- 「軽犯罪とは何?軽犯罪法違反の罪は軽くすむの?」
- 「軽犯罪法違反ぐらいなら逮捕されることはない?」
軽犯罪とはどんな罪を指すのか、仮に軽犯罪法違反が成立しても軽い罪ですむだろうと考えていますか?
軽犯罪は文字通り「比較的軽微な犯罪」の総称であり、さまざまな行為が対象となります。
より重大な犯罪に比べれば逮捕される可能性は低く、仮に起訴されても軽い処罰ですむことが多いです。
しかし行為の悪質性や被害状況などによっては、より重い罪が適用されたり逮捕されたりする可能性がないわけではありません。
そのため仮に軽犯罪法違反にあたる行為をしてしまった場合も甘く考えるのでなく、適切な対応をすべきです。
本記事では軽犯罪とはどのような罪かや該当する33の行為、より重い罪が適用されるケース、軽犯罪法違反で逮捕されたり有罪になったりする確率、軽犯罪法違反で検挙された場合の流れを解説します。
軽犯罪法違反にあたる行為をしてしまった場合、逮捕回避や不起訴を目指すにはなるべく早く適切な行動を開始するべきです。
本記事を読めば軽犯罪の概要や軽犯罪法違反が適用されるリスクを理解し、該当行為をしてしまった際は速やかに行動できるようになります。
軽犯罪とは? | 社会秩序を乱す行為のうち軽微なもの
軽犯罪法は、社会秩序に違反する軽微な行為を取り締まる法律のことです。
まずは、軽犯罪法で規制される行為類型の具体例や法定刑、公訴時効などの基本事項について解説します。
軽犯罪とされる可能性がある行為の例
軽犯罪法で規制されるのは、社会秩序を乱す行為のうち違反の程度が比較的軽微なものです。
軽犯罪法で禁止される違法行為の例として以下が挙げられます。
- 立ちション
- 行列への割り込み
- 空地での焚火
- 道端で唾を吐く
- 警察官のコスプレ
- 女子トイレなどの覗き
- 許可なしでビラやポスターを貼るなど
軽犯罪法違反の罰則は短期間の拘留、もしくは少額の科料
軽犯罪法違反の法定刑は、拘留または科料です。
情状によって刑が免除されたり、併科されたりする場合があります。
また、軽犯罪法違反を教唆・幇助した場合には、いずれも正犯に準ずる(直接犯罪をおかしたものと同じ法定刑の範囲内で処罰が決定されること)ものと扱われます。
拘留とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置する処分のことです。
拘留に処されたものに対しては、改善更正を目的として作業をおこなわせたり指導をおこなったりできると規定されています。
科料とは、1,000円以上10,000円未満の金銭納付を科す刑事罰のことです。
拘留や科料は、拘禁刑や罰金などと比べると軽い刑事罰に位置付けられます。
軽犯罪法違反の公訴時効は1年
軽犯罪法違反の公訴時効期間は1年です。
軽犯罪法違反に該当する犯罪行為に及んだとしても、1年が経過すれば、警察に逮捕されたり有罪になったりするリスクはなくなります。
軽犯罪法違反に該当する全33の行為一覧
軽犯罪法違反に該当する行為は以下のとおりです。
| 番号 | 軽犯罪法違反に該当する行為 | 説明・補足 |
|---|---|---|
| 1 | 誰も住んでいない建物などに潜伏する行為 | 住人がおらず管理もされていない建物などへ正当な理由なく潜伏すること。たとえば、肝試しなどの目的で廃墟に立ち入る行為などが挙げられる。 |
| 2 | 正当な理由がなく、凶器になりえる刃物などを隠して持ち運ぶ行為 | 正当な理由があるといえるか否かは、日常生活や職業上の必要性によって判断される。たとえば「護身や防犯を目的に刃物を所持している」だけでは、正当な理由とみなされない。 |
| 3 | 正当な理由がなく、建物に侵入するときに使用されるような器具を隠して携帯する行為 | ドライバー・カッター・懐中電灯など、建物へ侵入する際に使われるような道具を隠して持ち歩くこと。侵入盗などの窃盗犯罪を予防するために設けられている。 |
| 4 | 働く能力があるのに浮浪する行為 | 働く能力があるのに、働く意思や定住する場所をもたずに浮浪すること。引きこもりやニートは、居住する自宅があるため該当しない。また日本一周などの目的で一定期間就労しない場合も該当しない。本号が該当するケースは限られており、ほぼ適用されない。 |
