給料の未払いは、労働者にとって平穏な日常生活を脅かす大問題です。
しかし、事業者に口頭で支払いを求めても応じてもらえないケースも多く、「どうすればよいのだろう?」と悩んでいる方も多いでしょう。
給料の未払い問題は、自分ひとりで解決を目指しても難航する可能性が高いため、しかるべき機関に相談のうえ、事業者に対して働きかけていくことが大切です。
特に、労働問題に注力する弁護士に相談することによって、自身の希望に近い形での解決が目指せるかもしれません。
本記事では、給料の未払いが発生したときの相談窓口や相談する際の準備、未払い給料への適切な対処法や対処する際の注意点などを解説します。
給料未払い問題を解決するには弁護士への依頼が有効です。弁護士であれば、あなたに代わって会社と直接交渉を進めてくれます。
もし交渉に応じない場合には、労働審判や訴訟といった法的拘束力のある手続きの代理をしてもらうこともできます。
ほかの機関でも、必要な情報や解決策を教えてもらうことはできますが、直接的に介入してトラブルを解決してもらうことはできません。
当社が運営する「ベンナビ労働問題」は、給料未払いをはじめとした労働問題に注力する弁護士を探せるポータルサイトです。
初回相談無料の法律事務所も多数掲載しているので、一人で悩まずにまずは相談してみましょう。
給料の未払いについて相談できる窓口9選
給料の未払いに関して相談できる窓口はいくつかあり、それぞれ異なる特徴があります。
- 会社の労働組合
- 労働基準監督署
- 弁護士
- 労働条件相談ほっとライン
- なんでも労働相談ほっとライン
- 労働相談ホットライン
- 法テラス
- 総合労働相談コーナー
- 警察
ここでは、各相談先の特徴やメリット・デメリット、サポート内容などを解説します。
1.会社の労働組合|労働者の意見が聞ける・会社と交渉してくれる
職場に労働組合がある場合、まずは労働組合に相談しましょう。
労働組合とは、労働者同士の横の関係、すなわち労働者が仲間になる形で結成されている、いわばユニオンです。
具体的には、労働者が組織し、待遇や労働環境などについて話し合いをおこなう団体のことです。
労働者からの相談を随時受け付けており、問題が発生あれば組織として改善に動いてくれます。
直接言いにくい苦情などを事業者に伝えてくれたり、必要に応じて給料の支払いなどを会社と交渉してくれたりすることもあります。
労働組合がある職場であれば、従業員の中に組合の役員がいるので、まずはその方に相談してみましょう。
会社の労働組合に相談するメリット
同じ職場で一緒に働く従業員が組合役員なので、気軽にすぐ相談しやすいというのが大きなメリットです。
また、職場のことをもともと理解している相手なので、詳細を説明する手間が省けるというメリットもあります。
会社の労働組合に相談するデメリット
場合によっては、組合幹部が会社側と癒着している「御用組合」のような状態になっていることもあります。
会社側と癒着状態にある場合、労働問題を相談したとしても会社側の都合の良いように動かされてしまうおそれがあります。
会社の労働組合への相談がおすすめな人
労働組合は「まず気軽に同じ会社で働く人の目線からも意見が聞きたい」という人におすすめです。
また、会社の労働組合が親身になってトラブル解決にしっかりとあたってくれるような実績がある場合なども、一度相談してみることをおすすめします。
【参考元】労働組合_労働委員会 |厚生労働省
2.労働基準監督署|会社に対する指導・立ち入り検査をしてくれる
労働基準監督署は、労働関連の法規を事業者が遵守しているかどうかを監督する行政機関です。
通称「労基」と呼ばれており、違反している会社に対しては指導をおこなえるほか、悪質な事案では立ち入り検査や送検が可能と、強い権限を持っています。
開庁時間はエリアによって異なりますが、8時30分~17時15分と定めているところが多いです。
労働基準監督署に相談するメリット
労働基準監督署に相談することで、その職権を背景に未払い給料の支払いを促すことができます。
口頭の請求には応じなかった事業者も、労働基準監督署からの勧告に応じて未払い分を支払ってくれることもあります。
労働基準監督署に相談するデメリット
労働基準監督署は強い権限を持っている反面、あくまでも中立的な立場から対応にあたるため一方的に労働者の味方をしてくれるわけではありません。
法令違反の事実を明確に示す証拠がなければ、具体的に動いてもらうことは難しいでしょう。
