誹謗中傷の被害に遭い、発信者開示請求をしたいと考えても、費用がどれくらいかかるのかが気になって踏み出せない方は多いでしょう。
弁護士なしで自力で任意請求をする場合は、数百円程度となるのが一般的です。
しかし、任意請求では望む結果が得られないケースも少なくありません。
裁判手続による発信者情報開示請求にかかる費用は、裁判所に納める費用と弁護士費用に大別されます。
手続きの種類にもよりますが、総額で30万円以上かかるケースが多いです。
本記事では、発信者情報開示請求にかかる費用の内訳・相場を解説します。
費用を抑える方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
発信者情報開示請求にかかる裁判所費用の内訳・相場
発信者情報開示請求では、裁判所へ納める費用が発生します。
費用の内訳・相場は、手続きごとに異なります。
発信者を特定する手続きは、以下の二つです。

2022年10月施行の改正法で新設された発信者情報開示命令手続では、既設の発信者情報開示請求手続よりも費用が抑えられています。
| 手続きの種類 | 費用(目安) | 費用合計(目安) | |
|---|---|---|---|
| 既設 | ①コンテンツプロバイダに対する仮処分申立て | 約10万円~約30万円 | 約12万円~約32万円 |
| ②アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求 | 約2万円 | ||
| 新設 | 発信者情報開示命令申立て | 約3,000円~約4,000円 | 約3,000円~約4,000円 |
各手続きにかかる費用を詳しく解説します。
仮処分申立てにかかる費用|約10万円~約30万円
コンテンツプロバイダに対する仮処分申立てにかかる費用の相場は、約10万円〜約30万円です。
内訳は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 1件につき2,000円 |
| 予納郵券(送達用郵便代) | 数千円程度(裁判所によって異なる) |
| 担保金 | 10万円〜30万円程度 |
| 合計(概算) | 約10万円~約30万円 |
債権者の主張が認められると、担保決定がなされます。
債権者は、仮処分決定発令のために裁判所が決定した金額を担保金として納めなければなりません。
担保金とは、仮処分命令が却下された場合の損害賠償に備えて供託する金銭です。
発信者情報開示にかかる担保金の額は、10万円〜30万円となることが多いです。
担保金は、事件終了後に裁判所から担保取消決定や担保取戻しの許可を得ると、返還を受けられます。
【補足】発信者情報消去禁止の仮処分にも別途費用が発生する
アクセスログ(IPアドレスおよびタイムスタンプ)の開示後は、アクセスプロバイダに対してログ保存を依頼します。
次のステップである発信者情報開示請求訴訟は、手続終了まで数ヵ月を要するケースが多いためです。
アクセスプロバイダに任意でログ保存を申し出る方法もありますが、発信者情報開示請求書(テレサ書式)を利用するのが一般的です。
テラサ書式による請求に応じてもらえない場合、ログをより完全に保存したい場合には、発信者情報消去禁止の仮処分を申し立てます。
費用の目安は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 一申立てにつき2,000円 |
| 予納郵券(送達用郵便代) | 数千円程度(裁判所によって異なる) |
| 担保金 | 10万円〜30万円程度 |
| 合計(概算) | 約10万円~約30万円 |
発信者情報開示請求訴訟(民事裁判)にかかる費用|約2万円
アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 訴訟費用(収入印紙) | 1万3,000円 |
| 予納郵券(送達用郵便代) | 数千円程度(裁判所によって異なる) |
| 合計(概算) | 約2万円 |
非財産上の請求の訴額は160万円とみなされるため、収入印紙の額は一律1万3,000円です。
発信者情報開示命令(非訟手続)を利用した場合の費用|約5,000円~約6,000円
発信者情報開示命令にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
| 相手方 | 内訳 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| コンテンツプロバイダ | 発信者情報開示命令申立(収入印紙代) | 1,000円 |
| 提供命令申立(収入印紙代) | 1,000円 | |
| 予納郵券 | レターパックライト(430円)×相手方の数(裁判所による) | |
| アクセスプロバイダ | 発信者情報開示命令申立(収入印紙代) | 1,000円 |
| 消去禁止命令申立(収入印紙代) | 1,000円 | |
| 予納郵券 | レターパックライト(430円)×相手方の数(裁判所による) |
申立手数料(収入印紙)は、開示命令・提供命令・消去禁止命令の申立てごとに、各1,000円を納付する必要があります。
担保金は不要です。
発信者情報開示請求手続より、発信者情報開示命令手続のほうが費用負担が軽減されます。
| 発信者情報開示命令手続を利用する場合、削除に関する裁判手続を別途申し立てる必要がありますが、仮処分であれば1つの申立てで開示と削除の両方を求めることが可能です。 また、開示命令手続においてコンテンツプロバイダの迅速な対応が見込まれない場合には、仮処分手続を利用したほうがよいケースもあります。 何が適切な方法かは事案によって異なるため、弁護士に相談のうえ、個々の事情に応じた最適な方策を検討してください。 |
【関連記事】発信者情報開示請求で誹謗中傷を止める!2022年10月から始まった新しい手続きとは?