| 5 | 公共の娯楽場や公共交通機関で、著しく乱暴な言動で迷惑をかける行為 | 飲食店やショッピングモール、パチンコ店などの公共の娯楽施設や、電車、バス、飛行機などの公共交通機関の乗り物のなかで、暴行罪や脅迫罪などに至らない程度の迷惑行為に及んだケースが摘発対象。 |
| 6 | 正当な理由がなく、道路などに設置された街灯などを消す行為 | 単なるいたずらで、通行人などのために設置された街灯を消すケースが摘発対象。通行人などの安全を守る目的。 |
| 7 | 水路の交通を妨げる行為 | 船の交通が予定されている河川などで、いかだのような障害物を放置するなどして交通を妨げること。 |
| 8 | 天災、交通事故、犯罪などが発生した際に、正当な理由がないのに、現場を出入りする公務員や援助者の指示に従わない行為 | ここでいう援助者とは、公務員から委託を受け避難誘導をする民間の警備員などをさす。 |
| 9 | 十分に注意せず火気を用いること | 森のなかで必要な注意をせず焚火をするなどして、火事が発生するのを防ぐことが目的。 |
| 10 | 相当な注意を尽くさないで爆発物を使用する行為 | 火薬などの爆発物を、十分な注意をせず扱う行為が対象となる。火薬を過失で爆発させてしまった場合は、より重大な過失激発物破裂罪が適用される。 |
| 11 | 十分に注意せず人・物に被害が生じる可能性がある場所へ物を投げる行為 | マンションの窓から外に向かって物を投げる行為、自動車を走行中にゴミを投げ捨てる行為などが摘発対象となる。 |
| 12 | 正当な理由なく、人畜に害を与える可能性がある動物を放し飼いにする行為 | 人を襲うおそれがあるペットなどをケージに囲ったり首輪をしたりせず、放し飼いにするなどした場合に適用される。 |
| 13 | 公共の場で乱暴な言動などによって行列に割り込む行為。 | 飲食店や電車の切符売り場などの行列に並んでいる人たちに対して、威嚇をするなどして割り込みをしたケースなどに適用される。 |
| 14 | 警察官などの公務員が制止しているのに、楽器などで大きな音をだし近隣に迷惑をかける行為 | 警察官などから制止をされているのに、閑静な住宅街で騒音を出し続けるなどした場合に適用される。どこからが規制対象の大音量になるかは、個別具体的な状況を総合的に考慮して判断される。 |
| 15 | 警察官など公職を詐称する行為 | 正式な資格を取得していないのに警察官や消防職員を名乗る行為や、警察官などのコスプレをしたりする行為などに適用される。 |
| 16 | 警察官をはじめとした公務員に虚偽の犯罪などを申告する行為 | たとえば会社に遅刻した言い訳にする目的で、警察官に「電車で財布を盗まれた」と嘘の申告をする行為など該当する。 |
| 17 | 質屋で取引する際などに虚偽の申告をする行為 | 盗品の流通を防止する目的で定められている。古物商取引をするときに偽名や嘘の連絡先を申告した場合に適用される。 |
| 18 | 自分が占有する土地などに、要救助者や死体などがあるにもかかわらず、すぐに警察などに通報をしない行為 | 自宅の敷地内で倒れている老人や迷子の子ども、死体などが見つかったにもかかわらず、放置して警察にも通報しなかった場合に適用される。 |
| 19 | 正当な理由がなく、変死体の現場の状況を変更する行為 | 変死体の死因や事件発生時の状況を、特定しにくくなる事態を予防する目的で定められている。変死体を勝手に移動させたり、現場に残っている証拠などを隠匿したりした場合に適用される。 |
| 20 | 公共の場でみだりに身体を露出し周囲に不快感を与える行為 | 公然わいせつ罪に該当しない身体の箇所(性器など以外)を露出した場合に適用される。露出の方法、露出の面積などから総合的に判断される。 |
| 21 | こじきをする行為、こじきをさせる行為 | 路上で物乞いをする場合、ホームレスや自分の子どもを使って通行人に金や食べ物を物乞いさせた場合などに適用される。 |
| 22 | 人が衣服を脱ぐ場所をみだりに覗き見る行為 | マンションの自室から望遠鏡を使って向かいの家の浴室をのぞくなど、正当な理由なく人が衣服を脱ぐ場所を覗いた場合に適用される。 |
| 23 | 公私の儀式をいたずらに妨害する行為 | 結婚式、入学式、企業説明会、株主総会などの進行をいたずらに妨害した場合に適用される。いたずらの域を超えるような妨害とみなされる場合は、より罪の重い業務妨害罪が成立する可能性がある。 |