労働基準監督署への相談がおすすめな人
労働基準監督署は「しっかりと証拠を握っていて、会社の違法性を証明できる」という場合におすすめです。
3.弁護士|法的視点からのアドバイス・交渉や裁判を代行してくれる
未払い給料で悩んでいるなら、弁護士に相談するのも効果的です。
弁護士に依頼すれば、以下のようなアプローチで給与の支払いを促してくれます。
- 未払い給料の請求書面を作成・送付する
- 依頼者に代わって会社と交渉する
- 必要に応じて法的措置を取る など
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談すれば、法的知識に基づいて、状況に応じた有効な解決策を提示してくれます。
問題解決を依頼した場合は、弁護士は100%依頼者の味方となって尽力してくれるというのもポイントです。
あくまでも公的機関は中立的な立場で問題解決を図るため、完全には労働者側の味方になってくれないこともあります。
一方、弁護士は依頼者の利益を最優先に考えて動いてくれるため、精神的な安心感が格段に大きいのが特徴です。
また、未払い残業代や不当解雇などの問題があった場合にも、法律知識を用いて的確に交渉をおこなってくれるため、労働トラブルで悩んでいる方にとっては心強い味方になります。
弁護士に相談するデメリット
弁護士に相談した結果、問題解決を依頼する際は弁護士費用が発生します。
着手金・成功報酬・日当・手数料などがかかるため、未払い給料の金額によっては最終的に赤字になる可能性もあります。
初回相談であれば無料の法律事務所も多いため、依頼を迷っている方もまずは無料相談を活用して、獲得見込み額や費用総額を出してもらうことをおすすめします。
ケースによっては、弁護士のアドバイスだけで問題解決に至ることもあります。
弁護士に相談するのがおすすめな人
特に以下のようなケースでは、弁護士への相談がおすすめです。
- 未払い給料の金額が大きい方
- 具体的な解決方法を知りたい方
- 法的措置も検討している方
- パワハラ・セクハラなどの労働問題も抱えている方 など
当社が運営する「ベンナビ労働問題」では、未払い給料などの労働問題が得意な全国の弁護士を掲載しています。
都道府県・最寄り駅などの地域検索や、初回相談無料・電話相談可能などの条件検索にも対応しており、初めての方でも対応可能な弁護士を今すぐ探せますのでおすすめです。
4.労働条件相談ほっとライン|電話でのアドバイス・相談機関を紹介してくれる
引用元:労働条件相談ほっとライン
労働条件相談ほっとラインは、厚生労働省の委託組織による労働問題の電話相談窓口です。
労働問題の専門知識を持つ相談員から、労働問題解決のためのアドバイスや、問題解決に対応できる機関の紹介を受けられます。
相談受付時間は、平日は17時00分〜22時00分、土日祝日は9時00分〜21時00分です。
労働条件相談ほっとラインに相談するメリット
労働条件相談ほっとラインでは、休日や夜間でも電話相談を受け付けているため、仕事や家事などで平日日中は忙しい方でも気軽に利用できます。
また、相談員は専門知識を備えているため、法律や過去の判例に照らし「これは法律違反じゃないの?」といった相談にも答えてくれるというのも特徴です。
| 名称 | 労働条件相談ほっとライン |
|---|---|
| 相談料 | 無料 |
| 相談方法 | 電話 |
| 営業時間 | 平日:17時00分~22時00分、土・日・祝日:9時00分~21時00分 |
| 電話番号・連絡先 | 0120-811-610. |
| 公式ホームページ | https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/ |
労働条件相談ほっとラインに相談するデメリット
あくまでも労働条件相談ほっとラインは「電話相談窓口」のため、職場への直接の指導や、個別の労働問題に関して助けを得ることはできません。
実際に未払い給料を取り戻すためには、自分で動いたり弁護士に依頼したりする必要があります。
労働条件相談ほっとラインへの相談がおすすめの人
労働条件相談ほっとラインは「給料の未払いにどのように対処すべきか知りたい」など、問題解決の方針を探りたい方には効果的な相談先といえます。
【参考元】労働条件相談「ほっとライン」|厚生労働省
5.なんでも労働相談ほっとライン|電話でのアドバイス・団体交渉で提示してくれる
