらえる
- このまま交渉を続けるべきか法的措置をとるべきかを判断してもらえる
- 離婚を希望する理由が法的に認められるか確認してもらえる
- 財産分与・慰謝料・親権・養育費をはじめとした離婚条件についても相談できる
- 妻に離婚への本気度が伝わる
夫婦間の話し合いだけでは、離婚を拒む妻の本音がわからないこともあります。
しかし離婚問題を得意とする弁護士なら、知識やこれまでの経験をもとに妻の気持ちを分析しながら、最適な交渉方法を助言してくれるでしょう。
また、弁護士が間に入れば当事者同士が感情的になりにくく、本気で離婚を考えていることが妻に伝わります。
法的な視点が加わることで安心感が増し、スムーズに進めやすくなるでしょう。
2.別居して夫婦関係が破綻していることを示す
妻と別居し、夫婦関係の破綻を示すのもひとつの手段です。
別居期間が3年〜5年程度続くと、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして裁判で離婚が認められる可能性が高まります。
別居を切り出す際は冷却期間を置きたい旨を伝え、まずは合意を得ることが重要です。
勝手な家出や生活費の未払いは悪意の遺棄とみなされ、裁判で不利になるおそれがあります。
別居中の生活費の支払いについても、よく話し合ったうえで慎重に進めましょう。
また、親権を希望する場合も注意が必要です。
なぜなら、別居後に子どもと生活するほうの親が主たる監護者とみなされ、そのまま親権を取られる可能性があるためです。
無計画な別居や妻に同意を得ず子どもを連れ出すなど、親権獲得の妨げになる行為はおこなわず、別居の仕方やタイミングを弁護士に相談することをおすすめします。
離婚で父親が親権を取るためのポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】離婚で父親が親権を取るには?親権者になるポイントや手続きを解説
3.離婚したい意思と理由をはっきりと伝える
離婚の意思と理由をはっきり妻に伝えましょう。
妻はまだ、やり直せると思っているかもしれません。
どのような経緯で離婚を決意したかを説明し、やり直すつもりはないことや愛情がなくなってしまったことなど、離婚以外の選択肢がないことを冷静に伝えましょう。
すぐにわかってくれなくても、根気よく伝えていれば、決意が揺らがないことを理解してくれる可能性が高まります。
注意点は、相手に「説得すればまだチャンスがある」と思わせないことです。
離婚の意思が固く、気持ちが変わる余地がないことを言葉や態度で示しましょう。
もし直接話すのが難しければ、手紙やメールでも構いません。
文章なら自分の考えを整理しやすく、相手にも落ち着いて読んでもらえるでしょう。
4.離婚届を渡して本気であることを示す
いくら「離婚したい」と言っても相手に気持ちが伝わらないときは、離婚届を渡して本気で離婚を考えていることを示すのもひとつの手です。
相手がやり直せると思っていたり、「どうせ本気ではないだろう」と真剣に捉えていなかったりするケースでは、口頭で主張するよりも書類を準備して提示したほうが現実のこととして伝わりやすいです。
記入・押印済みの離婚届を突きつけられれば、さすがに本気だと気づくでしょう。
5.相手にとって有利な離婚条件を検討する
相手にとって有利な離婚条件を提示することも、妻を説得するうえで有効です。
たとえば以下のような条件を提示すれば、相手が納得しやすくなります。
- 財産分与で相手の取り分が多くなるようにする
- 相手が納得できる金額の慰謝料を支払う
- 親権を譲る
- 相手が希望するかたちで面会交流をおこなう
- 相手が持ち家に住み続けられるようにする
単に相手が有利になるだけではなく、相手が不安に感じているところに配慮するのがポイントです。
離婚後の不安が解消されれば、離婚を受け入れてもらいやすくなります。
6.離婚しても妻と子どもの関係や生活に支障をきたさないように配慮する
子どもがいる場合、離婚後も妻と子どもが良好な関係を築いたり不自由なく生活したりできるよう配慮する姿勢が大切です。
たとえば、妻が子どもの親権をもつなら養育費や教育費の支払い、こちらが親権をもつなら面会交流の実施など、離婚によって妻と子どもの関係や生活になるべく支障をきたさないように配慮しましょう。
また、以下のように具体的な取り決めをしておくことをおすすめします。
- 養育費の取り決め(子どもが何歳になるまで、月額いくら支払うか)
- 面会交流の方法・頻度(月何回、何時間、どこで、どんなルールでおこなうか)