| 24 | 川・溝などの水路の流れを妨げる行為 | 水路に大量のゴミを投げ捨てるなどして、水路の流れを妨害した場合に適用される。水路の流れがとまってしまうことで、生活や農業に被害が生じることを予防している。 |
| 25 | 公共の場所で、たんつばを吐いたり大小便をしたりする行為、人にこれらをさせる行為 | 公衆衛生を維持するために、道路での排泄行為などを禁止している。 |
| 26 | ゴミや鳥獣の死体、汚物などをみだりに廃棄する行為 | 公共スペースに異臭を放つゴミを放置したり、自宅の庭に大量のゴミを残置して周辺住民に迷惑をかけたりした場合に適用される。 |
| 27 | 他人につきまとったり他人の歩く方向に立ちふさがったりする行為 | つきまとい行為は、相手が不安に感じたり迷惑だと思ったりする方法でおこなわれた場合に処罰の対象となる。他人の進路に立ちふさがる行為を禁止するのは、個人が移動する自由を保護することを目的としている。 |
| 28 | 暴行などを共謀したうえで、その準備をする行為 | たとえばリンチを企てて、鉄パイプやメリケンサックなどの凶器を用意した場合に適用される。このとき準備行為をおこなったものだけでなく、犯行を共謀したもの全員が処罰される。 |
| 29 | 人や家畜にほかの動物をけしかける行為 | 人や犬にけしかけ、牛や馬などを驚かせたり走らせたりする行為が該当する。これによって人がけがをしてしまうのを予防している。 |
| 30 | 他人の業務をいたずらに妨害する行為 | いたずら程度とみなされる場合に適用される。威力や義兄を用いた場合は、より刑罰が重い威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪が成立する。 |
| 31 | 正当な理由がなく、立ち入り禁止の場所、他人の田畑に立ち入る行為 | 関係者以外の立ち入りを禁止している場所や、他人の田畑へいたずらに立ちいった場合に適用される。住居等侵入罪が成立しない程度の立ち入り行為が対象となる。 |
| 32 | みだりに他人の家屋などにはり紙をする行為、他人の看板や標示物を取り除いたり汚したりする行為 | 他人の家の塀に住民の悪口を記載したはり紙を設置したり、地域の掲示板に貼られたポスターなどを無断で廃棄したりした場合に適用される。 |
| 33 | 虚偽の公告をする行為 | 誇大広告や虚偽情報の流布が原因で消費者被害や詐欺被害が発生することを防止するために定められている。 |
軽犯罪法違反で検挙されたり有罪となったりした事例
軽犯罪法違反の容疑で刑事訴追された実際の事例を3つ紹介します。
かばんに十徳ナイフを入れていて有罪判決が出た事例
本件は、かばんに刃渡り約6.8センチメートルの十徳ナイフを所持していたところ、軽犯罪法第1条第2号違反を理由に有罪判決が下された事例です。
本件被告人は、以下の理由で十徳ナイフを鞄のポケットへ入れていました。
- 以前は商品の箱にかけていた結束バンドを切ったり、日常生活で缶詰を開けたりするために使っていた
- 最近は使っていなかったものの、災害時にあれば便利と考え鞄に入れたままにしていた
一方で裁判所は、以下の事情を踏まえて、被告人の十徳ナイフの所持には正当な理由は認められないと判断をして、9,900円の科料を言い渡しました。
- 被告人は「日常生活で使用していた」と主張していたが、実際には4、5年使用しておらず、日常生活目的での所持とは認められない
- 所持していた十徳ナイフを災害時にどのような方法で使用するかなどを、具体的に検討していたわけではない
- 災害時に使用する可能性がある十徳ナイフは炊事などのタイミングでの使用が推奨されるものであり、日常的に持ち歩くことまで想定していない など
以上の被告人をめぐる個別事情から、本件では十徳ナイフをかばんに所持することに正当な理由があるとは認められませんでした。
一方で十徳ナイフが使われないまま5年以上保管されていたものの、無罪判決が出た事例もあります。
本件において裁判所は「護身用でなく災害用・防災用であったとみなされる」と判断しました。
これらの件から仮に犯罪目的でなく十徳ナイフを所持していた場合でも、状況次第で裁判所の判断が分かれることがわかります。