引用元:なんでも労働相談ホットライン
なんでも労働相談ホットラインは、日本労働組合総連合会が開設している電話相談窓口です。
給料未払いを含め、セクハラやパワハラなど、労働にまつわるあらゆるトラブルについて電話相談・メール相談が可能です。
なお、相談受付は平日のみで、どの支部に繋がるかによって受付時間は異なります。
9時00分~10時00分に開始し、17時00分~17時30分に終了といった支部が多いようです。
| 名称 | なんでも労働相談ホットライン |
|---|---|
| 相談料 | 無料 |
| 相談方法 | 電話・メール・LINE |
| 営業時間 | ・電話:平日のみ(対応先によって異なる) ・メール:24時間受付 ・LINE:24時間受付 |
| 電話番号・連絡先 | ・電話:0120-154-052 ・メール:詳しくはこちら ・LINE:詳しくはこちら |
| 公式ホームページ | https://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/ |
なんでも労働相談ホットラインに相談するメリット
なんでも労働相談ホットラインは電話相談窓口のため、来訪が難しい方でも気軽に利用できるのが大きな特徴です。
相談実績も豊富で、実態に即したアドバイスが期待できます。
また、必要に応じて労働組合各支部による団体交渉により、直接問題を解決できることもあります。
なんでも労働相談ホットラインに相談するデメリット
なんでも労働相談ホットラインでは、窓口の受付時間が平日のみであるため、仕事や家事などで平日の日中は忙しい方は利用が難しいおそれがあります。
また、必ずしも問題解決に向けて労働組合各支部が動いてくれるわけではなく、アドバイスだけで終わってしまうこともあります。
労働条件相談ほっとラインへの相談がおすすめの人
労働条件相談ほっとラインは、給料の未払いについて気軽に相談したい方や、具体的な対処法を教えてほしい方などに適しています。
【参考元】連合|労働相談
6.労働相談ホットライン|電話やメールで気軽に相談できる
引用元:労働相談ホットライン
労働相談ホットラインは、国内の労働組合の全国中央組織である「全国労働組合総連合(全労連)」が運営する労働相談の電話窓口です。
長時間労働や賃金未払いなど、事業主との間に生じる、さまざまな労働問題の相談を受け付けています。
相談は平日の10時00分〜17時00分まで受け付けているところがほとんどですが、地方の各支部によっては異なる場合もあります。
| 名称 | 労働相談ホットライン |
|---|---|
| 相談料 | 無料 |
| 相談方法 | 電話・メール |
| 営業時間 | ・電話:平日10時00分~17時00分(対応先によって異なる) ・メール:24時間受付 |
| 電話番号・連絡先 | ・電話:0120-378-060 ・メール:詳しくはこちら |
| 公式ホームページ | https://www.zenroren.gr.jp/roudousoudan/hotline/ |
労働相談ホットラインに相談するメリット
労働相談ホットラインでは、電話で気軽に労働問題の相談ができます。
メール相談にも対応しているため、受付時間内の連絡が難しい方や、電話が苦手な方でも気軽に利用可能です。
労働相談ホットラインに相談するデメリット
労働相談ホットラインでは、問題解決に向けたアドバイスや必要な情報の提供を主な目的としています。
事業主に対する団体交渉によって改善を求めることも可能ではあるものの、相応の期間を要するため、トラブル解決の即効性は期待できません。
労働相談ホットラインへの相談がおすすめの人
労働相談ホットラインは、給料未払いに対する対処法を知りたい方や、不安な気持ちを誰かに聞いてほしい方などに適しています。
【参考元】労働相談ホットライン【フリーダイヤルはおかけになった地域の労働相談センターにつながります。】|全労連
7.法テラス|無料法律相談・弁護士費用の一時立替えが利用できる

引用元:法テラス
法テラス(日本司法支援センター)は、さまざまな法律トラブルに対処するための総合案内所として設立された法務省管轄の機関です。
労働関連のトラブル相談も受け付けており、トラブル解決のためのアドバイスやしかるべき相談機関の紹介を受けられます。
電話相談は、平日は9時00分~21時00分、土曜日は9時00分~17時まで受け付けています。
