住民税を滞納してしまうと、「いきなり銀行口座が差し押さえられた」「給与が差し引かれて生活が苦しくなった」といった事態に発展することがあります。
実際、滞納を放置してしまった結果、思わぬタイミングで財産を差し押さえられたというケースも少なくありません。
この記事では、住民税の滞納によって差押えを受けた人の体験談を3つ紹介しながら、どのような流れで差押えがおこなわれるのか、どんなポイントに注意すべきなのかをわかりやすく解説します。
「支払いが遅れてしまったけれど、まだ間に合うのか」「差押えを避ける方法はあるのか」と不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
今の状況を冷静に整理し、早めの対応を取ることで、最悪の事態を防ぐことができます。
住民税の滞納による差押えの体験談3選
住民税を滞納すると、最悪の場合差押えという厳しい措置につながることがあります。
ここでは実際に住民税を滞納して差押えを受けた人の体験談を3つ紹介します。
いずれのケースにも共通するのは「滞納を軽く考えて放置したことが事態を悪化させた」という点です。
自分の状況と照らし合わせ、早めに行動する重要性を理解しておきましょう。
1.知らないうちに住民税を滞納してしまったケース
会社都合で退職することになったAさんは、住民税の支払い方法が給与天引き(特別徴収)から自分で納付する普通徴収に変わったことを知らず、納税通知書も確認しないまま放置していました。
その結果、延滞金が発生し、役所から督促状が届いて初めて滞納に気づいたといいます。
住民税は、健康保険や年金とは異なり会社都合の退職による軽減措置がないうえ、余裕のある形での分割払いも認められず、経済的に大きなダメージを受けることになりました。
勤務先を変えたときや退職したときには納付方法が変わる可能性が高いため、住民税の仕組みを正しく理解し、納税通知書などの書類は欠かさず確認しておくことが重要です。
【参考】もしも税金を滞納したら
2.経済的に余裕がなく住民税を納付できなかったケース
自営業を営んでいたBさんは、仕事の忙しさや金銭的な余裕の無さから住民税の支払いをしていない時期がありました。
ある日、過去に住んでいた自治体から唐突に差押調書が届き、住民税を滞納していたことにより生命保険の積み立て金を差し押さえられてしまいました。
「もう引っ越したから、滞納分も見逃してもらえるだろう」と甘く考えていたところ、引っ越し後に差押えを受けることになったケースです。
差押えを受けたあとに役所へ相談すると、一旦は生命保険の積み立て金を未納分に充当する形で認めてもらえました。
しかし、数年後に再び「まだ滞納分が残っているので払ってください」と督促を受け、延滞金が加算された状態で全額支払うことになりました。
市区町村の税金を管理している部署は、所得税や健康保険税などの納付状況も把握しているため、滞納分の支払いをできるだけの余裕があるはずだとバレてしまったわけです。
以上のように、住民税の支払い義務は引っ越したからといって帳消しにはならず、逃げ切ることは難しいため、支払う余裕がない時にはしっかりと役所に相談するようにしましょう。
【参考】差し押さえってホントにあるんだ…… 住民税を滞納してたらガチの「差し押さえ」を食らったレポ漫画がためになる
3.ほかの用途にお金を使って住民税の納付を後回しにしていたケース
お金の管理がずさんだったCさんは「税金はすぐに払わなくても大丈夫だろう」と軽く考え、趣味や娯楽などほかの支払いを優先してしまいました。
その結果、滞納額がどんどん膨らみ、最終的に差押えを受けるという深刻な事態に直面することとなります。
差押えの内容としては、まず自分で所有していた自動車にロックをかけられて自由に移動できないようにされてしまいました。
そのうえで銀行口座にはお金がほとんどなかったため、役所の担当者の自宅への訪問により、漫画やタブレットなど、金銭的価値のあるものを没収される結果となりました。
住民税については「支払いを後回しにしても大丈夫」と思う人も多いですが、自治体は強い回収権限を持っており、延滞金も加算されます。
そのため、最終的な負担は本人が想像していた以上に大きくなり、生活に深刻な影響を及ぼすことになるため、支払いが難しいとわかった時点で早めに自治体に相談することが大切です。
【参考】税金滞納者のあきれた言い訳…職員は「もう話を聞く段階ではない、払うか払わないか」財産の“差し押さえ”に密着
住民税の差し押えのリアル|実際に気になる4つのポイント
住民税を滞納すると、自治体が税金を回収するために差押えをおこなうことがあります。
とはいえ、「何を差し押さえられるのか」「差押えまでにどれくらい猶予はあるのか」などの疑問を持っている方もいるでしょう。
ここでは差押えに関する代表的な疑問を整理し、生活に与える影響や取り戻す方法の有無まで解説します。正しい知識を持つことで、不要な不安を抱えず、冷静に対処することができるでしょう。
Q.どんな財産を差し押さえられる?
