- 「物損事故だったけど慰謝料がもらえた」
- 「物損事故だけど精神的苦痛を負ったから慰謝料を請求したい」
通常、けが人がいない物損事故では加害者や保険会社に対して慰謝料を請求することはできません。
しかし、ペットが亡くなった場合など、一部の例外的なケースでは慰謝料を受け取れることがあります。
そのため、特別なものを失って精神的苦痛を負った場合は、慰謝料請求ができないか検討する余地はあります。
本記事では、物損事故の被害に遭った方に向けて、以下の内容について説明します。
- けが人がいる物損事故なら治療費や慰謝料を請求できること
- けが人がいなくても物損事故で慰謝料を請求できるケース5選
- 物損事故の被害に遭った際に慰謝料をもらうための4つのコツ
- 物損事故で慰謝料請求をする際に知っておくべき3つの注意点 など
本記事を参考に、どのような物損事故で慰謝料をもらえるのか、どうしたら請求できるのかなどを確認しましょう。
物損事故であってもけがをした場合は治療費や慰謝料を請求できる
事故直後に痛みがなくても、数日後に痛みが生じるというケースは多いです。
その場合は医療機関を受診し、診断書を入手してから、人身事故へ切り替えることをおすすめします。
ただし、ある程度の日数が経っている場合、警察が切り替え手続きを受け付けてくれないことがあります。
そのようなときは早めに加害者側保険会社に状況を説明し、「人身事故証明書入手不能理由書」を送っていただくなどの対応を相談しましょう。
早めに対応することで、治療費や慰謝料などを受け取れる可能性が高まります。
【関連記事】
人身事故証明書入手不能理由書とは?入手方法や書き方・記入例もわかりやすく解説
人身事故と物損事故の違いとは|人身事故に切り替える方法について解説|ベンナビ交通事故
けががなくても物損事故で慰謝料がもらえる可能性があるケース5選
けが人が全くいない物損事故であっても、以下のように慰謝料請求が認められるケースはあります。
| 事例 | 判例・裁判例 |
| ペットが重傷を負った/死亡した | 名古屋高裁平成20年9月30日判決 大阪地裁平成18年3月22日判決 東京地裁平成24年9月6日判決 |
| 交通事故によって墓石が損壊した | 大阪地裁平成12年10月12日判決 |
| 交通事故によって芸術作品が損壊した | 東京地裁平成15年7月28日判決 |
| 交通事故によって生活環境の変更を余儀なくされた | 神戸地裁平成13年6月22日判決 |
| 加害者側の行為に著しい違法性・悪質性が認められた | 京都地裁平成15年2月28日判決 |
ここでは、けが人がいない物損事故でも慰謝料を受け取れる可能性があるケースについて説明します。
1.ペットが重傷を負った/死亡した
法律上、ペットは「物」として扱われます。
しかし、交通事故によりペットがけがをしたり、死亡したりした場合には飼い主に強い精神的苦痛が生じます。
そのため、ペットが重傷の重傷や死亡などが生じた場合は、例外的に慰謝料請求が認められることがあります。
実際、ペットに後肢麻痺が残ったケースで慰謝料請求を認めた事例もあります(名古屋高裁平成20年9月30日判決)。
2.交通事故によって墓石が損壊した
損壊したものが墓石などの場合は、例外的に慰謝料請求が認められる可能性があります。
墓石・墓地は故人が眠る場所であり、通常は敬愛追慕(けいあいついぼ)の念を持つと判断されます。
そのため、交通事故によって墓石が損壊した場合、加害者に慰謝料請求の可能性があるものとされています。
実際、骨壺が露出するほどの事故で慰謝料請求が認められた事例があります(大阪地裁平成12年10月12日判決)。
3.交通事故によって芸術作品が損壊した
特別な芸術作品が損壊した場合も、例外的に慰謝料請求が認められる可能性があります。
たとえば、県立美術館の委託で制作され、美術展に展示されたことがある芸術作品が損壊した事案です。
