- 「不倫相手に慰謝料を請求する場合の条件は?」
- 「不倫や浮気で訴える場合、どこからが不貞行為になる?」
配偶者に不倫され、不倫相手への慰謝料請求を検討している方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不倫相手を訴える条件や訴訟の手順、費用について解説します。
記事を最後まで読めば、不倫や浮気で訴える際にどこからが不貞行為か、適切な対処法がわかり、安心して行動に移せるでしょう。
不倫相手を訴えることができる条件5つ|どこからが不倫・浮気の不貞行為になる?
不倫相手を訴えるには、以下の5つの条件をクリアする必要があります。
- デートをしたり抱き合ったりしているだけでなく、肉体関係があったこと
- 不倫をしていた時点で、夫婦関係が破綻していない
- 不倫相手が不貞行為の相手を既婚者と知っていたか、知らなかったことに過失がある
- 不貞行為を客観的に証明できる証拠がある
- 慰謝料請求の時効が過ぎていない
条件を満たしていない場合、慰謝料の請求が認められない可能性があります。
それぞれの条件について、順番に見ていきましょう。
デートをしたり抱き合ったりしているだけでなく、肉体関係があったこと
不倫相手を訴えるには、単にデートやハグだけでなく、不倫相手と配偶者との間に肉体関係があったことが求められます。
民法上で慰謝料請求の根拠となる「不貞行為」に該当するには、より踏み込んだ関係性が求められるためです。
不貞行為とは、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて肉体関係をもつことをいいます。
民法第770条で法定離婚事由とされているほか、民法709条の不法行為にも該当します。
例えば、「ふたりきりで会ったら浮気」という考え方もありますが、民法上は食事やデート、キスやハグだけでは不貞行為にあたりません。
肉体関係がない場合、原則として慰謝料請求の対象にならないと考えておきましょう。
ただし、以下の行為も「性交類似行為」として肉体関係にみなされる場合があります。
- 裸で抱き合う
- 体を触り合う
- 口淫・手淫
- 肛門性交
また、肉体関係がなくても、夫婦の信頼関係を著しく損なう行為があった場合には、損害賠償が認められることもあります。
しかし、必ずしも認められるとは限らず、肉体関係があるケースよりも慰謝料額も低額になることが多いです。
不倫をしていた時点で、夫婦関係が破綻していない
不倫相手を訴えるには、不倫の時点で夫婦関係が破綻していないことも条件のひとつです。
不倫時点ですでに夫婦関係が破綻していた場合、平穏な婚姻生活を送る権利が害されたとはいえません。
裁判所も精神的苦痛が大きくないと判断するため、不倫が事実でも慰謝料の請求は認められにくいでしょう。
なお、夫婦関係が破綻しているかどうかは、複数の事情から総合的に判断します。
例えば、不倫前から関係が悪化しており、双方に関係を修復する意思がない場合や、長期間の別居や家庭内別居が続いていると、夫婦関係が破綻していると判断される可能性があります。
しかし、家族旅行などの日常的な交流があるときや別居の理由が単身赴任なら、夫婦関係は破綻していないといえるでしょう。
不倫相手が不貞行為の相手を既婚者と知っていたか、知らなかったことに過失がある
不倫相手を訴えるためには、不倫相手が配偶者を既婚者であると知っていた、もしくは既婚者であることを知れる状態であったことも求められます。
例えば、配偶者が既婚者であると知っていて交際していたなら、慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。
また、既婚者であることを知らなかったとしても、配偶者が指輪をしていたり、LINEやSNSで家庭があるとわかる内容の返信・投稿をしていたりした場合は、既婚者であると知り得たと考えられ、不倫相手の過失が認められる場合があります。
しかし、配偶者が独身であると偽って婚活パーティに出席していたときや、「結婚していたが別れた」などと嘘をついて不倫相手と肉体関係をもっていた場合、不倫相手には責任を問えない可能性があります。
不貞行為を客観的に証明できる証拠がある
