判断能力が低下した人の生活を支える「成年後見制度」は、財産管理や契約の代行をおこなうことで、安心した暮らしを守る重要な仕組みです。
しかし、「生活保護を受けている人でも利用できるのか」と不安を抱く人も少なくありません。
実際、成年後見制度の利用には家庭裁判所での手続きや専門家への報酬など、一定の費用が発生するため「費用はどうすればいいのか」と悩む方は多いでしょう。
本記事では、生活保護を受給している方でも成年後見制度を利用できるのか、その条件や申立ての流れ、費用を抑えるための支援制度についてわかりやすく解説します。
制度を正しく理解すれば、経済的な不安を抱えずに安心してサポートを受けられるので、ぜひ最後まで参考にしてください。
生活保護費を受給している人でも成年後見人は付けられる
生活保護を受けている人でも、成年後見制度を利用して後見人を付けられます。
成年後見制度は、判断能力が低下した人の財産や生活を守るための仕組みであり、収入や資産の多寡は利用可否に影響しません。
なお、後見制度の申立てや報酬には費用がかかりますが、自治体の助成制度や法テラスの民事法律扶助制度を活用すれば、自己負担を大幅に軽減できます。
「生活保護を受けているのに成年後見何て利用できるのかな?」と不安な方も、まずは一度助成制度や相談先を確認し、利用できるかどうか相談することから始めてみましょう。
生活保護受給者が成年後見制度の申立てをする際に役立つ制度
成年後見制度の申立てには、診断書料や鑑定費用、郵券代など一定の費用がかかります。
生活保護を受けている人にとって、この負担が制度利用の障壁となることがありますが、費用を軽減できる公的支援制度が整備されています。
ここでは、主に利用できる3つの制度を紹介します。
1.自治体の報酬助成制度|申立て費用を軽減できる
各自治体では、生活保護受給者をはじめとする経済的な理由で成年後見制度の利用が難しい人を対象に、「成年後見制度利用支援事業」を実施しています。
成年後見制度利用支援事業では、家庭裁判所に提出する際の申立て費用や医師の鑑定費用を助成してもらえるほか、後見人に支払う報酬の一部を補助してもらえる場合もあります。
助成内容や上限額は自治体によって異なりますが、一般的には印紙代・郵券代・医師鑑定費用といった申立て費用や、後見人への月額報酬が対象です。
なお、助成を受けるには、自治体の高齢福祉課や社会福祉課などに申請し、家庭裁判所の審判書や支出明細書を提出します。
自治体によって申請期限や書式が異なりますし、そもそも助成の範囲や要件が自治体ごとに大きく異なるため、手続きを始める前に必ず自治体へ確認しておくことが大切です。
2.法テラスの民事法律扶助制度|弁護士費用などを軽減できる
法テラスでは、経済的に余裕のない人に対して、法律手続きに必要な費用を立て替える「民事法律扶助制度」を提供しています。
成年後見制度の申立てを弁護士や司法書士に依頼する際に、民事法律扶助制度を利用すれば、専門家への報酬のほか、申立てに必要な印紙代や郵券代、医師による診断書料・鑑定費用などを一時的に立て替えてもらうことが可能です。
ただし、診断書料は立替対象外の運用もあるため個別に確認が必要です。
立て替えた費用は後日、少額ずつ分割で返済するのが原則ですが、生活保護受給者の場合は返済が猶予・免除されるケースも少なくありません。
制度を利用するためには、収入や資産が一定基準を下回っていることが条件となりますが、生活保護受給者であれば原則としてこの要件を満たすとされています。
ただし、利用の際は申請や審査を経る必要があるので、余裕をもって手続きを進めることが大切です。
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生活保護受給者が成年後見人を付けるための3つの条件
生活保護を受けている人が成年後見制度を利用する場合も、基本的な条件はほかの利用者と同じです。
ここでは、制度を利用するために満たすべき3つの要件を順に確認します。
1.被後見人の方の判断能力が低下している必要がある
成年後見制度を利用できるのは、認知症・知的障害・精神障害などが原因で、契約内容を理解したり財産を管理したりするのが難しい状態の人です。
家庭裁判所は、医師の診断書などをもとに、本人がどの程度判断できるかを確認します。
判断能力の程度に応じて、ほとんど判断できない「後見」、著しく不十分な「保佐」、一部不十分な「補助」の3区分があり、必要な支援の範囲が決まる仕組みです。
後見人が付くことで、悪質商法や不利な契約から本人を守り、福祉サービスの手続きもスムーズに進められるようになります。
2.家庭裁判所に対して後見開始の申立てをする必要がある
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見開始の申立てをおこなわなければなりません。
成年後見制度は法律上の手続きに基づくため、家庭裁判所が後見人を選任して初めて制度が開始されます。
申立てできるのは、本人・配偶者・4親等以内の親族で、身寄りがない場合は市区町村長が申立てを代行可能です。
申立て時には、診断書や戸籍謄本、財産目録などの書類を家庭裁判所に提出し、審理の際には本人や親族への面談や医師による鑑定がおこなわれる場合もあります。
申立てが認められると、家庭裁判所の審判により成年後見人が正式に選任されます。
3.家庭裁判所に後見制度の利用を認めてもらう必要がある
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所が後見制度の利用を相当と認めることが条件です。
裁判所は、本人の判断能力や支援の必要性、申立ての理由などを総合的に判断して、後見開始の可否を決定します。
後見人は家庭裁判所が選任し、親族が選ばれる場合もあれば、弁護士や司法書士などの専門職が指定されることもあります。
選任後に後見人がおこなうのは、本人の財産管理や契約手続きなどの代行や、定期的な家庭裁判所への報告です。
このように、生活保護を受給しているかどうかは関係なく、本人に支援が必要と認められれば成年後見制度を利用可能です。
制度の利用には手続きが必要ですが、専門家に相談しながら進めることで安心して申立てができます。
【参考記事】成年後見人の選任手続きと流れ|必要書類や費用を詳しく解説
専門家を生活保護受給者の後見人として付けることはできる?
生活保護を受給している人でも、弁護士や司法書士などの専門職を成年後見人に選任してもらうことは可能です。
家庭裁判所は、親族の有無や支援の難易度を考慮し、必要に応じて専門職後見人を選任します。
専門職後見人の報酬は通常、本人の財産から支払われますが、生活保護受給者は自治体の報酬助成制度を利用することが可能です。
報酬額はまず家庭裁判所が審判によって決定し、その後、自治体が家庭裁判所の審判をもとに報酬を一部または全額負担するため、本人の負担はほとんどありません。
さいごに|生活保護費を受給していても成年後見制度は活用できる!
生活保護を受給している人でも、成年後見制度を利用して安心した生活を送ることができます。
制度の利用可否は収入ではなく、本人の判断能力や支援の必要性によって決まり、経済状況は制限になりません。
また、申立てにかかる費用は、自治体の助成制度や法テラスの民事法律扶助制度を活用すれば、ほとんど自己負担なく進められます。
成年後見制度は、本人の権利と生活を守るための大切な仕組みです。
生活保護を受けているからといって遠慮する必要はありません。
不安を感じたら早めに専門家へ相談し、安心して暮らせる環境づくりを進めましょう。
