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住民税滞納の差し押さえ解除方法の全知識をわかりやすく解説|相談先も紹介

監修者
野条 健人
弁護士
住民税滞納の差し押さえ解除方法の全知識をわかりやすく解説|相談先も紹介
目次
  1. 住民税滞納で差押えを受けた!差押え解除をしてもらうには?
    1. 滞納した住民税を全額納付する
    2. 住民税の減免制度が使えないか、自治体の窓口に相談する
    3. 納税の猶予(分割)制度が使えないか、自治体の窓口に相談する
    4. ほかにも借金があって払えないなら、債務整理を検討する
    5. 生活に困窮して税金を支払えないなら生活保護の受給も検討する
  2. 住民税滞納による差押えが解除される条件
    1. 換金される前に滞納分が納付された
    2. 差し押さえた財産の金銭的価値が何がしかの理由で失われた
    3. 差し押さえ財産が競売で売却できなかった
    4. 差し押さえ過ぎていた
  3. 住民税滞納で差し押さえの対象となる財産、ならない財産
    1. 差し押さえの対象になる財産
    2. 差押えの対象にならない財産
  4. 住民税滞納による差押えで生活できない場合はどうすればいい?
  5. 住民税滞納による差押えの解除について無料で相談できる窓口
    1. 自治体の窓口か税務署|支払計画について相談し、解除を検討してもらえる
    2. 弁護士|債務整理について相談するなら
  6. 住民税滞納後の差押えや差押え解除についてよくある質問
    1. 差し押さえられた財産は戻ってくる?
    2. 住民税滞納で差押えを受けたらブラックリストに載る?
    3. 住民税の支払いに時効はある?
  7. さいごに|差押え解除の方法を把握しよう

ある日、給与の手取り額が減っていたり、銀行口座から「サシオサエ」という名目でお金が引き落とされていたりしたら、住民税の滞納が原因で財産を差し押さえられている可能性があります。

しかし、差押えは法的な手続きである以上、解除することも可能です。

本記事では、住民税の滞納で差押えを受けてしまった方が、差押えを解除する方法をわかりやすく解説します。

本記事を読めば、差押えを解除するために何をすべきかが明確になり、具体的な一歩を踏み出すことができるはずです。

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住民税滞納で差押えを受けた!差押え解除をしてもらうには?

住民税を滞納したことで財産を差し押さえられてしまった場合、差押えを解除してもらうには、いくつかの方法があります。

状況に応じて選べる道は異なるので、現在の状況に一番近いものから確認してみてください。

滞納した住民税を全額納付する

差押えを解除するための最も確実で直接的な方法は、滞納している住民税を全額支払うことです。

差押えは、滞納された税金を強制的に徴収するための手続きです。

そのため、支払われるべき税金が全額納付されれば、差押えを続ける理由がなくなり、解除されます。

ただし、ここで支払うべき「全額」とは、本来の税額だけでなく、滞納した日数に応じて加算された「延滞金」も含めた額である点に注意が必要です。

延滞金を含めた正確な総額がいくらになっているかは、お住まいの市区町村の役所の窓口に確認してから納付しましょう。

住民税の減免制度が使えないか、自治体の窓口に相談する

住民税を滞納している場合、「滞納額の全額なんて、とても払える金額じゃない…」という方も多いでしょう。

その場合、住民税そのものを減額してもらったり、免除してもらったりする減免制度が使えないか検討してみましょう。

減免制度が適用されれば、支払うべき税金が減る、あるいはゼロになるため、結果的に差押えも解除されます。

ただし、減免制度は誰でも使えるわけではなく、特別な事情で納税が著しく困難になった方のみが対象です。

具体的に、以下のようなケースでは住民税の減免が認められる可能性があります。

  • 生活保護を受けることになった
  • 災害(火事や風水害など)で大きな被害を受けた
  • 病気やけがで長期間働けなくなり、収入が大幅に減った
  • 会社の倒産や解雇など、自己都合ではない理由で失業した
  • 今年の収入が去年に比べて半分以下になるなど、大幅に減少した