発信者情報開示請求に係る弁護士費用の相場
弁護士に依頼した場合、裁判所費用とは別に弁護士費用が発生します。
手続きごとの費用概算は、以下のとおりです。
| 手続きの種類 | 費用合計の目安 | |
|---|---|---|
| 発信者情報開示請求 | 任意請求 | 5万円~50万円程度 |
| 仮処分申立て | 20万円~60万円程度 | |
| 訴訟提起 | 20万円~60万円程度 | |
| 発信者情報開示命令 | - | 30万円~60万円程度 |
弁護士費用は、法律相談料・着手金・報酬金・実費・日当で構成されるのが一般的です。
費用は法律事務所ごとに異なります。
法律相談料|30分5,000円〜10,000円程度
法律相談料は、30分5,000円〜10,000円程度が目安です。
初回相談を無料で対応する法律事務所も多くあります。
法律相談料は、タイムチャージ制をとる事務所が多いです。
正式に事件を依頼した場合には、受任までの法律相談料が発生しない事務所もあります。
着手金|10万円〜30万円程度
着手金の相場は、以下のとおりです。
| 手続きの種類 | 着手金の目安 | |
|---|---|---|
| 発信者情報開示請求 | 任意請求 | 0円〜20万円 |
| 仮処分申立て | 10万円〜30万円 | |
| 訴訟提起 | 10万円〜30万円 | |
| 発信者情報開示命令 | - | 20万円~30万円 |
着手金は、依頼した弁護士が事案に着手する対価であり、結果にかかわらず返金されないのが原則です。
事務所によっては、着手金なしや分割払いに対応している場合もあります。
ただし、見積もりを取る際は、着手金だけでなく報酬金・実費を含めた総額で比較するのが重要です。
報酬金|10万円〜30万円程度
報酬金の相場は、以下のとおりです。
| 手続きの種類 | 方法 | 報酬金の目安 |
|---|---|---|
| 発信者情報開示請求 | 任意請求 | 5万円〜30万円 |
| 仮処分申立て | 10万円〜30万円 | |
| 訴訟提起 | 10万円〜30万円 | |
| 発信者情報開示命令 | - | 10万円~30万円 |
報酬金は、発信者の特定など一定の成果が得られた場合に発生する成功報酬です。
何をもって成功とするかは、事務所ごとに異なる場合があります。
契約前にどの段階でいくらの報酬金が発生するかを確認しましょう。
複数の投稿者を対象にする場合は、件数に応じて報酬金が加算されることもあるため、投稿数が多い場合は事前に見積もりを確認してください。
実費・日当|数万円程度
実費や日当として、数万円程度がかかる場合があります。
実費は、申立手数料・予納郵券・担保金などの裁判所費用のほか、書類の郵送代や通信費などで構成されます。
日当は、弁護士が遠方の裁判所に出廷する際などに発生する費用で、半日あたり3万円〜5万円程度が目安です。
実費・日当は手続きが長引くほど増加する傾向があります。
事務所によって実費の精算方法が異なるため、契約書や説明書でも確認しておきましょう。
開示請求が費用倒れになるリスクはある?
