- 「風俗を利用しただけで逮捕されることがあるの?」
- 「どんな行為が法律に触れるのか、よくわからない…」
このような不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
実際、風俗店の利用自体は必ずしも違法ではありませんが、行為の内容や相手の年齢、利用の経緯によっては、利用客側が逮捕されるケースも存在します。
知らずに違法行為に関与してしまうと、取り返しのつかない事態になる可能性もあるため、正しい知識を持つことが重要です。
本記事では、風俗店を利用した客が逮捕される主なケースや、よくあるきっかけ、避けるために注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
「知らなかった」では済まされないリスクに備えるためにも、ぜひ参考にしてください。
単に風俗店を利用しただけで客が逮捕されることはない
風営法の許可を得ている合法風俗店を、店舗が定めているルールや法律の範囲内で利用しただけなら、客側が逮捕されることはありません。
しかし、以下のようなケースでは、客側も逮捕されるリスクに晒されます。
- 店舗が定めているルールに違反して通報された場合
- 違法風俗店の利用など、店舗側の違法行為に客側として加担した場合
たとえば、デリバリーヘルスを利用した際に、キャストが拒否しているにもかかわらず本番行為に及んだ場合には、不同意性交等罪で逮捕されるおそれがあります。
また、18歳未満の風俗嬢を違法に雇用している風俗店において、接客をしているキャストが18歳未満であることを知りながら性的サービスを受けた場合には、児童買春罪などの容疑で刑事訴追されるリスクに晒されます。
なお、本番行為が禁止されている風俗店でキャストの同意を得て性行為に至ったケースは「売春」にあたり、売春防止法違反に該当します。
しかし、売春防止法では、売春行為・買春行為に対して罰則規定を置いていないので、売春防止法違反で逮捕されることはありません。
風俗店の利用客が犯罪行為に及べば逮捕される可能性は十分ある
ここからは、風俗店の利用客が逮捕される可能性があるケースについて具体的に解説します。
1.無理やり性行為に及んだ場合|不同意性交等罪
被害者が拒否しているのに性行為などに及んだときには、不同意性交等罪の容疑で逮捕されます。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
風俗店利用時に不同意性交等罪が適用される可能性があるのは以下のようなケースです。
- 本番行為が禁止されているヘルス系の風俗店で本番行為を強要した場合
- キャストがNG行為にしている性交等に該当する行為に無理やり及んだ場合
- 風俗嬢の個人情報を収集して、「言うことを聞かなければ親に風俗で働いているとバラすぞ」などと脅して、本人の真意に反して本番行為に応じさせた場合 など
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と極めて重い点に注意が必要です。
また、不同意性交等罪は未遂犯も処罰対象とされているので、無理やり本番行為に及ぼうとして失敗に終わったとしても、不同意性交等未遂罪の容疑で逮捕される可能性があります。
さらに、無理やり本番行為に及んだ際に、被害者にけがをさせてしまったときには、不同意性交等致傷罪が適用されるため、無期または6年以上の拘禁刑まで刑事罰が引き上げられます。
2.無理やり許可されていないわいせつ行為に及んだ場合|不同意わいせつ罪
風俗店において、風俗嬢が許可をしていないわいせつ行為や、店舗で禁止されているわいせつ行為に無断で及んだ場合には、不同意わいせつ罪が成立します。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
風俗店を利用したときに不同意わいせつ罪の容疑に問われる可能性があるケースは以下のとおりです。
- キャストの体に触れる行為が禁止されており、キャスト自身も触れられることを拒否しているにもかかわらず、無理やり胸や臀部などを撫でまわす行為
- 標準的な風俗プレイは許可しているものの、キスNGを出している風俗嬢に対して、許可なく無理やりキスをする行為 など
不同意わいせつ罪の法定刑は6ヵ月以上10年以下の拘禁刑で、未遂犯も処罰対象とされています。
3.性行為の様子などを無断で撮影した場合|性的姿態等撮影罪
風俗店を利用している際の様子を無断で撮影した場合には、今般新設された性的姿態等撮影罪が成立します。
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
引用元:性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | e-Gov 法令検索
たとえば、風俗店に持ち込んだカメラやスマートフォンなどで接客時の様子を盗撮した場合には、性的姿態等撮影罪が適用される可能性が高いです。
