孫に財産分与をしたい!遺産を孫に譲る6つの方法とそれぞれのポイントを解説

孫に財産分与をしたい!遺産を孫に譲る6つの方法とそれぞれのポイントを解説

被相続人である祖父母の子どもが生存している限り、孫に財産を相続させることはできません。

そのため、孫に財産分与をしたいのであれば、祖父母が元気なうちに遺言書の作成や贈与などの方法で孫に財産分与をおこなう準備をしなければなりません。

ただし、方法を間違えると高額な贈与税が発生するなどのリスクもあるため、注意点もよく理解したうえで手続きする必要があります。

本記事では、孫に財産分与をする6つの方法とそれぞれのメリットと注意点について詳しく解説していきます。

孫への財産分与は被相続人が元気なうちにしかできません。

可愛いお孫さんに大切な財産を確実に渡せるよう、しっかりと理解して早めに準備を進めましょう。

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孫に財産を譲る方法1.遺言書を作成する

遺言書の内容は相続の際に優先されるため、法定相続人の有無を問わず孫に財産を遺贈することができます

遺言では孫にどの程度の財産を渡すのかを決められるだけでなく、ほかの法定相続人へどの程度の財産を渡すのかを決めることも可能です。

ただし、法定相続人の内、被相続人の配偶者・子・親には最低限受け取れる取り分(遺留分)があります。

もしも法定相続人に遺留分を請求(遺留分侵害額請求)されてしまったら、祖父母の希望どおりの財産を孫に渡せないことがあるため注意してください。

【遺言書を作成する場合のメリット・デメリット】
メリット ✔法定相続人以外の人物に財産を残すことができる
✔誰にいくら残すのか割合を決められる
デメリット ✔遺留分侵害額請求を起こされる可能性がある
✔法定相続人以外は相続税が2割加算になる

遺言書は孫に財産を残すために最も一般的に用いられる方法ではあるものの、孫の相続税が2割加算されるため、相続する財産の金額が大きい場合には相続税額が非常に高額になる可能性があります。

遺言で孫に財産を譲る場合の流れ

遺言で孫に財産分与する流れは、自室証書遺言公正証書遺言によって異なります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは、それぞれ以下のとおりです。

自筆証書遺言 公正証書遺言
作成者と保管場所 本人が作成し、本人が保管 公証人役場で作成し、公証人役場で保管
内容 本人が自筆で遺言書を作成し、作成日と署名・押印をする 公証人役場で公証人へ遺言書の内容を伝え、公証人が内容を確認しながら作成し、署名と押印をする
裁判所の検認手続 必要 不要
費用 無料 遺言の目的である財産の価額によって異なる(5,000円〜)

自筆証書遺言の内容は裁判所での検認が必要になるため、相続の際に一手間かかります。

一方、公正証書遺言の場合には検認は不要ですので、すぐに相続手続が可能です。

自筆証書遺言の場合には内容に不備があると無効ですが、公正証書遺言においては形式不備が想定しがたい点が最も大きな違いです。

確実に孫に財産分与をしたいのであれば、公正証書遺言を作成しておくとよいでしょう。

自筆証書遺言の場合

  1. 自分が所有する財産の総額を把握し財産目録を作成する
  2. 財産を証明する資料を用意する(登記簿謄本や通帳のコピー、保険証券など)
  3. 遺言の内容と遺言執行者を決める(遺言執行者の選任は必須ではないが選任することが好ましい)
  4. 遺言書を自筆で作成する
  5. 遺言書を封印する

遺言書は自筆で作成しなければなりませんが、財産目録は自筆でなくても構いません。

しかし、全ての書類に自筆による署名と押印は必要になるため、忘れないようにしましょう。

遺言書を作成するときには以下のポイントを押さえるようにしてください。

  • 全文及び署名は手書きする
  • 日付を忘れない
  • 署名、押印をする(できれば実印で押印する)
  • 財産の内容を資料に基づいて正確に記載する
  • 複数枚になる場合はホッチキスで留めて割印をする(自筆証書遺言書保管制度を利用の場合は不要)

