痴漢冤罪を疑われたらどうするべき?NG行為と初期対応のポイントを解説

痴漢冤罪を疑われたらどうするべき?NG行為と初期対応のポイントを解説

日常生活の中では、誰もが痴漢冤罪に巻き込まれる可能性があります。

相手が強い口調で「この人がやった」と言い張れば、駅員室へ連れて行かれ、警察を呼ばれる事態にもなりかねません。

とくに満員電車では身体の接触が避けられず、「触られた」と主張されれば、それだけで疑いをかけられることもあります。

そんなとき、正しい対処法を知っていれば、冤罪リスクを下げて自分の身を守ることが可能です。

そこで本記事では、痴漢の疑いをかけられたときのNG行為や対応方法などを解説します。

冤罪によって自分の人生が狂わされてしまうことがないよう、正しい対処法を身に着けておきましょう。

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痴漢冤罪でやってはいけない4つのNG行為

痴漢の冤罪に巻き込まれたとき、焦りや混乱から思わぬ行動をとってしまうことがあります。

しかし、誤った行動はかえって状況を悪化させるおそれがあるため、注意が必要です。

ここでは、痴漢冤罪に巻き込まれた際に避けるべき4つの行為を紹介します。

現場から逃げる

一昔前、ネット上で「痴漢を疑われたらその場から逃げろ」という情報が広まったことがありました。

そのため、冤罪のリスクがある場合はその場から逃げたほうが良いという認識でいる人も多いでしょう。

しかし、実際のところは痴漢の冤罪にあったとしてもその場から逃げるのはNGです。

逃走したという事実だけで、「やましいことがあるのでは」と疑われ、不利な立場に追い込まれるおそれがあります

仮に一時的に逃げられたとしても、防犯カメラの映像やICカードの利用履歴から身元が判明して、後日逮捕される可能性が高いです。

また、逃走中に人にぶつかってけがをさせれば暴行罪が成立したり、線路に降りて電車の進行をストップさせたことで多額の損害賠償を求められたりと、さらに重い罪に問われるリスクもあるでしょう。

このように、逃げることで逆にさまざまなリスクが発生するため、逃走を図るのは絶対にやめましょう。

謝罪する

冤罪であれば、絶対に謝罪してはいけません。

なぜなら、謝ってしまうと痴漢を認めたと受け取られ、裁判で不利になってしまうからです

「とりあえず謝れば場がおさまるかも」と考えて、反射的に「すみません」と言ってしまうかもしれません。

しかし、その場合でも、検察官や裁判官は痴漢をしたから謝ったと判断する傾向にあります。

警察に個人情報を隠す

痴漢を疑われたことで警察に事情を聞かれたとき、氏名・住所・勤務先などの個人情報を伝えるべきか迷うかもしれません。

しかし、ここでは正直に答えるのがおすすめです。

被疑者の身元が不明だと、警察官は被疑者に「逃亡や証拠隠滅のおそれ」があると判断し、逮捕・勾留に踏み切る可能性が高くなります。

素直に氏名や勤務先を伝えれば、逮捕されずに当日中に帰れることも珍しくありません。

また、勤務先を警察に伝えたとしても、通常は会社に連絡されることはないでしょう。

何もやましいことがないからこそ、個人情報は正直に伝えるようにしてください。

弁護士に相談する前に取調べの供述調書に署名する

警察署で取り調べを受けた際には、供述調書という書面が作成されます。

この際、取調官から供述調書に署名を求められますが、署名するかは慎重に判断してください。

供述調書に署名・押印をすると、裁判でそのまま証拠として使われます。

そして、供述調書には取調官の解釈が入っていたり、言い回しが変えられていたりするので、その場では気づかなくてもあとから読み返すと不利な内容になっている場合があります。