スケボーをするため禁止場所に侵入し検挙された事例
本件はオフィスビルの敷地内にスケボー目的で立ち入ったとして、軽犯罪法違反容疑で検挙された事例です。
問題となった敷地内では、以前からスケボーに関する苦情が多数寄せられていました。
こうした状況を改善するため、敷地内にはスケボー目的での立ち入りを禁止する案内表示が60枚以上も設置されていたのです。
検挙された4人は容疑を認めたうえで、「練習場が混雑していた」「スケボーの練習に良い場所と聞いていた」と話しました。
自ら胸を刺し虚偽の通報をしたとして検挙された事例
本件は傷害事件の被害者を自作自演し妻に虚偽の110番通報をさせ、警察の業務を妨害したとして軽犯罪法違反で検挙された事例です。
検挙された男性はアイスピックを使い自分の左胸を刺したにもかかわらず、妻に「夫が何者かに刺された」と警察に通報させていました。
男性は勤務先の会社で自身の業績不振に悩んでいたとのことです。
この虚偽通報をうけ、数十人の警察官が傷害事件として捜査にあたっていました。
軽犯罪法違反でなく、より刑罰の重いほかの犯罪とみなされるケースも少なくない
事案の内容次第では、軽犯罪法違反ではなく、より重いほかの犯罪とみなされる可能性があります。
ここでは、参考になるケースをいくつかみていきましょう。
撮影罪が適用されるケース
正当な理由なしに浴場や更衣室など人が衣服を脱ぐ場所を覗いた場合は、軽犯罪法違反になります。
その様子を無断で撮影した場合も、軽犯罪法違反の対象です。
そのうえで「性的姿態等」の盗撮と判断された場合は、より重い撮影罪が適用されます。
性的姿態等の定義は以下のとおりです。
- 性器・肛門やその周辺部、臀部または胸部といった性的な部位
- 性的な箇所を覆っている下着の部分
- 性交もしくはわいせつな行為をおこなっているときの姿態
軽犯罪法違反に比べ撮影罪の法定刑は、以下のようにずっと重くなります。
| 罪の種類 | 法定刑 |
|---|---|
| 軽犯罪法違反 | ・拘留(刑事施設に1日以上30日未満の身柄拘束) ・科料(1,000円以上1万円未満の金銭徴収) ・拘留・科料の併科 |
| 撮影罪 | ・3年以下の拘禁刑 ・300万円以下の罰金 |
2023年7月の法改正で撮影罪が新設されるまで、盗撮は軽犯罪法違反か各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰されていました。
しかし軽犯罪法は罰則が軽く、迷惑防止条例は地域ごとに規制が異なるなどの問題が指摘されていたのです。
法改正以降、該当する盗撮行為に関しては、軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反でなく撮影罪が適用されることが多くなっています。
ストーカー規制法が適用されるケース
他人の進路に立ちふさがったりその身辺に群がったりして立ち退こうとしない場合や、不安・迷惑を覚えさせるような方法で他人につきまとった場合には、軽犯罪法第1条第28号に違反します。
これに対して、特定の人物に対する恋愛感情やそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で、つきまとい行為を反復継続しておこなったときには、ストーカー行為等の規制等に関する法律が適用されます。
ストーカー規制法違反に該当する場合には、以下のとおり軽犯罪法より重い法定刑が適用されます。
| 罪の種類 | 法定刑 |
| 軽犯罪法違反 | ・拘留(刑事施設に1日以上30日未満の身柄拘束) ・科料(1,000円以上1万円未満の金銭徴収) ・拘留・科料の併科 |
| ストーカー規制法違反 | ■禁止命令などに違反していない場合 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 ■禁止命令に違反してストーカー行為をおこなった場合 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
禁止命令とは文字通り、ストーカー行為を禁じる法的措置です。
被害者が加害者に対する刑罰まで望まなければ、加害者にストーカー行為をやめるよう警察が警告することがあります。
加害者が警告を無視してストーカー行為を継続した場合などに、法的措置である禁止命令が出されるのです。