作成した遺言書は封筒に入れて割印と署名、作成日、押印をしておきましょう。

なお、2020年7月10日から法務省による自筆証書遺言書保管制度が開始されました。

この制度を利用すれば、滅失・紛失・隠匿・改ざんなどのリスクを回避することができるほか、裁判所での検認が不要です。

法務局で保管することによって公正証書遺言と同じようなメリットを得られるため、活用するとよいでしょう。

【参考元】自筆証書遺言書保管制度|法務省

公正証書遺言の場合

  1. 自分が所有する財産の総額を把握し、財産目録を作成する
  2. 財産を証明する資料を用意する(登記簿謄本や通帳のコピー、保険証券など)
  3. 遺言作成に必要な書類を準備する
  4. 最寄りの公証人役場へ連絡し打ち合わせをする(内容や作成日時など)
  5. 証人とともに公証人役場へ行き遺言書を作成する

公正証書遺言作成に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 本人の印鑑証明書
  • 本人の実印
  • 本人の戸籍謄本
  • 受贈者の住民票
  • 登記事項証明書(財産に不動産が含まれる場合)
  • 固定資産税評価証明書(財産に不動産が含まれる場合)
  • 通帳や保険証券(財産に預貯金や保険や有価証券が含まれる場合)
  • 証人2人の氏名・住所・生年月日・職業(当日は本人確認書類が必要)

なお、当日は、以下の流れで遺言書を作成していきます。

  1. 公証人が遺言者、証人の本人確認を実施
  2. 公証人が遺言書の原案を読み上げ、遺言者及び証人が遺言の内容を確認する
  3. 内容に間違いがなければ遺言者、証人、公証人が遺言書原本に署名押印する
  4. 遺言書の正本、謄本の交付を受ける
  5. 公証人手数料を支払う

公証人手数料は、遺言の内容の財産の金額によって次のように異なります。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下 4万3,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

引用元:日本公証人連合会|Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?

遺言書で孫に財産を譲る場合のポイント

法定相続人が最低限財産を受け取る権利のある割合を遺留分といいます。

遺言書で孫に財産を遺贈する場合でも、法定相続人は遺留分を主張できるため注意しましょう。

遺留分は、法定相続人ごとに以下のように決められています。

法定相続人の組み合わせ 遺留分
配偶者と子 配偶者1/4
ども1/4
配偶者と父母(直系尊属) 配偶者1/3
父母1/6
配偶者と兄弟姉妹 配偶者1/2
配偶者のみ 1/2
子のみ 1/2
父母のみ 1/3
兄弟姉妹 なし

【参考元】法定相続人(範囲・順位・法定相続分・遺留分)|法務局

たとえば祖父母に配偶者と子どもがいる場合には、遺留分として配偶者に4分の1、子どもに4分の1の合計2分の1の権利があるため、遺言書に「財産の全てを孫に遺贈する」と明記したとしても、配偶者や子どもが遺留分を主張した場合、孫は遺留分の残りの2分の1しか取得できません。

遺言書を記載する際には、後々トラブルにならないために、遺留分を考慮した金額を記載するか、法定相続人の了解をとったうえで割合を決めたほうがよいでしょう。

孫に財産を譲る方法2.孫と養子縁組をする

孫と養子縁組をすれば、孫は祖父母の子どもになるため財産を相続できます。

養子縁組をした子どもも法定相続人の「子」に含まれるため、孫を祖父母の養子にすることで孫は法定相続人となり、財産を相続する権利を得られます

【孫と養子縁組をする場合のメリット・デメリット】
メリット ✔法定相続人に人数が増えるので基礎控除が大きくなる
✔孫が未成年の場合、「満18歳になるまでの年数×10万円」が相続税額から控除できる
デメリット ✔相続税が2割加算される

孫が未成年の場合、18歳になるまでの年数×10万円を相続税額から控除できるメリットがあります。

また、孫が法定相続人となることによって、相続税の非課税枠(3,000万円+法定相続人の数×600万円)が増えます。

このとき、孫を養子縁組して法定相続人とした場合も、相続税は2割加算の対象となるため注意してください。

普通養子縁組で孫に財産を譲る場合の流れ

普通養子縁組で孫に財産を譲る場合の流れは、孫が未成年の場合と成人の場合で異なります。

以下では、それぞれの流れを詳しく解説していきます。

孫が未成年の場合

  1. 養親と養子が養子縁組に合意する(養子が15歳未満の場合、養親は養子の法定代理人との間で合意)
  2. 配偶者の同意(養親に配偶者がいる場合)
  3. 本籍地または所在地の役所へ届出

