- 「自己破産手続きを弁護士に依頼せず自分でもできるだろうか。」
- 「弁護士に依頼する費用を節約したいから、自己破産手続きは自分でしたい。」
ギャンブルや事業などの借金で自己破産をしたいときは、誰も「お金をなるべくかけたくない」と考えるでしょう。
そこで弁護士などへの依頼費用を節約するため、自己破産手続きを自分でできないか考えるのは自然です。
しかしながら、自分で自己破産手続きをする場合はさまざまなデメリットがありおすすめできません。
本記事では、そもそも自己破産手続きを自分でもできるかの可否、自分でおこなう7つのデメリット、自分で自己破産手続きをしても費用を節約できるとは限らないこと、自分でする場合の費用や手続きの流れを解説します。
自分で自己破産手続きをするか否か判断する場合は、デメリットも理解しておくべきです。
本記事を読めば、自己破産手続きを専門家に任せるべきか自分でおこなってもよいか判断できるようになります。
自己破産の手続きは自分でおこなえるが、ハードルが高くデメリットも多い
自己破産手続きは、専門家に依頼しておこなわないといけないといったルールはありません。
自分で必要書類を用意して裁判所に申し立て、手続きを進めることも可能です。
しかし自己破産手続きを自分ですすめるのは、後述するとおりデメリットが多くおすすめできません。
複雑な手続きや交渉を適切にすすめるには専門的な知識・経験が必要で、慣れないと大きな負担にもなります。
手続きに不備があると、結果的に自己破産が認められなくなる可能性も否定できません。
自己破産手続きを自分ですすめることは可能だが、ハードルが高くおすすめできないというのが実際のところです。
自己破産の手続きは弁護士に任せるのが一般的
自己破産手続きは債務者自身でおこなうのでなく、弁護士に任せるのが一般的です。
弁護士に任せると依頼者の代理人として、複雑で手間のかかる手続きや交渉を全ておこなってくれます。
弁護士に任せた場合は弁護士費用がかかりますが、自分で手続きを進めれば必ずしも費用を安くできるとも限りません。
また弁護士に任せることで、債権者からの督促を止められるなどのメリットもあります。
自己破産の手続きを自分でおこなうデメリット7つ
それでは、具体的に自己破産の手続きを自分でおこなうことで、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、特に注意すべき以下の7つのポイントを詳しく解説します。
- 自己破産(免責)が不許可になってしまうリスクが高まる
- 自己破産が最適な選択肢でなかったとしても、気付けない可能性が高い
- 費用の安い「同時廃止」でなく、費用も手間もかかる「管財事件」という手続きになる
- 手間のかかる必要書類の収集や裁判所対応を、全て自分でしなければならない
- 手続き期間を短縮できる「即日面接」などの制度が使えない
- 自己破産の開始決定まで、債権者からの督促を止めることができない
- 「債権者洩れ」が発生して裁判などになるリスクが高まる
自己破産(免責)が不許可になってしまうリスクが高まる
自分で手続きをすすめると、裁判所に免責許可を出してもらえず借金が免除されなくなるリスクが高まります。
破産法に定める「免責不許可事由」にあてはまると、免責が不許可となり借金が免除されません。
免責不許可事由にあてはまる可能性がある場合、裁判所の「裁量免責」が受けられるよう手続きを進める必要があります。
しかし依頼人の行為が免責不許可事由に該当するかの判断や、裁量免責を受けるにはどうすればいいか検討するには専門知識が不可欠です。
弁護士に依頼せず自分で進めようとすると、知らずに免責不許可事由とみなされる行動をしてしまう可能性も否定できません。
また裁判所をうまく説得することができず、裁量免責が認められない可能性も高くなるのです。
自己破産が最適な選択肢でなかったとしても、気付けない可能性が高い
借金を解決する方法は、自己破産だけではありません。
任意整理や個人再生といった、財産を残しながら借金を減額できる手続きもあります。
任意整理とは債権者と直接交渉し、借金の将来利息をカットしてもらい3年~5年程度で返済する手続きです。
個人再生とは、裁判所に申立てをおこない、借金を5分の1から最大10分の1まで減額することができる制度です。
個人再生であれば、原則として自己破産のように財産が没収されることはありません。
どの手続きが最も適しているかは、あなたの借金総額、収入、財産の状況などを総合的に見て判断する必要があります。