性的姿態等撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑で、未遂犯も処罰対象とされています。
また、風俗店利用時の様子を無断で盗撮し、そのデータを第三者に送信したり動画投稿サイトにアップロードしたりすると、性的影像記録提供等罪や性的姿態等影像送信罪などの別罪で逮捕されるリスクも生じます。
風俗店の利用客が犯罪行為に及んだことで逮捕される2つのケースと刑事手続きの流れ
ここからは、風俗店の利用客が逮捕されるときに想定されるシチュエーションについて解説します。
1.警察に通報されて現行犯逮捕される
まず、風俗嬢を無理やりレイプするなどした結果、風俗嬢や連絡を受けたスタッフにその現場で110番通報された場合、駆けつけた警察官に現行犯逮捕される可能性が高いでしょう。
現行犯逮捕は、裁判官が事前に発付する逮捕状がなくても実行可能な強制処分です。
現場に駆けつけた警察官が犯罪事実の痕跡が残っていると判断した場合には、そのまま身柄拘束されて警察署に連行され、身柄拘束付きの取り調べが実施されます。
2.被害届を提出されて通常逮捕される
次に、風俗嬢を無理やりレイプしたり、インターネット上にアップロードした盗撮動画を店舗側が発見したりした結果、被害者側が警察に相談をして捜査活動が進められた場合、通常逮捕される可能性があります。
通常逮捕は、事前に裁判官の審査を経て発付された逮捕状を根拠におこなわれる強制処分です。
事前に任意での出頭要請を受けて事情聴取を経てから通常逮捕されるパターンも少なくありませんが、ある日いきなり警察官が自宅にやってきて、いきなり通常逮捕処分が実行される可能性もあります。
3.捜査機関で身柄拘束付きの取り調べが実施される|最長23日間
不同意性交等罪や性的姿態等撮影罪などの容疑で逮捕されると、身柄拘束付きの取り調べが実施されます。
捜査機関に身柄拘束される期間は以下のとおりです。
- 警察段階の取り調べ(逮捕段階):48時間以内
- 検察段階の取り調べ(逮捕段階):24時間以内
- 検察段階の取り調べ(勾留段階):最長20日間
つまり、風俗店で犯罪行為に及んだ結果、逮捕・勾留されると、検察官が刑事裁判にかけるかどうかを判断するまでに、最長23日間の身柄拘束期間が生じる可能性があるということです。
そして、逮捕・勾留によって身柄拘束されている期間中は、自宅に戻ったり会社に出勤したりすることができません。
また、スマートフォンなどの所持品も全て取り上げられるので、家族や知人に電話で連絡することも禁止されます。
そのため、仮に不起訴処分の獲得に成功したとしても、社会生活にはさまざまな支障が生じるでしょう。
4.検察官が起訴・不起訴を決定する
逮捕・勾留段階の取り調べが終了すると、検察官が、風俗店利用時に及んだ犯罪行為について刑事裁判にかけるかどうかを判断します。
検察官が起訴処分を下すと、公開の刑事裁判で審理を受けなければいけません。
一方、検察官から不起訴処分の判断を引き出すことができれば、その時点で刑事手続きは終了します。
5.刑事裁判で判決が言い渡される
検察官が起訴処分の判断を下した場合には、風俗店利用時の犯罪行為について公開の刑事裁判で審理がなされます。
刑事裁判が開廷される時期は、起訴処分から1ヵ月〜2ヵ月後が目安です。
刑事裁判では、弁論手続きや証拠調べ手続きを経て、最終的に判決が言い渡されます。
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪の法定刑には罰金刑が定められていないので、執行猶予付き判決を獲得できなければ、実刑判決が下されてしまいます。
実刑判決が確定すると刑期を満了するまで社会生活から隔離されるので、出所後の社会復帰が困難になりかねないでしょう。
風俗店を利用して逮捕されたときに生じるデメリット
風俗店を利用して逮捕された場合、以下のようなデメリットが生じます。
- 実名報道リスクに晒される
- 家族や恋人、知人などにバレる
- 長期間身柄拘束される
- 前科がつく可能性がある
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
実名報道される可能性がある
風俗店で犯罪行為に及んで逮捕されると、テレビの報道番組や新聞、ネットニュースなどで実名報道される可能性があります。
一度でもこれらの媒体で実名報道されると、半永久的にインターネット上に風俗店での犯罪行為に関する情報が残ってしまいます。
そうなると、今後の就職活動や転職活動、結婚などに大きな支障が出るでしょう。
家族や恋人に風俗を利用して事件を起こしたことがバレてしまう
風俗店で犯罪行為に及んで逮捕されると、家族や恋人に風俗に通っていることや、そこで無理やり本番行為などを強要してしまったことがバレる可能性が高いです。
その結果、家族や恋人からの信用がなくなったり、別れを切り出されたりしかねません。