| 名称 | 法テラス(日本司法支援センター) |
|---|---|
| 相談料 | ・サポートダイヤル:無料 ・弁護士や司法書士への法律相談:30分×3回まで無料(利用条件あり) |
| 相談方法 | 面談・電話・メールなど |
| 営業時間 | ・サポートダイヤル:平日9時00分~21時00分、土曜9時00分~17時00分 ・メール:24時間受付 ・事務所窓口:詳しくはこちら |
| 所在地 | 地域によって異なる (詳しくはこちら) |
| 電話番号・連絡先 | ・サポートダイヤル:0570-078374 ・メール:詳しくはこちら ・事務所窓口:詳しくはこちら |
| 公式ホームページ | https://www.houterasu.or.jp/ |
法テラスに相談するメリット
法テラスなら、未払い給料の回収方法について気軽に電話でアドバイスが受けられます。
さらに、法テラスでは、経済的余裕がない方を対象に「民事法律扶助制度」を実施しているのも大きな特徴です。
民事法律扶助制度の利用要件を満たしていれば、弁護士や司法書士との無料法律相談や依頼費用の一時立替えなどが受けられます。
法テラスに相談するデメリット
あくまでも法テラスの立ち位置は「相談機関」「案内機関」です。
したがって、雇用先への指導やトラブルへの直接の介入はできません。
また、法テラスが定める収入や資産などの利用要件を満たしていないと、無料法律相談や弁護士費用の一時立替えなどが受けられないという点も注意が必要です。
法テラスへの相談がおすすめの人
法テラスは「給料が未払いのままになっているが、どこに相談すればよいかわからない」「弁護士に依頼したいけど費用が払えない」という方などにおすすめです。
【参考元】法テラス
8.総合労働相談コーナー|問題解決のアドバイス・労働基準監督署に取り次いでくれる
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が全国に設置している法律相談の窓口です。
職場で起こるさまざまな労働問題を対象に、面談や電話で相談を受け付けています。
必要に応じて、労働局による個別の紛争解決サポートへの案内もしてくれるほか、法令違反の疑いが強いケースでは労働基準監督署への取り次ぎなども可能です。
なお、受付時間は各設置場所によって異なるので、事前に確認が必要です。
| 名称 | 総合労働相談コーナー |
|---|---|
| 相談料 | 無料 |
| 相談方法 | 面談・電話 |
| 営業時間 | 地域によって異なる(詳しくはこちら) |
| 所在地 | 地域によって異なる(詳しくはこちら) |
| 電話番号・連絡先 | 地域によって異なる(詳しくはこちら) |
| 公式ホームページ | https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html |
総合労働相談コーナーに相談するメリット
総合労働相談コーナーでは、相談や紛争解決のアドバイスだけでなく、悪質なケースでは直接労働基準監督署に事案を取り次いでもらうことも可能です。
ほかにも、裁判所や法テラスなど、ほかの団体の手続き・サービスについても情報を得ることができます。
総合労働相談コーナーに相談するデメリット
総合労働相談コーナーは、市役所や労働局などに設置されていることが多く、休日の相談には対応していないことが多いです。
平日の日中は仕事や家事などで忙しい方は、利用が難しいおそれがあります。
総合労働相談コーナーへの相談がおすすめの人
総合労働相談コーナーは、給料の未払いについて気軽に相談したい方や、具体的な対処法を教えてほしい方などに適しています。
【参考元】総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
9.警察|犯罪行為があった場合に取り締まってくれる
場合によっては、警察に相談したほうがよいこともあります。
警察には「個人同士の民事的なトラブルには直接介入しない」という民事不介入の原則があるため、基本的には動いてくれません。
しかし「経営者に未払い給料の支払いを求めたら脅された」「暴行を受けた」というような悪質なケースでは、刑事事件として動いてもらえる可能性があります。
上記のような被害に遭っている場合は、警察への相談も検討しましょう。
給料の未払いを相談する前の3つの準備