本人の署名や押印がない供述調書は、原則として裁判で証拠になりません。

署名や押印を求められた場合には、「弁護士と相談してからにする」と伝えるのがおすすめです

「この人痴漢です!」と、痴漢冤罪に巻き込まれたときの対処法

ここでは、痴漢冤罪に巻き込まれた場合にとるべき主な対処法を紹介します。

職場・家族に連絡する

痴漢行為を疑われた場合、まずは職場や家族に連絡しましょう。

それぞれへの連絡内容について、以下で詳しく解説します。

職場への連絡

職場へは、ひとまず「事情があって2~3日休む」と伝えておきましょう

冤罪に巻き込まれた段階では、逮捕されるかすぐに解放されるかはわかりません。

しかし、万が一逮捕されると、外部との連絡が取れなくなり、職場も無断欠勤することになってしまいます。

電車内での痴漢行為場合は、弁護士が迅速に対応すれば、逮捕されても3日以内に釈放されることもあります。

実は、逮捕の効力は最大で72時間であり、その後裁判官が「勾留」するかどうか判断することになります。

勾留されると最大で20日間にわたって身体拘束されることになります。

しかし、電車内での痴漢事案の場合は、被害者とされる方と面識がなく接触のおそれが低い場合は、勾留されずに釈放されることもあるのです。

そのため、休む期間はひとまず2日~3日程度にしておくとよいでしょう。

職場に事前に連絡することで、余計な詮索をされずにすみます。

警察官が来ると制止されて電話できなくなることがあるので、到着前に電話をかけましょう。

家族への連絡

家族には、以下の3点を連絡しましょう。

  • 痴漢冤罪に巻き込まれたこと
  • 現在いる駅の名前
  • 私選弁護人に依頼してほしいこと

家族に駅名を伝えるのは、あなたが逮捕された場合に、弁護士がすぐに正しい警察署に向かえるようにするためです。

痴漢事件は、基本的に下車した駅の近くにある警察署が担当します。

駅名がわからないと、弁護士がどの警察署か調べるのに時間がかかってしまうので注意してください。

また、逮捕されるとスマートフォンなどは使えなくなるため、自分で弁護士に連絡することができません

家族に連絡をして、弁護士に依頼してもらう必要があります。

現場でのやりとりを録音する

痴漢冤罪に巻き込まれたら、スマートフォンの録音機能などで、被害者や駅員、警察官との会話を記録しておきましょう。

事件直後のやり取りは、捜査や裁判で重要な証拠となることがあります

たとえば、録音によって、自分が一貫して否認していたことを示せたり、被害者の供述に矛盾を発見できたりするでしょう。

なお、このときの録音は堂々とおこなって構いません。

必要があれば「録音しています」と伝えることで、相手の発言も慎重になるでしょう。

証言に協力してくれる目撃者を探す

痴漢冤罪に巻き込まれたら、まず周囲に目撃者がいないか探すことが大切です。

可能であれば、近くにいた人に「何か見ていませんでしたか?」と声をかけてみてください。

駅員室に連れて行かれると、駅員がすぐに鉄道警察に連絡し、そのまま警察に引き渡されます。

そうなると駅のホームに戻れないので、自分に有利な証言をしてくれる人を探すチャンスは、被害申告があった直後のほんのわずかな時間しかありません。

痴漢行為を否定してくれる第三者がいるかどうかで、その後の状況は大きく変わるので、その場で目撃者がいないか声を上げてみましょう。

刑事事件の対応が得意な弁護士に相談する

痴漢行為の冤罪に巻き込まれた場合は、刑事事件の対応が得意な弁護士に相談するのもおすすめです。

弁護士が早い段階で痴漢冤罪に関わることで、その後の警察による取り調べや、長時間の身柄拘束といったリスクを軽減できる可能性が高まります。

なお、弁護士が来る前に駅員室への同行を求められた場合は、「弁護士が来るまで待ってほしい」と伝えることも可能です。

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そもそも痴漢冤罪が起きやすいのはなぜ?

どのような犯罪でも冤罪が起こる可能性がありますが、とくに痴漢事件は冤罪が発生しやすいといわれてます。

冤罪が発生しやすい理由は、主に以下の3つです。

1.性犯罪だから 痴漢は、「男性が加害者で女性が被害者」という構図がほとんどなので、被害者側である女性が勇気を出したことが評価されやすいです。
2.ほとんど現行犯で逮捕されるから 被害者が被害を訴えると、確実に犯人といえる証拠がなくても、「現行犯」として駅員に引き渡されます。
また、事件を受け取った警察側も「事件を検挙したい」という思いがあるため、被害者の話をそのまま信じやすいです。
3.示談金を支払えば早期に解決できるから 痴漢の事実を争う場合、多大な時間と負担がかかります。
「これ以上拘束されたくない」「会社に知られたくない」といった理由から、痴漢をしていなくても示談金を支払って早く解決しようとするのです。

痴漢冤罪に巻き込まれた場合の基本的な流れ

痴漢冤罪に巻き込まれた場合、以下のような流れで手続きが進みます。

  1. 被疑者が駅員室に案内される
  2. 駅員が警察に通報する
  3. 警察が現場に到着し、簡単な事情聴取がおこなわれる
  4. (痴漢の疑いが強い場合)逮捕され、最長72時間の身柄拘束を受ける
    (さらに取り調べをおこなう必要があると判断された場合)警察署へ連行される
  5. (逮捕された場合)事件が検察官に送致され、検察官が24時間以内に勾留の必要性を判断する
  6. (勾留の必要性が認められた場合)検察官が裁判官に勾留を請求する
  7. (勾留が認められた場合)最長20日間身柄拘束される
  8. (起訴された場合)刑事裁判に進み、判決が下される

このように、痴漢冤罪に巻き込まれると、早期の段階で適切に対応しないと長期間の身柄拘束に発展する可能性があるので、注意しましょう。

痴漢冤罪の場合、相手を訴え返すことはできる?

