カードローンやクレジットカードの返済に追われて任意整理を検討しているものの、「手続き後の支払いをきちんと管理できるか不安」と感じている人も多いのではないでしょうか。
任意整理をしたあとは、債権者へ毎月遅れなく返済する必要があるため、支払い管理が負担になるケースもあります。
そこで利用を検討する人が増えているのが「返済代行」というサービスです。
返済代行を利用すれば、債務者本人の代わりに法律事務所の担当者が各債権者への支払いを一括で代行してくれるため、支払い忘れや遅延のリスクを減らせます。
本記事では、返済代行の仕組みや利用した場合の流れ、さらにメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
任意整理や返済代行の利用を検討している人はぜひ参考にしてください。
任意整理の返済代行(弁済代行)とは?
返済代行とは、任意整理後の債権者への支払いを債務者本人の代わりにおこなうサービスのことです。
弁護士や司法書士が提供しているサービスのひとつで、任意整理を依頼した弁護士・司法書士にそのまま依頼するのが一般的です。
任意整理で借金を減額できた際は、和解内容に従って債権者ごとに金額を毎月きちんと支払わなければなりません。
しかし、入金先や返済期限は債権者によって異なるため、管理が煩雑になりやすく、支払い遅れのリスクも高まります。
その点、返済代行を利用すれば、毎月決められた期日までに弁護士が指定する一つの口座にお金を振り込むだけでよいので、支払いを管理するストレスや支払い遅れのリスクを防ぐことができます。
返済代行を使う主なメリット
返済代行を利用するメリットとしては、主に以下の四つが挙げられます。
- 返済忘れを予防できる
- 返済手続きの負担が軽減される
- 債権者とのやりとりも代行してもらえる
- 家族や職場にばれるリスクが軽減される
これらのメリットが自分にとって重要と感じる場合は、返済代行の利用を前向きに検討しても良いでしょう。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
返済忘れを予防できる
任意整理後は、複数の債権者に対して毎月指定された日に支払いを続ける必要があります。
しかし、債権者によって入金先や期限は異なるため、うっかり忘れて延滞してしまうケースも少なくありません。
そして、延滞が何度も続いてしまうと、最悪の場合、一括請求などをされるおそれもあります。
その点、返済代行を利用すれば、弁護士や司法書士にまとめて送金するだけで済むため、支払い漏れを防ぎやすくなります。
返済手続きの負担が軽減される
任意整理後の返済を自分でおこなう場合は毎月複数回の振込み作業が必要ですが、返済代行を使えば1回の入金で完結するのもメリットです。
銀行やATMに何度も行く必要がなくなり、時間的・精神的な負担も軽くなります。
特に、複数社からの借入れについて任意整理をおこなった場合は、返済代行のメリットを感じやすいでしょう。
債権者とのやりとりも代行してもらえる
任意整理後も、返済に関して債権者から確認や連絡が入る場合があります。
その際、返済代行を利用していれば、基本的なやり取りは弁護士や司法書士が対応してくれるため、直接やり取りする必要がありません。
そのため、精神的なストレスやプレッシャーを大幅に軽減できるでしょう。
特にこれまで督促の電話やSMSに強い不安を感じていた人にとっては嬉しいポイントです。
家族や職場にばれるリスクが軽減される
返済代行を使うと債権者からの連絡や郵便も弁護士や司法書士宛てに届くことになります。
そのため、家族や同僚に借金や任意整理の事実が知られてしまうリスクを最小限に抑えることが可能です。
返済代行を使う主なデメリット
返済代行を使うデメリットは、主に以下の三つです。
- 債務者1件あたり毎月1000円程度の手数料がかかる
- あらかじめ必要な金額を振り込んでおく必要がある
- 全ての弁護士・司法書士が扱っているわけではない
返済代行の利用を検討する際は、これらのデメリットについてしっかり理解しておきましょう。
債権者1件あたり毎月1000円程度の手数料がかかる
返済代行サービスを利用すると、任意整理の依頼費用とは別に返済代行手数料を支払う必要があります。
債権者1社あたり毎月1000円程度が相場で、複数の債権者と和解した場合は手数料負担も大きくなります。
ひと月で考えると大した金額ではないように思えますが、任意整理で和解した業者には基本的に3〜5年間にわたって返済を続けるため、返済代行の手数料だけでトータル10万円程度にのぼるケースもあるでしょう。