芸術作品の場合、制作に相当な年月をかけており、損壊してしまうと復元が困難であるケースも多いです。
裁判所は上記のような事情を考慮して、慰謝料を認めたことがあります(東京地裁平成15年7月28日判決)。
4.交通事故によって生活環境の変更を余儀なくされた
自動車が住宅に衝突して、損壊するというケースもあるでしょう。
この場合でも特別な事情があれば、加害者に対して慰謝料を請求できる可能性はあります。
たとえば、アパート暮らしを余儀なくされたうえ、住民が老齢で心労や負担などが伺えるケースです。
実際、トラックが住宅に衝突した事例で慰謝料が認められたことがあります(神戸地裁平成13年6月22日判決)。
5.加害者側の行為に著しい違法性・悪質性が認められた
事故発生後の加害者の行動が悪質な場合は、慰謝料請求が認められる可能性があります。
たとえば、飲酒運転のうえ物損事故を起こし、警察への報告をせずに逃走したなどの事例です。
このような当て逃げ事件では、被害者が加害者を特定するために大きな労力を要することが考えられます。
裁判所は、加害者側の行為や被害者側の労力を鑑みて慰謝料を認めることがあります(京都地裁平成15年2月28日判決)。
物損事故の被害に遭った際に慰謝料をもらうための4つのポイント
物損事故の被害に遭って慰謝料請求をする場合のポイントは、以下のとおりです。
- 慰謝料の請求条件を確認する
- 過去の判例や裁判例などを調査する
- 精神的苦痛がわかる証拠を用意する
- 交通事故問題に注力している弁護士に相談する
ここでは、物損事故で慰謝料請求をするための4つのポイントについて説明します。
1.慰謝料の請求条件を確認する
慰謝料請求をするには、以下にある不法行為の条件を全て満たしている必要があります。
【慰謝料請求をするための主な条件】
- 故意や過失があること
- 損害が発生していること
- 事故との間に因果関係があること
- 損害賠償請求権の時効が成立していないこと
交通事故の被害に遭っている場合、一般的には故意・過失や因果関係などの立証は難しくありません。
しかし、物損事故によって損害が発生しているか(=精神的苦痛を負っているか)は争点になると考えられます。
物損事故の場合、通常は精神的苦痛が認められず、加害者に慰謝料請求をすることにハードルがあります。そこで、次のような調査が必要になります。
2.過去の判例や裁判例などを調査する
物損事故で慰謝料請求をする際は、事前に判例や裁判例などを調べておきましょう。
【物損事故で慰謝料請求ができた事例】
- ペットが重傷を負った/死亡した
- 交通事故によって墓石が損壊した
- 交通事故によって芸術作品が損壊した
上記のとおり、物損事故であっても慰謝料が認められたケースはあります。
そのため、同類の事故で慰謝料が認められたことがないか、過去の判例や裁判例を調べるのがおすすめです。
特に家族同然のように接していたペットなどを失った場合は、慰謝料請求が認められる可能性は高まります。
3.精神的苦痛がわかる証拠を用意する
物損事故で慰謝料を受け取るには、事故によって精神的苦痛が生じたことを証明する必要があります。
たとえば、ペットが事故に遭って慰謝料請求をする場合には、以下のようなものが証拠になりえます。
【精神的苦痛がわかる証拠の例(ペットが事故に遭った場合)】
- わが子のように可愛がってきたことがわかる日記
- 家族同然として暮らしていたことがわかる写真・動画
- ペットを購入した際にブリーダーから受け取った血統書 など
事故によって失ったものの価値がわかる証拠を用意し、積極的に精神的苦痛を主張できるようにしましょう。
4.交通事故問題に注力している弁護士に相談する
物損事故で慰謝料請求をすることは、非常に難易度が高いです。
そこで交通事故問題に注力している弁護士に依頼して、サポートを受けるほうが望ましいでしょう。
【物損事故での慰謝料請求を弁護士に相談・依頼するメリット】
- 示談交渉や訴訟などを任せられる
- 慰謝料請求の正当性を主張できる