開示請求に要した費用が、相手から回収できる金額を上回る可能性はあります。
以下では、費用倒れが起きやすいケースの特徴と、費用対効果の判断基準を紹介します。
費用倒れが起きやすいケースの特徴
費用倒れが起きやすいケースの典型例は、以下のとおりです。
- 権利侵害の程度が軽微で獲得できる慰謝料が低い
- 発信者に慰謝料を支払う十分な資力がない
- 開示請求の対象とする投稿が多い
名誉毀損事案と比べ、侮辱事案で認められる慰謝料は数万円〜十数万円にとどまるケースが多いです。
数十万円の開示費用を回収できない可能性があります。
また、発信者が、無職や未成年で支払い能力がない場合は、慰謝料の回収が困難になる場合もあります。
開示対象とする投稿が多い場合、その分かかる弁護士費用も多くなるため、費用倒れになってしまうこともあります。
ただし、事務所によっては開示対象の投稿が多い方が1件あたりの費用は割安になることもあるため、事前に確認しておきましょう。
慰謝料・損害賠償金の相場と費用の比較
インターネット上の誹謗中傷が名誉毀損や侮辱にあたる場合の慰謝料の相場は、以下のとおりです。
| 被害の種類 | 慰謝料の目安 | |
|---|---|---|
| 名誉毀損事案 | 個人 | 10万円〜50万円程度 |
| 法人 | 50万円〜100万円程度 | |
| 侮辱事案 | 個人 | 数万円〜十数万円程度 |
弁護士に依頼して発信者情報開示請求をおこなう場合、総額で30万円~60万円以上を要するケースが多いです。
そのため、権利侵害の程度が軽微な場合、獲得できる慰謝料額が低くなり、開示請求にかかった費用を回収するのが難しいケースもあります。
ただし、開示請求にかかった費用や弁護士費用の一部が損害として認められる可能性があります。
費用倒れのリスクを事前に見極める判断基準
費用倒れのリスクを見極めるポイントは、以下の4点です。
- 権利侵害の種類(名誉毀損か侮辱かなど)
- 投稿の悪質性・被害の程度
- 相手の属性(個人か法人か)
- 発信者情報が開示される見込み
上記1〜3は回収できる慰謝料の金額に、4はそもそも発信者を特定できるかどうかに影響します。
たとえば、投稿が悪質で社会的評価の低下が著しいケースでも、任意の開示請求が通る見込みが高ければ、費用倒れを回避できる可能性があります。
費用面が心配な場合は、無料相談を活用のうえ、弁護士に費用と回収見込みの見通しを確認するのがおすすめです。
開示請求の費用を抑えるための方法
開示請求の費用を少しでも抑えるには、対象とする投稿の絞り込みと弁護士選びという2つのアプローチがあります。
以下で詳しく解説します。
開示する投稿を絞り込んで費用を削減する
開示請求の対象を権利侵害の明白性が高いものに絞ると、費用を削減できる可能性があります。
開示請求の対象とする投稿が多くなるほど、手続費用も弁護士費用も増加します。
全ての投稿を対象にするのではなく、損害賠償請求に結びつく可能性が高い投稿に絞りましょう。
絞り込みの基準は、①開示の見込みが高いか、②投稿と損害との因果関係を立証できるかの2点です。
判断が難しい場合は、無料相談を活用して弁護士に見極めてもらうのがおすすめです。
着手金なし・分割払いに対応している事務所を選ぶ
着手金なしや分割払いに対応している法律事務所を選ぶことで、初期費用の負担を軽減できる可能性があります。
ただし、着手金が安い事務所が、総費用も安いとは限りません。
完全成功報酬型の事務所では、成功報酬の割合が高めに設定されているケースもあります。
そのため、着手金・報酬金・実費を含めた総額で比較するのが重要です。
無料相談を活用すれば、費用を抑えながら依頼できる事務所を見つけやすくなります。
分割払いに対応しているかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。
開示請求の費用は相手に請求できる?
開示請求にかかった手続費用や弁護士費用の一部は、相手に請求できる可能性があります。
以下では、費用を相手に請求できるケースや条件を解説します。
弁護士費用を相手に請求できるケース
発信者情報開示請求では、投稿者を特定するための調査費用として、一定の費用が相当因果関係にある損害と認められる可能性があります。
発信者情報開示手続には専門的な知識や経験が不可欠であり、被害者自らが対応するのは困難なためです。
過去の裁判例の傾向を踏まえると、調査費用として慰謝料額と同額程度、訴訟提起のための弁護士費用として慰謝料額と調査費用の合計の1割程度の金額が認められるのが一般的です。
発信者情報開示請求だけでなく、削除請求の仮処分にかかった弁護士費用も相当因果関係のある損害と認めた裁判例もあります。
費用請求が認められるための条件
発信者情報開示請求にかかった弁護士費用は、次のような事情があると、損害として認められやすくなります。
- 投稿が名誉毀損・名誉感情侵害・著作権侵害などの違法な権利侵害にあたる
- 投稿者を特定しなければ、損害賠償請求や差止めができず、開示手続が必要不可欠だった