給料の未払いについて相談する前には、トラブルをより確実かつスムーズに解決するためにも準備が必要です。
ここでは、最低限準備しておくべきことを解説します。
1.現在の状況やこれまでの経緯を整理しておく
給料未払いの経緯や現状などを、相談先に説明できるようにまとめておきましょう。
「給料が未払いになった理由」「未払いの期間」「現在の状況」など、箇条書きで良いので時系列順にまとめておいてください。
1-1.給料が支払われていない期間
いつからいつまでの給料が未払いなのかを整理しておきましょう。
はっきりわかっている場合は、労働時間や未払い分の金額も計算しておきます。
| 例) 2019年5月1日(入社日)から現在(2021年6月30日)までの2年間の残業代が未支給。 残業時間の合計は480時間で、計81万円を受け取っていない。 |
1-2.給料が支払われていない理由
給料が支払われない理由についても、わかる範囲でまとめておきましょう。
| 例) 未支給の理由は不明。入社時から当然のように支給されておらず、給与明細にも残業時間の記載がない。 |
1-3.現在の状況
未払いの給料に関する現在の状況についても、説明できるようにしておきましょう。
自分から何かアプローチをおこなった場合は、あわせてまとめておきます。
| 例) 口頭で3度ほど残業代を支払うよう要請したが、いずれも実現していない。最近請求したときは「半人前のくせに残業代なんて厚かましい」と暴言を受けた。同僚に悪い噂を流される、仕事で必要な質問を無視されるなどの嫌がらせが増えてきている。 |
内容は具体的なほうが良いので、可能な限り詳しく情報をピックアップしておきましょう。
2.証拠集めをしておく
相談前には、できる限り多くの証拠を集めておくことも大切です。
相談内容の裏付けとなりますし、未払いの給料を請求するときにも必要となります。
給料未払いの証拠として活用できるのは、以下のようなものです。
【未払い給料の裏付けとなる証拠の一例】
- 給与明細書
- 労働契約書
- タイムカード
- 給料に関して記載のある社内規定
- オフィスの入退室記録や仕事用PCの利用時間の記録
- シフト表などの職場で作成している勤怠状況がわかる書類 など
まずは、手元にある証拠を少しずつ確保・保全していきましょう。
3.自分の希望を整理しておく
自分がどのような形での解決を望むのかも、あらかじめ整理しておきましょう。
なぜなら、希望によって必要な労力や費用などが異なり、対処方法も変わるためです。
「何がなんでも全額回収したい」「多少の減額は受け入れるので短期で解決したい」「悪質なので給料の回収とともに罰を受けて欲しい」など、人によって希望はさまざまです。
事前に明確に整理しておくことで、相談がスムーズに進みます。
給料未払い問題を解決する流れ
給料の未払い問題の解決の流れとしては、基本的に以下のとおりです。
- 給料未払いの証拠を集める
- 会社と交渉する
- 内容証明郵便を会社に送る
- 労働基準監督署から指導を入れてもらう
- 法的措置に移行する
ここでは、各方法について解説します。
1.給料未払いの証拠を集める
まずは、給料が未払いのままであることを示す客観的な証拠を集めましょう。
「給料の未払いを相談する前の3つの準備」でも解説したとおり、給与明細書・労働契約書・タイムカードなどを準備してください。
準備後は、証拠をもとに未払い給料の金額を計算しておきましょう。
2.会社と交渉する
準備が整ったら、会社に未払い給料を支払うよう交渉します。
「言っても無駄ではないか」という気持ちもあるかもしれませんが、直接支払いを求めることであっさり受け取れることもあります。
特に小規模の会社であれば「残業代の計算にミスがあった」「業績が悪化していて支払いが難しかった」など、悪気なく未払いになっているケースもあります。
3.内容証明郵便を会社に送る
交渉に応じてくれない場合、内容証明郵便による書面で支払いを求めます。
内容証明郵便とは、宛先・差出人・差出日時・書面内容などが郵便局で記録される郵送形式のことです。
「送った事実」や「送った内容」などに関して証拠が残るため、法律トラブルでは頻繁に利用されます。
内容証明郵便を送付することにより、事業者側の「請求を受けていない」という虚偽の主張を封じることが可能です。
詳しくは「給料の未払い問題について知っておくべき4つのポイント」で後述しますが、内容証明郵便を送付することで時効の完成を先延ばしにすることも可能です。