家庭裁判所は、養子縁組の目的や養親の資産状況や生活状況などを調査し、養子縁組後に未成年の生活に支障がないかを確認します。

孫が成人している場合

  1. 養親と養子が養子縁組に同意
  2. 配偶者の同意(養親または養子に配偶者がいる場合)
  3. 本籍地または所在地の役所へ届出

孫が成人している場合には、基本的に当事者同士の同意だけで養子縁組ができます。

なお、養親か養子に配偶者がいる場合には、配偶者の同意が必要です。

養子縁組に同意をしたら、所在地または本籍地の市区町村役場へ届け出ることで養子縁組が完了します。

普通養子縁組で孫に財産を譲る場合のポイント

普通養子縁組で孫を法定相続人として財産分与する際には、以下のポイントを押さえているか確認してください。

  • 家庭裁判所の許可が下りていること(養子が未成年の場合)
  • 養親が既婚者の場合は夫婦共同で養親になること(養子が未成年の場合)
  • 養子が15歳未満の場合は法定代理人の承諾が必要

成人であっても外国人を養子とする場合には、家庭裁判所の許可が必要になることがあるため注意してください。

孫に財産を譲る方法3.生命保険を活用する

ほかにも、生命保険を活用して孫に財産分与する方法もあります。

生命保険金は遺産分割の対象ではないため、法定相続人の有無や人数にかかわらず、孫は祖父母が生前に「残したい」と考える金額を受け取ることが可能です。

【生命保険を活用する場合のメリット・デメリット】
メリット ✔遺産相続の対象ではない
✔孫が養子などによって法定相続人の場合は生命保険の非課税限度額の対象になる
✔相続放棄をしても受け取れる
デメリット ✔保険料が必要
✔孫が法定相続人ではない場合は非課税枠は適用されない

法定相続人が生命保険金を受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」で計算される生命保険の非課税枠が適用されますが、法定相続人でない場合には非課税枠が適用されません。

保険金は相続財産ではないため遺産分割の対象ではありません。

したがって、相続争いなどとは無縁に受け取れますし、仮に相続放棄をした際にも受け取れます。

被相続人が負債を抱えている場合には、資産を保険に変えることで、相続人は保険金だけを受け取り、あとは相続放棄することも可能です。

生命保険で孫に財産を譲る場合の流れ

生命保険で孫に財産分与する流れは次のとおりです。

新しく契約する場合

  1. 申込書の提出
  2. 告知
  3. 保険料の払い込み
  4. 契約成立

保険の契約には告知が必要です。

掛け捨ての生命保険では高齢の方で持病がある方は加入を断られてしまうことがあります。

相続に適した保険は死亡保障が一生涯続く終身保険です。

保険金受取人を変更する場合

新規に生命保険に加入しなくても、すでに加入している保険がある場合は、その保険の受取人を孫へ変更するだけで孫へ財産を残すことができます

加入している保険の受取人を変更する流れは以下のとおりです。

  1. 加入している保険会社の担当者やコールセンターへ連絡し受取人を変更したい旨を申し出る
  2. 送られてきた書類に必要事項を記入し、必要書類とともに返送
  3. 保険会社が確認後、変更完了

保険会社によって変更の方法は異なります。

担当者やコールセンターへ連絡することで変更方法を教えてもらえるため、まずは保険証券に記入された連絡先へ連絡してみましょう。

生命保険で孫に財産を譲る場合のポイント

生命保険で孫に財産を譲る際のポイントは次のとおりです。

  • 孫が養子や代襲相続人ではない場合は生命保険金の非課税枠は適用されない
  • 契約者と被保険者が異なる場合、受取人の変更には被保険者の同意が必要
  • 保険金受取人は複数名指定することもできる
  • 老後の生活費に注意する