なお、所得の基準、減免される割合など減免制度の具体的な条件や必要な書類は、お住まいの市区町村によって異なります。

例えば、「生活が著しく困難」という言葉も、単なる感情的な訴えではなく、自治体が定める所得や資産の基準によって客観的に判断されることがほとんどです。

そのため、自分だけで判断せずに、まずは「(自分の市区町村名) 住民税 減免」と検索してみるか、役所に直接確認するとよいでしょう。

納税の猶予(分割)制度が使えないか、自治体の窓口に相談する

「減免制度の対象にはならないけれど、一括での支払いは難しい」というときに現実的な選択肢となるのが「納税の猶予」制度です。

納税の猶予制度とは、役所に相談して住民税を分割で支払う計画を立てる制度です。

納税の猶予が認められれば、財産を差し押さえられることなく少しずつ納税することができます。

なお、すでに財産が差し押さえられてしまっている場合は、「換価の猶予」という手続きも重要です。

換価とは、差し押さえられた財産を現金に換えることを意味します。

換価の猶予が認められると、差し押さえられた財産の売却や取り立てを待ってもらい、その間に分割で納税することが可能です。

ただし、換価の猶予が認められるには「納税する意思がある」ことを誠実に示す必要があります。

ほかにも借金があって払えないなら、債務整理を検討する

「住民税を払いたくても、消費者金融やクレジットカードの返済に追われて、お金がまったく残らない…」

もし、あなたがこのような状況にあるなら、問題の根本原因は住民税の滞納ではなく、ほかにある借金かもしれません。

その場合、債務整理という法的な手続きで、借金問題そのものを解決することを検討する必要があります。

債務整理とは、借金の減額や免責ができる法的な手続きのことです。

具体的には、以下の3つがあり、それぞれでメリットデメリットが異なります。

種類 手続きの内容 メリット デメリット
任意整理 弁護士が貸金業者と直接交渉し、将来かかる利息をカットするなどして、月々の返済額を減らす手続き ・裁判所を通さないため、ほかの手続きに比べて手続きが比較的簡易。
・交渉により、将来の利息負担をなくし、毎月の返済額を減らせる。
・住民税などの税金は減額・免除の対象にはならない。
・あくまでほかの借金返済を軽くして、納税資金を生み出すための手続きとなる。
個人再生 裁判所を通じて、借金の総額を大幅に減額してもらい、残りの金額を原則3〜5年で分割返済していく手続き ・借金の元本そのものを大幅に減額できる。
・計画に沿って返済することで、生活の再建を図れる。
・住民税などの税金は減額・免除の対象にはならない。
・手続きが裁判所を介するため、任意整理より複雑になる。
自己破産 裁判所に「支払いが不可能である」と認めてもらい、原則として全ての借金の支払い義務を免除してもらう手続き 原則として、全ての借金の支払い義務が免除されるため、借金問題の根本的な解決が期待できる。 ・住民税などの税金は、自己破産をしても支払い義務が免除されない(非免責債権)。
・手続きの目的は、ほかの借金の返済義務をなくすことで、納税のためのお金を生み出すことにある。

住民税を含む税金は債務整理では免除・減額されない点は注意が必要

借金が原因で債務整理をおこなう際は、住民税や国民健康保険料などの「税金(公租公課)」は債務整理の対象にならない点に注意しましょう。

「それなら、債務整理をしても意味がないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、そうではありません。