- 面会交流の際の送迎方法、事前の連絡、調整方法
- 学校行事やイベントへの参加について
- 医療費や進学費用など、通常の養育費以外に発生する費用の分担方法
- 子どもの進路や重要な決定に関する協議や連絡のルール
- 子どもとの連絡手段(電話・メール・LINEなど)とルール
このように決めておくことで妻の不安が解消され、離婚に応じてくれる可能性が高まります。
7.「法定離婚事由」があれば証拠を示して離婚を回避できないことを示す
法定離婚事由があるなら、その証拠を提示して離婚を回避できないことを伝えてもよいでしょう。
「法定離婚事由」とは裁判で認められる法律上の離婚原因です。
法定離婚事由があれば、相手が応じなくても裁判で離婚が認められます。
なお、法定離婚事由の詳細については、本記事内の「妻が離婚に応じなくても裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」の種類5つ」で後述します。
どうしても離婚に応じない妻と離婚する手順
妻がどうしても離婚に応じないなら、以下の手順で進めましょう。
- 協議離婚|まずは話し合いでの離婚を目指す
- 離婚調停|話し合いで合意できない場合は調停へ移行
- 離婚裁判|調停で合意できない場合は裁判を起こす
まずは話し合いで合意を目指し、合意できなければ調停、調停でも難しければ裁判というように、段階を踏んで進めていく必要があります。
順番に見ていきましょう。
1.協議離婚|まずは話し合いでの離婚を目指す
まずは話し合いでの離婚を目指しましょう。
協議離婚は、夫婦間で話し合って離婚についてや親権、財産分与、養育費といった離婚条件に合意したあと、離婚届を市区町村役場に提出することで成立する離婚方法です。
きちんと話し合いの場を設け、根気よく説得を続けることで、相手も納得してくれる可能性があります。
一方的に自分の気持ちを押し付けるのではなく相手の気持ちも聞き、場合によっては離婚条件を譲歩する判断も必要でしょう。
弁護士に代理で交渉してもらう方法もある
弁護士に依頼して、自分の代わりに交渉してもらう方法もあります。
当事者だけの話し合いでは、どちらかが感情的になってまともに話ができないこともありますが、弁護士なら法律の知識や交渉経験を活かして冷静かつ客観的に進めてくれます。
相手も、弁護士となら冷静に話しやすいでしょう。
また、時間や費用がかかる、プライバシーが公に晒されるといった点から、多くの人は裁判になるのは避けたいと考えます。
弁護士が間に入ることで、こちらが法的措置を視野に入れていることが相手に伝われば、スムーズな合意が期待できるでしょう。
なお、弁護士に相談・依頼するなら、協議離婚のタイミングがおすすめです。
早い段階から弁護士の協力を得れば調停や裁判に発展するのを防げるため、弁護士費用を抑えやすくなります。
2.離婚調停|話し合いで合意できない場合は調停へ移行
協議で合意できない場合は、離婚調停を申し立てます。
調停は、裁判所の調停委員を間に挟んで話し合う手続きです。
当事者が顔を合わすことなく進むため、当事者だけで話し合うよりもお互い冷静に対応できる可能性が高いです。
また、離婚原因が妻の不倫やDV、モラハラなどであれば「離婚せざるを得ない」という流れになりやすく、協議よりもスムーズに解決できる場合があります。
合意できれば裁判所から調停調書が交付され、離婚が成立します。
合意できない場合や相手が調停に参加しなかったときは不調に終わるため、あとは裁判を検討するしかなくなります。
離婚調停に臨む際は、離婚原因を裏付ける証拠を提示し、冷静に説明しましょう。
相手の悪口ばかり言うのは、心証が悪くなるためおすすめできません。
うまく説明できそうになければ弁護士に同席してもらい、サポートしてもらうとよいでしょう。
3.離婚裁判|調停で合意できない場合は裁判を起こす
調停で合意できなかった場合は、離婚裁判を提起します。
離婚裁判では、裁判にて離婚が認められる条件である「法定離婚事由」の有無が争われます。
法定離婚事由があるとされた場合は、妻が離婚に応じない場合でも裁判で離婚が認められるのです。
法定離婚事由の詳細については、次章で詳しく解説します。
なお、裁判への対応は自分でもできますが、有利に進めるためには専門知識や経験が必要です。
精神的な負担もかかるため、弁護士に対応を依頼することが強く推奨されます。
妻が離婚に応じなくても裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」の種類5つ