不倫相手を訴えるなら、不貞行為を客観的に証明できる証拠が必要です。
相手が不倫を認めており、慰謝料を支払う意思があれば証拠がなくても問題ありませんが、実際のところは不倫相手がその事実を認めないケースも少なくありません。
相手が不倫を否認している場合や慰謝料の支払いを拒否しているときは、証拠をもとに不倫を立証する必要があります。
また、一度は不倫を認めても、あとから意見を変えるケースも考えられるので、いずれにせよ証拠は集めておいたほうがよいでしょう。
なお、不倫の証拠として有効なものは、以下のとおりです。
- ラブホテルに出入りする際の写真・動画
- 2人で泊まったとわかるホテルの領収書や宿泊記録
- 肉体関係にあることがわかるLINE・メールの内容
- 探偵・興信所の調査報告書
これらの証拠がない場合、裁判で主張が認められない可能性が高いです。
証拠を集められないときは弁護士に相談し、ほかに証拠にできるものや収集方法について専門的なアドバイスをもらいましょう。
慰謝料請求の時効が過ぎていない
不倫相手を訴える際は、慰謝料請求の時効が過ぎていないかどうかも重要なポイントです。
慰謝料請求には以下のように時効期間が定められており、期間内に請求しなければ請求する権利自体が消滅します。
- 不貞行為と不倫相手を知ったときから3年
- 不貞行為から20年
上記のうち、いずれか早いほうの期間が過ぎたときに時効が完成し、請求権は消滅します。
そのため、不倫の事実に気づいたら、できる限り早めに請求手続きを進めることをおすすめします。
なお、時効は一定の行為によって進行を止めたり延長したりすることも可能です。
例えば、内容証明郵便で催告すると時効の進行が一時的に止まり、その後6ヵ月以内に訴訟を起こせば時効の完成を防げます。
余裕をもって訴訟の準備を進めるためにも、時効期間はきちんと把握しておきましょう。
不倫相手を訴えるときに必要な準備
不倫相手を訴えるなら、以下の準備が必要です。
- 相手の氏名・住所を特定する
- 不貞行為を裏付ける証拠を集める
- 訴状と準備書面を用意する
- 弁護士に相談・依頼することも検討する
準備をしておくことで、訴訟に発展した際スムーズに対応しやすくなります。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
相手の氏名・住所を特定する
まず、相手の氏名・住所を特定する必要があります。
不倫相手がどこの誰かわからなければ、裁判所が訴状を送付できません。
配偶者から聞き出せるなら早いですが、SNSやマッチングアプリで出会った場合、配偶者も相手のことをよく知らない可能性があります。
また、相手を庇って教えてくれないケースも考えられるでしょう。
配偶者から情報を得られないときは、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士会照会を利用して、電話番号から氏名や住所を照会できる場合があります。
弁護士会照会とは、弁護士会を通じて官公庁や企業、団体に対して資料や情報の提供を求める制度です。
そのほか、費用はかかりますが、探偵事務所に調査を依頼するのもひとつの手段です。
浮気調査を探偵に依頼したときの費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】浮気調査を探偵に依頼した時の費用相場|料金プラン・安く抑える方法も解説
不貞行為を裏付ける証拠を集める
不倫相手を訴えるなら、不貞行為を裏付ける証拠を集める必要があります。
例えば、以下のようなものが証拠になり得ます。
| 写真・動画 | ・性行為の様子が写ったもの ・ラブホテルや不倫相手の自宅に出入りする際のもの ・裸や下着姿、同じ部屋に宿泊しているとわかるもの |
|---|---|
| LINE・メールのやりとり | ・肉体関係にあると推認できる内容のもの ・ラブホテルや家で会う約束をしているとわかるもの |
| クレジットカードの利用明細・領収書 | ・ラブホテルや旅館を利用したことがわかるもの ・高額のプレゼントを購入したことがわかるもの |