公然わいせつ罪が適用されるケース
公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を抱かせるような方法で尻・腿その他身体の一部をみだりに露出した場合には、軽犯罪法第1条第20号が適用されます。
一方で身体の露出が公衆の羞恥心を害するほどになると、公然わいせつ罪が適用される可能性があるのです。
たとえば不特定多数の目に触れる状況で性器を露出した場合は、公然わいせつ罪が適用されます。
軽犯罪法違反に比べ公然わいせつ罪の法定刑は、以下のようにずっと重いです。
| 罪の種類 | 法定刑 |
|---|---|
| 軽犯罪法違反 | ・拘留(刑事施設に1日以上30日未満の身柄拘束) ・科料(1,000円以上1万円未満の金銭徴収) ・拘留・科料の併科 |
| 公然わいせつ罪 | ・6ヵ月以下の拘禁刑 ・30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 |
偽計業務妨害罪が適用されるケース
いたずらなどで他人の業務を妨害した場合や、警察などの公務員に虚偽の犯罪などを申告した場合は軽犯罪法違反が成立します。
一方で業務をする人を騙すなどより悪質なケースや、虚偽通報を繰り返すケースでは偽計業務妨害罪が適用される可能性もあるのです。
特に業務妨害によって多大な被害が生じ、いたずらですまされないケースでは、偽計業務妨害罪が適用される可能性が高いでしょう。
軽犯罪法違反に比べ偽計業務妨害罪の法定刑は、以下のように重くなります。
| 罪の種類 | 法定刑 |
|---|---|
| 軽犯罪法違反 | ・拘留(刑事施設に1日以上30日未満の身柄拘束) ・科料(1,000円以上1万円未満の金銭徴収) ・拘留・科料の併科 |
| 偽計業務妨害罪 | ・3年以下の拘禁刑 ・50万円以下の罰金 |
銃刀法違反が適用されるケース
正当な理由がないのに、刃物や鉄棒その他の他人の生命を害したり身体に重大な害を加えたりする際に使用されるような器具を隠して携帯していた場合には、軽犯罪法違反が成立します。
一方で、隠し持っていた刃物の刃渡りが6センチメートルを超えていた場合には、軽犯罪法違反より刑罰が重い銃刀法違反が成立します。
軽犯罪法違反と銃刀法違反における法定刑の違いは以下のとおりです。
■軽犯罪法違反/銃刀法違反の法定刑比較
| 罪の種類 | 法定刑 |
|---|---|
| 軽犯罪法違反 | ・拘留(刑事施設に1日以上30日未満の身柄拘束) ・科料(1,000円以上1万円未満の金銭徴収) ・拘留・科料の併科 |
| 銃刀法違反 | ・2年以下の拘禁刑 ・30万円以下の罰金 |
軽犯罪法違反で逮捕されたり、起訴され有罪になったりする確率は低い?
まず、軽犯罪法違反の容疑で検挙されたとしても、逮捕されて捜査機関に強制的に身柄を押さえられる可能性は以下のとおり低いです。
■軽犯罪法違反事件の認知から逮捕に至った/至らなかった数の統計(2023年)
- 警察が軽犯罪法違反事件を認知して逮捕に至ったもの:66人
- 警察が軽犯罪法違反事件を認知したものの逮捕に至らなかったもの:7,404人
軽犯罪法違反の容疑で捜査対象になったとしても、実際に逮捕されるのは、全体の約0.89%に過ぎないのが実情です。
また、検察による捜査活動が展開された場合でも、起訴処分が下されて有罪になるケースも以下のとおり多くはありません。
■軽犯罪法違反の容疑で検察庁が新規受理/起訴した人員数(2024年)
- 軽犯罪法違反の容疑で検察庁が新規受理した人員数:7,327人
- 軽犯罪法違反の容疑で検察が起訴した人員数:986人
参考:令和6年版犯罪白書
このように軽犯罪法違反の容疑で刑事訴追された場合に起訴される確率は低く、全体の約13.5%に過ぎません。
軽犯罪法違反の容疑で逮捕・起訴されにくいのは、軽犯罪法違反が刑事法制のなかでも比較的軽い刑事事件に分類されるからです。
警察や検察、裁判所の事件処理能力には限りがあるため、全ての刑事事件が逮捕や起訴の対象になるわけではありません。
軽犯罪法違反で摘発を受けた場合、氏名・住所を言わなかったり警察の求めに応じなかったりしない限り逮捕される可能性は低いでしょう。
可能性は低くても、有罪になれば前科がつくのはより重い罪と同じ