4.労働基準監督署から指導を入れてもらう
内容証明郵便を送付しても応じてくれない場合は、労働基準監督署に相談・申告するのが有効です。
給料未払いの証拠が揃っていて「労働基準法に違反している」と判断されれば、呼び出しや訪問による指導・勧告をおこなってくれます。
違反の度合いが特に重大で悪質と認められれば、立ち入り検査や送検の対象になることもあります。
また「事業者がほかにも法令違反をしている」などの後ろ暗い事実を抱えているようなケースでは、労働基準監督署に相談する旨を伝えただけでも支払いに応じてくれる可能性があります。
5.法的措置に移行する
上記の手段でも未払い給料が支払われない場合は、法的措置に移行しましょう。
未払い給料のような労働問題の場合、以下のような5つの手段があります。
- 民事調停
- 労働審判
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
以下では、各手続きの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
5-1.民事調停
民事調停は、裁判所を通して数回にわたり話し合いをおこない、解決を図る手続きです。
当事者間には中立の立場となる調停委員が入り、交互に言い分を聞き取って落としどころを探っていきます。
通常は2回~3回の期日でまとまることが多く、解決までの期間はおおむね3ヵ月程度です。
民事調停のメリット
民事調停の場合、訴訟などのほかの手段と比べて手続きが簡単で、弁護士への依頼も必須ではありません。
手続きにかかる費用も、訴訟と比べると安価で済みます。
なお、民事調停が成立した場合、結果を記した調停調書は債務名義として利用できます。
事業者が合意した給料の支払いをおこなわない場合は、強制執行による回収が可能となります。
民事調停のデメリット
民事調停は不調(不成立)に終わることもあり、確実に給料を回収できるとはいえません。
また、調停の呼び出しに強制力はないため、事業者が出席しない可能性もあります。
あくまでも話し合いの場であることから、従業員側が譲歩を求められる可能性があることも懸念点です。
5-2.労働審判
労働審判は、労働問題を迅速に解決するために裁判所でおこなう労働問題専用の手続きです。
裁判官1名と労働審判員2名から成る労働審判委員会が間に入り、最大3回の審理でトラブルの解決を図ります。
労働審判は、以下3つのいずれかの形で決着します。
- 話し合いで合意がまとまる「調停成立」
- 話し合いがまとまらず労働審判委員会が判定をおこなう「審判の確定」
- 審判に納得できない場合の「訴訟移行」
労働審判のメリット
労働審判の場合、最大3回の期日で決着するため、比較的短期間で結果が出ます。
専門知識を備えた裁判官が担当するため、安心感があるという点もメリットです。
労働審判のデメリット
労働審判の結果に対して、どちらかが異議を申し立てると訴訟に移行することになります。
訴訟に移行した場合、解決まで長期化する可能性が高く、なかには1年以上かかることもあります。
5-3.支払督促
支払督促とは、簡易裁判所の手続きのひとつです。
裁判所書記官に申し立て、文書によって金銭の請求をおこないます。
支払い督促の到着から2週間異議申し立てがおこなわれなければ、強制執行にて給料の回収が望めます。
支払督促のメリット
支払督促の場合、訴訟や労働審判のように裁判所で審理をおこなう必要がありません。
手数料も訴訟の半額と低料金のため、比較的利用しやすいのが大きなメリットです。
支払督促のデメリット
支払督促をおこなっても、必ずしもすんなり支払いに応じてくれるとはかぎりません。
相手方から異議申し立てがおこなわれると訴訟に移行し、解決まで長期化するおそれがあります。
5-4.少額訴訟
少額訴訟は、争いの対象が60万円以内の金銭で、かつ事実関係が複雑でない場合に利用できる訴訟手続きです。
原則一度の審理で判決が出るため、特に手続きの長期化を防ぎたい場合に有効です。
少額訴訟のメリット
少額訴訟の場合、原則一度の審理で判決が出るため、給料の未払いで経済的に困窮している場合などの急を要するケースでは特に向いています。
また、審理の途中であっても、当事者双方の希望によって和解にて解決することも可能です。
少額訴訟のデメリット
少額訴訟は原則1日で終了するため、証拠の用意は期日までに速やかに済ませておく必要があります。