- 開示請求や開示命令の申立て・保全手続などに緊急性があり、被害者本人だけで進めるのが困難だった
- 弁護士費用の支払義務が発生していることを契約書・請求書・領収書などで立証できる
- 請求額が不相当に高額ではなく、社会通念上相当な範囲にとどまる
- 開示に成功した投稿と費用との関係が明確で、不法行為との相当因果関係が認められる
開示請求の必要性や因果関係が弱い場合は、一部のみ認容、または相当因果関係にある損害が否定されるケースもあります。
発信者情報開示請求を弁護士に依頼するメリット
発信者情報開示請求は、専門知識を要する手続きです。
弁護士に依頼すると、手続きの負担を減らしながら、成功率を高められます。
弁護士に相談すると、書き込みが権利侵害にあたるかを確認してもらえます。
訴訟に向けてどのような証拠を集めるべきかについても、的確なアドバイスを受けられるでしょう。
裁判所への申立書類の作成は、法律の知識がない方には大きな負担になります。
ログの保存期間が過ぎると、投稿者の特定が困難です。
手続きに慣れた弁護士に依頼すれば、書類の不備による遅れを防ぎ、スムーズに手続きを進められるでしょう。
発信者の特定後は、損害賠償請求も弁護士に任せられます。
適正な請求額の算定から相手方との交渉まで、一貫して対応してもらえます。
投稿者と直接やり取りする必要もありません。
開示請求の費用に不安があるなら「ベンナビIT」で弁護士に相談
費用の不安を理由に、開示請求への一歩を踏み出せずにいる方には、「ベンナビIT」での弁護士探しをおすすめします。
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掲載事務所の多くが初回相談無料に対応しており、費用の見通しを確かめてから依頼先を選べます。
開示請求の費用総額は、案件の複雑さや依頼する弁護士によって変わります。
複数の弁護士に費用感を聞き比べてから判断するのが、費用倒れを防ぐ現実的な方法です。
ログが消えると特定が不可能です。
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まずは「ベンナビIT」で弁護士を探し、費用の見積もりと見通しを確認してみてください。
開示請求の費用に関するよくある質問
本章では、発信者情報開示請求の費用について、よく寄せられる疑問にQ&A形式で回答します。
Q.開示請求の費用は個人と法人で異なりますか?
裁判所に納める手続費用は、個人・法人で基本的に同じです。
ただし、弁護士費用は案件の複雑さによって変わります。
法人が被害を受けた場合、売上損失・取引機会の喪失・信用損害など、複数の損害項目の立証が必要です。
手続きが複雑になりやすい分、個人の案件より弁護士費用が高額になる傾向があります。
費用の見通しは事案によって異なるため、まずは無料相談を活用して弁護士に確認するのがおすすめです。
Q.開示請求が不成功に終わったら費用は返金されますか?
不成功に終わった場合でも、費用の全額が返金されることはありません。
弁護士への着手金は、結果にかかわらず返金されないのが原則です。
申立手数料や郵券などの実費も、手続きに使われた費用であるため、基本的に戻りません。
一方、担保金は扱いが異なります。
発信者情報開示の仮処分で裁判所に納める担保金は、後日返還されるのが一般的です。
ただし、自動で返ってくるわけではありません。
返還を受けるには、裁判所で担保取消しの手続きをおこなう必要があります。
また、仮処分を取り下げた場合でも、全額が戻るとは限りません。
相手方に損害が生じ、その補填が必要と判断されたときは、担保金の一部または全部が返還されない可能性があります。
Q.開示請求の難易度が高く費用倒れになりやすいサイトはありますか?
海外に拠点を置くサイトやSNSサービスは、開示請求のハードルが高くなりやすい傾向があります。
書類の取り寄せや翻訳、管轄の検討が必要になる場合もあり、国内サイトより時間と費用がかかりやすいためです。
また、爆サイや雑談たぬきといった匿名掲示板は、発信者特定に必要なログの保存期間が短い傾向があります。
対応が遅れると、費用をかけて開示請求をしても相手を特定できない場合があります。
【関連記事】爆サイへ開示請求をおこなう流れとは?有効期間や費用・慰謝料の金額を弁護士が解説
まとめ
発信者情報開示請求にかかる費用は、裁判所費用と弁護士費用を合わせて30万円〜60万円以上になるケースが多いです。
手続きの種類や依頼する法律事務所によって、総額は大きく変わります。
着手金・報酬金・実費を含めた総額で比較するのが重要です。
費用倒れを防ぐには、権利侵害の程度や発信者の資力など、回収見込みを事前に弁護士へ相談して確かめておきましょう。
対象とする投稿を絞り込むことも、費用削減につながります。
開示請求に注力している弁護士を探すなら、「ベンナビIT」を活用してみてください。
初回相談無料の法律事務所も多く、費用の見通しを確かめてから依頼先を選べます。
まずは無料相談を活用して、費用の見通しと回収見込みを確認してみましょう。