離婚原因が民法第770条の定める「法定離婚事由」に該当する場合、妻が離婚に応じなくても裁判で離婚が認められます。
法定離婚事由には、以下の5つがあります。
- 不貞行為|配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと
- 悪意の遺棄|正当な理由なく同居義務・扶助義務を果たさないこと
- 3年以上の生死不明|3年以上にわたり調べつくしても生死がわからないこと
- 強度の精神病|夫婦の共同生活継続が困難なほど重度の精神疾患
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記のいずれかに該当することを客観的な証拠で証明し、裁判所が離婚請求を認めれば妻が離婚に同意していなくても離婚が可能です。
それぞれの条件について見ていきましょう。
不貞行為|配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと
不貞行為とは、結婚している人が配偶者以外の人と肉体関係を持つことをいい、法定離婚事由に該当します。
裸で抱き合う、体を触り合うといった性交類似行為も肉体関係に含まれますが、デートや食事をしただけの場合やキス、手を繋ぐなどの行為は不貞行為にはあたりません。
また、自由意思に基づいている必要があるため、強姦や性行為を強要されたケースなども含まれません。
不貞行為を証明するためには、以下のような証拠が必要です。
- ラブホテルや不倫相手の家に出入りする際の写真・動画
- 性行為や裸、下着姿で写っている写真・動画
- 肉体関係にあることがわかる会話の音声データ
- 肉体関係を仄めかすメール・LINE・SNSでのやりとり
- 探偵・興信所の報告書
不貞行為の事実があっても、立証できなければ離婚は認められません。
証拠集めが難しければ、弁護士にアドバイスをもらいましょう。
悪意の遺棄|正当な理由なく同居義務・扶助義務を果たさないこと
悪意の遺棄は、正当な理由なく同居義務や扶助義務を果たさないことであり、法的離婚事由にあたる行為です。
夫婦は同居し、お互いに助け合って生活することが民法第752条で義務付けられています。
これらの義務に反すると悪意の遺棄に該当し、離婚が認められる可能性があります。
悪意の遺棄にあたる可能性のある行為の例は以下のとおりです。
- 勝手に家出をして同居を拒否する
- 配偶者を家から追い出す・家に入れない
- 家を出て不倫相手と同棲する
- 障がいのある配偶者を放置して別居し、生活費を渡さなかった
- 家事や育児を放棄した
- 十分に収入を得ているにもかかわらず生活費を負担しない
なお出張や転勤、夫のDV・モラハラなど、別居することに正当な理由があると認められるときは悪意の遺棄に該当しません。
3年以上の生死不明|3年以上にわたり調べつくしても生死がわからないこと
相手が 3年以上生死不明の状態で、努力を尽くしても見つからないといった場合も法定離婚事由として認められます。
単に相手の行方がわからないとか、連絡が取れないというのみでは法定離婚事由として認められません。
警察に捜索願を出したり、住居・戸籍を調査したりといった努力を尽くしたがみつからないといった場合に認められます。
また、預金口座からお金を引き出した形跡があったり、自宅や実家などに本人から荷物が送られてきたりする状況であれば、居場所がわからないだけなので生死不明とはいえません。
強度の精神病|夫婦の共同生活継続が困難なほど重度の精神疾患
夫婦の共同生活を継続し難いほど重度な精神疾患を相手が患っていた場合も、法定離婚事由にあたります。
ただし、単に精神病を患っているというだけでは離婚理由にはなりません。
一時的なものや治る見込みがあるときは該当せず、専門医に「回復の見込みなし」と診断されたケースに限ります。
また法定離婚事由として認められるには、互いに支え合う努力を尽くしてもなお共同生活が成り立たない場合です。
日常的に相手を介護したり医療費を負担したりなどの努力をしていなければ離婚は認められません。
反対にこのような努力をしていないことが、前述の「悪意の遺棄にあたる」と相手に主張される可能性はあります。
ただし、離婚を認めることで精神病患者をさらに追い詰めるおそれがあるため、条件に該当していても離婚が認められない場合がある点に注意が必要です。
なお、「強度の精神病」は、2025年9月現在では法定離婚事由のひとつですが、2024年5月の法改正により削除が決まっています。
