- 「ある日警察が家にやってきて突然家宅捜査をされた..」
- 「家宅捜索されたあとはどうなるの?」
このように、突然の家宅捜索に戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
家宅捜索とは、犯罪事実に関する証拠を収集する目的で、捜査員が捜査対象者の自宅を訪問し、証拠物などを差し押さえる強制処分のことです。
家宅捜索後は、逮捕や取り調べといった対応に進むケースが多いため、家宅捜索に時点で次の段階を想定しなければなりません。
この記事では、家宅捜索の流れ、家宅捜索をされたときの対処法、家宅捜索の際に弁護士へ相談するメリットなどについてわかりやすく解説します。
家宅捜索後の対応を見極めるために、ぜひ参考にしてください。
家宅捜索とは?警察が被疑者の自宅などを捜索し、証拠を差し押さえる手続き
家宅捜索とは、一定の場所について被疑者または差し押さえるべき物を探す強制処分のことです。
正式には「捜索差し押さえ」と呼ばれます。
まずは、家宅捜索の要件や内容について見ていきましょう。
家宅捜索がおこなわれる条件
対象者の意思に反して強制的に実施されるため、原則として裁判官が事前に審査したうえで発付される捜索差押令状が必要です。
第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
引用元:刑事訴訟法|e-Gov法令検索
なお、捜索差押令状には以下の事項が記載されています。
- 差し押さえるべき物または捜索しもしくは検証するべき場所、身体、物
- 請求者の官公職氏名
- 被疑者または被告人の氏名(被疑者または被告人が法人であるときにはその名称)
- 罪名及び犯罪事実の要旨
- 7日間を超える有効期間を必要とするときには、その旨及び事由
- 日の出前または日没後に差し押さえ、捜索または検証をする必要があるときは、その旨及び事由
家宅捜索を実施する場所に、差し押さえるべき物などが存在する可能性がある場合に、捜索差押令状が発付されます。
逮捕現場においては、例外的に捜索差押令状なしに家宅捜索が可能
家宅捜索をするには原則として裁判所が発付する捜索差押令状が必要です。
しかし、通常逮捕または現行犯逮捕をおこなう際に、必要だと認められるときには、例外的に無令状での家宅捜索が可能とされています。
逮捕現場において捜索差押令状なしの家宅捜索が可能とされているのは、逮捕の現場には被疑事実に関する客観的証拠などが存在する蓋然性が認められるからです。
家宅捜索ではどこまで見る?
家宅捜索の対象になるのは、捜索差押令状に記載された場所・物だけです。
たとえば、被疑者の自宅マンションが捜索差押令状の捜索場所として明示されていた場合、マンションの隣の部屋が捜索されることはありません。
また、覚醒剤所持罪を理由に発付された捜索差押令状に基づいて、自宅マンションに対して捜索がおこなわれた場合、室内から児童ポルノが見つかったとしても、捜索差押令状の効力としてこれを差し押さえることは禁止されます。
家宅捜索はどんなときにおこなわれる?前兆はある?
家宅捜索は、犯罪事実の証明に役立つ客観的証拠を収集する目的で実施される強制処分です。
捜索対象者に対して家宅捜索が実施される日時などについて事前に告知されることはありません。
なぜなら、事前に告知すると証拠を隠滅されてしまうからです。
被疑者・被告人からすると、家宅捜索はある日いきなり実施されるものであり、前兆をうかがい知ることはできないでしょう。
家宅捜索前から家宅捜索の当日、その後までの流れ
家宅捜索をめぐる刑事手続きの一般的な流れは以下のとおりです。
- 捜査活動がおこなわれる
- 捜査機関が裁判所に対して捜索差押令状の発付請求をする
- 捜索差押令状が執行される
- 逮捕される
- 身柄拘束された状態で取り調べが実施される
- 検察官が公訴提起するかどうかを判断する
- 公開の刑事裁判が開かれる
それぞれについて、順を追って見ていきましょう。
1.内偵捜査がおこなわれる
まず、被害者から被害届・告訴状が提出されるなどして捜査機関が犯罪事実を把握すると、捜査活動がスタートします。
2.捜索差押令状の発付を請求される
捜査機関が犯罪事実を証明する証拠が必要だと判断した場合には、裁判所に対して捜索差押令状の発付請求がおこなわれます。
そして、裁判官が捜索差し押さえに理由があると判断したときには、捜索差押令状が発付されます。
3.捜索差押令状を持った警察官が自宅などに来る
捜索差押令状が発付されると、家宅捜索を実施するために捜査員が自宅などにやってきます。
家宅捜索が実施されるタイミングは事前に予告されることはありません。
また、家宅捜索は強制処分であるため、「今から仕事があるから」「来客がいるから」などの理由で拒否したり別の日に変更してもらったりすることもできません。
4.逮捕、もしくは任意での取り調べがおこなわれる
家宅捜索後は、状況に応じて逮捕や任意での取り調べが実施されます。