生命保険金の非課税枠が適用されるのは、法定相続人が保険金を受け取った場合のみです。

孫を養子にしていない場合や、孫が代襲相続人でもない場合には、生命保険金の非課税枠は適用されないため注意しましょう。

また、生命保険の契約者が祖父、被保険者が祖母などと、契約者と被保険者が異なる場合、保険金受取人の変更には被保険者の同意が必要です。

契約者だけの意思では保険金受取人の変更はできないため注意しましょう。

一時払いの終身保険で生命保険を掛けた場合、確実に保険金受取人へ財産を残せます。

しかし、保険金で支払ったお金を使えなくなってしまうので、手元に十分な老後の生活費も残したうえで生命保険へ加入するようにしてください。

孫に財産を譲る方法4.生前贈与をおこなう

生前贈与をおこなうことでも孫に財産分与することができます。

遺言書を記入することでも孫に財産を残せますが、遺留分があるため希望どおりに孫が財産を取得できるとは限りません。

そのため、祖父母が生きている間に孫に対して生前贈与をおこなうことによって、確実に孫に対して希望通りの財産分与をおこなうことができます。

孫へ財産を贈与する方法には、以下3つの方法があります。

  • 暦年贈与をおこなう:年間110万円までの非課税枠の範囲内で毎年贈与をおこなう
  • 教育資金や結婚・子育て資金を贈与する:教育資金や結婚資金を孫へ贈与すること利用できる非課税枠を活用する
  • 住宅取得等資金を贈与する:孫へ住宅取得等資金を贈与することで利用できる非課税枠を活用する

年間110万円の非課税枠の範囲内で毎年少しずつ孫へ財産を移していく方法のほか、教育資金、結婚資金、住宅取得資金として贈与することによって非課税枠が用意されています。

非課税枠 利用する条件
教育資金 1,500万円
(学校以外:500万円)
・受贈者が満30歳未満
・受贈者の前年合計所得が1,000万円以下
結婚・子育て資金 1,000万円
(結婚資金:300万円)
・受贈者が満18歳以上50歳未満
・受贈者の前年合計所得が1,000万円以下
住宅取得資金 ・省エネ等住宅:1,000万円
・それ以外の住宅:500万円
・贈与者が直系尊属
・受贈者が贈与年の1月1日時点で満18歳以上であること
・受贈者の贈与を受けた年の合計所得が原則2,000万円以下
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の金額を充てて住宅用の家屋の新築及び居住をする
・受贈者1人につき1回だけ適用が可能

贈与の非課税枠が適用される条件などをよく理解して、適切に非課税枠を活用しましょう。

【生前贈与をおこなう場合のメリット・デメリット】
メリット ✔確実に孫へ財産を残せる
✔非課税枠を利用できる
デメリット ✔非課税枠を超えた場合は高額な贈与税が発生
✔​​相続開始3年前の贈与については相続財産に加算される