2026年5月までに施行され、施行後は「婚姻を継続し難い重大な事由」の中で事情に応じて判断されます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由
これまでに解説した4つの理由以外にも、婚姻を継続し難い重大な事由があれば裁判で離婚が認められるとされています。
婚姻を継続し難い重大な事由とは簡単に言い換えると、夫婦関係が破綻し修復がきわめて困難な状態となるほどの要因です。
たとえば「性格の不一致」は離婚原因としてよくあげられます。
しかし互いの努力で修復が可能と想定される場合には、婚姻を継続し難い重大な事由とはみなされません。
それが原因のひとつとなり長期間の別居生活が続いているなどといった際に、ようやく婚姻を継続し難い重大な事由と判断されるのです。
そのほか、婚姻を継続し難い重大な事由とみなされる可能性がある例として以下があげられます。
| DV・モラハラ | 例:継続的にはげしいDV・モラハラを受けている場合 |
|---|---|
| 経済的な問題 | 例:一方の浪費癖・ギャンブル癖で家計が苦しくなり、夫婦関係が破綻した場合 |
| 長期的な別居 | 例:別居生活が長期的(少なくとも3~5年程度)に続き、夫婦関係が冷め切っている場合 |
| セックスレス | 例:正当な理由なく長期的に性交渉を拒否し続け、セックスレスとなり婚姻関係が破綻した場合 |
| 過度な宗教活動 | 例:宗教活動にのめり込み過ぎ、勝手に夫婦のお金を寄付につぎ込むなどして婚姻関係が破綻した場合 |
| 親族との不和 | 例:嫁姑問題など親族との不和が続いているにもかかわらず、配偶者が見て見ぬふりをし続けた場合 |
| 虐待・育児放棄 | 例:虐待・育児放棄によって子どもの健やかな成長に支障をきたしている場合 |
妻に離婚を迫るときのNG行為
妻に離婚を迫る際にいくつかの NG行為をしてしまうと、スムーズに離婚できなくなったり離婚条件の交渉で不利になったりします。
妻と離婚について交渉するときは以下NG行為を控え、冷静に行動することが必要です。
NG行為の主な例として以下があげられます。
- 離婚の準備が整っていない段階で離婚を切り出す
- 感情的な状態で離婚を切り出す
- 感情的になって相手を罵倒したり人格を否定したりする
- 相手に無断で離婚届を提出する
- 正当な理由なく一方的に別居する
- 相手の合意なしに子どもを連れ去る
- 財産を隠したり無断で処分したりする
- 離婚するのに不利な行動をする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
離婚の準備が整っていない段階で離婚を切り出す
離婚に関する知識をつけたり慰謝料請求のための証拠を確保したりなど離婚の準備をしておくことで、離婚条件の交渉を有利にすすめられます。
離婚したい旨を相手に伝えて早くスッキリしたいと思うかもしれませんが、何の準備もなく離婚を切り出すのは避けましょう。
離婚の意思を伝えることで、共有財産を隠したり不倫の証拠を隠滅したりする時間を相手に与えてしまうためです。
その結果、財産分与や慰謝料請求といった離婚条件の交渉が不利になる可能性があります。
離婚前にどのような準備をすべきかは、以下記事で詳しく解説しているので興味があれば参照ください。
【関連記事】後悔から学ぶ離婚する前に必ずおこなう9つのこと|すんなり離婚するには
感情的な状態で離婚を切り出す
感情的になった状態で離婚を切り出すのも、NG行為のひとつです。
こちらが感情的だと相手もけんか腰になり、まとまるものもまとまらなくなります。
子どもが寝たあとなど、ふたりで落ち着いて話せる状況をつくり、冷静に離婚を切り出しましょう。
また、責めるような口調にならないよう離婚の理由や気持ちを伝え、すぐに結論を迫るのではなく相手に気持ちを整理する時間を与えることも重要です。
タイミングが難しければ弁護士に相談し、冷静に話せそうになければ無理に直接話そうとせず、手紙やLINE などで気持ちを伝えることを検討しましょう。
感情的になって相手を罵倒したり人格を否定したりする
感情的になり、相手を罵倒したり人格を否定するようなことを言ってしまったりするのもNG行為です。
こういったNG行為の結果、相手の態度が硬化し余計に交渉がすすみづらくなってしまいます。
ケースによっては精神的DVやモラハラに該当するおそれがあるため、「相手の顔を見ると何を言ってしまうかわからない」というような場合は、手紙やLINEなどの手段を使うか、弁護士に同席してもらったほうがよいでしょう。
相手に無断で離婚届を提出する