たとえば、薬物事犯に関する家宅捜索がおこなわれた現場で覚醒剤などの違法薬物が見つかったときには、その場で現行犯逮捕されます。
また、家宅捜索によって犯罪の証明に役立つ重要な客観的証拠が見つかったときには、そのまま警察署への出頭を求められて、取り調べを受けることになるでしょう。
そのほか、家宅捜索で得られた証拠や供述内容をもとに、刑事事件を起こしたと考えられる場合は、後日通常逮捕される可能性もあります。
仮に逮捕手続きに移行しなかったとしても、在宅事件として処理されるので、捜査機関からの出頭要請に応じつつ、適宜取り調べを受けなければいけません。
5.身柄を拘束される
家宅捜索の結果、捜査機関がそのまま捜査活動を展開する必要があると判断したときには、被疑者として逮捕される可能性が高いです。
家宅捜索と同じように、逮捕処分も強制処分にあたるため、拒否することはできません。
そして、逮捕後は警察や検察にて取り調べ・勾留が実施されるため、以下の期間にわたって身柄を拘束される可能性があります。
- 警察段階の取り調べ(逮捕段階):48時間以内
- 検察段階の取り調べ(逮捕段階):24時間以内
- 検察段階の取り調べ(検察官が勾留請求した場合):20日間以内
つまり、家宅捜索のあとに逮捕・勾留されると、最長23日間の身柄拘束を強いられる可能性があるということです。
なお、これらの期間中は自宅に戻ることはもちろん、会社に出勤したり、家族などと連絡をとったりすることもできなくなります。
仮に不起訴処分の獲得に成功したとしても、これだけの身柄拘束期間を強いられるとそれだけで社会生活にはさまざまな支障が生じるでしょう。
そのため、速やかに弁護士に相談・依頼をして、早期の身柄釈放を目指してもらうことが大切です。
6.検察官が起訴・不起訴の判断をする
家宅捜索後の取り調べ・勾留を経たあとは、検察官が被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。
検察官が起訴処分を下した場合、刑事裁判で審理を受けなければいけません。
一方、検察官が不起訴処分を下した場合は、この段階で刑事手続きは終了します。
7.刑事裁判になる
検察官が起訴処分の判断を下した場合、約1ヵ月〜2ヵ月後に刑事裁判が開かれます。
刑事裁判では、家宅捜索で得られた証拠が調べられたり、弁論手続きがおこなわれたりします。
刑事裁判での審理を経たあとは、最終的に裁判官が量刑判断を下します。
ここで実刑判決が確定すると、そのまま刑務所に服役しなければいけません。
一方、執行猶予付き判決や罰金刑が確定すれば、実生活を送りながら社会復帰を目指すことになります。
しかし、有罪判決が下された場合、今後は前科者として生きていかなければなりません。
家宅捜索に入られたらどうすればいい?考えられる対処法
ここからは、家宅捜索に入られたときの対処法や注意事項について解説します。
捜索差押令状の内容を確認する
家宅捜索がおこなわれるときには、最初に捜査員から捜索差押令状が提示されます。
まずは、捜索差押令状の内容をしっかりと確認して、どのような被疑事実なのか、捜索差し押さえの対象や範囲は何なのかを確認してください。
押収品リストを請求する
家宅捜索によって自宅内の物が押収された場合には、捜査員から押収品目録(押収品リスト)を受け取りましょう。
捜査員は、家宅捜索の際に押収品目録を作成して対象者に交付しなければなりません。
万が一、押収品目録が交付される気配がないときには、こちら側から請求してください。
押収品目録が手元にあれば捜査機関がどのような証拠を使って犯罪を立証しようとしているのかを判断できるので、今後の防御方針を明確化しやすくなるでしょう。
捜索証明書を請求する
家宅捜索が実施されたからといって、必ず証拠物が押収されるわけではありません。
自宅から被疑事実に関する証拠が見つからなかったときは、家宅捜索は空振りに終わります。
そして、家宅捜索で何も差し押さえられなかった場合、家宅捜索を受けた側は捜索証明書を請求可能です。
捜索証明書があれば、「家宅捜索で何も犯罪に関連した証拠物が見つからなかった」という事実を明らかにできるので、今後の防御活動に役立てられるでしょう。
家宅捜索では抵抗せず素直に応じる
家宅捜索は強制処分なので、現場で抵抗をしても意味がありません。
むしろ、抵抗することで捜査機関からの印象が悪くなりますし、揉み合いなどになると公務執行妨害罪などの容疑で現行犯逮捕されるおそれもあります。
そのため、捜査員が自宅にやってきたときには、指示にしたがって丁寧な対応を心がけてください。
たとえば、捜査員が探しているであろう証拠物の場所を尋ねられた場合、素直に回答すれば家宅捜索が早く終わるでしょう。
また、捜索差押令状が発付されている以上、許可の有無とは関係なく家宅捜索は実施されるので、居留守を使っても無駄です。
家宅捜索の対応について、弁護士に依頼すると何をしてもらえる?
