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前科一犯とは?就職や結婚、海外旅行などに生じる9つのデメリットも解説

監修者
原内 直哉
弁護士
前科一犯とは?就職や結婚、海外旅行などに生じる9つのデメリットも解説

「前科一犯」とは、過去に犯罪を起こし、刑罰を受けたことがある状態を指します。

もしも犯罪行為によって前科がついてしまった場合、今後の人生において大きく影響を及ぼします。

また、次に罪を犯した場合には「前科者」として、より重い刑罰を受けるリスクがある点にも注意が必要です。

本記事では、前科をもつことで生じるデメリットから対策まで、詳しく解説していきます。

「前科がついたらどうしよう」「前科がつかないためにはどうすればいい?」という方のために、今できることも紹介するので、ぜひ最後まで参考にしてください。

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前科一犯とは?就職や生活に影響があるの?

前科とは、以前に犯罪を犯し刑罰を受けた経歴のことです。

なお、逮捕や起訴をされただけでは前科にはなりません。

裁判で有罪判決が確定して初めて前科がつく点に注意しましょう。

また「前科一犯」とは、過去に一度刑罰を受けた状態を指します。

刑罰を受けたのが二度目なら前科二犯、三度目なら前科三犯となります。

一度でも前科がつくと、検察庁が管理する「前科調書」に生涯にわたって記録が残ります。

その結果、就職や転職、結婚、海外旅行などの場面でさまざまな制限や不利益を受ける可能性があります。

前科一犯ではどんな影響がある?代表的な9つのデメリット

前科一犯になると、日常生活のさまざまな場面で影響を受ける可能性があります。

前科がつくことによる代表的なデメリットは、以下のとおりです。

  • 現在の仕事を解雇されてしまう可能性がある
  • 就職活動や転職活動の際に、前科を申告せざるを得ない場合がある
  • 一部の職業は、前科がつくことで免許が取り消されるなどの制限を受ける
  • 親族の就職にも影響が生じることがある
  • 離婚の原因となる可能性がある
  • 結婚をする際の妨げになる可能性がある
  • 海外旅行に制限が生じる場合がある
  • インターネット上に前科の情報が掲載され続け、消えない可能性がある
  • 次に罪を犯したときに、前科がない場合に比べ重い刑罰を受ける可能性がある

それぞれについて詳しく解説します。

1.現在の仕事を解雇されてしまう可能性がある

会社の就業規則に有罪判決を受けることが「解雇事由」として明記されている場合、前科がついたことによって解雇される可能性が高いでしょう。

また、就業規則に前科についての規定がなくても、会社の名誉や評判を著しく傷つけた場合や、犯罪の性質によって職場環境を強く害する場合は、解雇の正当な理由となり得ます。

2.就職活動や転職活動の際に、前科を申告せざるを得ない場合がある

前科の申告について法的な義務はありませんが、履歴書の賞罰欄での記載や面接での確認を求められる場合があります。

前科を隠して採用されたあとに前科があるという事実が発覚すると、経歴詐称として解雇される恐れがあるため、記入を求められた場合は正直に申告しなければなりません。

とはいえ、正直に申告すれば採用されないリスクもあり、就職活動において難しい判断を迫られることになるでしょう。

3.一部の職業は、前科がつくことで免許が取り消されるなどの制限を受ける

拘禁以上の前科がつくと、一定期間就業できない職業や取得できない国家資格があります。

具体的な職業は、以下のとおりです。

前科によって制限を受ける職業・資格の例
職業・資格名 主な制限内容 制限期間・説明 根拠法令
医師 罰金以上の刑で、免許を与えないことがある・業務停止処分もあり 医師法4条3号、7条2項
教員(公立学校) 罰金以上の刑で教員・校長になれない 学校教育法9条2号
国家公務員 拘禁以上の刑で就職・受験不可 刑執行終了まで 国家公務員法5条3項2号、8条1項1号、38条2号、43条、76条
警備員 拘禁以上の刑で警備員になれない 刑執行終了後5年 警備業法第14条
宅地建物取引士 拘禁以上の刑で登録・業務不可 刑執行終了後5年 宅地建物取引法5条1項5号、66条1項1号
司法書士 拘禁以上の刑で登録不可 刑執行終了後3年 司法書士法第5条1号
公認会計士 拘禁以上の刑で登録不可 刑執行終了後3年 公認会計士法第4条3号
保育士 拘禁以上の刑で登録不可 刑執行終了後2年 児童福祉法18条の5第2号、18条の19第1項1号
取締役、監査役、執行役 拘禁以上の刑で役員になれない 刑執行終了まで 会社法331条1項4号、335条1項、402条4項