法律の知識がないまま自分で手続きを進めてしまうと、「本当は自己破産でなく、より簡便で費用もかからない任意整理で解決できたかもしれない」といった、最適な選択肢を見逃してしまう可能性があります。
弁護士に相談すれば、あなたにとってどの方法がベストなのかを客観的に判断し、最も有利な条件で生活を再建できるようサポートしてくれます。
費用の安い「同時廃止」でなく、費用も手間もかかる「管財事件」という手続きになる
自己破産の手続きには、大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止は債務者の財産が一定額以下の場合などに適用される手続きで、費用も安く手続き期間も短いのが特徴です。
一方で管財事件は一定以上の財産がある場合や、借金の原因に問題がある場合などに適用される手続きです。
管財事件では、裁判所が選んだ破産管財人が財産の調査や管理をおこないます。
管財事件になると、破産管財人の報酬などとして20万円~50万円程度のお金を裁判所に納める必要があり、手続きも複雑で時間もかかります。
同時廃止が適用されるためには、財産や借金の理由に関する十分な調査をおこない、適切に申立書類を作成しなくてはなりません。
自分で自己破産手続きを進めると調査や書類作成の不備などから本来なら同時廃止で済むケースでも、裁判所に調査が必要と判断され、管財事件になってしまう可能性が高まります。
弁護士に依頼すれば、専門家の視点で的確な申立書を作成してくれるため、不要な費用や手間をかけずに、同時廃止で手続きを終えられる可能性が高まるのです。
また管財事件のなかでも、費用や手続きの負担をおさえられる「少額管財」は、そもそも弁護士に依頼しなければ選べません(破産の申立てをする地域による。)。
| 項目 | 通常管財 | 少額管財 | 同時廃止 |
|---|---|---|---|
| 対象となるケース | 債務者の財産が一定額以上、もしくは借金をした理由に問題がある場合 | 管財事件のうち、以下条件を満たす場合に選択して費用を節約できるうえ、手続きの負担も少ない種類 ・債務者が個人もしくは個人事業主 ・弁護士に依頼すること |
目ぼしい財産がなく、借金の経緯にも特に問題がない場合 |
| 裁判所への予納金 | 50万円程度 | 20万円程度 | 1万円程度 |
| 破産管財人の選任 | 選任される | 選任される | 選任されない |
| 手続きの複雑さ | 複雑で、手続き期間も長くなる傾向がある | 通常管財よりは簡易 | 最も簡易で、手続き期間も短い |
手間のかかる必要書類の収集や裁判所対応を、全て自分でしなければならない
自己破産の手続きでは、住民票や戸籍謄本、給与明細、預金通帳のコピー、保険の解約返戻金の証明書など、非常に多くの書類を集める必要があります。
また、裁判所に提出する自己破産申立書や陳述書といった書類は、専門的な内容が多く、決められた書式に沿って正確に作成しなければなりません。
これらの書類に不備があると、裁判所から何度も修正を求められたり、最悪の場合、申立てを受理してもらえなかったりすることもあります。
さらに、平日の日中に何度も裁判所に足を運んだり、裁判官との面談に対応したりする必要もあり、仕事をしている方にとっては大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、こうした面倒な書類の収集・作成から裁判所とのやり取りまで、そのほとんどを代行してもらえます。
手続き期間を短縮できる「即日面接」などの制度が使えない
裁判所によっては、弁護士が代理人になっている場合に限り自己破産手続きを簡略化できる制度を用意しています。
たとえば東京地裁では弁護士に依頼していれば、申立てをしたその日のうちに裁判官との面談をおこない、迅速に手続きを進めてくれる即日面接といった制度を利用できます。
弁護士なしで本人が直接申立てをおこなう場合は、こうした制度を利用することはできません。
自己破産の開始決定まで、債権者からの督促を止めることができない
借金で苦しんでいる方にとって、貸金業者からの電話や手紙による督促は、非常に大きな精神的ストレスです。
自分で自己破産の申立てをおこなう場合、この督促が止まるのは、裁判所が破産手続開始決定を出してからになります。
申立ての準備には時間がかかるため、それまでの間、あなたは厳しい取り立てに耐え続けなければなりません。
一方で弁護士に依頼すれば、弁護士が各貸金業者に受任通知という書面を送付し、それが受け取られた時点で、全ての督促がストップします。
「債権者洩れ」が発生して裁判などになるリスクが高まる