家宅捜索を受けたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
ここでは、家宅捜索のタイミングで弁護士の力を借りるメリットについて解説します。
家宅捜索に立ち会ってもらうことができる
弁護士に依頼をすれば、逮捕前に実施される家宅捜索、逮捕後に実施される家宅捜索に立ち会ってもらえます。
弁護士の立ち会いがあれば、捜索差押令状に記載された目的物や場所以外に対する違法な捜索・差し押さえを牽制できるでしょう。
家宅捜索後に、早期釈放や不起訴獲得を目指して活動してもらえる
刑事事件に関する弁護活動を依頼すれば、被疑者・被告人にとって有利な状況を作り出すための防御活動を期待できます。
弁護士がおこなってくれる業務内容や期待できる成果として、以下のものが挙げられます。
- 被害者がいる場合には、できるだけ早いタイミングで示談交渉を開始し、和解成立を目指してくれる
- 早期の示談成立、供述内容や防御方針の明確化などによって、起訴猶予処分を獲得できる可能性が高まる
- 仮に起訴処分が下されたとしても、執行猶予付き判決や罰金刑を獲得することで、実刑回避を目指してくれる
- 捜査機関が家宅捜索で収集した証拠をチェックして、捜査機関がどのような方針で犯罪を立証しようとしているのかを分析できる
- 家宅捜索に誠実に対応することで証拠隠滅のおそれがないことをアピールし、早期の身柄釈放や在宅事件への切り替えを目指してくれる
家宅捜索についてよくある質問
さいごに、家宅捜索についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
家宅捜索に来ても、本人不在の場合はどうなる?
まず、家宅捜索は、本人が不在であったとしても実行されます。
ただし、本人が不在の場合、家族や同居人、大家さんや管理会社、隣人や地方公共団体の職員などの立ち会いが求められるのが実務上の運用です。
なお、本人に帰宅を促しても拒否されたり、どうしても立会人が見つからなかったりする場合には、捜査員だけで家宅捜索が実施されて、後日差押品目録・捜索証明書などが本人に交付されます。
家宅捜索で証拠が何も出てこないとどうなる?
家宅捜索で証拠が見つからなかった場合には、何も押収されずに家宅捜索が終了します。
ただし、家宅捜索で何も見つからなかったからといって、そのまま捜査活動が終了するわけではありません。
捜査機関から任意での出頭を求められる可能性は残るので、弁護士に相談のうえ、事情聴取には誠実に対応するべきです。
家宅捜索後の片づけは誰がするの?
捜査機関は家宅捜索をするだけで、家宅捜索後の片付けはしてくれません。
そのため、家宅捜索によって自宅内の物があちらこちらに散らばってしまった場合には、自分で片付けをしなければいけないでしょう。
家宅捜索がおこなわれる時間に目安はある?
家宅捜索をする時間帯について法的なルールは存在しません。
実務上は、家宅捜索の対象である居宅に住民が所在しているタイミングを見計らって捜査員がやってくることが多いです。
さいごに|家宅捜索のおそれがあったり受けたりしたら、速やかに弁護士へ相談を!
家宅捜索を実施されると、刑事事件に関する証拠物が捜査機関に押さえられてしまいますし、そのまま逮捕手続きに移行するリスクにも晒されます。
そのため、家宅捜索のために捜査員が自宅にやってきたときや、家宅捜索をされそうなときには、できるだけ早いタイミングで刑事事件を得意とする弁護士に相談・依頼することが大切です。
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