住民税を滞納すると、預貯金や給与、不動産、自動車など幅広い財産が差押えの対象となる可能性があります。
基本的には、銀行口座の預金や勤務先からの給与が差押え対象になりますが、銀行口座の残高が足りなかったり、自営業者などで安定した給与が得られていなかったりする場合は、車や不動産といった資産価値の高いものや、ブランド品や電化製品なども差押え対象となるケースもあります。
賃貸物件を追い出されたり、食費を全額没収されたりといったように、最低限の生活に必要な財産まで差し押さえられることはありません。
しかし、住民税の滞納により差押えを受けると生活に大きな制約を受けるため、差押え前に自治体に相談することが大切です。
Q.差し押えまでどれくらいの猶予がある?
滞納したからといって即座に差押えになるわけではなく、通常は督促状や催告書が送付され、最低1ヵ月程度の猶予期間が与えられます。
ただし、自治体によって対応の厳しさやスピードは異なるため「まだ大丈夫」と楽観視するのは危険です。
繰り返し滞納している人や過去に分納を守らなかった人は、早期に差押えが実行されるケースも少なくありません。
滞納してしまった時点で役所に相談して、分納や猶予を交渉することが現実的な対策といえます。
Q.差し押えが始まると普通の生活は続けられない?
住民税の滞納によって差押えを受けると、これまでと同じ生活を続けられないほど大きな制約を受ける可能性があります。
住民税の滞納によって差押え対象となりやすいのは銀行口座の残高です。
差押えを受けた銀行口座は、一時的に凍結されて自由にお金を引き出せなくなるため、生活への影響は大きいといえるでしょう。
また、給与が差押え対象になった場合は、毎月の手取りから強制的に一定額が天引きされるため、家計が圧迫されてしまいます。
ただし、最低限の生活費を保障する観点から、全ての収入や財産が差し押さえられるわけではありません。
それでも急な出費に対応できなくなるなど、生活の自由度は確実に下がるでしょう。
差押えは心理的なストレスも大きく、仕事や家庭にも悪影響を及ぼすため、できる限り回避するのが望ましいといえます。
Q.差押えをされた財産を取り戻すことはできる?