| 探偵事務所の調査報告書 | ・日時・場所が記載された証拠写真 ・不倫相手の個人情報 ・調査員の宣誓書・証言 |
| プレゼントやメッセージカード | ・自分が贈った覚えのない高額なアクセサリー ・恋愛感情があるとわかる手紙やメッセージカード |
| 不倫を認めた発言の書面・音声 | ・不貞行為の日付や回数、不倫相手の氏名、不倫に至った経緯など |
| 日記 | ・日時 ・配偶者の言動や行動 ・自分の気持ちや体調 |
また、上記に加えて配偶者が既婚者であることを知っていた・または知り得たことを証明できる証拠も必要です。
例えば、既婚者であると知っていたと判断できるLINE・メールのやりとりやSNSの投稿、結婚指輪をしている配偶者の写真などが該当します。
証拠はひとつでだけでなく、複数のものを組み合わせましょう。
特に日記はそれ単体では証拠と認められにくいですが、写真・動画やLINEのやりとりなど、ほかの証拠と組み合わせることで有力な証拠になる場合があります。
不倫の証拠についての詳細は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】【弁護士監修】浮気の証拠になるもの15選!自分で集めるときの注意点も解説
訴状と準備書面を用意する
不倫相手に慰謝料請求訴訟を提起する場合、訴状や準備書類を用意する必要があります。
まず、訴状やほかの必要書類を準備して訴訟を提起し、訴訟開始後、裁判所からの求めや相手の主張・反論に応じて準備書面を追加で提出するのが通常の流れです。
訴訟を提起する際に必要な書類は以下のとおりです。
| 訴状 | 当事者の氏名・住所や訴訟の理由、経緯などを記載する書類。 |
|---|---|
| 証拠書類 | 写真やLINE、ラブホテルの領収書など。 ※前項を参考にしてください |
| 証拠説明書 | 証拠の作成者や作成日付、趣旨などを説明する書類。 |
| 委任状 | 弁護士に手続きを委任する場合 |
| 収入印紙 | 慰謝料額に応じた金額の収入印紙を訴状に貼り付ける。 ※慰謝料額が100万円なら1万円 |
| 郵便切手 | 訴状を不倫相手に送付する際に必要。 金額は裁判所によって異なる。 ※東京地方裁判所の場合は6,000円 |
なお、「準備書面」とは、訴訟が進む中でさらに詳しい主張や新たな証拠、相手の反論への対応などを伝えるための書類を指し、具体的には以下のような内容を記載します。
- 事件番号や裁判所名、当事者名、作成日
- 自分の主張や慰謝料請求の根拠
- 新たに提出する証拠の説明
- 主張の整理や追加、証拠の補足
弁護士に依頼した場合、準備書類は弁護士が作成・提出するのが一般的です。
弁護士に相談・依頼することも検討する
不倫相手を訴えるなら、弁護士に相談・依頼することも検討してください。
訴訟を有利に進めるには、専門知識や経験が必要であるためです。
また、不倫相手も弁護士をつけてくる可能性があります。
いくらこちらが被害者でも、相手に弁護士がついているにもかかわらず自力で訴訟に挑むと、精神的に圧倒されたり不利な対応をしてしまったりするおそれがあります。
弁護士に相談・依頼するメリットについては、本記事内の「不倫相手を訴えるにあたり、弁護士に相談・依頼するメリット」を参考にしてください。
不倫相手を訴える(訴訟を提起する)までの流れ
実際に不倫相手を訴えるまでの流れは以下のとおりです。
- 口頭や内容証明郵便で、相手に慰謝料を請求する
- 慰謝料の金額・支払方法などの交渉をする
- 【合意できた場合】示談書を作る
- 【合意できなかった場合】訴訟の提起を検討する
それぞれのステップごとに、詳しく見ていきましょう。
1.口頭や内容証明郵便で、相手に慰謝料を請求する
不倫相手を訴えるための準備が完了したら、相手に慰謝料を請求します。
手段としては、口頭や内容証明郵便、メールなどがありますが、おすすめは内容証明郵便による請求です。
口頭での請求は記録が残らず、後々「言った・言わない」のトラブルになる場合があります。
また、メールも履歴は残りますが本気度が伝わりにくく、相手に無視される可能性が高いでしょう。
内容証明郵便とは、「いつ誰が誰にどのような文書を送付したか」を郵便局が証明してくれるサービスです。