これらの職業に就いている場合、釈放後の職業選択の幅が狭まることを覚えておきましょう。

4.親族の就職にも影響が生じることがある

自分に前科がつくことで、家族や親戚の就職に悪影響を及ぼす可能性があることも覚えておきましょう。

たとえば、企業や官公庁は、応募者の身辺調査の一環として親族を調査することがあります。

実際に、防衛省では、一定の階級や立場に応じて親族の調査をおこなう場合があります。

このとき、応募者の親族に前科者がいることがわかると、犯罪の内容によっては採否のマイナス評価となる恐れがあるのです。

5.離婚の原因となる可能性がある

前科があるからといって、必ず離婚してしまうというわけではありません。

しかし、どのような犯罪を犯したのか、どのような刑罰を受けたのかによっては、民法で定められた「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する場合があります。

とくに、殺人や強盗などの重い犯罪で前科がついた場合、配偶者から過去を理由に離婚を申し立てられる可能性が高くなるでしょう。

6.結婚をする際の妨げになる可能性がある

結婚を考えている相手やその家族に前科のことを知られてしまうと、その結婚において大きな障壁となってしまう可能性があります。

相手が結婚をためらってしまったり、家族から強い反対を受けたりして結婚が困難になるケースもあるでしょう。

また、前科を隠したまま結婚しても、あとから発覚する可能性もゼロではありません。

過去を理由に夫婦関係に亀裂が入ると、離婚の原因になることもあります。

7.海外旅行に制限が生じる場合がある

前科があると、海外旅行の際にパスポートの取得や入国審査で問題が生じる場合があります。

渡航先の国によっては前科を理由に入国を拒否され、海外旅行で自分だけ入国できないという事態を招きかねません。

とくに、テロや不法就労者への対策として厳しい審査をおこなう国では、「電子渡航認証システム」による事前審査で前科が発覚すると、入国を拒否されるケースがあります。

【入国が制限される可能性がある国】

  • スリランカ(ETA)
  • アメリカ合衆国(ESTA)
  • カナダ(eTA)
  • オーストラリア(ETA)
  • ニュージーランド(NZeTA)
  • ケニア(eTA)

前科がつくことによる海外旅行への影響については、以下の記事でも詳しく解説してるので、ぜひ参考にしてください。

【関連記事】前科があると海外旅行できない?パスポートやビザの取得に与える影響を解説

8.インターネット上に前科の情報が掲載され続け、消えない可能性がある

国や自治体が前科の情報を公開することはありませんが、事件がニュースで報道された場合、その記事がインターネット上に残り続けることがあります。

そして、一度ネット上に掲載された情報を完全に削除するのは非常に困難です。

そのため、何年経っても検索すれば自分の名前や事件の内容が見つかってしまう可能性があります。

その結果、仕事や友人関係などに悪影響を及ぼす恐れもあるでしょう。

9.次に罪を犯したときに、前科がない場合に比べ思い刑罰を受ける可能性がある

前科がついた場合、再び罪を犯してしまったときに、前科がない人と比べて重い刑罰が科される可能性が高くなります。

裁判では、被告人の反省や更生の可能性などが考慮されますが、前科があることで「再犯の可能性が高い」と判断されやすくなるためです。

さらに、前科の内容や再犯の時期によっては、法律上「累犯」として通常より重い刑罰が科される場合もあります。

前科はいつ消える?

結論からお伝えすると、前科の記録そのものは消えることがありません。

一度でも前科がつくと、その情報は検察庁と本籍地の市区町村にある犯罪人名簿に永続的に記録されます。

これらの記録は以下の目的で管理されています。

  • 選挙権・被選挙権の確認:公職選挙法に基づく資格確認
  • 各種資格の欠格事由チェック:弁護士、医師、教員免許などの職業資格
  • 刑事手続きでの前科照会:再犯時の量刑判断の参考

ただし、これらの記録は個人情報保護の観点から厳格に管理されており、一般の人が閲覧することはできません。

一定の要件を満たすと前科の法的な効力(刑の言渡しの効力)は消滅する

前科の記録自体は一生残り続けますが、刑法では一定の期間が経過すると「刑の言渡しの効力」が消滅すると定められています。

刑の効力が消滅すると、以下のような制限がなくなります。

  • 就職活動における申告義務の解除:履歴書の賞罰欄への記載や面接での申告が不要になる
  • パスポート発給制限の解除:執行猶予中や仮釈放中を理由とした制限がなくなる
  • 犯罪経歴証明書への記載解除:海外渡航時のビザ申請で必要な犯罪経歴証明書に前科が記載されなくなる

なお、刑の言渡しの効力が消滅する条件と期間は、受けた刑の種類によって異なります。

種類 消滅の条件 必要期間
拘禁刑以上の刑の執行後 罰金以上の刑に処されない 10年
罰金以下の刑の執行後 罰金以上の刑に処されない 5年

ただし、この期間中に新たに罰金以上の刑を受けてしまうと、効力の消滅がリセットされてしまいます。

そのため、刑の執行後は法令を遵守し、再犯を避けることが重要です。

前科がバレることはある?