いくら相手が離婚に同意しなくても、無断で離婚届を提出するのはやめましょう。
勝手に相手の分も署名・押印して提出すると有印私文書偽造罪に該当し、3ヵ月以上5年以下の拘禁刑に処されるおそれがあります。(刑法第159条)
また、相手に黙って離婚届を提出しても、受理通知によって相手にバレます。
受理通知とは、離婚届を受理した市区町村役場が、離婚届提出時に本人確認できなかったほうの配偶者に送付する通知書です。
たとえば夫が妻に無断で離婚届を提出した場合、後日妻に対して受理通知書が送付されます。
無断で婚姻届を提出する行為は、リスクしかないことを理解しておきましょう。
正当な理由なく一方的に別居する
相手が離婚に応じないからといって、正当な理由なく一方的に別居すると裁判で不利になるおそれがあります。
正当な理由なく一方的に別居すると、同居義務違反になる可能性があるためです。
さらに、生活費の支払いを放棄した場合は法定離婚事由のうち悪意の遺棄に該当し、有責配偶者とみなされる可能性があります。
有責配偶者からの離婚請求は認められにくいため、余計に離婚が遠のくでしょう。
別居を検討しているなら、妻と話し合ったうえで実行することが大切です。
ただし、相手からDVやモラハラを受けているなどの事情があるときは悪意の遺棄にはなりません。
まずは弁護士に相談し、慎重に選択しましょう。
相手の合意なしに子どもを連れ去る
別居の際、相手の合意なく子どもを連れ去ってはいけません。
未成年者略取罪(刑法第224条)に該当し刑事処罰を受ける可能性があるほか、罪には問われなくても親権や面会交流の権利に重大な悪影響をおよぼすおそれがあります。
たとえば、以下のようなケースは違法とみなされる可能性があります。
- 子どもの親権についてもめているときに連れ去った
- 子どもが嫌がっているにもかかわらず強引に連れ去った
- 子どもの登下校時に待ち伏せして連れ去った
一方で以下のような事情があるときは、子どもを連れ去っても違法とみなされません。
- 妻が子どもを虐待していた
- 夫が妻からDV・モラハラを受けており、子どもに悪影響がおよぶ可能性がある
- 妻に子どもを育てる能力がない
連れ去りが違法になるかならないかの判断が難しいが、子どもとともに別居したいときは弁護士に相談してアドバイスを求めることが強く推奨されます。
財産を隠したり無断で処分したりする
相手に財産を分けたくないからといって、財産を隠したり無断で処分したりすることはやめましょう。
仮に名義が自分でも、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産なら夫婦の共有財産であり、財産分与の対象です。
財産を隠すなどしたことがバレると、相手との対立も深まるうえに裁判になった場合に裁判所の心証も悪くなります。
その結果、財産分与の交渉がスムーズに進まなくなったり、不利になったりするのです。
また財産を隠したり無断で処分したりした場合、相手からの損害賠償請求が認められる可能性もあります。
離婚するのに不利な行動をする
離婚するのに不利になる行動は慎みましょう。
たとえば以下のような行為によって自分が有責配偶者になり、離婚請求が認められにくくなるおそれがあります。
- 不倫する
- 正当な理由なく無断で別居に踏み切る
- 別居中の婚姻費用を支払わない
- 相手に暴言を吐いたり暴力を振るったりする
- 子どもを置いて別居したり子どもを連れ去ったりする
たとえ相手が不倫をしていても、自分もしていい理由にはなりません。
不倫をすることで、慰謝料を請求される可能性もあります。
離婚を検討し始めたら、自分が不利になるようなことは極力しないようにしましょう。
さいごに|妻が離婚に応じない場合は弁護士に相談を!
離婚に応じない妻の心理や共通点、説得方法などについて解説しました。
妻が離婚に応じない場合、経済面や子どもに関する不安、慰謝料を支払いたくないといった理由で離婚を拒んでいるかもしれません。
そのほか、離婚の意思がきちんと伝わっておらず、こちらが本気で離婚したいと思っていない場合やまだやり直せると思っているケースもあるでしょう。
まずは妻がどのような理由で離婚を拒んでいるのかを確認し、それに応じた対応をしていくことが重要です。
説得方法は別居や離婚届を渡す、相手にとって有利な離婚条件を提案するなどいくつかありますが、妻が離婚に応じなければ、まずは弁護士に相談し、的確なアドバイスをもらうのがよいでしょう。
離婚問題を得意とする弁護士に相談・依頼することで、当事者だけで対応するよりもスムーズに解決できる可能性が高まります。