自分でも作成できますが、弁護士に作成を依頼するとよいでしょう。
弁護士の名義で送付してくれるため、相手はプレッシャーを感じ、無視されにくいです。
なお、内容証明郵便の書き方にはルールがあります。
書き方や書く際の注意、出し方については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】【弁護士解説】不倫相手に内容証明を送る効果とルール|送付後の対応まで
2.慰謝料の金額・支払方法などの交渉をする
相手が話し合いに応じたら、慰謝料の金額や支払い方法、支払い期日といった詳細について話し合います。
請求金額に法律上の決まりはなく、ケースによって金額は変わりますが、慰謝料額には以下のとおり大まかな相場が存在します。
- 別居・離婚をする場合:50万円~300万円程度
- 別居・離婚しない場合:50万円~100万円程度
明らかに相場を上回る金額を提示すると、相手が反発して話し合いが進まなくなる可能性がある点に注意しましょう。
また、支払い方法は一括払いや分割払いなど、双方が納得できる形を選ぶのが現実的です。
不倫による離婚慰謝料の相場や請求先については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】浮気・不倫による離婚慰謝料の相場は?請求先や手続きのステップをパターン別に解説
3.【合意できた場合】示談書を作る
話し合いの結果合意に至ったときは合意の内容を書面化し、示談書を作成しましょう。
口頭での合意でも、慰謝料の請求は可能です。
しかし、あとから「支払うと言っていない」などと言われる可能性を考慮すると、作成しておいたほうが安心です。
また、合意書を作成しておくことで、合意内容を証明できます。
なお、合意書を作成する際は、公正証書にすることをおすすめします。
公正証書とは、国の機関である公証役場の公証人が作成する公的な証書です。
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すれば、支払いが滞ったときに裁判を経ることなく相手の銀行口座や給与を差し押さえられます。
合意書のテンプレートは、以下の記事からダウンロード可能です。
不倫相手との示談だけでなく、配偶者にも請求する場合やダブル不倫のケースなど、さまざまなパターンのテンプレートがあるため参考にしてください。
【関連記事】不倫の示談書のテンプレートを公開!確実に効力を持たせるポイントも解説
4.【合意できなかった場合】訴訟の提起を検討する
交渉が決裂した場合や相手が支払いを拒否したときは、訴訟の提起を検討しましょう。
準備しておいた訴状や証拠を裁判所に提出します。
訴訟の提起先は、慰謝料額によって以下のように異なります。
- 請求額が140万円以下:簡易裁判所
- 請求額が140万円超:地方裁判所
また、不倫相手の住所地か、不貞行為がおこなわれた場所を管轄する裁判所にも提起する必要があります。
実務上は請求者の住所地を管轄する裁判所でも認められる場合がありますが、申し立てる前に裁判所や弁護士に確認するとよいでしょう。
【参考】裁判所の管轄区域|裁判所
不倫相手を訴えた(訴訟を提起した)あとの流れ
訴訟提起から判決を得るまでの流れは以下のとおりです。
- 裁判所に訴状を提出する
- 不倫相手に訴状が送達される
- 不倫相手が答弁書を提出する
- 原告(あなた)・被告(不倫相手)双方が裁判に出廷する
- 和解交渉がおこなわれる
- 和解が進まない場合は尋問がおこなわれる
- 判決が下される
訴状の提出後は上記のように進行し、途中で和解できれば和解による解決も可能です。
自分で進めていくことに不安があるなら、早い段階で弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
1.裁判所に訴状を提出する
まずは裁判所に訴状を提出します。
訴訟の提出時には、証拠書類や証拠説明書なども必要です。
書類に不備があると受理されないため、内容を十分に確認したうえで提出しましょう。
2.不倫相手に訴状が送達される
訴状が受理されると、裁判所から不倫相手に訴状が送達されます。