- 証拠に関するアドバイスを受けられる など
弁護士に相談するだけでも、相談者の事案で慰謝料請求ができるかどうかなどの判断を受けられます。
交通事故に注力している弁護士をお探しの際には、例えば「ベンナビ交通事故」を活用し、無料相談を受けることをおすすめします。
物損事故で慰謝料請求(損害賠償請求)をする際の3つの注意点
物損事故で慰謝料請求をする際の注意点には、以下のようなものが挙げられます。
- 慰謝料請求をしても認められない可能性が高い
- 認められたとしても費用倒れになる可能性がある
- 過失割合によっては慰謝料額が減額されてしまう
ここでは、物損事故で慰謝料請求をする際に知っておくべき注意点を説明します。
1.慰謝料請求をしても認められない可能性が高い
被害者側にけががない物損事故では、通常、慰謝料が認められる可能性は低いです。
この理由は財産的損害については修理費や時価額などの被害物に対する賠償により損害が回復されると考えられ、別途精神的損害に対する慰謝料を認める必要性がないと考えられているからです。
被害物に対する賠償だけでは精神的苦痛が回復しない特別な事情がある場合にのみ、慰謝料請求が認められることになります。
2.認められたとしても費用倒れになる可能性がある
物損事故で慰謝料が認められても、それ以上にお金や時間などの負担が多くなる可能性があります。
特に弁護士に依頼している場合、慰謝料よりも弁護士報酬が上回る「費用倒れ」になることが懸念されます。
そのため、費用倒れのリスクについて十分理解したうえで慰謝料請求をするか判断することが望ましいです。
なお、弁護士費用特約を利用できる場合は、費用倒れになるリスクを大幅に軽減することができるでしょう。
【関連記事】自動車保険の弁護士費用特約とは?使い方やメリット・デメリットを解説
3.過失割合によっては慰謝料額が減額されてしまう
被害者側に何かしらの過失があった場合は、その過失割合に応じて慰謝料額が調整されます。
たとえば、飼い主の不注意でペットが道路に飛び出した結果、車に轢かれてペットが亡くなるなどです。
この場合に被害者(飼い主)側の過失割合を8割としたケースもあります(東京地裁平成24年9月6日判決)。
慰謝料額が10万円で、過失割合が8割だった場合、実際に受け取れる賠償額は2万円まで減ってしまうことになります。
慰謝料が認められなくても、物損事故でほかに請求できる金銭もある!
物損事故で慰謝料請求が認められなかったとしても、以下のような金銭は請求できる余地があります。
| 事例 | 請求項目 |
| ペットがけがをした場合 | 治療費 入院費 など |
| ペットが亡くなった場合 | 葬儀費用 時価(市場価格) など |
| 自宅が損壊した場合 | 修繕費 転居費用・家賃 など |
| 車が損壊した場合 | 修理代 評価損 代車費用 休車損害 レッカー費用 など |
このように交通事故によって財産的な損害が発生している場合は、加害者に対して請求できる余地があります。
なお、項目によっては評価が難しく、実際に請求しても相手方と争う事態になってしまうケースもあります。
そのため、まずは交通事故問題に注力している弁護士に「物損事故の賠償金の請求」を相談するほうが望ましいでしょう。
さいごに|物損事故であっても「慰謝料をもらえた」というケースはある!
原則として、けが人のいない物損事故の場合は加害者から慰謝料を受け取ることはできません。
しかし、家族同然のペットを亡くした場合のように、特別な事情があるなら認められる可能性があります。
物損事故で慰謝料を受け取るためには、その事故による精神的苦痛を積極的に立証することが重要になるでしょう。
なお、被害者の方だけで主張・立証するのは非常に難しいため、弁護士からサポートを受けるほうが望ましいです。
「ベンナビ交通事故」には物損事故に力を入れている弁護士も多く掲載されているため、まずは近くの弁護士を探して相談することをおすすめします。