自己破産の手続きでは、お金を借りている貸金業者など全ての債権者を債権者一覧表に記載して、裁判所に提出する必要があります。
もし、この一覧表に記載漏れがあると、その債権者に対する借金は免責の対象とならず、返済義務が残ってしまう可能性があります。
あとからその債権者に裁判を起こされるといった、深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。
長期間にわたって複数の業者から借り入れをしていると、自分でも全ての借金を正確に把握できていないことがあります。
弁護士に依頼すれば、信用情報機関への照会などを通じて、全ての借金を正確に調査し、債権者漏れのないように万全の対策を講じてくれます。
自己破産の手続きを自分でしても、費用を節約できるとは限らない
「それでも弁護士費用をかけたくない」と、自分で手続きをしようと考えるかもしれません。
しかし、先ほど説明したように、自分で手続きをした結果、費用のかかる「管財事件」になってしまえば、手続きにかかる費用が高額になる可能性もあります。
その結果、費用を払ってでも弁護士に依頼した方が安く手続きができた、といったこともありえるのです。
弁護士に依頼して取り立てをストップしている間に、弁護士費用を積み立てるのが一般的
弁護士に依頼すると、その時点で借金の返済がストップします。
これまで毎月返済に充てていたお金が手元に残るようになるため、その中から弁護士費用を分割で支払っていくのが一般的な方法です。
つまり、今すぐまとまったお金がなくても、弁護士に依頼することは可能なのです。
また自分で破産手続きをすすめれば、前述のとおり自己破産の開始決定まで債権者からの督促は止められません。
その間も借金返済を続ければ、結果的に弁護士費用を払うよりもお金がかかってしまう可能性もあり得るのです。
弁護士費用は分割払いできる場合も多い
多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いに対応しています。
生活状況などを考慮し、無理のない範囲での支払い計画を立ててくれる場合がほとんどです。
「一括で払えないから」と諦める前に、まずは法律事務所の無料相談などを利用して、費用の支払い方法について相談してみることをおすすめします。
どうしても弁護士費用が払えないなら、法テラスの立替払制度を使う方法もある
法テラスは、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所です。
法テラスでは経済的に困窮している方に向けて、弁護士費用の立替払制度(民事法律扶助)を提供しています。
本制度を利用すれば、弁護士費用を法テラスに立て替えてもらうことが可能です。
さらに立て替えてもらった費用は、月々5,000円~10,000円程度の無理のない金額で分割返済していくことになります。
生活保護を受けている方など、状況によっては返済が免除される場合もあります。
経済的に苦しくて弁護士費用の捻出がどうしても難しい場合は、法テラスの利用も検討するとよいでしょう。
なお法テラスの立替払制度を利用するには、収入・資産などに関する条件を満たし審査に通過しなくてはなりません。
法テラスの立替払制度を利用するために必要な収入・資産に関する条件は以下のとおりです。
| 家族の人数 | 収入要件 | 資産要件 |
|---|---|---|
| 1人 | 20万200円(18万2,000円) | 180万円以下 |
| 2人 | 27万6,100円(25万1,000円) | 250万円以下 |
| 3人 | 29万9,200円(27万2,000円) | 270万円以下 |
| 4人 | 32万8,900円(29万9,000円) | 300万円以下 |
| 5人目以降 | 1名増えるごとに3万3,000円(3万円)加算 | 300万円以下 |
※()内は東京都特別区や大阪市などの地域以外の場合の基準
住宅ローン・医療費の支払いなどの理由があれば、収入・資産が上記要件を超えても民事法律扶助制度を利用できる場合もあります。
詳細については法テラスの以下公式サイトで確認するか、法テラスへ問い合わせください。
【参考】弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ | 無料法律相談・弁護士等費用の立替 | 法テラス
自己破産手続きを自分でするときの必要書類
自己破産の手続きは、弁護士に依頼することをおすすめしますが、自分でしたいという方もいると思います。