また、相手方の希望次第では通常の訴訟手続きに移行する可能性もあります。
ほかにも、支払いを求める金額が60万円を超える事件では利用できない、という点も注意が必要です。
5-5.通常訴訟
裁判所の調停や審判など、ほかの手続きで決着がつかない場合は最終的に通常訴訟に移行します。
通常訴訟では、請求する金額に上限がなく、金銭の支払い以外の給付を求めることも可能です。
通常訴訟のメリット
通常訴訟の場合、少額訴訟とは異なり、審理の回数に制限がありません。
また、判決が不服であれば、控訴・上告を経て最高裁まで徹底的に争うことも可能です。
通常訴訟のデメリット
通常訴訟では、短期間で判決を得ることが難しく、解決まで1年以上かかることも珍しくありません。
長期化すると弁護士費用などの出費も増加するため、特に経済的に困窮している場合は現実的な対処法とはいえないおそれがあります。
給料の未払い問題について知っておくべき4つのポイント
現在給料が未払いになっている方は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 給料の未払い請求には時効がある
- 未払い給料は退職後でも請求できる
- 未払い給料はパートやアルバイトでも請求できる
- 会社が倒産した場合は未払賃金立替払制度を利用できる
ここでは、未払い給料の請求で失敗しないためのポイントを解説します。
1.給料の未払い請求には時効がある
給料を請求する権利には時効が設定されており、あまりにも長期間放置していると請求できなくなるおそれがあります。
具体的な時効期間について、労働基準法には以下のように定められています。
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法第115条
ただし、2020年4月1日の改正から当分の間は、時効期間を3年として運用する旨が厚生労働省から通知されています(未払い賃金が請求できる機関などが延長されます|厚生労働省)。
なお、所定の手続きをおこなえば時効の完成を伸ばすことも可能です。
たとえば、内容証明郵便を送付して催告すれば、催告後6ヵ月間は時効の完成が猶予されます。
6ヵ月以内に労働審判や訴訟で未払い給料を請求するという制限付きですが、時効の完成を妨げることが可能です。
2.未払い給料は退職後でも請求できる
未払い給料の請求権は、退職したからといって消滅するものではありません。
相手側が「退職者とは縁が切れているので支払わない」などと主張していても、堂々と請求しましょう。
なお、退職後に請求する際は前述の時効期間に注意し、なるべく速やかに請求手続きを進めましょう。
3.未払い給料はパートやアルバイトでも請求できる
未払い給料の請求について、雇用形態は関係ありません。
パート・アルバイト・契約社員など、いわゆる「非正規雇用」の場合でも請求可能です。
「非正規にそんな権利はない」などと主張する事業主も存在しますが、給料の請求は全ての労働者に認められている権利です。
4.会社が倒産した場合は未払賃金立替払制度を利用できる
「ある日突然会社が倒産し、給料が未払いになった」というようなケースでは、未払賃金立替払制度を利用できる可能性があります。
未払賃金立替払制度では、未払い賃金の8割、または退職時の年齢に応じ88万円~296万円の間の上限のいずれか少ないほうが支給されます。
なお、未払い賃金の立て替えを受けられるのは、以下の要件を全て満たしている場合です。
【未払い給料の立て替えを受ける要件】
- 事業活動が1年以上おこなわれていたこと
- 法律上の倒産または事実上の倒産のいずれかに陥っていること
- 労働者が倒産の手続きの6ヵ月前から2年の間に退職していること
【参考元】未払賃金立替払制度|厚生労働省
| 法律上の倒産 | 事業が「破産」「特別清算」「民事再生」「会社更生」のいずれかの手続き中である状態。立て替えを受けるには破産管財人から倒産の事実の証明を受ける必要がある。 |
|---|---|
| 事実上の倒産 | 事業活動が停止しており再開の見込みがない状態。立て替えを受けるには管轄の労働基準監督署長の認定が必要。 |
所定の証明・認定を受けたあと、申請書類に不備がなければ、1ヵ月程度で振り込まれます。
給料の未払い問題でよくある相談5選
ここでは、給料の未払い問題でよくある相談について解説します。
1.給料未払いはどこに相談すればよい?