前科一犯になった場合、「周囲に知られてしまうのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。

そこでここからは、前科が他人に知られるリスクについて解説します。

国や自治体などの機関から前科がバレることはない

前提として、前科に関する情報が国や自治体などの公的機関から第三者に漏れることはありません。

また、よく「前科は戸籍に載る」と勘違いをしている方もいますが、前科情報が戸籍に記載されることもありません。

前科に関する記録は、検察庁などの捜査機関や本籍地の市区町村の犯罪人名簿に保管されますが、これらは戸籍とはまったく別のものです。

そもそも前科情報は最重要の機密事項として厳重に保管されており、一般の方が容易にアクセスできない仕組みになっています。

捜査機関の記録や犯罪者名簿についても、一般人から開示請求があっても開示されることはありません。

そのため、前科があることを自分から話さない限り、国や自治体の機関から情報が漏れて発覚する可能性は極めて低いといえます。

前科がバレる可能性がある主なケース

前科が発覚する可能性がある主なケースは以下のとおりです。

  • 実名報道による発覚
    事件が実名報道された場合、インターネット上に半永久的に情報が残ります。
    現在は名前を検索するだけで過去の記事が明らかになるため、就職時の身辺調査などで発覚するリスクが高まっています。
  • 周囲からの情報漏えい
    親戚、友人、職場、学校、近所など、犯罪を起こしたことを知っている人からの噂話により情報が広がる可能性があります。
  • 興信所による独自調査
    興信所が独自ルートで調査した場合に発覚する可能性があります。
  • 本人による告白
    自分から前科があることを話した場合です。

これらのケースを踏まえ、前科による影響を最小限に抑えるためには、早期の弁護士相談が重要です。

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逮捕されても前科をつけないためには?

罪を犯して逮捕されてしまったとき、前科をつけないために最も重要なのは、「不起訴処分」を獲得することです。

日本では、起訴された場合の有罪率は99.9%という統計もあり、起訴されると有罪がほぼ確定してしまいます。

そのため、前科をつけないためには、起訴される前の段階で適切な対応を取ることが大切なのです。

以下では、不起訴処分を獲得するための具体的な対処法について詳しく見ていきましょう。

被害者と早期に示談を成立させ不起訴処分を目指す

被害者がいる事件の場合、示談の成立が不起訴処分を獲得するうえで極めて重要なポイントになります。

なぜなら、検察官が起訴・不起訴を判断する際、被害者との示談が成立しているかを考慮するからです。

起訴前に示談が成立していれば、不起訴処分となる可能性が大幅に高まります。

また、仮に起訴されてしまったとしても、示談の成立により刑が軽くなる可能性もあります。

ただし、加害者が被害者の連絡先を知らない場合、弁護士に依頼しなければ捜査機関から被害者の連絡先を得ることはできません。

また、当事者同士で示談交渉をおこなうことは感情的な対立もあり、成立が極めて困難な傾向にあります。

早期の示談成立を目指すためには、いち早く弁護士へ相談・依頼し、示談交渉を進めてもらう必要があるでしょう。

なるべく早く弁護士に相談する

前科をつけないためには、早期の弁護活動が不可欠です。

弁護士に依頼することで、以下のような対応が可能になります。

  • 被害者との示談交渉の代行
  • 検察官に対する不起訴処分の申入れ
  • 証拠収集や法的主張の準備
  • 適切な弁護方針の策定

起訴・不起訴の判断は限られた期間内におこなわれるため、時間的な制約があります。

弁護活動の選択肢を広げ、不起訴処分の可能性を最大化するためにも、逮捕後はできるだけ早期に弁護士へ相談することが重要です。

さいごに | 前科について不安があれば弁護士に相談を!

前科が一度ついてしまうと、就職や転職、結婚、さらには海外渡航など、人生のさまざまな場面で不利な扱いを受ける可能性があります。

しかも、前科の記録は一度つくと原則として一生消えることはなく、その影響は長期にわたって続くおそれがあります。

ただし、現在がまだ取り調べの段階であれば、前科を回避できる可能性も十分に残されています。

たとえば、不起訴処分となれば前科はつかず、今後の生活にも大きな支障は生じにくくなります。

そのためには、できるだけ早く適切な対応をとることが極めて重要です。

「前科がつくのではないか」と不安を感じている場合には、一人で抱え込まず、刑事事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

早い段階での相談が、あなたの将来を守る第一歩となるでしょう。

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株式会社アシロ編集部
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