送達とは、裁判所が訴状を相手に送付する手続きをいい、不倫相手の住所や勤務先などに郵送されることが多いです。
そのほか、以下の書類も同封されます。
| 期日呼出状 | 裁判の期日を知らせる書類 |
|---|---|
| 答弁書用紙や記載例 | 不倫相手が反論や主張を記載するための書類と、その書き方の説明書類 |
| 証拠書類・証拠説明書の写し | 請求者が提出した証拠書類・証拠説明書の写し |
送達が完了すると、相手は通常答弁書の作成に取りかかります。
3.不倫相手が答弁書を提出する
訴状送達後、訴状を受け取った不倫相手が答弁書を提出します。
裁判所は答弁書について、以下のように案内しています。
- 同じものを2通作成し、1通を裁判所、もう1通を原告に直接送付すること
- もしくは2通とも裁判所に提出することも可能
そのため、不倫相手が作成した答弁書は、原告(請求者)にも届くのが通常です。
答弁書には、慰謝料の金額や不貞行為の有無についての反論が記載される場合がありますが、不倫相手が答弁書を提出しなければ、原告の主張がそのまま認められる可能性があります。
裁判所は双方の主張を比較し、今後の審理や和解交渉に向けて準備を進めます。
4.原告(あなた)・被告(不倫相手)双方が裁判に出廷する
裁判期日には原告と被告が出廷し、それぞれ主張や反論、証拠を立証します。
1回目で話し合いがまとまれば終了することもありますが、意見が対立する場合は2回、3回と続きます。
期日のサイクルは、原告・被告それぞれの都合にもよりますが、おおむね1ヵ月程度で平日の日中におこなわれるのが一般的です。
また、被告は答弁書を提出すると第1回の裁判期日を欠席できるため、1回目は出席者が原告だけになる可能性があります。
なお、弁護士に依頼しているなら弁護士が代理人として出廷可能です。
そのため、本人が都合をつけて出廷する必要はありません。
5.和解交渉がおこなわれる
裁判中に折り合いがついた場合、和解が可能です。
双方が合意すればその時点で裁判は終了し、和解が成立するとそれ以上時間や労力をかけずに済みます。
また、和解が成立すれば被告から控訴される心配がなくなり、慰謝料も自発的に支払ってもらいやすくなるでしょう。
さらに、和解内容は裁判調書に記載され、正式な効力をもちます。
なお、和解は判決が出るまでの間ならいつでも可能であり、裁判官から和解案に納得できなければ無理に従う必要はありません。
和解内容に合意できるかどうかをよく検討すべきでしょう。
6.和解が進まない場合は尋問がおこなわれる
和解が成立しない場合、裁判所は当事者や証人に対して尋問をおこないます。
尋問は一般に公開され、これまでの主張や証拠から争点が絞られたうえで、不倫の事実や経緯について質問されます。
尋問の際は、自分側の弁護士から質問される主尋問のあと、相手側の弁護士から質問される反対尋問、そして裁判官からも必要に応じて質問されるためそれら全てに応じなければなりません。
なお、尋問期日には、弁護士に依頼していても必ず本人が出廷する必要があります。
デリケートな話を他人に聞かれるうえ、相手と直接顔を合わせなければならないため、精神的な負担を感じる可能性があります。
7.判決が下される
和解できなければ、最終的に裁判所が判決を下します。
判決には以下の種類があります。
- 認容:原告の請求を全てまたは一部認める
- 棄却:原告の請求を認めない
認容の判決を得たにもかかわらず相手が支払わなかった場合、判決書をもとに銀行口座や給与を差し押さえられます。
なお、判決が出たあとは、裁判所から自宅に判決書が郵送され、受け取った日の翌日から2週間以内なら上級裁判所への不服申立てが可能です。
2週間の控訴期間が過ぎると判決は確定し、原則として判決内容を争えません。
不倫相手を訴えるのにかかる費用
不倫相手を訴える場合、主に訴訟費用と弁護士費用がかかります。
それぞれの費用について、詳しく見ていきましょう。
訴訟の提起にかかる費用
不倫相手を訴えるには、以下の費用がかかります。
| 収入印紙代 | 1万円~2万円程度 ※慰謝料額100万円~300万円の場合 |
|---|---|
| 郵便切手代 | 6,000円 ※東京地方裁判所の場合 |
収入印紙代は、慰謝料の請求額によって変動します。