暦年贈与によって贈与した場合、相続開始(祖父母の死亡時)から3年以内の贈与は相続財産に加算されます。

また、法改正によって2024年1月以降の贈与や、加算期間が徐々に延長され、最長7年間の贈与が加算されるようになるため注意しましょう。

生前贈与で孫に財産を譲る場合の流れ

生前贈与によって孫へ財産を譲る場合は、以下の流れでおこないます。

  1. 贈与契約書を作成する
  2. 贈与者(祖父母)から受贈者(孫)へ資産を移す
  3. 贈与税の申告および納税をする

契約書を作成しなくても、贈与をおこなうことは可能です。

しかし、相続の際に法定相続人や税務署などに対して贈与がおこなわれたことを証明する必要がある場面も多いため、贈与契約書は作成しておいたほうがよいでしょう。

贈与契約書は、次の点に注意して作成してください。

  • 贈与する孫が未成年者の場合は親権者が署名押印する

また、次の点はある方が好ましいですが、ここまで要求されることはあまりありません。

  • 日付・住所・名前を自筆する
  • 実印を押印し印鑑証明書を添付する

不動産を贈与する場合には所有権移転登記が必要です。

また、預金を贈与する場合には、贈与の証拠が残る銀行振込にておこなうようにしてください。

なお、振込の場合には「名義預金」と判断されないように注意しなければなりません。

名義預金とは、口座の名義人と実際のお金の管理人が異なると判断されてしまう財産のことをいいます。

名義預金と判断されてしまうと、名義預金も相続財産に含まれてしまうこともあります。

名義預金と判断されないためには「祖父母が使用する印鑑とは異なる印鑑で通帳を作る」「通帳やカードは孫本人や親が管理する」などの配慮をする必要があります。

また、次のケースでは贈与後に確定申告が必要です。

  • 110万円を超える暦年贈与をおこなった場合
  • 住宅資金の贈与を受けた場合

住宅資金の贈与には非課税枠がありますが、確定申告をおこなわなければ非課税枠は適用されないため注意しましょう。

生前贈与で孫に財産を譲る場合のポイント

教育資金と結婚・子育て資金の贈与の非課税枠を使用して孫へ財産を贈与する場合、専用の口座を作成しなければならない点に注意しましょう。

結婚・子育て資金の贈与をおこなう場合、受贈者が金融機関で「結婚・子育て資金口座」を作成しなければなりません。

教育資金の贈与をおこなう場合には、受贈者が金融機関で「教育資金口座」を作成します。

この口座へ振込を受ける形で贈与をおこなわなければなりません。

口座の動きや残高を金融機関が把握し、金融機関が税務署へ申告手続きをおこないます。

また、暦年贈与をおこなう場合、年110万円を超える部分については贈与税が課税されます。

この際、受贈者の年齢によって税率や控除額が次のように異なるため注意してください。

受贈者が20歳以上の場合
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
受贈者が20歳未満の場合
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

孫に財産を譲る方法5.死因贈与をおこなう

死因贈与とは、生前に「自分が死亡したら受贈者へ財産を贈与する」ということを生前に契約しておくことです。

遺言によって遺贈する方法と似ていますが、遺言の場合には遺言書に不備があると無効になることがあります。

しかし、死因贈与であれば孫に希望どおりの金額を贈与できる可能性が高まります。

また、遺言には合意は必要ありません。

そのため、祖父母と孫の間に合意がなくても祖父母が「孫に財産を渡したい」と考えれば、遺言にその旨を記載することで遺贈が可能です。

一方、死因贈与は当事者同士の合意が必要ですので、受贈者と贈与者の双方が贈与に合意することによって成立します。

【死因贈与をおこなう場合のメリット・デメリット】
メリット ✔孫に確実に財産を贈与できる
✔不動産の場合は仮登記で受贈者の権利を保全できる
✔負担付死因贈与であれば受贈者の権利を保全できる
✔生前贈与よりも税負担が軽い
デメリット ✔不動産を死因贈与した場合不動産取得税と登録免許税が、遺贈よりも高くなる
✔遺留分侵害額請求の対象になる

不動産を贈与する場合には、対象の不動産に仮登記ができるため、贈与者である祖父母が死亡した時に孫へ登記を移せます。

また死因贈与には贈与税ではなく相続税が適用されるため、贈与税が適用される生前贈与よりも税負担が軽くなります。

「祖父母の介護をする代わりに財産を受け取る」というような負担付贈与をおこなう場合、贈与者は贈与の撤回ができません。

受贈者は負担を履行すれば確実に贈与を受けることができるため「介護をしたのに贈与を受けられなかった」ということはありません。

しかし、不動産を死因贈与する場合には、名義変更時に発生する不動産取得税と登録免許税の税率は遺贈よりも高くなってしまう点はデメリットです。

また、死因贈与であっても法定相続人には遺留分を主張する権利があるため、死因贈与によって法定相続人に遺留分を超える財産の贈与を受けた場合、法定相続人が「遺留分侵害額請求」をおこなう可能性があります。

死因贈与で孫に財産を譲る場合の流れ

  1. 贈与の対象の資産や金額を決める
  2. 死因贈与契約書を作成する
  3. (不動産の贈与の場合)始期付所有権移転仮登記をおこなう

契約は口頭でも成立しますが、死因贈与の話について法定相続人が知らないのであればトラブルになる可能性が非常に高いといえます。

そのため、必ず死因贈与契約書を作成しておきましょう。

契約書には決まった書式はありませんが、以下のポイントを押さえて作成してください。

  • 「誰が・誰に・何を」贈与するのか明確にする
  • 実印で作成する
  • 公正証書で作成する
  • (不動産の贈与の場合)仮登記申請を承諾した旨を記載する

死因贈与で孫に財産を譲る場合のポイント

死因贈与で孫に財産を譲際には、以下のポイントを押さえたうえで手続きしてください。

  • 孫と祖父母の合意が必要
  • 負担付贈与の場合は贈与を撤回できない
  • 法定相続人には遺留分が発生する
  • 相続税が発生する
  • 不動産の場合は遺贈よりも税金が高くなる