一度差し押さえられた財産は、原則として取り戻すことは困難です。
差押えの対象となった預貯金や給与は自治体に取り立てられ、滞納分の税金に充当されてしまいます。
自動車や不動産などの財産が差し押さえられた場合も、第三者へ売却することにより滞納分に充当されるため、やはり返ってくることはありません。
誤って滞納分よりも多く差し押さえられた場合や、生活に必要な最低限の財産を超えて差し押さえられた場合には、異議や不服を申し立てられることもあります。
しかし、これは例外的なケースであり、基本的には差押え後の財産を返還してもらうことは期待できません。
住民税の滞納発生から財産を差し押さえられるまでの流れ
住民税を滞納した際、銀行口座などの財産が差し押さえられるまでの流れは以下のとおりです。
- 自治体から督促を受ける
- 自治体が滞納者の財産調査をおこなう
- 自治体によって財産の差押えがおこなわれる
- 滞納税金を完納できた場合に差押えが解除される
それぞれについて、詳しく解説します。
1.自治体から督促を受ける
住民税を滞納すると、まず自治体から督促状が郵送されます。
督促状は「支払いが確認できないので期日までに納めてください」という最初の警告です。
自治体からの督促状は、基本的に最初の支払い期日から20日以内に送られてきます。
たとえば、6月30日支払い期限の住民税の支払いを怠った場合、7月20日頃に督促状が届くことがあります。
督促状が届いた時点で滞納分を支払えば、差押えのリスクは回避可能です。
しかし、督促状を放置すると、次は催告書や電話での連絡が来ることが多く、自治体によっては自宅訪問されるケースもあります。
とはいえ、まだこの段階であれば、正直に事情を説明して相談すれば分納や支払い猶予などの措置をとってもらえる可能性もあります。
支払えないからといって無視するのは避け、必ず自治体の窓口に相談しましょう。
2.自治体が滞納者の財産調査をおこなう
督促にも応じない場合、自治体は滞納者の財産状況を調べます。
たとえば、給与所得者であれば勤務先に給与の支払い状況を調査する通知が届き、そこから給与差押えが検討されます。
個人事業主の場合は、売上入金先の銀行口座を特定され、預金差押えが優先されることが一般的です。
これらの財産調査は、国税徴収法に基づいて実施されるため、個人情報提供の制限がかからないとされています。
そのため、いくら滞納の事実を知られたくないと思っていても、職場や家族に対して調査の通知が届くことは避けられません。
3.自治体によって財産の差押えがおこなわれる
調査によって差押え可能な財産が特定されると、自治体は「差押通知書」を発行し、銀行や勤務先に送付します。
これにより、銀行口座の残高が凍結されたり、給与の一部が強制的に差し引かれたりします。
給与が差押えの対象となった場合でも、給与のすべてが差し押さえられるわけではありません。
国税徴収法では、生活に必要な金額を差押禁止額として保護する仕組みが定められており、給与から所得税・住民税・社会保険料などを差し引いたうえで、生活費に相当する一定額を控除した残りの部分が差押えの対象となります。
そのため、給与の全額が差し押さえられることはなく、生活を維持するための最低限の金額は手元に残る仕組みになっています。
したがって、生活費を全て奪われるわけではありませんが、未納分を支払い終えるまでは継続して差押えを受けてしまうため、大きな経済的ダメージとなるでしょう。
4.滞納税金を完納できた場合に差押えが解除される
差押えを受けても、滞納している住民税と延滞金を完納すれば差押えは解除されます。
たとえば、給与の差押えを受けている場合でも、一括で残りの滞納額を納付すれば、翌月から給与差押えは止まり、通常の生活に戻ることが可能です。
なお、休職中にもかかわらず銀行口座を差し押さえられて生活がまったく立ち行かなくなるといった事情がある場合は、生活保護の申請によって税の徴収を停止してもらえる可能性もあります。
差押えを受けた場合は、残債を早期に支払って通常の生活に戻ることを検討しつつ、支払いが難しければ恐れずに自治体に相談することが大切です。
住民税の滞納で差押えを受けそうな場合の3つの対処法
住民税を滞納すると、自治体からの督促や財産調査を経て、最終的に差押えに至る可能性があります。
しかし、実際には差押えに進む前に取れる対処法がいくつか存在します。
早い段階で行動することで生活への影響を最小限に抑えられるため、具体的な対処法を理解しておくことが重要です。
ここでは、差押えのリスクを感じたときに実践すべき対処法を3つ紹介します。