軽犯罪法違反の容疑をかけられたとしても有罪になるケースは多くはありませんが、事案の状況次第では、有罪になる可能性は存在します。
有罪判決が確定した以上は、より重い罪と同様に前科者として扱われることになるのです。
前科がつくと、今後の社会生活に以下のようなデメリットが生じます。
- 就職活動や転職活動で不利になる場合がある
- 前科が裁判で離婚が認められる事由になり得る
- ビザやパスポートの発給制限がかかる可能性がある
- 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い など
前科がついた場合のデメリットについては、以下のリンク先でも詳しく紹介しています。
参考:前科がつくデメリット8つ|前科をつけないためにできること
仮に逮捕されれば長期的に身柄を拘束されてしまうリスクもある
軽犯罪法違反は軽微な刑事事件に分類されますが、犯罪であることに変わりはないので、逮捕される可能性もゼロではありません。
そして、逮捕された場合には72時間以内、検察官の勾留請求が認められた場合には最長20日間、捜査機関から身柄拘束付きの取り調べが実施されます。
逮捕・勾留中の取り調べは拒絶できませんし、取り調べがない時間帯は留置場に身柄を留められます。
会社に出勤したり自宅に戻ったりすることが許されないだけではなく、被疑者自身が直接電話などで外部と連絡をとることも禁止されます。
ですから、仮に不起訴処分の獲得に成功したとしても、逮捕・勾留によって一定期間身柄拘束をされることで心身に大きなストレスがかかりますし、周囲の人に刑事事件を起こした事実がバレやすくなってしまうでしょう。
逮捕されなくても、在宅事件として取り調べを受ける場合もある
仮に逮捕されなくても、軽犯罪法違反で検挙された場合は在宅事件として取り調べを受ける可能性があります。
在宅事件では身柄が拘束されず普段通り自宅で生活できますが、定期的に警察や検察に呼び出され取り調べを受けなくてはなりません。
そのため逮捕された場合に比べれば、日常生活に支障をきたす可能性は低くなります。
ただし起訴され有罪となる可能性がなくなるわけではありません。
行為の内容によっては軽犯罪法違反でなく、より重い刑罰の罪が適用されることも
前述したように、行為の内容によっては軽犯罪法違反でなくより刑罰の重いほかの罪が適用される可能性があります。
この場合、逮捕や有罪になる確率が高くなることもありますし、有罪になれば重い刑罰を受ける可能性があるのです。
たとえば盗撮は軽犯罪法の対象ですが、性的姿態等を盗撮した場合は撮影罪が適用されます。
撮影罪が適用されると、軽犯罪法違反よりずっと刑罰が重くなり、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金が科される可能性があるのです。
軽犯罪法違反で警察に検挙された場合の流れ
軽犯罪法違反の容疑で検挙されたときの刑事手続きの流れを紹介します。
逮捕された場合
軽犯罪法違反の容疑で逮捕された場合には、以下のような流れになります。
- 警察に逮捕されて48時間以内の身柄拘束付き取り調べが実施される
- 警察が必要と判断した場合は検察へ送致される
- 検察官による取り調べが実施される(原則24時間以内)
- 検察が必要と判断した場合は、引き続き身柄を拘束するための勾留請求がおこなわれる(認められると、追加で最大20日間の身柄拘束が継続する)
- 検察官が起訴・不起訴を判断する
- 起訴処分を下された場合には、略式裁判もしくは正式裁判で刑事責任が確定する
当初逮捕されたとしても、途中から在宅事件に切り替わるケースも少なくありません。
逆に、最初は在宅事件として処置された場合でも、途中で逮捕状が請求されて、強制的に身柄拘束される可能性もあります。
刑事手続きにおいて身柄拘束期間が生じると被疑者の社会生活には大きな支障が生じるので、軽犯罪法違反事件を起こしたときには、なるべく早く弁護士に相談・依頼して早期の身柄解放を目指すことが推奨されるのです。
逮捕されず在宅事件となった場合
軽犯罪法違反の容疑をかけられたものの、逮捕されずに在宅事件として扱われた場合の流れは以下のとおりです。
- 警察から出頭要請がかかったタイミングで警察署を訪問し、取り調べを受ける
- 警察が必要と判断した場合は、在宅したまま検察へ送致される