そのため、返済代行を利用する際は、毎月の返済額がどの程度増えるのか、トータルで代行手数料としていくら支払うことになるのかといったシミュレーションをしておくのがおすすめです。
あらかじめ必要な金額を振り込んでおく必要がある
返済代行を利用する際は、弁護士や司法書士が指定する口座に毎月まとまったお金を入金しなければなりません。
入金が遅れると、事務所から債権者への送金も遅れ、延滞とみなされてしまうリスクがあります。
毎月決まった給料日がある場合は、送金日を給料日の後にしてもらうなど、入金遅れが生じないための工夫が必要です。
全ての弁護士・司法書士が扱っているわけではない
返済代行は任意整理後のサポートとして提供されるサービスですが、全ての事務所が取り扱っているわけではありません。
弁護士や司法書士の方針や事務所の体制によっては利用できない場合があります。
そのため、返済代行を利用したい場合は、任意整理について相談する段階で「返済代行サービスの有無」を確認しておくことが大切です。
任意整理後の返済は自分でするのと返済代行とではどちらが良い?
返済代行のメリット・デメリットを知ったうえで、自分で返済をおこなうのと返済代行を利用するので迷っている方もいるでしょう。
そこでここでは、返済代行がおすすめな人の特徴と、自分での返済がおすすめな人の特徴をそれぞれ紹介します。
返済代行をおすすめできる人の特徴
返済代行をおすすめできるのは以下のような人です。
- 債権者が多く手間を避けたい
- 自分でお金を管理するのが苦手
- 家族や職場にばれるのは困る
- 返済計画に少し余裕がある
上記に当てはまる人は、返済代行によるメリットを感じやすい可能性が高いので、一度担当の弁護士や司法書士に相談してみるとよいでしょう。
具体的な費用や利用の流れがわかれば、依頼のハードルもぐっと下がるはずです。
自分で振り込むのをおすすめできる人
返済代行は便利なサービスですが、必ずしも全てのケースで利用がおすすめなわけではありません。
たとえば、以下に当てはまる人は返済代行を利用せずに、自分で返済をしたほうがよいでしょう。
- 対象となる債権者が1件のみか少ない
- お金の管理が得意で負担に感じない
特に、返済先が1社しかない場合は、返済代行のメリットを感じにくい可能性が高いので、まずは自分で返済をおこなってみるとよいでしょう。
どうしても自分での返済が難しい場合は、あとあと弁護士や司法書士に相談するのもおすすめです。
任意整理の和解後に支払いが遅れるとどうなってしまうの?
任意整理で債権者と和解できたら、減額された借金を3〜5年間かけて返済していくのが一般的です。
しかし、生活状況の変化や急な出費などでどうしても支払い期日にお金を用意できない状況に陥ることもあるでしょう。
任意整理後の滞納は非常にリスクが大きいので、滞納しそうになった状態ですぐに担当の弁護士・司法書士に相談してください。
ここでは、任意整理の和解後に支払いが遅れた際にどのようなリスクが生じるか、具体的に解説します。
2回遅れると残金の一括払いを求められる可能性がある
任意整理の和解後にどうしてもお金が用意できず滞納してしまった場合、一度だけならそこまで大きな問題にならないこともあります。
しかし、2回以上滞納してしまうと、和解案が破棄され、残金の一括払いを求められる可能性が高いでしょう。
なぜなら、債権者との和解案のなかには、毎月の返済額や支払い期日だけでなく、滞納した際の対応についても明記されているからです。
たとえば、「2回滞納を繰り返したら債務者は期限の利益を喪失する」と取り決められているケースがあります。
期限の利益とは、「約束の支払い期限を守っていれば分割払いが認められる」という債務者にとっての権利のことです。
延滞によって期限の利益を失うと、分割払いでの返済が拒否され、残債を一括請求されてしまいます。
なお、滞納による一括請求の扱いについては、債権者によって「合計2回の滞納」「2回連続の滞納」など条件が異なることもあります。
返済が3年〜5年と長期に及ぶ任意整理では、途中で資金繰りが厳しくなるケースもあるため、1回目の遅延が発生した段階で早急に弁護士や司法書士へ相談し、今後の対応を検討することが重要です。
改めて任意整理をしたり追加で任意整理をしたりすることを検討する必要が生じる
和解案通りの返済が難しくなった場合、再和解や追加介入を検討しなければなりません。