1.市区町村などの窓口に相談する
住民税を滞納してしまったり、差押事前通知が届いたりした場合は、まずは市区町村の税務課や収納課に直接相談しましょう。
多くの自治体では、納税者の状況に応じて「分割払い」や「徴収猶予」といった制度を提案してくれます。
たとえば、収入が一時的に減少したり突発的な出費があったりなど支払えない事情がある場合には、経済状況に応じて月々1万円程度からの分割払いを認めてくれるケースもあるのです。
役所としても、しっかりと計画的に納税してもらいたいだけで、滞納者を追い詰めたいわけではありません。
「今すぐ滞納分を全額支払うのは難しいけど、少しずつでも支払っていきたい」と納税の意志をしっかりと示せば、柔軟な対応をとってもらえるはずです。
現実的かつ具体的な返済計画を立ててから相談すれば、より誠意が伝わるでしょう。
2.家族や親族から一時的にお金を借りて納付する
どうしてもまとまった納税資金を用意できない場合は、信頼できる家族や親族から一時的に借りるのも選択肢のひとつです。
消費者金融などから借金をすると利息によって返済負担が増えてしまいますが、親族間であれば利息なしで借りられるケースも多く、経済的なリスクを抑えられます。
お金を借りる際は、差押えのリスクが迫っていることを正直に伝え、誠意を持って相談しましょう。
また、月々の返済額や返済期間などを記した借用書を作成しておけば、信頼関係を損なわずに済むでしょう。
利息がかからないとはいっても、お金の貸し借りはトラブルに発展する可能性もあるため、借りる時だけではなく返済についても誠実に対応することが重要です。
3.ほかにも借金がある場合は債務整理を検討する
住民税の滞納が続いている背景には、カードローンや消費者金融からの借入れなど、ほかの債務が重なっていることも少なくありません。
借金の返済に追われていて住民税を支払えない場合は、弁護士や司法書士に相談して債務整理を検討することが現実的な解決策です。
債務整理とは、法律の力を使って合法的に借金を減額する手続きであり、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類が含まれます。
| 名称 | 概要 |
| 任意整理 | 弁護士などを通じて債権者(お金を借りている相手)と直接交渉し、借金の利息カットや返済期間の猶予に応じてもらう手続き |
| 個人再生 | 裁判所に申し立て、借金額に応じて最大で10分の1まで減額してもらう手続き |
| 自己破産 | 裁判所に申し立て、ほぼ全ての借金の返済義務を帳消しにしてもらう手続き |
債務整理の手続きは、債権者との交渉や裁判所に提出する書類の作成など、法的な専門知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して進めるのが一般的です。
また、債務整理ごとにメリット・デメリットが異なり、どの手続きを選ぶべきかは一人ひとりの状況によって変わります。
自分に適した手続きを選択するためも、債務整理の実績が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
ただし、債務整理によって減額・免除してもらえるのは消費者金融やカード会社などからの借金のみです。
住民税の滞納自体を債務整理によって解決することはできないので注意しましょう。
【関連記事】債務整理とは?基本をわかりやすく解説|ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)
さいごに|差押えがおこなわれる前に今すぐ窓口などに相談しよう
本記事では、住民税の滞納によって差押えを受けた体験談や、差押えを防ぐためにとるべき対処法などについて詳しく解説しました。
住民税を滞納すると、延滞金が膨らむだけでなく、最終的には預金口座や給与が差し押さえられるという深刻な状況に発展することがあります。
一度差押えを受けてしまうと生活への影響は大きく、元の状態に戻すのは容易ではありません。
しかし、早めに市区町村の窓口に相談すれば分割納付や猶予の制度を利用できることがあります。
さらに、借金の返済に追われており住民税の支払いが困難な人は、債務整理を活用することで住民税を納める余力を確保できる可能性もあります。
いずれにしても重要なのは「放置しない」ことです。
支払いが難しい時には、少しでも早く自治体の窓口に相談しつつ、弁護士の力を借りて債務整理を進めることも検討しましょう。
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