- 検察官から出頭要請がかかったタイミングで検察庁に出頭し、取り調べを受ける
- 検察官が起訴・不起訴を判断する
- 起訴処分を下された場合には、略式裁判もしくは正式裁判で刑事責任が確定する
逮捕された場合とは異なり、在宅事件になったときには、刑事手続きの制限時間が存在しません。
捜査機関に身柄を押さえられることがないために社会生活に生じるデメリットはほとんど存在しませんが、いつまで捜査活動が展開されるかがはっきりしないため、不安やストレスを抱えつづけることになるでしょう。
ですから、在宅事件の扱いになったとしても、何もしないのではなく刑事事件を得意とする弁護士に相談をして、取り調べへの対応方法などについてアドバイスをもらうことを強くおすすめします。
軽犯罪法違反について弁護士に相談・依頼するメリット
軽犯罪法違反に該当する行為に及んだときや、軽犯罪法違反の容疑で警察から問い合わせがあったときには、できるだけ早いタイミングで刑事事件の対応を得意とする弁護士に相談・依頼をしてください。
弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。
- 軽犯罪法違反でなく、より重い刑罰が適用されないか正確に把握できる
- 被害者と示談交渉を成立させるなどして、不起訴となる確率が高まる
軽犯罪法違反でなく、より重い刑罰が適用されないか正確に把握できる
軽犯罪法違反の容疑だけですむのか、別の重い罪状が適用されるのかは、事案の個別事情によって異なります。
重い罪状が適用される危険性があるときには、速やかに逮捕回避や不起訴を目指すための活動を開始すべきです。
刑事事件が得意な弁護士に相談をして事情を説明すれば、軽犯罪法違反以外の重い刑事罰を追求されるおそれがある状況かを正確に判断してくれるので、今後の見とおしを立てやすくなるでしょう。
被害者と示談交渉を成立させるなどして、不起訴となる確率が高まる
軽犯罪法違反などの容疑で刑事訴追されたときには、不起訴処分を獲得できるかがポイントになります。
不起訴処分の獲得に成功すれば、有罪になって刑事罰を科されたり、前科がついたりするリスクをゼロにできるからです。
軽犯罪法違反についてよくある質問
さいごに、軽犯罪法違反についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
軽犯罪法違反は初犯であれば罪は軽い?
軽犯罪法違反にあたる行為をしてしまった場合でも、初犯であれば刑事処分を決める際の有利な事情として考慮されます。
そのため初犯であれば不起訴となったり、軽い刑罰ですんだりする可能性が高くなるのです。
しかしながら行為の悪質性や被害の大きさによっては、初犯でも起訴される可能性がないわけではありません。
行為の内容によっては、軽犯罪法違反より重い刑罰が適用される可能性もあります。
不起訴処分を得る確率を高めるためには、なるべく早い段階で刑事事件の対応を得意とする弁護士に相談・依頼すべきです。
軽犯罪法違反で検察から呼び出しを受けたら、無視しても構わない?
軽犯罪法違反の容疑で警察や検察官から呼び出しを受けたときには、必ず要請どおりに出頭をして取り調べを受けてください。
「任意だから拒否しても問題ないはず」と呼び出しを無視すると、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断されて、逮捕され身柄を拘束されるリスクが高まってしまいます。
さいごに | 軽犯罪法違反で有罪となるリスクが不安であれば弁護士に相談を!
軽犯罪法違反は比較的軽微な刑事事件に分類されますが、それでも刑事事件である限り、逮捕されたり有罪になったりするリスクがないわけではありません。
逮捕されると一定期間身柄拘束を強いられるために社会生活にさまざまな支障が生じますし、有罪になると前科によるデメリットにも悩まされつづけます。
軽犯罪法違反の容疑をかけられたときには、できるだけ早いタイミングで刑事弁護が得意な専門家に相談をして、事案の状況に応じた適切な防御活動を展開してもらうべきだと考えられます。
ベンナビ刑事事件では、軽犯罪法違反などの刑事事件の対応が得意な弁護士を多数紹介中です。
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