例えば、100万円の慰謝料を請求するなら1万円ですが、300万円なら2万円かかります。
郵便切手代は裁判所によって異なり、切手の内訳も決まっているため、管轄の裁判所に確認しておきましょう。
そのほか、証人尋問をおこなった場合は、証人の日当と交通費もかかります。
勝訴すれば訴訟費用を不倫相手に請求できる場合もある
裁判に勝訴すれば、訴訟にかかった収入印紙代や郵便切手代、証人の日当などを不倫相手に請求できる場合があります。
ただし、請求できるかどうかは、判決の内容や解決方法によって異なります。
例えば、「訴訟費用は被告の負担とする」との判決が出れば不倫相手に請求できますが、和解によって解決したときは各自の負担とすることが一般的です。
なお、不倫相手に訴訟費用を請求するときは、訴訟費用額確定処分を申し立てる必要があります。
請求額は訴訟費用額確定処分によって決定され、実際にかかった費用を全額請求できるとは限らない点に注意しましょう。
弁護士に依頼する場合にかかる費用相場
不倫相手を訴えるのにかかる弁護士費用は、依頼する事務所や依頼内容、慰謝料の請求額などによって異なります。
そのため、一概にいくらとはいえませんが、40万円~80万円程度はかかると考えておきましょう。
弁護士費用の内訳と費用別の相場は以下のとおりです。
| 法律相談料 | 30分あたり5,000円程度 ※無料の場合もあり |
|---|---|
| 着手金 | 20万円~30万円程度 ※請求額の8%程度に設定している事務所もあり |
| 報酬金 | 受け取った慰謝料の10~20%程度 |
| 日当 | 1日あたり1~2万円程度 |
| 実費 | 収入印紙代・郵便切手代・交通費・コピー代・通信費など |
実費に含まれている収入印紙代や郵便切手代は、訴訟の際に必要な分を指します。
弁護士に支払った場合は、そこから弁護士経由で裁判所に納めてくれるため、二重に支払う必要はありません。
弁護士費用の相場とシミュレーションについては、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】不倫の慰謝料請求・減額の弁護士費用は?相場と費用のシミュレーション
勝訴しても弁護士費用は原則として不倫相手に請求できない
不倫相手を訴えて勝訴しても、弁護士費用は不倫相手に請求できないのが原則です。
ただし、不法行為による損害賠償請求訴訟であれば、例外的に弁護士費用の一部を相手に請求できる可能性があります。
なお、請求できるのはかかった弁護士費用の10%程度で、全額は請求できません。
また、和解によって解決したときは、請求しないのが一般的です。
不倫相手を訴える際の注意点
不倫相手を訴える場合、以下のことに注意する必要があります。
- 不倫相手が求償権を行使して、配偶者に金銭の支払いを求める可能性がある
- 相手を脅迫したり、不倫の事実を周囲に言いふらしたりするのはNG
不倫相手への怒りや許せないという気持ちから、つい感情的になってしまいがちですが、手続きを進める際は冷静になることが大切です。
ここでは、不倫相手を訴える際の注意点について詳しく解説します。
不倫相手が求償権を行使して、配偶者に金銭の支払いを求める可能性がある
不倫相手に慰謝料を請求すると、配偶者に対して求償権を行使される可能性があります。
求償権とは、支払った慰謝料のうち、自分の負担割合を超えた部分をほかの共同不法行為者に請求できる権利です。
不貞行為は配偶者と不倫相手の不法行為であり、両者は連帯責任を負います。
そのため、不倫相手だけに慰謝料を請求した場合、不倫相手は配偶者に対して求償権を行使できるのです。
配偶者と離婚するケースであれば、被害者にとって影響はないかもしれません。
しかし、不倫発覚後も婚姻関係を継続するなら、配偶者とは今後も同一家計で暮らしていくと考えられるため、結局家計がダメージを受けてしまいます。
配偶者と離婚しないのであれば、例えば慰謝料の減額に応じる代わりに求償権の放棄を求めるなど、柔軟な対応が必要です。
相手を脅迫したり、不倫の事実を周囲に言いふらしたりするのはNG
いくら相手が加害者でも、相手を脅迫したり不倫の事実を周囲に言いふらしたりしてはいけません。