冤罪の場合、相手に法的な責任を問えることもありますが、訴えが必ずしも認められるとは限りません

ここでは、痴漢冤罪で訴え返せるケースと注意点について解説します。

でっちあげで痴漢冤罪にまきこまれそうなときは、相手を罪に問える可能性がある

痴漢冤罪の場合、相手に対して「名誉毀損罪」または「虚偽告訴罪」を問える可能性があります。

名誉毀損罪は、事実を摘示して他人の評判を棄損した場合に成立する犯罪です

たとえば、痴漢をしていないのに、電車内で「この人が痴漢をした」と言われると、名誉が大きく傷つけられることになります。

そのため、相手がわざと嘘の被害を訴えたら、名誉毀損罪が成立する可能性があるのです。

一方、虚偽告訴罪は、他人に刑罰を受けさせる目的で、捜査機関に虚偽の犯罪事実を申告した場合に成立する犯罪です

示談金をもらうなどの目的でわざと嘘の被害を訴えたなら、虚偽告訴罪が成立する可能性があります。

相手に損害賠償を求める(民事責任を問う)ことができる場合もある

痴漢冤罪の場合には、相手を罪に問えるだけでなく、慰謝料(損害賠償)も請求できます。

痴漢冤罪の被害にあった人は、無実にもかかわらず警察の取り調べを受けるので、大きな精神的ショックを受けることになります。

その結果、夫婦関係が悪くなったり、仕事を失ったりと、日常生活にも悪影響を及ぼしかねません。

このような精神的苦痛や社会的不利益が原因で損害を受けた場合には、相手に対して民事責任を問える場合もあるのです。

相手の責任を証明するのは簡単ではない

刑事責任または民事責任を問うには、事実を立証するための証拠を収集する必要があります。

ただし、電車内の状況は録音や録画がむずかしく、証人もいないことが多いため、客観的な証拠を集めるのは簡単ではありません。

また、相手が単に勘違いしていた場合には、故意に嘘をついたと評価できず、名誉毀損罪や虚偽告訴罪は成立しません。

そのため、相手方を訴えるにあたっては、あらかじめ弁護士に相談し、証拠の有無や勝算を確認しておくのが重要です。

痴漢冤罪に関してよくある質問

ここでは、痴漢冤罪に関するよくある質問をまとめました。

似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで疑問を解消してください。

DNA鑑定や繊維鑑定で冤罪を証明できる?

DNA鑑定や繊維鑑定は、被害者の証言を補強する目的で活用されます。

そのため、被疑者のDNAや繊維が検出されなかったからといって、それだけで無罪が確定するわけではありません。

あくまで「証言を裏づける物的証拠の一部が得られなかった」という意味にとどまります。

たとえDNAや繊維といった物的証拠が存在しなくても、ほかの証拠や被害状況から被害者の証言が信用できると裁判所が判断すれば、有罪となる可能性は十分にあります。

証拠もないのに逮捕される可能性はある?

客観的な証拠がなくても、現行犯であれば逮捕される可能性があります。

そもそも現行犯逮捕が認められるためには、次の3つの条件を満たさなければなりません。

  • 痴漢行為の直後などで「現行犯」と認められる
  • 犯罪と犯人が明確である
  • 逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある

しかし、逆に言えば証拠の有無にかかわらず逮捕自体は可能ということです。

身分証明書を提示すれば逮捕されない?

身分証明書を提示しても、現行犯であれば逮捕される可能性があります。

身分証を提示して自分の身元を明らかにすれば「逃亡のおそれ」は低くなりますが、その場から完全に逃げられない状態になるわけではありません。

そのため、警察が「逃亡のおそれ」があると判断すれば、現行犯逮捕は認められてしまうのです。

さいごに|痴漢冤罪に巻き込まれたときは一刻も早く弁護士に相談を!

本記事では、痴漢冤罪に巻き込まれたときのNG行動や対処法について詳しく解説しました。

痴漢冤罪には突然巻き込まれることが多く、冷静な判断を失いがちです。

焦って現場から逃げる、謝罪するなどの対応をとるとかえって状況が悪化してしまうので注意しましょう。

痴漢冤罪によって逮捕され、身体拘束を受けるなどのリスクを避けるためには、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士に相談すれば、自分の無実を証明するための弁護を受けられるだけでなく、取り調べ時の対応についてもアドバイスを受けられます。

必要に応じて、家族や職場とのやり取りも代行してくれるでしょう。

なお、ベンナビ刑事事件を利用すれば、痴漢事件の対応を得意とする弁護士を簡単に探せます。

日常生活への支障をできるだけ少なくするためにも、早いタイミングで弁護士に相談しましょう。

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監修記事
東京スタートアップ法律事務所
福本 拓眞 (神奈川県弁護士会)
当事務所ではこれまでに多くのご相談・ご依頼をお受けしてきた経験から得られた知識やノウハウを駆使して、ご依頼者様の権利を守るための弁護活動をお約束いたします。
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アシロ編集部
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