債務整理の本当の目的は、税金をなくすことではなく、税金以外の借金の返済を減らしたり、なくしたりすることで、住民税を支払うためのお金を生み出すことにあります。

例えば、毎月5万円をカードローン返済に充てている場合、債務整理によってその返済がゼロになれば、その5万円を住民税の分割払いに充てることができます。

このように、債務整理は家計の収支バランスを正常化し、滞納している住民税を支払える状況を作り出すため手段として有効なのです。

生活に困窮して税金を支払えないなら生活保護の受給も検討する

失業や病気などで収入が途絶え、どうやっても生活が成り立たないという場合には生活保護の受給を検討することもひとつの道です。

生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための、国の最後のセーフティネットです。

生活保護の受給が決まると、住民税の滞納問題について以下のようなメリットを得られます。

  • 差押えが停止される
  • 納税義務が免除される可能性がある

ただし、生活保護の受給には、収入や資産に関する厳しい条件があるので、お住まいの地域の福祉事務所への事前相談が不可欠です。

住民税滞納による差押えが解除される条件

差押えは、一度おこなわれると簡単には解除されません

しかし、法律で定められた特定の条件を満たした場合には解除されます。

どのような場合に解除されるのかを知っておきましょう。

換金される前に滞納分が納付された

差し押さえられた財産が、公売などで現金化される前に、滞納していた税金を全額支払った場合、差押えは解除され、財産は手元に戻ってきます。

これが最も基本的な解除の条件です。

差し押さえた財産の金銭的価値が何がしかの理由で失われた

差し押さえられた自動車が火災で燃えてしまったなど、その財産の価値がなくなってしまった場合も、差し押さえが解除されます。

ただし、税金の支払い義務がなくなったわけではないため、役所はほかの財産を探して差し押さえをおこなう可能性があります。

差し押さえ財産が競売で売却できなかった

差し押さえられた不動産などが公売(オークション)に出されても、買い手がつかなかった場合、その不動産に対する差し押さえが解除されることがあります。

しかし、これも根本的な解決ではなく、ほかの財産が差し押さえの対象になる可能性があります。

差し押さえ過ぎていた

差し押さえは、滞納額に見合った範囲でおこなわれるべきです。

例えば、滞納税額が100万円であるのに対し、500万円の価値がある不動産を差し押さえた場合などは「過剰差押」にあたる可能性があります。

この場合、滞納額を超える部分については、差し押さえの解除を求めることができます。

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住民税滞納で差し押さえの対象となる財産、ならない財産

差し押さえがされると「家にあるもの全部持っていかれるの?」と不安に思うかもしれませんが、差し押さえにはルールがあり、全ての財産が対象になるわけではありません。

生活に必要な最低限のものは法律で守られています。

以下では、差し押さえの対象となる財産、対象とならない財産につちえ詳しく見ていきましょう。

差し押さえの対象になる財産

一般的に差押えの対象となる財産は以下のとおりです。

  • 給与の一部
  • 預貯金
  • 不動産
  • 自動車
  • 生命保険金
  • 現金・貴金属

差押えの対象にならない財産

差押えによって生活が破綻してしまわないように、生活必需品などの財産を「差押禁止財産」として定めています。

また、給与が差し押さえられる場合でも、生活費として最低限必要な部分は守られます。

住民税滞納の場合の差押え可能額は、以下の計算式で算出されます。

差押え可能額=給与総支給額-(①+②+③+④)
①所得税・住民税・社会保険料など
②10万円(生活費として)
③扶養家族の人数×4万5000円
④(給与総支給額-①-②-③)×20%

少し複雑ですが、要するに「最低限の生活費や経費を引いた残りのうち、さらに一部」しか差し押さえられない仕組みとなっているのです。

また、年金や生活保護費、児童手当などを受け取る権利そのものは差押えが禁止されています。

しかし、これらのお金が一度銀行口座に振り込まれると、法的には「預金」という別の財産に性質が変わり、差押えの対象になってしまいます。

もし、生活に不可欠な年金などが振り込まれた口座を差し押さえられてしまった場合は、裁判所に対して「差押範囲変更の申立て」をおこなうことで、その部分の差押えを解除してもらえる可能性があります。

住民税滞納による差押えで生活できない場合はどうすればいい?

