- 「突然解雇を言い渡されたけれど、本当に正当な解雇なのだろうか…」
- 「会社と争いたい気持ちはあるが、裁判までは大げさにしたくない」
このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
不当解雇が疑われる場合、労働審判を利用することで、比較的短期間で会社とのトラブル解決を目指せる可能性があります。
ただし、労働審判は限られた回数の期日のなかで主張や証拠を整理しなければならないため、準備不足のまま進めると不利になるおそれもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、不当解雇を労働審判で争う場合の基本的な流れを整理したうえで、有利に進めるために押さえておきたいポイントや注意点をわかりやすく解説します。
会社からの解雇に納得できず、適切に対応したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不当解雇は労働審判で争うことができる
不当解雇と感じた場合、労働者は労働審判を利用して、会社に対して法的に争うことが可能です。
労働審判とは、解雇や賃金不払いなどの労働関係のトラブルを、裁判よりも迅速かつ実情に即して解決することを目的とした裁判所の手続きです。
裁判官1名と労働問題に詳しい労働審判員2名で構成される労働審判委員会がおこない、原則として3回以内の期日で審理を終える仕組みとなっています。
また、訴訟とは異なり非公開で進められるため、当事者のプライバシーにも配慮されているのが特徴です。
実務上は、まず話し合いによる解決が試みられ、合意に至れば調停が成立します。
話し合いがまとまらない場合には、事案の実情を踏まえた労働審判が示され、不服がある場合には異議申立てにより訴訟へ移行することも可能です。
労働審判で不当解雇が認められた場合の解決金の相場・目安
労働審判で不当解雇が認められた場合、解決金の支払いを内容とする調停が成立するケースが多くなっています。
解決金の金額に明確な基準はなく、解雇の正当性や労働者の受けた不利益の程度などを踏まえて判断されます。
具体的な相場の目安は、以下のとおりです。
| 解雇の内容 | 解決金の目安 |
|---|---|
| 解雇に正当な理由がある場合 | ~賃金の1ヵ月分程度 |
| 解雇の正当性がない場合 | 賃金の3ヵ月分~6ヵ月分程度 |
ただし、解決金の金額はあくまでも当事者間の話し合いによって決まるものであり、上記の金額が必ず支払われるわけではありません。
解雇に至る経緯や労働者の地位、会社側の対応など、個別の事情によって結果は大きく左右されます。
そのため、自分のケースでどの程度の解決が見込まれるのかを判断するためには、労働審判の実務に詳しい弁護士に相談し、早い段階で見通しを確認することが重要です。
【関連記事】不当解雇の慰謝料相場はいくら?請求する流れや慰謝料以外に請求できる費用も解説
不当解雇を労働審判で争う場合の基本的な流れ
ここでは、労働者が申し立てた場合の基本的な流れを6つのステップに沿って解説します。
1.労働審判の申立てに必要な書類を集める
労働審判を申し立てるにあたっては、申立書のほか、雇用契約書や就業規則、解雇通知書、給与明細書など、解雇の経緯や労働条件を確認できる資料を準備します。
また、会社の登記事項証明書などの資格証明書や、申立書に貼付する収入印紙、郵便料も必要になります。
必要書類は事案や裁判所によって異なるため、申立先となる裁判所に事前に確認することが重要です。
2.地方裁判所に労働審判の申立てをおこなう
必要書類が揃ったら、管轄となる地方裁判所に労働審判の申立てをおこないます。
管轄裁判所は、原則として会社の所在地を管轄する地方裁判所ですが、労働者が最後に就業していた事業所の所在地などを基準に選択できる場合もあります。
なお、申立ての際には、法律で定められた手数料や郵便料の納付が必要です。
3.裁判所が期日を指定して呼び出される
申立てが受理されると、裁判所に労働審判委員会が設置され、特別な事情がない限り、申立日から40日以内に第1回の労働審判期日が指定されます。
当事者双方には呼出状が送付され、会社側には申立書の写しなども併せて送付されます。
4.会社側が裁判所に対し答弁書などを提出する
期日指定後、会社側は裁判所が定めた期限までに、答弁書や証拠書類を提出しなければなりません。
労働審判は短期間での解決を前提としているため、会社側は初回の答弁書において、解雇が正当であると考える理由や反論をある程度具体的に示すことが求められます。
5.労働審判の期日を迎えて話し合いがおこなわれる
労働審判期日では、労働審判委員会が当事者双方の主張や証拠を確認し、争点を整理します。