それぞれの手続きの内容は、以下のとおりです。
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 再和解 | 一度任意整理で和解した債権者ともう一度交渉し、返済条件の見直しを認めてもらう |
| 追加介入 | 当初任意整理の対象から外していた債権者についても、追加で任意整理をして返済負担を軽減する |
再和解や追加介入によって毎月の返済額を軽減できることは多く、今までどおりの返済が難しい人にとっては現実的な解決策となる可能性があります。
ただし、再和解は一度取り決めた約束を破った相手との交渉となるため、「返済期間を短縮する」「1回の滞納で期限の利益を喪失する」など、以前の和解内容よりも厳しい条件になることがほとんどです。
ほかの業者への追加介入も、「保証人がついている」「元本自体が少なく利息の軽減効果が少ない」など、当初任意整理の対象から外した事情があるはずなので、全ての人におすすめできるわけではありません。
さらに、新たに弁護士費用がかかるため、本当に手続きが必要かどうかは慎重な判断が必要です。
どうしても返済が難しい場合は個人再生・自己破産も選択肢になる
今後の返済が困難で、再和解や追加介入による調整でも解決できない場合は、より抜本的な手続きである個人再生や自己破産を検討する必要があります。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 個人再生 | ・借金額に応じて最大で10分の1まで減額してもらう ・住宅ローン特則を利用すればローン返済中の自宅を残しながら減額が可能 |
| 自己破産 | ・ほぼ全ての借金の返済義務がなくなる ・一定以上の価値がある財産は没収される |
いずれも裁判所を通じた法的手続きですが、時間や労力がかかるうえ、任意整理よりも生活への影響も大きい分、慎重に選択する必要があります。
とはいえ、早めに手続きすることで生活の再建がスムーズに進められることも多く、すでに返済が行き詰まっている人にとっては根本的な解決が望めるのも事実です。
個人再生や自己破産などについて詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】債務整理とは?基本をわかりやすく解説|ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)
返済代行についてよくある質問
ここでは、返済代行についてよくある質問をまとめました。任意整理や返済代行を検討している人はぜひ参考にしてください。
個人再生でも返済代行をしてもらえる?
個人再生においても、弁護士や司法書士に依頼すれば返済代行を利用できるケースがあります。
ただし、返済代行の手数料は任意整理と同様に1件あたり月額1000円程度かかる場合が多いため、総額の負担も考慮することが大切です。
弁護士・司法書士以外に任意整理の返済代行業者っているの?
任意整理の返済代行をおこなうのは、基本的に弁護士や司法書士といった法律の専門家です。
また、返済代行は任意整理をきちんと完了させるためのアフターフォローとしての意味合いがあるため、原則として任意整理を実施した担当の専門家が受け持つことになります。
一部の貸金業者などが「振込代行サービス」と称したサービスを提供していますが、これは返済代行とはまったくの別物です。
これは、主に事業者を対象として、取引先との間で発生する請求書の決済や振込みの処理を一本化して、手間や費用を軽減するサービスです。
したがって、任意整理の債務者を想定して提供されているサービスではないと考えておいてください。
さいごに|返済代行はメリット・デメリットをよく検討して利用しよう
本記事では、返済代行の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
弁護士や司法書士による返済代行サービスは、任意整理や個人再生での返済をスムーズに進めるうえで非常に便利です。
複数の債権者への返済手続きを一本化できるため、返済漏れが防ぎやすく、支払いの管理による精神的な負担を大きく軽減できます。
一方で、利用には手数料がかかり、事務所によっては対応不可の場合もあるため、利用前にしっかり確認することが重要です。
ベンナビでは、返済代行に対応している弁護士も多数掲載しているので、これから任意整理を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