給与を差し押さえられたことで手取りが減ってしまい、日常生活に支障がでる事態に陥ってしまったら、どうすればよいのでしょうか。

その場合、すぐにお住まいの市区町村の役所の納税担当窓口に電話をしてください。

電話で伝えるべきことは、以下の点です。

  • 住民税を滞納し、給与を差し押さえられていること
  • 差押えによって、生活が著しく困難になっていること
  • 支払う意思はあるが、一括では払えないので、分割払いの相談(換価の猶予の申請)をしたいこと

役所の担当者も、あなたを生活困窮に追い込むことが目的ではありません。

誠実に支払いの意思を伝えれば、分割払いの相談に応じてくれる可能性は十分にあります。

それでもなお生活が成り立たないほどの状況であれば、生活保護の申請についても相談してみましょう。

住民税滞納による差押えの解除について無料で相談できる窓口

住民税の差押えで悩んでいるときは、専門家の力を借りることも大切です。

そこでここからは、住民税の滞納・差押えについて無料で相談できる窓口を紹介します。

自治体の窓口か税務署|支払計画について相談し、解除を検討してもらえる

住民税の支払いそのものに関する悩みは、お住まいの市区町村の役所へ相談するのが一番です。

役所の窓口では、分割払いや猶予制度、減免制度の利用について具体的な相談に乗ってくれます。

相談に行く際は、督促状など送られてきた書類一式を持っていくと話がスムーズです。

弁護士|債務整理について相談するなら

住民税を滞納してしまった根本的な原因が、クレジットカードや消費者金融からの借金である場合は、弁護士への相談が有効です。

弁護士は、税金問題そのものではなく、あなたの借金全体の状況を整理し、最適な債務整理の方法を提案してくれます。

債務整理によって借金の返済負担が軽くなれば、住民税を支払う余裕が生まれ、滞納問題を根本から解決する道筋が見えてくるはずです。

「ベンナビ債務整理」では、地域ごと・相談内容ごとに法律事務所を一括検索できます

多くの法律事務所では、借金に関する初回相談を無料でおこなっていますので、まずは気軽に電話やメールで問い合わせてみましょう。

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住民税滞納後の差押えや差押え解除についてよくある質問

最後に、住民税の差押えに関してよくある質問にお答えします。

差し押さえられた財産は戻ってくる?

原則として、一度差し押さえられ、現金化された財産は戻ってきません

そのお金は滞納した税金の支払いに充てられてしまうからです。

ただし、以下のような例外もあります。

  • 財産が売却される前に、滞納額を全額支払った場合:この場合は差押えが解除され、財産は返還されます。
  • 財産を売却したお金が、滞納額よりも多かった場合:例えば、100万円の滞納に対して150万円で売れた場合、差額の50万円はあなたに返還されます。

住民税滞納で差押えを受けたらブラックリストに載る?

住民税の滞納情報が、クレジットカードやローンの審査で使われる「信用情報機関(いわゆるブラックリスト)」に直接登録されることはありません

信用情報機関が管理しているのは、あくまで民間の金融機関との取引情報だからです。

しかし、ブラックリストに載らないからといって安心はできません。

住宅ローンなどの大きなローンを組む際には、ほぼ必ず「納税証明書」の提出を求められます。

この証明書を見れば、税金を滞納していることや差押えを受けた事実は一目瞭然となり、審査に通ることは極めて難しくなります。

そのため「ブラックリストには載らないが、新たな借入れは事実上不可能になる」と理解しておくのが正確です。

住民税の支払いに時効はある?

法律上、住民税の支払い義務は、納期限から5年で時効を迎えると定められています。

「5年間逃げ切れば払わなくてよくなるの?」と思うかもしれませんが、その考えは間違いです。

なぜなら、役所が「督促状」を送付したり、「差押え」をおこなったりすると、この時効のカウントがリセットされる「時効の更新」という制度があるからです。

役所は定期的に督促状を送るため、時効が完成することは現実的にはあり得ません

さいごに|差押え解除の方法を把握しよう

住民税の差押えなど借金問題は、絶対に放置しないことが大切です。

督促状が届いた場合には、すぐに行動を起こしてください。

最初の連絡先は、あなたの街の役所です。

現在の状況を誠実に伝え、住民税の支払いについて相談をしましょう。

もし、住民税滞納の原因がそのほかの借金にあるなら、必要に応じて弁護士に相談し、借金問題の根本的な解決を目指しましょう。

なお、「ベンナビ債務整理」では、無料相談に対応しているお近くの法律事務所を簡単に探すことができます

どこに相談へ行けばいいかわからない、という方はぜひご活用ください。

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株式会社アシロ編集部
編集者
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