病気で休職している間に、会社から解雇をほのめかされ、不安を感じていないでしょうか。
結論からいうと、病気を理由とする解雇は、どのような病気か、業務との関係はあるのかによって、認められる場合と認められない場合があります。
法律では、労働者の生活を守る観点から、病気を理由とした解雇について一定の制限が設けられており、会社が自由に解雇できるわけではありません。
本記事では、病気で解雇される可能性があるケースとないケースを整理し、解雇が不当だと感じた場合の具体的な対処法や、弁護士に相談・依頼するメリット、失業保険の扱いについて解説します。
自分のケースを冷静に判断して、適切な行動を取れるようになるために、ぜひ参考にしてください。
病気で解雇される可能性はある?法律上のルールは?
ここではまず、病気を理由とした解雇に関する基本的な考え方を整理したうえで、解雇される可能性があるケースと、法律上認められないケースを順に確認していきます。
業務と無関係の病気(私傷病)で解雇される可能性は?
業務と関係のない病気やけが(私傷病)の場合、それだけを理由にすぐ解雇されることはありません。
多くの会社では休職制度が設けられており、休職期間中は治療に専念し、回復後の復職を目指すことが前提となっています。
ただし、休職期間が満了しても回復せず、今後も業務をおこなうことが難しい場合には、解雇が認められる可能性があります。
この場合でも、会社はすぐに解雇できるわけではなく、医師の診断内容を踏まえたうえで、配置転換などほかの対応ができないかを検討し、慎重に判断しなければなりません。
また、私傷病を理由とする場合でも、解雇にはルールがあります。
原則として、会社は解雇の30日前までに予告をおこなうか、30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払わなければなりません。
こうした手続きが守られていない場合、解雇が無効と判断される可能性もあるため注意が必要です。
業務が原因の病気では「解雇制限」がかかる
業務が原因で病気やけがをした場合、療養中および療養終了後30日間は、原則として解雇することはできません。
これを「解雇制限」といい、労働基準法第19条に定められているルールです。
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
引用元:労働基準法
ただし、この解雇制限にも例外があります。
たとえば、療養開始から3年を経過しても回復しない場合には、会社が打切補償を支払うことで解雇が認められるケースがあります。
また、天災などやむを得ない事情により事業の継続が困難になった場合も、例外として解雇制限が適用されないことがあります。
とはいえ、これらはあくまで限定的なケースに限られます。
業務が原因の病気であるにもかかわらず、安易に解雇することは認められていません。
会社から「例外にあたる」と説明された場合でも、その判断が適切かどうかを慎重に確認することが大切です。
業務と関係がある病気か否かにかかわらず解雇できないケースとは
病気が私傷病か業務上の病気かにかかわらず、一定の事情がある場合には解雇そのものが認められないケースがあります。
ここでは、代表的な2つのケースについて整理します。
ほかの業務に移行すれば業務をおこなえる
病気やけがによって現在の担当業務を続けることが難しくなった場合でも、配置転換や業務内容の変更によって就労が可能となるケースがあります。
このような場合、会社は解雇を選択する前に、ほかの部署への異動や、身体的または精神的な負担が軽い業務への転換といった対応を検討すべき立場です。
こうした検討をおこなわず解雇に踏み切った場合、不当解雇と判断される可能性があります。
妊娠や出産を解雇理由とする
妊娠や出産、これに伴う体調不良を理由とする解雇は、法律上、原則として認められていません。
妊娠中や産後は一時的に就労が困難になることがありますが、これを理由に解雇することは、男女雇用機会均等法により禁止されています。
とくに、妊娠中または出産後1年以内に解雇された場合には、その解雇が妊娠や出産と無関係であることを会社側が証明できない限り、無効と判断される可能性が高いとされています。
病気を理由に解雇されたらどうすればいい?
病気を理由に解雇された場合でも、その解雇が直ちに有効となるとは限りません。
解雇が適法かどうかは、病気の内容や業務との関係、解雇に至るまでの会社の対応などを踏まえて判断されます。
ここでは、病気を理由に解雇されたときに取るべき対応を順に確認します。
まずは解雇された状況や経緯を確認する
最初におこなうべきなのは、解雇に至った状況や経緯を客観的に整理することです。
いつ、誰から、どのような理由で解雇を告げられたのか、書面か口頭かといった点を時系列で整理しておきましょう。
あわせて、病気の内容や診断書の提出状況、休職期間の有無、会社とのやり取りの記録なども確認します。
メールやチャット、面談時のメモなどが残っている場合は、削除せず保存しておくことが重要です。
会社に解雇通知書と解雇理由証明書の交付を要求する
解雇を言い渡された場合、口頭での説明だけで済ませず、必ず書面で内容を確認することが重要です。
まずは会社に対して、解雇日や解雇理由が記載された解雇通知書の交付を求めましょう。
また、労働者は、会社に対して解雇理由証明書の交付を請求する権利があります。
解雇理由証明書を取得することで、会社がどのような理由で解雇したと主張しているのかを客観的に確認できます。
不当解雇といえる証拠を集める
次に、不当解雇を裏付ける証拠を集めます。
具体的には、以下のような資料が証拠となり得ます。
- 医師の診断書や意見書
- 就業規則や休職制度に関する規定
- 解雇通知書、解雇理由証明書
- 会社とのメールや書面でのやり取り
- 配置転換や復職の相談を拒否された経緯がわかる資料
これらの証拠は、解雇が客観的に合理的かどうか、会社が十分な配慮をおこなっていたかを判断する材料となります。
解雇無効や慰謝料などの請求を検討する
病気を理由とした解雇が不当解雇といえる場合には、法的な請求ができる可能性があります。
代表的な請求内容は以下のとおりです。
| 請求内容 | 概要 |