このような行為は、民法上の不法行為として、反対にこちらが損害賠償請求を受けるおそれがあります。
また、相手を脅迫する行為は脅迫罪として、刑事責任を問われる場合があるので、絶対に避けましょう。
不倫相手を憎む気持ちがあるかもしれませんが、感情に任せて不法行為に該当する行為をおこなってしまうと、不利な立場になりかねません。
くれぐれも感情的にならないように注意し、相手への制裁は慰謝料請求にとどめておくようにしましょう。
不倫相手を訴えるにあたり、弁護士に相談・依頼するメリット
不倫相手を訴える際、弁護士に相談・依頼すると以下のようなメリットがあります。
- 不倫の証拠をどのように集めればよいかアドバイスしてもらえる
- 不倫相手との交渉や訴訟手続きを代行してもらえる
- 精神的・肉体的な負担を軽減できる
- より高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まる
弁護士への相談・依頼で得られるのは手続きのサポートだけではありません。
精神的・肉体的な負担を軽減できたり、高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まるのも大きなメリットといえるでしょう。
不倫の証拠をどのように集めればよいかアドバイスしてもらえる
弁護士に相談すれば、不倫の証拠収集について具体的なアドバイスを受けられます。
何が証拠になるか、どのように集めればよいかを専門家の視点で教えてもらうことで、裁判で有効な証拠を効率的に集められるでしょう。
また、証拠収集の際に注意すべきことも教えてもらえるため、余計なトラブルを回避できる可能性も高まります。
不倫相手との交渉や訴訟手続きを代行してもらえる
弁護士に依頼すると、不倫相手との交渉や訴訟手続きを代行してもらえます。
そのため、自分で相手と交渉したり複雑な書類を用意したりする必要がありません。
ケースによっては、裁判所に行くことも相手と顔を合わせることもなく訴訟が終了する場合もあります。
専門家が代理で動くことでトラブルやミスを回避しやすく、自分で対応するよりも手続きがスムーズに進むでしょう。
精神的・肉体的な負担を軽減できる
弁護士に不倫相手との交渉や訴訟手続きを代行してもらうことで、精神的・肉体的な負担を軽減できます。
配偶者が不倫していたと知ってすでにダメージを受けているところに、不倫相手と話し合わなければならないとなると、さらに大きな精神的苦痛を味わうことになります。
また、相手によっては開き直ったり、誠実とはいえない態度で接してくることもあるでしょう。
相手との交渉を弁護士に任せれば、これ以上傷付かずに済むうえ、平日の日中に何度も裁判所に出向く必要もなくなります。
より高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まる
弁護士に依頼することで、より高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。
弁護士は妥当な慰謝料額を算出してくれるほか、交渉の際に不利な条件で合意しないようにしてくれるためです。
相場よりも少ない金額で請求してしまったり、相手の弁護士に言いくるめられ、必要以上の減額に応じてしまったりする心配がありません。
さいごに|不倫相手を訴える場合は弁護士に相談を!
本記事では、不倫相手を訴える条件や訴訟の手順、費用について解説しました。
配偶者が不倫した場合、その不倫相手に対して慰謝料請求が可能です。
しかし、不倫相手を訴えるには、配偶者との間に肉体関係があったことや不倫時点で夫婦関係が破綻していないこと、不倫相手が配偶者を既婚者と知っていた・または知り得なかったことなど条件があります。
また、訴訟を提起するためには、相手の氏名・住所の特定や証拠集め、訴状の用意など、準備することがたくさんあります。
訴訟には専門的な知識や経験が必要であるため、弁護士に相談・依頼することも検討しましょう。
ただし、弁護士に依頼するとなると、決して安くはない費用がかかる可能性があります。
そのため、相談には費用についてよく確認し、見積もりをしてもらうことをおすすめします。