給料未払いについては、まずは会社の労働組合や労働基準監督署に相談するのが有効です。
それでも問題解決が難しそうであれば、弁護士にサポートを依頼しましょう。
弁護士に依頼すれば、代理人として交渉や裁判などの請求手続きを進めてくれます。
労働問題が得意な弁護士なら、これまで得た法律知識や交渉ノウハウを活かして的確に動いてくれて、自分で請求するよりもスムーズかつ確実な回収が望めます。
初回相談無料の法律事務所も多くあるので、「とりあえず今後の対応をアドバイスしてほしい」という方も、まずは一度相談してみることをおすすめします。
2.給料未払いで労基に相談したらどうなるの?
労働基準監督署に相談すれば、会社に対して指導・勧告してくれるほか、悪質な事案であれば立ち入り検査や送検などの対応も望めます。
なお、あくまでも労働基準監督署は中立的な立場から対応にあたるため、一方的に労働者の味方をしてくれるわけではありません。
労働基準監督署に動いてもらうためには、法令違反の事実を明確に示す証拠などが必要となります。
3.給料未払いで警察に相談したらどうなる?
警察に相談しても、民事不介入の原則があるため動いてくれないのが通常です。
ただし、経営者から暴力や脅迫を受けているなどの悪質な事案であれば、取り締まってくれる可能性があります。
上記のような被害を受けていて「処罰を科してほしい」と考えている場合は、警察への相談も検討しましょう。
4.無断欠勤で辞めた場合は請求できない?
無断欠勤をして辞めたとしても、これまで実際に働いていた分は請求する権利があります。
基本的には会社と連絡を取って請求することになりますが、無断欠勤で辞めた場合は逆に会社から損害賠償請求を受けたりするおそれがあります。
「自分1人ではトラブルにならないか不安」という場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。
5.会社が倒産したら泣き寝入りするしかない?
会社が倒産した場合は、未払賃金立替払制度を利用できる可能性があります。
以下の要件を全て満たしていれば、未払い賃金の8割、または退職時の年齢に応じ88万円~から296万円の間の上限のいずれか少ないほうが支給されます。
【未払い給料の立て替えを受ける要件】
- 事業活動が1年以上おこなわれていたこと
- 法律上の倒産または事実上の倒産のいずれかに陥っていること
- 労働者が倒産の手続きの6ヵ月前から2年の間に退職していること
【参考元】未払賃金立替払制度|厚生労働省
倒産したからといって泣き寝入りせず、まずは上記制度が利用できないか確認しましょう。
まとめ
給料の未払い問題についてどのように対処するかは、自分がどのような形での決着を希望するかによっても異なります。
まずは「絶対に全額回収したい」「短期で解決できれば減額しても良い」などの方針を定めたうえで、自分にあった相談先を選びましょう。
特に弁護士であれば、交渉などの請求手続きを任せられるうえ、法的な側面からどのような解決策が有効かを提案してくれるなど、頼もしい味方となってくれます。
初回無料相談に対応している法律事務所も多くありますので、まずは一度悩みを打ち明けてみましょう。