| 解雇無効・地位確認請求 | 解雇が無効であることを主張し、労働者としての地位が継続していることを確認する請求 |
| 未払い給与請求 | 解雇が無効とされた場合、解雇期間中に支払われなかった給与の支払いを求める請求 |
| 慰謝料請求 | 不当解雇によって精神的苦痛を受けた場合に、その損害について賠償を求める請求 |
これらの請求は、話し合いによる解決を目指す場合もあれば、労働審判や訴訟といった法的手続きによって争うケースもあります。
解雇無効などを争う具体的な方法や手順については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【関連記事】不当解雇の裁判手順|期間や費用・流れをわかりやすく解説
労働問題に強い弁護士に対応を相談・依頼する
病気を理由とした解雇が不当かどうか判断に迷う場合や、会社との交渉が難しい場合には、労働問題に注力する弁護士に相談することが有効です。
弁護士に相談することで、解雇が不当解雇に該当するかどうかの判断を受けられるほか、会社との交渉や話し合いを代理してもらうことができます。
また、不当解雇を主張するために必要となる証拠の整理や、労働審判・訴訟といった法的手続きについてもサポートを受けることが可能です。
病気で解雇されそうなとき弁護士に対応を相談・依頼するメリット
ここでは、病気を理由とする解雇について、弁護士に相談・依頼することで得られる主なメリットを確認します。
不当解雇にあたるか正確に判断してもらえる
病気を理由とした解雇が不当解雇に該当するかどうかは、法律や判例を踏まえて判断する必要があります。
弁護士に相談することで、病気の内容や休職期間、会社の対応などを総合的に確認したうえで、解雇が法的に認められるかどうかを正確に判断してもらうことができます。
自分では判断が難しいケースでも、専門的な視点から整理してもらうことで、今後取るべき対応が明確になるのがメリットです。
依頼者の代理として会社と交渉してもらえる
会社と直接交渉することに不安を感じる人も少なくありません。
弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として会社との交渉や話し合いを任せることができます。
精神的な負担を軽減できる点も、大きなメリットといえるでしょう。
不当解雇といえる証拠の収集をサポートしてもらえる
不当解雇を主張するためには、客観的な証拠が重要です。
弁護士に相談することで、どのような資料が証拠として有効かについて具体的な助言を受けられます。
診断書や就業規則、会社とのやり取りなどをどのように整理すべきかについてもサポートを受けられるため、証拠不足によって不利になるリスクを抑えることができます。
話し合いだけで解決できる可能性が高まる
弁護士が介入することで、会社側の対応が慎重になるケースは少なくありません。
法的な根拠を示した交渉がおこなわれることで、裁判に進む前の段階で、話し合いによる解決が図られる可能性が高まります。
早期解決につながれば、時間的、精神的な負担を抑えることにもつながるでしょう。
法的な手続きも一貫して任せられる
交渉による解決が難しい場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きに進むことになります。
弁護士に依頼していれば、これらの手続きについても一貫して対応を任せることができます。
書類作成や主張の整理など、専門的な対応が必要となる場面でも、安心して任せられる点は大きなメリットです。
慰謝料請求や未払い賃金請求などの可能性もアドバイスしてもらえる
病気を理由とした解雇が不当と判断される場合には、解雇無効の主張だけでなく、慰謝料請求や未払い賃金請求が可能となるケースもあります。
弁護士に相談することで、状況に応じてどのような請求が考えられるかについても具体的なアドバイスを受けられます。
自分では気付きにくい請求の可能性についても整理してもらえるため、権利を適切に行使しやすくなるのが利点です。
病気で解雇されたら失業保険を受け取れる可能性がある
失業保険とは、離職後に就職する意思と能力があり、求職活動をおこなっている人に対して支給される給付です。
そのため、解雇された場合には、原則として失業保険の対象となります。
病気を理由に解雇された場合は、離職理由の区分上、会社都合退職として扱われることが多く、「特定受給資格者」に該当する可能性があります。
特定受給資格者に該当すると、給付制限がかからず、比較的早い段階で失業保険を受け取れる点が特徴です。
また、病気が原因でやむを得ず退職した場合であっても、「特定理由離職者」として認定されることで、会社都合としての扱いを受けられるケースがあります。
この場合も自己都合退職と比べて、給付開始までの不利が軽減されます。
ただし注意すべき点として、失業保険は「働くことができる状態」であることが前提です。
病気の治療中で、すぐに就職活動ができない場合には、失業保険の受給開始を延期する手続きが必要となることがあります。
失業保険の詳しい受給条件や申請手続きについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】病気で退職したら失業保険は受け取れる?もらえる条件や代わりの給付金について解説
さいごに|病気での解雇に不満があればなるべく早く弁護士に相談を!
病気を理由とした解雇は、全てが正当とは限りません。
私傷病か業務上の病気か、休職期間の扱いはどうなっているか、配置転換などの検討がなされていたかなど、さまざまな事情を踏まえて判断されるべき問題です。
解雇が不当である可能性があるにもかかわらず、何も対応せずに放置してしまうと、本来守られるはずの権利を行使できなくなるおそれがあります。
とくに、解雇無効の主張や未払い給与、慰謝料などの請求には、証拠の確保や適切な手続きが欠かせません。
病気で解雇された、または解雇されそうな状況にあり、不安や疑問を感じている場合には、なるべく早い段階で弁護士に相談することが重要です。
専門家の助言を受けることで、自分の状況を正しく把握し、冷静かつ適切な対応につなげることができます。
一人で悩まず、法的な視点からの判断を得ることで、今後の生活や働き方を見据えた解決を目指しましょう。