自分で自己破産の手続きをおこなう場合に、一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。
ただし、裁判所によって運用が異なるため、必ず管轄の裁判所に確認が必要です。
- 自己破産申立書
- 陳述書(借金をした経緯や現在の生活状況などを説明する書類)
- 債権者一覧表
- 財産目録(預貯金、保険、不動産、自動車など全財産を記載)
- 住民票、戸籍謄本
- 給与明細書(過去2~3ヵ月分)
- 源泉徴収票または課税証明書
- 預金通帳のコピー(過去1~2年分)
- 賃貸借契約書のコピー(賃貸住宅の場合)
- 車検証のコピー(自動車を所有している場合)
- 保険証券、解約返戻金計算書のコピー(生命保険などに加入している場合)
- そのほか、裁判所が指示する書類
自分で手続きをする場合は、これらの書類を全て不備なく準備しなければなりません。
自己破産手続きを自分でするときにかかる費用
自分で手続きをおこなう場合、弁護士費用はかかりませんが、裁判所に納める実費は必要になります。
| 項目 | 金額の相場 |
|---|---|
| 申立手数料 (収入印紙代) |
1,500円 |
| 郵便切手代 | 数千円程度 |
| 予納金 | 同時廃止:11,859円 少額管財:20万円~ 通常管財:50万円~ |
合計すると、最も簡単な同時廃止でも2万円程度、管財事件になると最低でも20万円を超える費用がかかります。
自己破産手続きを自分でするときの流れ
自分で手続きをする場合の、大まかな流れは以下のとおりです。
- 必要書類を作成・収集する
- 管轄の地方裁判所に自己破産の申立てをおこなう
- 破産審尋(裁判官との面接)を受ける
- 破産手続きの開始が決定する
- 【同時廃止の場合】破産手続き開始決定と同時廃止決定がおこなわれる
- 【管財事件のみ】破産管財人による財産の調査・清算がおこなわれる
- 【管財事件のみ】債権者集会に出席する
- 免責審尋がおこなわれる※同時廃止では省略されるのが一般的
- 免責許可・免責不許可が決定する
必要書類を作成・収集する
まずは、自分の住所地を管轄する地方裁判所を確認し、申立てに必要な書類の書式を入手します。
そのあと、上記でリストアップしたような数多くの添付書類を集め、申立書や陳述書などを作成します。
管轄の地方裁判所に自己破産の申立てをおこなう
全ての書類が準備できたら、管轄の地方裁判所に提出し、自己破産の申立てをおこないます。
破産審尋(裁判官との面接)を受ける
申立て後、裁判官と面接(破産審尋)がおこなわれます。借金をした理由や現在の財産状況などについて、直接質問されます。
破産手続きの開始が決定する
申立て内容に問題がなければ、裁判所は「破産手続開始決定」を出します。
【同時廃止の場合】同時廃止決定と破産手続き開始決定がおこなわれる
めぼしい財産がないと判断されれば、破産手続開始決定と同時に、手続きを終了させる同時廃止決定が出ます。
【管財事件のみ】破産管財人による財産の調査・清算がおこなわれる
管財事件になった場合は、破産管財人があなたの財産を調査し、現金に換えて債権者に公平に分配する手続きをおこないます。
【管財事件のみ】債権者集会に出席する
管財事件では、破産管財人から財産調査の結果などを報告するために、裁判所で債権者集会が開かれ、あなたも出席する必要があります。
なお、この場合の債権者集会は債権者が参加することはあまりなく、数分程度で終了することが多いです。
免責審尋がおこなわれる
免責を許可してよいかを判断するため、再度、裁判官との面談がおこなわれます。
なお裁判所にもよりますが同時廃止の場合は免責審尋が省略されることも多いです。
免責許可・免責不許可が決定する
最終的に、裁判所が免責を許可するかどうかの決定を下します。
無事に免責許可決定が確定すれば、借金の返済義務がなくなります。
さいごに|自己破産手続きは弁護士に相談・依頼を!
自己破産は専門家に任せなければならないというルールはなく、債務者自身でおこなうことも可能です。
しかし自分でおこなえば失敗やかえってコストが高くなるリスクが高まります。
また債権者からの督促をとめるまで時間がかかったり、手続きの負担が大きかったりするなどのデメリットも無視できません。
このように債務者自身でおこなうのはデメリットが多いため、自己破産手続きは弁護士に依頼して進めることが強く推奨されるのです。
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