長期間身柄拘束される可能性がある
風俗店での犯罪行為が原因で逮捕されると、数日〜数週間は捜査機関に身柄を押さえられることを覚悟しなければいけません。
そうなると、家族などには心配をかけるでしょうし、会社や学校は休まざるを得ないでしょう。
また、逮捕・勾留を経て起訴されたあとも起訴後勾留がつき、そのまま実刑判決が確定すると、刑期を満了するまで日常生活を送ることができなくなります。
前科持ちになってしまう可能性がある
風俗店での犯罪行為を理由に有罪になると、刑事罰を科されるだけではなく、前科によるデメリットも強いられます。
前科とは、有罪判決を受けた経歴のことです。実刑判決だけではなく、罰金刑や執行猶予付き判決が下された場合も前科として扱われます。
前科がついてしまうと、今後の社会生活に以下のようなデメリットが生じます。
- 賞罰欄付きの履歴書への記載義務、採用面接時に質問されたときの回答義務を課されるので、就職活動や転職活動が成功しにくくなる
- 前科を隠したまま内定を得たとしても、採用後に前科の事実が発覚すると、経歴詐称を理由に懲戒解雇される可能性が高い
- 前科は法定離婚事由に該当すると判断されることが多いので、配偶者から離婚を求められると応じざるを得ない
- 前科を理由にビザやパスポートの発給制限を受けると、海外旅行や海外出張に行くことができない
- 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い
風俗店の利用客が犯罪行為に及んだ場合に弁護士に相談すべき理由
風俗店を利用したときに犯罪行為に及んでしまった場合や、風俗店側とトラブルになったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
ここでは、風俗店の利用をめぐる刑事事件への対応が得意な弁護士の力を借りるメリットについて解説します。
1.逮捕などの身柄拘束のリスクを下げられる
風俗店で起こしたトラブルが原因で警察に逮捕されるのは、被疑者が犯行に及んだと思われる相当の客観的証拠があり、かつ、逃亡または証拠隠滅のおそれがあるときに限られます。
言い換えれば、風俗店で犯罪行為に及んだ事実に間違いがない状況であったとしても、逃亡または証拠隠滅のおそれがないと判断される状況なら、逮捕・勾留といった強制処分によって身柄が拘束されることはないということです。
その点、弁護士に相談・依頼をすれば、事情聴取での供述内容や供述姿勢、捜査機関に提出するべき証拠などについてアドバイスをもらえるので、逮捕されずに済むような状況を作り出しやすくなるでしょう。
また、不当な身柄拘束処分に対しては、準抗告や取り消し請求などの法的措置によって対抗してくれます。
2.被害者との示談交渉などを任せられる
風俗店において不同意性交等罪や性的姿態等撮影罪などの容疑をかけられる状況になったときには、できるだけ早いタイミングで被害者との示談を成立させる必要があります。
なぜなら、被害者との間で和解契約が成立すれば、刑事手続き上、以下のメリットを得られる可能性が高いからです。
- 警察に通報される前に示談が成立すれば、刑事事件化自体を回避し、当事者間だけで紛争を解決できる
- 検察官の公訴提起判断までに示談成立が間に合えば、不起訴処分獲得の可能性が高まる
- 刑事裁判が終了するまでに示談成立に成功すれば、実刑判決回避の量刑判断を引き出しやすくなる
そして、被害者との間で示談交渉を進めるなら、弁護士に一任することを強くおすすめします。
示談交渉のノウハウ豊富な弁護士に対応を任せれば、怒りや不安を抱えている被害者との間でも冷静に話し合いを進めてくれるので、スピーディーに相場どおりの条件で示談契約を締結しやすくなるでしょう。
3.店側からの不当な請求を拒否できる
風俗店でのトラブルにおいては、風俗店側から「罰金100万円」などの不当な請求を受けたり、「家族や職場にバラされたくなければ今すぐに数百万円を慰謝料として支払え」などの脅迫的な要求をされたりするケースもゼロではありません。
そんなときでも、弁護士が代理人として就任すれば、風俗店側も無理やり金銭などを要求してくることがなくなるので、合法的な話し合いの末に、穏便な解決を目指しやすくなるでしょう。
さいごに|風俗店で無理やり性行為に及んだ場合は逮捕されるリスクがある
風俗店で無理やり本番行為などに及んだ場合には、不同意性交等罪などの容疑で逮捕されるリスクが生じます。
逮捕・勾留といった身柄拘束処分によるデメリットや、有罪・前科になるリスクを軽減するには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をして、状況を踏まえた適切な防御活動を展開することが大切です。
ベンナビ刑事事件では、風俗店でのトラブルへの対応を得意とする弁護士を多数紹介中です。
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