また、死因贈与は贈与者と受贈者の契約行為ですので、基本的には受贈者が18歳以上の成人である必要があります。

なお、受贈者が未成年の場合には親権者の同意を得れば死因贈与が可能です。

孫に財産を譲る方法6.家族信託を活用する

家族信託とは、祖父母などが老後に備えてあらかじめ信頼できる家族に、財産の管理や処分を任せる制度のことです。

財産を処分管理する権利(受託者)と、財産から得られる利益を享受する権利(受益者)に分けられます。

たとえば、財産の管理をおこなう受託者を子どもに、受益者を孫とすることによって、仮に祖父母が認知症になったとしても、子どもが祖父母に代わって孫に利益を与え続けられます。

また、家族信託は二次相続以降の受益権者を定められるという特徴があります。

遺言であれば一次相続までしか受益権者を指定できないため、その財産を相続人や受贈者がどのように処分しようと自由です。

しかし家族信託であれば、一次相続者の子どもの次の相続者も指定できるため、孫に確実に財産を渡すことが可能です。

【家族信託を活用する場合のメリット・デメリット】
メリット ✔遺産分割協議が不要
✔贈与税と不動産取得税がかからない
デメリット ✔祖父母の死亡時に相続税が発生
✔遺留分侵害額請求をされる可能性がある

あらかじめ受託者と受益者を決めておくことで、祖父母が亡くなったときに「どの財産を誰が相続するのか」という遺産分割協議で揉めるような心配はありません。

また、不動産を家族信託とする場合には贈与税と不動産取得税は発生しない点もメリットといえます。

ただし、祖父母が死亡した時には相続が発生するため、相続税の対象になります。

家族信託の財産についても法定相続人には遺留分があるため、遺留分侵害額請求がおこなわれ、高額な遺留分を法定相続人にから請求される可能性があります。

家族信託で孫に財産を譲る場合の流れ

  1. 祖父母や親や孫で家族信託の内容を話し合い決める
  2. 話し合いで決めた内容に沿って契約書を作成する
  3. 財産の名義を受託者へ移す
  4. (現金や預金を信託財産にする場合) 財産管理のための専用口座を作成する

家族信託の契約書は公正証書で作成します。

その際に公証人役場へ以下の書類を持参してください。

  • 本人確認資料
  • 信託する財産に関する資料
  • 戸籍

不動産の場合には所有権を受託者へ移転、現金・預金の場合には専用口座を作成し、その中で管理しなければならない点に注意しましょう。

家族信託で孫に財産を譲る場合のポイント

家族信託で孫に財産を譲る際には、以下のポイントが重要です。

  • 信託監督人を選任しておく
  • 専門家のアドバイスにはコストがかかる
  • 専門家へ相談する

孫を受益者とする場合、受託者が受益者の利益を損ねないか監督する存在がいたほうが安心です。

その場合は、信託監督人を選任しておくことによって確実に受益者である孫が財産から生じる利益を受け取れます

受託者の不正を排除できる有効な方法ですので、弁護士などを選任しておくほうが安心でしょう。

また、孫を受益者とした家族信託を組成する場合、信託期間が長期にわたります。

長い期間に生じるあらゆる可能性やリスクを考慮して適正な家族信託を組成するには専門家のアドバイスが必要ですが、アドバイスを受けて組成するにはコストがかかります。

また、家族信託は制度開始からまだ10年ほどしか経っていないため、専門家のアドバイスを受けながら利用したほうがよいでしょう。

法律でもグレーゾーンになっている部分が多く、場合によっては贈与に該当してしまい多額の贈与税の支払いが必要になることもあります。

専門家のアドバイスを受けながら家族信託の利用を検討してください。

さいごに|孫への遺産相続を検討しているなら弁護士に相談を!

孫へ財産分与をする方法はいくつもありますが、共通している点は祖父母が元気なうちにしっかりと準備をしておくということです。

どの方法によって孫へ財産分与をおこなうべきなのかは、譲りたい財産の種類、財産の総額、法定相続人の数、法定相続人と孫との関係などによっても異なります。

また、家族信託を利用する場合には制度が非常に複雑ですので、一般個人が適切に利用するのは難しいのが実情です。

孫への財産分与を検討しているのであれば、とにかく早めに弁護士などの専門家へ相談し、祖父母が元気で認知がしっかりしている間に準備してください

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監修記事
江戸川葛西相続法律事務所
菊地 正志 (第一東京弁護士会)
当職は、税理士、公認会計士準会員の資格をもつ、会計に強い弁護士です。相続で株式や不動産の扱いにお困りの方や、遺産分割協議でもめている方は、当職へご相談ください。
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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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