第1回期日は1時間から2時間程度かけて審理がおこなわれることが多く、この段階で主張や証拠が出揃います。
第2回期日以降は、話し合いによる解決の可能性を探るため、調停が試みられるのが一般的です。
6.話し合いがまとまった場合は調停が成立して終了する
当事者間で合意に至った場合には、調停が成立し、労働審判手続は終了します。
調停の内容は調停調書に記載され、その内容によっては、後に強制執行を申し立てることも可能です。
実務上、多くの事件はこの調停成立によって解決しています。
話し合いがまとまらない場合は審判手続へと移行する
話し合いがまとまらなかった場合には、労働審判委員会が、審理の結果認められた当事者間の権利関係や手続の経過を踏まえ、労働審判を示します。
労働審判に対して2週間以内に異議申立てがなければ、その内容は確定し、必要に応じて強制執行を申し立てることが可能です。
一方、異議申立てがなされた場合には、労働審判は効力を失い、訴訟手続へ移行します。
不当解雇の労働審判をできる限り有利に進めるためのポイント
労働審判は、原則として3回以内の期日で審理が終結する迅速な手続きです。
準備が不十分なまま労働審判に臨むと、十分な検討がなされないまま調停案が示されるおそれもあります。
ここでは、労働者側が意識しておきたい重要なポイントを解説します。
1.適切に主張できるように準備する
労働審判では、当事者が期日において口頭で言い分を述べることが原則とされています。
そのため、申立ての段階から、解雇に至る経緯や会社から示された解雇理由、その理由に納得できない点を整理し、時系列で説明できるようにしておくことが重要です。
また、解雇の無効を求めるのか、金銭による解決を希望するのかなど、最終的にどのような解決を望んでいるのかを明確にしておくことで、調停の場面でも一貫した主張がしやすくなります。
2.不当解雇された証拠を集めておく
労働審判では、主張の内容を裏付ける証拠が極めて重要になります。
不当解雇を主張する場合には、解雇が不当であることを客観的に示す資料を、できるだけ早い段階で揃えておく必要があります。
代表的な証拠は、以下のとおりです。
- 雇用契約書
- 就業規則
- 解雇通知書
- 給与明細書
- 解雇理由についての会社とのやり取りを示すメールや書面 など
また、解雇理由証明書や退職証明書を会社に請求することで、会社が主張する解雇理由を明確にすることも可能です。
これらの証明書は、労働者から請求があった場合、会社は原則として交付を拒否できません。
さらに、解雇理由の内容に応じて、人事評価書や業務改善指導の記録、解雇を言い渡された際の録音、ハラスメントが疑われる場合の診断書や日記なども重要な証拠となります。
3.労働審判が得意な弁護士に相談・依頼する
労働審判を有利に進めるためには、必要に応じて弁護士に相談・依頼することも有効な手段です。
労働審判は簡易な手続ではあるものの、解雇の有効性や法的評価については専門的な判断が求められます。
弁護士に相談することで、不当解雇に該当するかどうかの見通しを確認できるほか、申立書の内容や証拠の整理、期日における主張の組み立てについて具体的な助言を受けることが可能です。
また、弁護士が代理人として会社と交渉をおこなうことで、労働者本人が直接対応する場合に比べ、会社側が慎重な対応を取ることも期待できます。
さらに、労働審判で解決に至らず訴訟に移行した場合でも、引き続き対応を任せることができる点は大きなメリットです。
事案が労働審判に適しているかどうかを見極める意味でも、早い段階で法律の専門家に相談することが望ましいでしょう。
さいごに|不当解雇が得意な弁護士は「ベンナビ労働問題」で探そう!
不当解雇をめぐる問題は、労働者の生活や将来に大きな影響を与える一方で、法的な判断や手続が複雑になりやすい分野でもあります。
労働審判は、迅速かつ実情に即した解決を目指す制度ですが、その特性上、限られた期日の中でどれだけ的確に主張や立証ができるかが結果を左右します。
そのため、不当解雇を労働審判で争う場合には、制度の仕組みを正しく理解したうえで、事案に応じた対応を取ることが重要です。
解雇理由や証拠の内容によっては、調停による解決が適している場合もあれば、訴訟まで視野に入れた対応が必要になることもあります。
自分のケースにどのような選択肢があるのかを見極めるためには、法律の専門家による判断が欠かせません。
不当解雇について悩んでいる場合は、労働問題に注力している弁護士に早めに相談することで、今後の見通しや取るべき対応が明確になります。
ベンナビ労働問題では、不当解雇をはじめとする労働トラブルについて相談できる弁護士を探すことができます。
状況を整理し、納得できる解決を目指すためにも、専門家への相談を検討してみるとよいでしょう。
